平井正穂のレビュー一覧
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政治・社会、そして人間への鋭い風刺が冴え渡り、私達にスウィフトに対するある種の異常性と恐怖の念を抱かせるのが本著「ガリバー旅行記」です。
ガリバー旅行記といえば、児童書として有名ですが、その実態はそんな生易しいものではなく、人間の負の部分、すなわち傲慢、嫉妬、強欲、虚偽、その他あらゆる悪徳を鮮明に描き出し、最早ラディカルの域を超えて人間そのものを否定するに至るほどです。その背景には、スウィフトの生い立ちが大きく関係しているのは広く知られているところではないでしょうか(リリパットとブレフスキュや、ラピュータとバルニバービの関係が、スウィフトの時代の国際情勢の反映である点等)。
成人した今だからこそ客観的かつ冷静に理解することができましたが、あと数年読むのが早かったらどんな影響を与えられていたか分からないのが恐ろしいと感じると共に、古典的名著とされる所以を身をもって実感し、これからもずっと読み続けていくであろう一冊を発見する良い経験となりました。 -
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ページ量が多くて、読もうか止めようか迷いましたが、読んで正解です。ものすごく楽しめました。
多種多様な登場人物たちですが、思わずこんな人いるいる!といいたくなるような身近な存在に感じられて、とても今から300年近く前に書かれた作品とは思えません。
屁理屈というのは、身に降りかからない限りにおいては、これほど聞くに楽しいものはありません。もう自分勝手な理屈のオンパレードです。作者の人間観察眼に感服です。
子供のころに読んだという人も、ぜひ大人になった今読んでみてはいかがでしょうか。きっとうなずくことしきりです。
『天空の城ラピュタ』にちょっとだけ出てくるラピュタ人の話もあります。
映画の世界とは全然違う種族でしたが…
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これが18世紀に書かれた作品とは…。とってもおもしろかった。
いろんな縁があって読み始めたこの本だが、僕のメインの意識としては「18世紀、産業革命前のイギリスの人間像を投影した作品」って捉えその人間の行動における合理性だとかキリスト教に注目しようとしたんですが、それ以外の些細な出来事なんかすっごくおもろーい。孤島での生活と後半のヨーロッパでの生活の対比から後者がいかに貨幣、手形、その他もろもろに縛られているのかがより浮き彫りになる。最近買った世界地図帳も役立ったし(つまりクルーソーが漂流した島と思われる場所を発見したりフランスの地理を軽ーくのぞいてみたりと内容理解により役立った)とってもいい読後感に襲われている。下巻も近いうちに読みたい。
小説もたまにはいいもんですな。 -
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カミュの「ペスト」は有名だが、本書はロビンソンクルーソーの著者デフォーによるもの。1665年、ロンドン大火の前年にロンドンでペスト(疫病)が大流行したときの模様を克明に記録したもの。コロナの記憶も新しい現在、当時のことが生々しく実感できる。
本書を通して、疫病がロンドンに蔓延していく様子、人々や地方政府のとった行動などが書かれている。当時はワクチンや特効薬もなく、ロックダウンは行われたが、効果は薄かった。そもそも、情報というものが紙一枚、もしくは人づてしかない状況だったのだ。
印象的だったのが、裕福な市民とそうでない人への病気の影響の差、謎のおまじないにすがるしかなかったこと、人々ができる範囲でどう助け合ったか、そしてなによりも病気のすごさである。感染して潜伏期間は本人も周りもわからないが、発病して数時間で死亡するという恐ろしい症状だったよ
うだ。当時ロンドン市民の6分の1がこの病気で命を落としたらしい。著者がロンドン生まれ・育ちだったこともあり、地区や通りの名前まで詳しく書かれていて、リアルに迫って来た。
本書の最後にある解説で、ペストが蔓延したとき著者は5歳であったことを知り、驚いた。彼の叔父にあたる人から話を聞き、当時のことを調べつくして、後世のために記録として残したようだ。そのため、本人の体験談というよりも、記録文学もしくは小説という位置づけであるが、完全な作り話とは到底思えない。
すべてを記録しようという著者の意気込み故、同じような描写が何度も出てきたり、著作としては構成がいまいちである。でも読む価値は十分にあった。 -
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ネタバレ【不人情な近代国家】
大航海の時代に、アメリゴ・ベスプッチの率いる船にも乗って世界探検を経験したというラファエル・ヒロスディさんが訪れたユートピア国について、全体としては、国家制度の在り方に関する自論みたいなのが語られる。聞いているのは、この小説の語りのトマス・モアさんと、ラファエルを紹介してくれたピエールさんで聞いている、スタイル。
はじめの章は、イギリスの国家としての矛盾を指摘するラファエルさん、合意できない点について問われ、さらに論を深める。
金を盗んだら死刑になる制度を批判。
「人間には自殺する力も他人を殺す力もありません。」
人が窃盗をする環境設定を国家自体が作っていると指摘。つまり、貧者を生む仕組み。生きるために窃盗するしかなくなる状況。貨幣の流通が生む不平等。
「…平等ということは、すべての人が銘銘自分の私有財産を持っている限り、決して行われるべくもないと私は考えています。」(本文より)
そこからユートピア国の制度や暮らしをどんどん深堀していく。
・・・
当時から貨幣経済の弊害は強く感じられていたのだなーと思う。
でも私たちはさらにその後、資本主義経済を深めていく。
共産主義のいわゆる失敗も経て、経済資本に基づく利益の支配する社会は強固なものになった。
地球環境をぎりぎりまで脅かすまでにもなっている資本制度は、さらに限られた地球資源までも経済価値に置き換えようとする動きが進んでいる。
ユートピア国のしくみでは、偏重した金至上主義みたいなものを克服するために、金を便器などに使っている。
「金なら金、銀なら銀というものの本性にふさわしいように、 本来の価値以上に評価しないで用いているだけの話」とのこと。
労働は6時間。一方で、みんなが同じ服だったり、仕事も割り当てられたり、皆を同じぐらい載せ勝レベルにしようとすると、面白みに欠ける部分もあるのかもしれない。思考実験なので本当のところは分からない。
『#人新世の資本論』でも論じられていたような、コモンズ的なしくみと重なる部分が多々あり、興味深かった。
近代国家が確立していくという時代に、この本はどのように受け止められていたのかな... すでに「理想」であったのか。でもこのような思想を基に、その後、共産主義の思想が発展したし、いったん消えかけたけれども今にもたぶんつながっているのだろうと思う。
ギリシャ哲学なども引用されつつ、
ストア派よりも快楽主義派だとされるユートピア国。
ユートピア国が最も尊重するのは心の快楽は、主として「徳を行うこととよき生活の自覚から生ずる」とのこと。
徳を高める、という点では共通している。
人はどのように生きるべきか、何をもって良い人生と言われるのか、
その視点は、どのように社会を運営するか、という議論には欠かせない。
国家制度や貨幣制度が暴走し始める中で、その国家の在り方を不正な、不人情な国家とし、
本来追求すべきは人間一人ひとりの幸せであったり、人生の質である、と釘を指すよう、手段が目的化していることに警鐘を鳴らす。500年も前の本だけれども現代的にも通づる、考えさせられる本だった。 -
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リリパット国。小人の国。身長20cm。”巨人”ガリヴァーは隣国との戦争で活躍。しかし宮殿の火災を小便で消して怒られる▼ブロブディンナグ。巨人の国。身長18m。"小人"ガリヴァーは巨人たちの見世物・ペットに▼空飛ぶ島ラピュータ。どのラピュータ人も右か左かに頭が傾いている。一方の眼は内側に向き、他方の眼は真っすぐに天に向いている。衣裳は太陽と月と星の意匠で飾られている。ラピュータ人は常に不安に襲われている。天体に異変が起きないか。太陽に地球が吸収されないか。彗星によって地球が破壊されないか。抽象的な思念に沈潜(ちんせん)しがちで、思索に入ると自らものを言うことも、他人の言っている言葉に耳を傾けることもできない。※王立学士院を諷刺▼バルニバービ。奇妙な実験▼グラブダブドリッブ。妖術使いの国。歴史の偉人の裏話▼ラグナグ。不死の国。死のうとしても許されない。老醜をさらす人々▼日本。首都エドで、皇帝に謁見。踏絵を免除してもらう。ナンガサクからオランダ人の船でアムステルダム経由で英にいったん帰る▼フウイヌム(馬)の国。理性と徳をもつ馬の国。凶悪で不快な下等生物ヤフー(人間)。ヤフー(人間)は家畜として飼われている。ヤフー(人間)は、狡く(ずるく)、意地が悪く、陰険で、復讐心に富んだ連中。臆病であるため傲慢で、卑屈で残酷。嘘をつき、ごまかし、騙し、二枚舌を使う悪癖。ヤフー(人間)は残酷で忌まわしい性質をもっているが、自らは理性の所有者だと称している。その理性は完全に腐敗堕落しきっていて、単なる獣性よりもさらに恐ろしい。p.348. 理性と徳をもつフウイヌム(馬)がすべての仲間を愛するのは自然に教わったからであり、理性の命令に従っているからp.432▼帰国したガリヴァーは、家族や友人が忌まわしき「ヤフー」にしか見えず、人間を嫌悪するようになり、馬と一緒に暮らす。ジョナサン・スウィフトSwift『ガリヴァー旅行記』1726
※レミュエル・ガリヴァー。40代。船医(外科)。東インドへ向かう航海の途中、船が難破。
*スウィフトの先祖はイングランド人で、アイルランドに支配者側として移り住んだ。スウィフトはイングランドの残酷なアイルランド支配を見て、イングランドに憤る。イングランドの植民地主義を当たり前のものとして語るデフォーのロビンソンクルーソーを暗に否定する作品(ガリヴァー旅行記)を書く。
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ロビンソン・クルーソー。中流階級の三男。家出。航海。ギニア(アフリカ西海岸)で金持ちに。帰国。再度ギニアへ向かう途中、海賊につかまり、モロッコでムーア人(北西アフリカのイスラム教徒)の奴隷に。逃亡、海上でポルトガル船に助けてもらいブラジルへ。ブラジルで農園主に。奴隷を調達するためギニアに向かう途中、大嵐に会い、無人島に流れ着く▼自分の生活の明るい面をより強く見、暗い面はあまり見ない。なくて困っているものよりも、現に享有しているものを考える。こうした考え方がしみじみとした深い慰めを私に与えてくれた▼危険への恐れは、危険そのものよりも一万倍恐ろしい▼今日、私たちは明日憎むことになるものを大事にしている。明日避けることになるものを探し求めている。明日恐れることになるものを欲している。ダニエル・デフォーDefoe『ロビンソン・クルーソー』1719
〇フライデー。人食いの儀式の犠牲になるところをロビンソンに救出される。
※1人でだれの助けも借りず自然の中で生きる。ルソーは「エミール」でロビンソン・クルーソーを自然教育を学ぶ推薦図書とした。
※ものを手に入れる喜び。ものを作る喜び。工夫する喜び。近代合理主義。
※ポストコロニアリズムによる批判。
感染者が出た家は完全に隔離された。その家からだれも出入りしないよう監視人(ウォッチマン)が置かれた。監視人は2人で、1人は昼、もう1人は夜を担当した。コーヒーハウスにはインチキ医者たちが徘徊し、インチキ薬の広告が数多く貼られた。ダニエル・デフォーDefoe『ペスト』1722 ※ペストは14世紀だけでなく、何度も発生している。 -
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◯これがなぜユートピアと思えるのか
→あくまで当時の時代を考えなければなんとも言えない。1500年代は暗黒時代?大航海時代に近い。富を蓄えようとしている時代。イギリスではディスクロージャー政策が横行していた頃。
→トマスモアはまさに富の蓄積について疑義を呈している。貨幣の否定、労働者への敬意など。
→また、国家全体を利するように制度を求めるところは、個人主義によって富を蓄積していく不平等が広がっていると分析したか。
→しかし、現代においてこれは社会主義、共産主義国家に思えて嫌悪感すら抱く。共産主義者はこのユートピアをこそ目指しているのでは?国家による婚姻、出産、事物の共有化、まさに共産主義。異なるのは宗教の自由を認めているところか。
→これらに感じる嫌悪感の正体は、権利意識が全く無いからと考えられる。当時、そもそも個人の権利という発想がないということもあるため、フェアな議論ではないが、共産主義的発想も個人の権利意識によって変わるのではないか。奴隷がまさに最たる例。ユートピアに奴隷がいるのは甚だショックでは?
→ユートピアの着想はもしや古代ギリシャの都市国家をイメージか。 -
Posted by ブクログ
思い出したら何度も読み返すとよい作品だなと感じた。人間の営みにおける全ての理想形が『ユートピア』の国では体現されており、それは現代を生きる自分ですらまさに理想だと感じたほどだ。
例えば、金や銀を人は命と同等くらいに大切に扱うが、実際実用的なのは加工しやすい鉄であって、金や銀そのものに価値はない、とか、財産を持っているというだけで愚かな貴族が敬虔な奴隷を従えるのはおかしい、とか、快楽に娯楽はあるのではなく健康的な生活にこそ楽しみを見出す、など、ユートピアの人間は、もし他の国の人々が簡単に行き来可能な場所ならば到底ありえないような、他の世界から全くもって影響をうけてこなかったような場所なのだ。
『ユートピア』を読んだことはないが、「ユートピア」とか「ディストピア」とか単語だけ知っていて多用している人は少なくないだろう。ぜひ一度読んでモアの生きたテューダー朝の時代を感じてみてはいかがだろうか。