【感想・ネタバレ】海になみだはいらないのレビュー

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全編が優しさで溢れている

大人になって改めて触れた灰谷健次郎さんのことばはどれも美しく、心が洗われる物語ばかり。
表題作はもちろん、先生と子どもたちの関係性が素敵な「きみはダックス先生がきらいか」、「ひとりぼっちの動物園」の最後の「三ちゃんかえしてんか」が特に心に沁みた。
いつの時代も子どもの健やかな心の成長を狭い視野で妨げているのは大人たちなのだろう。

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2021年12月19日

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ネタバレ

「どうしてですか。説明してください」
キヨコがたずねた。
「はいはい」
とダックス先生は言った。
「ろうかはいつも右側をしずかに歩く、というのはこまるのです。火事が起こったら焼け死んでしまいますからねぇ」
「まじめにしゃべってください」
「はいはい。
あなたひとりとか、二、三人で歩いているときは、ろうかの右側を歩こうが左側を歩こうが、そんなことはどっちでもいいのです。たくさんの人間が歩くときは右側通行をまもったほうがいい。つまり、ろうか一つ歩くにしても、そのときそのようすを判断して歩くのが人間なのです。もし、まだほかのクラスが勉強中なら、今は静かに歩かないとひとのめいわくになる、そう考えて静かに歩ける人がちゃんとした人間というものでしょう。そう考えると1の目標はいらないということになります」
「いらない目標を学校がなぜ決めたのですか?」
キヨコはくってかかった。
「なかなかするどい質問ですね」
とダックス先生はあわてなかった。
「あのね。ここだけの話ですがね……」
ダックス先生は声をひそめた。
「決めたことをまもらせるのが教育だとおもってるアンポンタンの先生が、まだ、いっぱいいるのですよ」
「わあ、いうたろ、そんなこというて」とコウヘイが大声をあげた。
「あらまあコウヘイくん、そりゃないでしょう」
とダックス先生はあわれな声を出した。みんながくすくすわらった。
「2の説明もしますか」
とダックス先生はいった。
「2も3も、ちゃんと説明してください」
キヨコはいった。
「はいはい。2はですね……」
ダックス先生はたのしそうにいった。
「自由時間をどうすごすかということはとてもだいじなことなんです。あそび時間はあなたたちの学校生活の中でたった一つの自由時間ですから、あなたたちが自由に使う権利があります。本の好きな人は本を読んでもいいでしょう。音楽の好きな人は笛を吹いたり、オルガンをひいてもいいでしょう。もちろん、運動の好きな子は運動場に出てからだをうごかすのもいいのです。それぞれが自分の考えで決めればいいので、一つのことをおしつけるというのはよくありません」
「じゃ学校はよくないことを決めてわたしたちにおしつけているのですか」
「そういうふうにとらないほうがいいのではありませんか、キヨコさん」
「………」
「太陽のもとでのびのびあそんでほしいという先生たちのねがいだとおもえば、べつにどうってことないじゃありませんか。なにせ、そうとうおいぼれた先生方がたくさんいらっしゃいますからねえ」
「またいった」とコウヘイがさけんだ。
「あれまあ、また、いっちゃった」

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2020年07月29日

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表題作『海になみだはいらない』のほか、『君はダックス先生がきらいか』『三ちゃんかえしてんか』の3作品が収められている。さらに最後の『三ちゃんかえしてんか』は5つの独立した短編から構成されている。
どの作品も、灰谷さんの物語だと言われずしてわかる灰谷さんらしい温かさと人間愛にあふれている。
多くのレビューにあるように『君はダックス先生がきらいか』はやはり珠玉である。
『海になみだはいらない』ももちろん素晴らしい作品だが、物語の展開的に短編にするには少し惜しい気もする。まだまだ広がっていきそうな濃密さなので、長編としても成立したのではないかと思う。
『三ちゃんかえしてんか』の導入として書かれている短い詩のなかに、人を愛するということは自分が知らない人生を知ることだ、というような文句があるが、同作はまさしくこれをテーマにして5つの短編が展開されているというのがよく感じとれる内容で、誰かの弱さもつらさも欠点も、他の誰かがそれをきちんと知って、能動的に補っていく。そんなまっとうで温かい人間関係に満ちた作品群です。

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2018年06月24日

Posted by ブクログ

2010.05.24. 何年かぶりの再読。よいです、心がじわじわとあったかくなる。ダックス先生、小学生の時に読んでから、何年経っても同じところでにこにこしているよう。

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2010年05月24日

Posted by ブクログ

灰谷健次郎の短編集。

その中でも「きみはダックス先生がきらいか」は
1年に1度は必ず読み返してしまう作品。

人のいいところに気づきたい、
周囲を変えていきたい、
でもうまくいかないという壁が立ちはだかったときに
読むと本当に気持ちがリセットされます。

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2010年01月09日

Posted by ブクログ

子どもが主役の7つの短編集。
この人の話を読むたびに「子どもって本当にかわいいよなぁー」と思う。
そして、子どもに対する姿勢を考えさせられる。
『きみはダックス先生がきらいか』というちょっと変わった先生が出てくる話が一番印象的だった。『先生』って本当に難しい仕事で、答えなんてないけど、きっと子どもにいい影響を与えたりできる先生ってすごい先生だと思う。

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2009年10月04日

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小学校生の時のときに、母親が読んでくれた物語です。
そして泣いた本です。灰谷先生を知ってた母に感謝しています
そして、わたしもいつの日か母親になったら読んであげたい。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

自分内最高の短編集です。
対象年齢は低めですが、読めば読むほど色々な発見があり、未だに熱いものがこみ上げてくる作品です。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

短編3つが入っている。
・海になみだはいらない:子どもたちと漁師達との生活。現在失われた生活がある。
・きみはダックス先生がきらいか:見た目はなんの取得もない私と同じ(私は見た目も中身も同じ)だが、しっかりと子どもたちを見ている先生の姿がある。優秀でないといわれる先生の真骨頂であろう。
・ひとりぼっちの動物園:個性あふれる子どもたちが主人公の短編5つ。

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2010年06月15日

Posted by ブクログ

短編集からなる一冊。海の話、動物園の話、ヘンテコ先生の話、ガヤ街の話など一冊でいろんな味が楽しめる。灰谷さんの作品はいつも心に何かを問いかけてくれる。本当に大切なものは何か。なんなんだろうか。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

児童文学こそ難しい。丁寧な描写に引き込まれた。伝わると思って話してはだめだなぁと反省させられる丁寧な描写がとても勉強になった。力の入れるポイントが違うんですね。

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2017年07月26日

Posted by ブクログ

『キライキライキライキライ』

いつもなら、先にほかの方のレビューは読まないのだが、今回はなんとなく覗いてすごく驚いた。大勢の人が何度か読み返した。と書いてあるのだ。特別に思い入れがあったわけではないのだけど、かくゆう僕も再読であったのでこの本は二度読ませる力があるのかもしれない。

強く生きる事もとても素晴らしいことだと思う。だけど、弱くても生きることは素晴らしい事なんだ。つまり、腐らないこと枯れないこと死なないことが素晴らしいんだ。また読むかもしれない。

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2015年09月28日

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