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Posted by ブクログ
カミュの「ペスト」は有名だが、本書はロビンソンクルーソーの著者デフォーによるもの。1665年、ロンドン大火の前年にロンドンでペスト(疫病)が大流行したときの模様を克明に記録したもの。コロナの記憶も新しい現在、当時のことが生々しく実感できる。
本書を通して、疫病がロンドンに蔓延していく様子、人々や地方政府のとった行動などが書かれている。当時はワクチンや特効薬もなく、ロックダウンは行われたが、効果は薄かった。そもそも、情報というものが紙一枚、もしくは人づてしかない状況だったのだ。
印象的だったのが、裕福な市民とそうでない人への病気の影響の差、謎のおまじないにすがるしかなかったこと、人々ができる範囲でどう助け合ったか、そしてなによりも病気のすごさである。感染して潜伏期間は本人も周りもわからないが、発病して数時間で死亡するという恐ろしい症状だったよ
うだ。当時ロンドン市民の6分の1がこの病気で命を落としたらしい。著者がロンドン生まれ・育ちだったこともあり、地区や通りの名前まで詳しく書かれていて、リアルに迫って来た。
本書の最後にある解説で、ペストが蔓延したとき著者は5歳であったことを知り、驚いた。彼の叔父にあたる人から話を聞き、当時のことを調べつくして、後世のために記録として残したようだ。そのため、本人の体験談というよりも、記録文学もしくは小説という位置づけであるが、完全な作り話とは到底思えない。
すべてを記録しようという著者の意気込み故、同じような描写が何度も出てきたり、著作としては構成がいまいちである。でも読む価値は十分にあった。
Posted by ブクログ
(01)
筆者は,感染と蔓延とその結果としてもたらされる市民の死を克明に(*02)綴っていく.デフォーは幼児にこの1665年のロンドンでのペストの流行と惨事を経験しているが,彼が本書を上梓したのは1722年頃とされ,半世紀以上前の出来事を叔父の遺した記録を通じて生々しく再現しており,その文筆家としての手腕には驚くべきものがある.
(02)
政治的な情況としては,ロンドン市の救恤策も示されるものの,感染者が確認された家屋に,感染の有無にかかわらず家族や同居する使用人などの接触者をまるごと閉鎖する対策が凄まじい.筆者はこの施策を批判しているが,監視人のもとで閉鎖状態が管理されるものの,その家屋を脱出しようと試みる市民たちの描写まで行き届き,また,その閉鎖家屋から街路に漏れ出る死の咆哮までが伝えられる.経済的には,貧困層と富裕層との感染対策の格差をレポートしており,疎開する上層と市内に留まらざるを得ない下層(*03)をそれぞれに報告している.風俗面でも,治療や防疫として行われていたこと,あるいは予言や薬効などの民間のデマのような俗信(*04)から怪しいビジネスの流行まで,都市的なすったもんだにも事欠かない.
(03)
愉快な挿話として後半には市内の職人たちの郊外への避難が戯曲のような文体で報告されている.そのキャンプや機転には,ロビンソン・クルーソーのサバイバルに通じる実用性を持つハウツーの要素も混ざっているようで,一編の書物が綴られ,後世に伝世されることの意味を考えさせられる.tテムズ川での船上生活によって感染から自らを逆に隔離しようという行動があったことも痛快に感じられる.
(04)
新旧の宗派の対立がペスト蔓延の混乱の中で一時的に調停された様子も面白い.また,この渦中にあって神や信仰の問題を取沙汰する筆者の態度には,中世的な時代錯誤よりも,普遍的な神の存在が示されているように感じられる.
Posted by ブクログ
17世紀、350年前のペスト・パンデミックのドキュメンタリー風の小説。しかもあの『ロビンソン・クルーソーの冒険』を書いたディフォーという作家の作品ですよ。ディフォーが生まれたのがその頃、新親や親戚の話を聞いたり、調べたりして、書いたはそれから50年後(初版発行は18世紀初め)と。それにしても古い、なにしろペスト菌の発見も1894年まで待たなければならない(北里柴三郎さん!)時代、果たして現代に通じるものがあるのか?と思って読みましたが、、、。
時は1664年9月初め、場所はロンドン。ペストという悪疫はそれまでに時々発生しては恐れられていたのだが、オランダでまた流行りだしたという噂を耳にしたロンドン市民、H・Fさんが物語の語り手。そうこうしているうちにロンドンのある街に1~2の感染者が出てくる。そして翌年の1665年(日本では寛文5年)を大変な年にしたのでした。
田舎に逃げた人も多かったけれど、商売が心配でロンドンに残って、生き延びて長生きしたH・Fさんが、見聞きした真実の記録を残そうとしたわけは、当時の当局も秘密主義であったし、口から口のセンセーショナルなデマ的伝承はあったけど、印刷物もなかったからいつの間にか忘れれ去られていく、そのことを憂えてでした。
まあね、17世紀ですから、迷妄な盲信の行動、健康者も感染者も一緒に家屋ごと閉鎖してしまう施策だとか、大穴を掘ってたくさんの犠牲者の酸鼻な埋葬風景や、おどろおどろしいところがいっぱいあります。
でも、細菌もウイルスも科学的にわかっていないにもかかわらず、この現代になんと似ていることか。「死亡週報」なる感染死者数の発表に一喜一憂する人々、狂乱のような行動をする人がでる、社会的弱者の不利益というか一番被害を受ける、当局の施策の不備、経済を回さなくては困ること、などまったく、今を読み解いているようです。
ひとつ面白かったのは、3人組の庶民がだんだんひどくなる状況に怖じ気てロンドンから脱出するサバイバルのところ。周りの村だっておいそれと感染しているかもしれない市民を受け入れませんから、人里離れた森に野営するのがロビンソン・クルーソーの生活創意工夫を彷彿させて、筆運びの勢いありましたね。
カミュの『ペスト』とはまた違った感ずるところがあります。人間は繰り返してきたのだなあと。
リアリティーはカミュよりある
同名の小説ではカミュの方が有名で新しいのであるが,カミュの作は,フィクションの印象と彼一流の哲学的思考の反映が強い.これに対し本作は17世紀ロンドンを舞台にしているがカミュに比べて極めて現実感が大きい.デフォーの体験記ではないらしいが,まるでルポのような迫力ある描写が印象的でいかにもと感じられる.この時代らしい挿絵も訴える力がある.ここに描かれている家屋閉鎖は,現代なら都市封鎖に対応するものであり,人々の感情は現代も17世紀もあまり大差ない事が分かる.話者がキリスト教に頼って災難を乗り越えようとする姿も印象的である.昨今のコロナ禍に対する世の反応を反省するには絶好の書ではないか.
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小説・文芸
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