平井正穂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ぜんぜんユートピアに思えない。確かに安定していて豊かな社会ではあるけれど、その安定や豊かさのためにいろんなものが犠牲にされている。私有財産が否定され、人の行動もかなりの面で統制されている。今の感覚からしたら、前時代的で不自由な管理社会でしかない。社会主義国家とか共産主義国家とかのイメージと重ね合わせたくなる。
ユートピアと言ったら、実現不可能だけど天国のような幸せな世界、というようなものかと想像していた。あるいは、いまはまだ実現は無理だけど、少なくとも人間や社会が最終的な目標にするような理想社会とか。
そんなものを予想していたのに、予想外というか意外というか。
ただ、500年前のヨーロッ -
Posted by ブクログ
ちょっと難しくなったガリバー旅行記という感じだろうか。どこにも無い架空の「ユートピア」国の風土を通して、理想の国家のあり方と現実への風刺を表現している。そこでは合理的な考え方とキリスト教的敬虔さを持った国民による、共産制国家の営みが描かれる。「ユートピア」が共産主義国家を表す言葉として使われてきのは、この書が元であったということか。しかしこの国家にはどこか息苦しさを感じてしまう。国家の規定からはみ出してしまった人間は死刑か奴隷となってしまう。卑しい職務は全てこの奴隷が請け負うことによってこの国家は成立しているのだ。こうした裏の面も、現実の共産主義国家の運命をも見通したものだったのだろうか。トマ