この時の教育事情と、現在の教育事情は違うものだとわかっていつつも、やはり惹かれてしまう、灰谷さんの教育観が透ける。
久しぶりに続きを読んでみて、一人の大人として、教育者として襟を正したくなる。
今回のお話では、倫太郎の友人、タケヤンの家庭事情が明らかになります。
思った以上にもつれているように思え
...続きを読むる家庭。
ですが、倫太郎やフランケンの、家庭のあり方、タケヤンの姿勢、男女関係の捉え方が、世間の常識とはまた違ったところにあるのがとても面白い。
リエの不登校の問題も浮上。
今時の不登校とは違うが、お節介と親切の違いは深く考えさせられる。
結局、根本的解決にはならなくても、誰かがなにかを言ってくれる、そういったきっかけのあるかないかは大きいのではないかと感じた。
こうあるべきという世間の倫理観から離れて、人として相手に何ができるかを真摯に自分に問いかける倫太郎の姿は、人としてどうあるべきかを読んでいる人に問いかけるようです。
よくこんなに人間的な魅力ある人を描けるなぁと、毎回感心します。
今回のお話でも、先生ではない大人が、子供を子供扱いせず、自分の生き方をおおらかに子供に見せつけます。
そのことが子供たちの気持ちを揺り動かす。
人間的にこいつはダメだと思える大人にも、その変化の兆しをしっかりと描き、その人を見捨ててしまわない。
なによりも、子供に向ける言葉が、大人のこちらにも響いてくる。
泣ける、切ない、そういう感傷的な「感動」ではなく、こちらも教えられる思いとなる、自分を見直したくなるような、心動かされる「感動」がある。
だらしなくしない、人とは真心を込めて付き合う、そういった至極当たり前のことが、心の奥の方で、腹落ちするような感覚になる。