平井正穂のレビュー一覧
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有名作品で他多くの人のお勧め記事も見るが、実際には読んだことがなかった。夏の読書に良いかなと思って、初めて読んでみる。
「不幸に見まわれ、無人島に漂流するがなんとか帰ってくる話」かと思っていたら、冒険心あふれる主人公が何度も難破しかけそれでも、船を止めず、ついに無人島にや、上巻ではもう無人島から帰ってきて下巻は61歳になっているなど大分印象が違ったな。
また、子供向けかと思っていたら、人喰い蛮族との殺し合い、宗教心など読みづらくはないが、重めの内容。
中国からロシアにいくつもの砂漠を越え行くなど冒険心は掻き立てられる。昔に人の「深夜特急」的読み物なのかなとか思った。
一方、海外文学の読みづ -
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17世紀英国、ジョナサン・スウィフトによる風刺小説。小人の国と巨人の国の話のみ、童話として知られている話だが、読んでみるとなかなか、時代を下っていても人間という現象の中に普遍的に潜む業のようなものが、子気味よく描かれていて、考えさせられもし、なかなか楽しかった。
ガリバーのバイタリティーに驚かされるが、英国紳士という背景から、道徳的に筋の通った現実主義者で、力のある立場でも、弱い立場でも信条は変わらない。風刺小説でありながらも、これだけ読まれ続けるのは、そのいやらしさがナマナマしくもあるけれど、想像力豊かに彩のある表現の衣をまとっているから、物語然としながらもちくりと刺さる、空想だと断じきれ -
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理想郷の代名詞のように言われるユートピアだが、実際に読んでみると、何だか無味乾燥というか、禁欲的な堅苦しい世界のようだ。おそらく、モアの生きた時代のイギリスにおける多くの人、特に、本書の最初の方に出てくるが、エンクロージャーによって生計の途を失った農民などの悲惨な境遇という現実の前では、ユートピアは理想郷であるのだろうし、現代の日本人が心から共感することは難しいのかもしれない。それでも、あの時代にあって、キリスト教を相対化して、その布教上の問題をやんわりと批判していたりして、時代に先駆けた思想の持ち主の著作として、現代でもなお読みつがれる意義も感じられた。
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ユートピア トマスモア 岩波新書
トマスモアの矛盾は神を一人として信じていながらも
自然と言う多様性にも心をゆだねている事に気付いていない所にあるようだ
このユートピアに書き込まれている彼の理想的なこの世の天国の秩序が
法と言う外力による規制と自律による自己管理による調和の
どちらにも徹底しきれずに淀んでしまっているのも
この自己矛盾によって起こっているのだと思う
彼は道徳をもって活きることに活路をみいだしながらも
だからこそあらゆる場における法に従えと説く
富や希少価値に依存することを徹底的に嫌いながら
納得を度外視して神とその法律に従おうとする
この二面性に対 -
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さて,下巻はガリヴァーと同様に,元来の放浪癖から再び航海に出る,という始まり。船長になった甥の船に乗せてもらい,いろいろ物資を積んで再び彼が1人で生き抜いた島に行く。その頃は数人のイギリス人だの,十数人のスペイン人だの,野蛮人だのが住んでいる。この時点では,この島はロビンソン個人の植民地ということになっている。単独生活時代に家を作り,家畜を飼い,農産物を栽培し,とできうるかぎりの文明的生活の礎を築く。その後にこの島に住むようになった人間はすべてそういった彼が築いた物資やノウハウに頼らざるを得ない,というところがこの島が彼個人が統治する植民である所以である。そこでは明らかに奴隷制度が横行している
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今年度の東京経済大学の「人文地理学」後期では,ヨーロッパにおける旅行記とユートピア文学の歴史を辿る講義をしている。本作も当然その講義に含めるべき作品であるが,岩波文庫版で上下巻800ページにわたるのでなかなか読み始める勇気がなかった。でも,今年度は思い切ってレポートの課題図書に選定したので,読まざるを得なくなって読んだ次第。
結局,上下巻読むのに3週間ほどかかってしまった。しかも,岩波文庫版では上下巻となっているが,実は上巻と下巻は別の作品であることが判明。上巻を読み終えたところで,あまりにも結末がしっかりしているので,これ以上同じ分量で何を続けるのかと思いきや,続編でしたね。上巻が『ロビンソ -
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今更説明の必要もいらないと思いますが、トマス・モアさんの「僕の考えたいい国」ってな内容です。
実際にユートピア国に行ってきたラファエルさんが、モアさんに語るという体で書かれています。
今のイメージで「ユートピア」というと、エデンの園か桃源郷かといった、餓えも苦しみもパンツもないような場所ってイメージですが、実際、本書を読んでみると、そんなこともないんですな。
奴隷もいれば、死刑制度もある社会。
ただ、(モアが考える)理想的に社会設計・運営がされているために、諍いや貪欲とは無縁な国なわけです。
時代背景や歴史的な文脈の中での位置づけなど、全然わかってないので、例によって「ふ~ん」と表層をなめただ