灰谷健次郎のレビュー一覧
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神戸の沖縄料理店に集まる沖縄出身の人々の過去の秘密や悲しみを、小学6年生のふうちゃんの目を通して描いた物語。
途中までは可もなく不可もなくと言った感じのやや重苦しい作品でしたが、キヨシ君が出てきてからはかなり面白かったですし、またいろいろと心に残る言葉の散りばめられた素晴らしい作品でした☆
最後のピクニックはめっちゃ泣けましたし、ろくさんの娘さんの話のほか、いろいろと心に残った言葉はありますが、なにげに一番心に残ったのは、ときちゃんという地味で目立たない女の子が先生宛てに書いた手紙。あと、重苦しい話も多い中、ギッチョンチョンとれい子さんのデートの話は最高に面白く、かつ、心温まる感じでした☆ -
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作者の兄が自殺し、成績重視の教育界に疲れはて、流れついた沖縄で、彼は命は生きているものだけのものだけではなく死んだ命と繋がり生き生かされていること、痛みを分かち合うことを学びました。そのことがこの小説に込められています。
時は1975年。神戸市に住む大嶺芙由子は小学6年生の少女で、周囲からは「ふうちゃん」と呼ばれている。
父は半年前から突然精神状態が不安定になり、心身症と診断されていた。
芙由子の母は、「てだのふぁ・おきなわ亭」という大衆料理店を営み、店には沖縄出身の人々が常連として集う。
その一人が、やはり沖縄出身で母に捨てられたキヨシ少年を店に連れてくる。だが、キヨシはそんな善意を無にする -
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大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきこうとせずハエを可愛がっているのが原因でトラブルを起こしている一年生・鉄三。
決して心を開かない鉄三に打ちのめされる小谷先生だったが、鉄三の祖父・バクじいさんや同僚の「教員ヤクザ」足立先生、そして学校の子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合おうと決意する。
そして小谷先生は次第に、鉄三の中に隠された可能性の豊かさに気付いていくのだった。鉄三のことを知るためにハエのことを勉強していく中で、鉄三はバイ菌のついているハエを飼わないことやハエ博士と呼ばれるくらいハエに詳しいことを知る。鉄三が興味あるハエの研 -
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いるかさんの本棚で見かけて気になっていた一冊。心が温まりました。1974年刊行。教師経験を持つ灰谷健次郎作。日本児童文学者協会新人賞、第一回路傍の石文学賞受賞作品。もしかしたら子どもの頃に読んだことがあるかも。塵芥処理所のある町の小学校を舞台に新卒の女性教師が個性豊かな児童たちと共に成長する姿が描かれています。22歳の小谷先生。自分がこの歳の時はこんなに立派じゃなかった汗 兎の眼とは、小谷先生の好きな西大寺の善財童子の眼。静かな光をたたえた優しいその眼を、人の眼ではなく兎の眼と見て、それを美しいと感じる小谷先生の心の美しさ。作中で出てくる小谷先生の恩師の言葉「人間が美しくあるために、抵抗の精神
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11歳の少女ふうちゃんの目線で語られていて、人間の喜びや悲しみ、優しさや醜さや愚かさ、戦争の悲惨さなどが、すごくわかりやすく多感に表現されている。
ふうちゃんの感受性の強さ、人から学んでいく心の柔軟さ、そして可愛らしさに心打たれ感動します。
ふうちゃんを取り巻く人々の強さから来る優しさも心に沁みる。そして彼らが告白する沖縄戦の惨状は壮絶を極めており、戦後沖縄の人に対する差別が酷かった事にも衝撃を受け沖縄に対する理解も深まった様に思う。
10代とかもっと早く読んでおけば良かった。しかし歳を重ねないとわからない事もある。知るべき事、理解すべき事はまだまだたくさんあると痛感する。 -
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昔読んだのは小学校5年生のときだから、もう35年以上も前になる。当時学校も家庭も殺伐とした愛のない環境にいた私には、てだのふぁ沖縄亭の人々の日々がファンタジーのようで、優しく憧れで、愛されているふうちゃんがうらやましくて、そこに一番心を惹かれたように思う。
沖縄の歴史のことも、精神疾患の存在も、この本で生まれて始めて認識した。
大人になって今、読み返すと当然ながら、その時気づかなかった作者の色々な視点に気づくようになる。なぜ、ふうちゃんという一人の小学生を通じて、作者は沖縄を伝える必要があったのか。せんせいけらいになれ、の一冊からもわかるように、灰谷健次郎という人は、誰よりも子供の凄さ、鋭 -
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『太陽の子』に続いて、この作品もまた
後世まで読み継がれてほしい1冊。
灰谷健次郎の作品は、児童文学という
ジャンル付けをされているものの、
「他人の目線で考えてみる」ことが
苦手になってしまった現代人にとって、
想像の仕方から教えてくれるような
手取り足取りの物語だと思う。
今よりも、少し前の時代の港町で育つ主人公。
父親は漁師で、母はいない。
小学校の同じクラスにも主人公と同じ、
親が漁師の子供がいたり、
母親と二人で暮らす女の子がいたり。
人それぞれの境遇を持つ、
教室という小さな社会で育てられる子どもたちは、
港町ならではの「漁師や漁業について勉強しよう」
と提案する先生と巡り合 -
購入済み
出会えて良かった
灰谷さんの名前は知っていても児童文学の認識で、著作を手に取ることはなかった。偶然とはいえ、この本との出会いは人生の喜びである。まさに読まずに死ねるかであった。
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もう何度読んだかわからないくらいの小説。
小学生の時に出会ってから、ずっと読んでいて、私のバイブルみたいな小説。
昔は、この小説の世界がすごく好きで正しくて自分の中の指針だった。
大きくなってから読み返すと、昔とはまた違ったことを感じることも多い。ここは同感だけどここはちょっと考え方違うなって思う部分も出てくる。
でも、それ以上に、細かなところで、こんなにも優しさに溢れてたんやと思うことがめちゃくちゃ増えた。
なんやろう、人間であることを肯定してくれてる感じの優しさ。こんなにも人間らしくて優しい小説なんやと、最近になってから気づいた。
あの時出会っていて、この小説を大好きでよかった。
私が幸 -
購入済み
全編が優しさで溢れている
大人になって改めて触れた灰谷健次郎さんのことばはどれも美しく、心が洗われる物語ばかり。
表題作はもちろん、先生と子どもたちの関係性が素敵な「きみはダックス先生がきらいか」、「ひとりぼっちの動物園」の最後の「三ちゃんかえしてんか」が特に心に沁みた。
いつの時代も子どもの健やかな心の成長を狭い視野で妨げているのは大人たちなのだろう。 -
購入済み
優しいという事、人間ということ、生きるということ。いろんな人生観が凝縮されています。
ヒトに対する不信感に疲れたとき、
自分の道徳観に自信が持てなくなったとき、
何かに「優しさ」を求めるとき、
この本を読んでみるといいと思います。