【感想・ネタバレ】ガリヴァー旅行記のレビュー

あらすじ

子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(一六六七―一七四五)の筆鋒は、ほとんど諷刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。

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Posted by ブクログ

一度全て読めば、誰もが驚くだろう。
幼少期の頃に読んだガリバー旅行記のファンタジーな雰囲気とは一転、物語後半に進むにつれて、人間世界への疑問、皮肉、風刺へと変わっていく。

理性的な馬の国で見たものは衝撃的で、フウイヌムがいかに賢明な生き物かが分かる。

人間社会は欲にまみれ、利己的で、暴力が絶えない世界である。
しかし、人間に生まれた以上楽しむしかないよな。

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2022年03月26日

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小さい頃に絵本?か何かで軽く読んだことはあったが、原作を読んでみるとあの時感じた奇想天外ファンタジー感とは違ったテイストだった。

3章のラピュータは王立協会を皮肉っていると言われていたり、社会批判と受け取れれるシーンも多い。スウィフトが生きていたイングランドの現実を如実に描いた作品。

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2024年08月25日

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ネタバレ

子供の頃読書をしてこなかったので、児童文学でもお馴染みのこの作品も巨人が旅行する!と思ってました。
 
面白すぎてグングン読んでいきました。
想像スイッチをオンにして読むとかなり怖いかも⁉️
沼正三の家畜人ヤプーと繋がると思ったのは、私だけでしょうか?

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2021年02月06日

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子供の頃に絵本で読んだことがあったが、
しっかり全編読んでみると本質は風刺文学だと言うことがわかった。

とくに第4章については、人間全体に対する批評がなされている。

とても面白かった。

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2021年01月03日

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小人の話と巨人の話は有名で、皆さん子供の頃に読んだかもですよね。その後があるなんて知らず、アニメPsycho-passの槙島聖護がバルニバービの医者の話をした所で、ガリヴァー旅行記本来のユーモアの香りを感じ、自分の好みに合うかも、と思い読んでみました。
実際バルニバービの医者の話を読みたくて読んだ人も少なからずいるのではないでしょうか?
シニカルで皮肉の籠った物語で、現実の色んな場面で「ラピュータの数学者達は、自分が精通してないが故に政治に対して好き放題、熱心に文句を言ってたみたいだね」とか「リリパット国の、王子は体裁と自分の思想のどちらもを取って靴底の高さが違う靴を片足ずつ履いて、歩き方が不自然だったんだよ」とか、そういうことを考えるようになって、何となく他人に優しくなれた気がします。
あと、noteで政治家や転売虫を描写する時など、自身の怒りが文にこもってしまう事があるのですが、その時はところどころガリヴァー旅行記で随所に見られる表現をするようになってしまいました。悪辣とか醜悪とか、犀利とか敬虔とかやたらと使いたがるようになってしまった読者の方も多いのでは?
変なツボを押され、自分はこういうユーモアが好きなんだと気付かされました。笑 とても面白かったです

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2020年12月13日

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この旅の物語がこれほど怒りに満ちた物語だったとは。。
子どもの頃に誰もが読んだ小人の国、巨人の国の話は、それぞれ原作の第一篇と第二篇の抜粋に過ぎない。原作は、これでもかというくらい、風刺と皮肉のてんこ盛り。そして、第三編の空中に浮かぶ島国を経て、怒りの頂点は、馬が支配する国を描いた第四篇にやって来る。馬が、獣人 (=人の形をしたけだもの)を家畜同然に扱うという設定からして、奇異な気配を感じるが、さらにこの馬が極めて理性的であり、馬の国では統治らしい統治が不要であるということに至って、これはもう人間否定・人間嫌い以外の何ものでもないことが分かる。なぜ、政治が必要なのか、なぜ法律が必要なのか、なぜ戦争が起きるのか。こうした馬の質問に答えることで、人間の愚かさが浮かび上がり、その愚かさへの怒りに満ちてくる。第四篇を読むに至って、第三篇までは怒りの序章にすぎなかったことに気づく。
尚、ガリヴァーはこの旅行記の中で日本に立ち寄っていること、空中に浮かぶ島が「ラピュータ」という名であること、そして、獣人が「ヤフー」という呼ばれることは特記しておこう。

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2018年11月18日

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政治・社会、そして人間への鋭い風刺が冴え渡り、私達にスウィフトに対するある種の異常性と恐怖の念を抱かせるのが本著「ガリバー旅行記」です。
ガリバー旅行記といえば、児童書として有名ですが、その実態はそんな生易しいものではなく、人間の負の部分、すなわち傲慢、嫉妬、強欲、虚偽、その他あらゆる悪徳を鮮明に描き出し、最早ラディカルの域を超えて人間そのものを否定するに至るほどです。その背景には、スウィフトの生い立ちが大きく関係しているのは広く知られているところではないでしょうか(リリパットとブレフスキュや、ラピュータとバルニバービの関係が、スウィフトの時代の国際情勢の反映である点等)。
成人した今だからこそ客観的かつ冷静に理解することができましたが、あと数年読むのが早かったらどんな影響を与えられていたか分からないのが恐ろしいと感じると共に、古典的名著とされる所以を身をもって実感し、これからもずっと読み続けていくであろう一冊を発見する良い経験となりました。

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2013年03月03日

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 ページ量が多くて、読もうか止めようか迷いましたが、読んで正解です。ものすごく楽しめました。

 多種多様な登場人物たちですが、思わずこんな人いるいる!といいたくなるような身近な存在に感じられて、とても今から300年近く前に書かれた作品とは思えません。

 屁理屈というのは、身に降りかからない限りにおいては、これほど聞くに楽しいものはありません。もう自分勝手な理屈のオンパレードです。作者の人間観察眼に感服です。

 子供のころに読んだという人も、ぜひ大人になった今読んでみてはいかがでしょうか。きっとうなずくことしきりです。

『天空の城ラピュタ』にちょっとだけ出てくるラピュタ人の話もあります。
映画の世界とは全然違う種族でしたが…

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2017年08月15日

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ロビンソン・クルーソー。中流階級の三男。家出。航海。ギニア(アフリカ西海岸)で金持ちに。帰国。再度ギニアへ向かう途中、海賊につかまり、モロッコでムーア人(北西アフリカのイスラム教徒)の奴隷に。逃亡、海上でポルトガル船に助けてもらいブラジルへ。ブラジルで農園主に。奴隷を調達するためギニアに向かう途中、大嵐に会い、無人島に流れ着く▼自分の生活の明るい面をより強く見、暗い面はあまり見ない。なくて困っているものよりも、現に享有しているものを考える。こうした考え方がしみじみとした深い慰めを私に与えてくれた▼危険への恐れは、危険そのものよりも一万倍恐ろしい▼今日、私たちは明日憎むことになるものを大事にしている。明日避けることになるものを探し求めている。明日恐れることになるものを欲している。ダニエル・デフォーDefoe『ロビンソン・クルーソー』1719
〇フライデー。人食いの儀式の犠牲になるところをロビンソンに救出される。
※1人でだれの助けも借りず自然の中で生きる。ルソーは「エミール」でロビンソン・クルーソーを自然教育を学ぶ推薦図書とした。
※ものを手に入れる喜び。ものを作る喜び。工夫する喜び。近代合理主義。
※ポストコロニアリズムによる批判。

感染者が出た家は完全に隔離された。その家からだれも出入りしないよう監視人(ウォッチマン)が置かれた。監視人は2人で、1人は昼、もう1人は夜を担当した。コーヒーハウスにはインチキ医者たちが徘徊し、インチキ薬の広告が数多く貼られた。ダニエル・デフォーDefoe『ペスト』1722 ※ペストは14世紀だけでなく、何度も発生している。

++++++++

リリパット国。小人の国。身長20cm。”巨人”ガリヴァーは隣国との戦争で活躍。しかし宮殿の火災を小便で消して怒られる▼ブロブディンナグ。巨人の国。身長18m。"小人"ガリヴァーは巨人たちの見世物・ペットに▼空飛ぶ島ラピュータ。どのラピュータ人も右か左かに頭が傾いている。一方の眼は内側に向き、他方の眼は真っすぐに天に向いている。衣裳は太陽と月と星の意匠で飾られている。ラピュータ人は常に不安に襲われている。天体に異変が起きないか。太陽に地球が吸収されないか。彗星によって地球が破壊されないか。抽象的な思念に沈潜(ちんせん)しがちで、思索に入ると自らものを言うことも、他人の言っている言葉に耳を傾けることもできない。※王立学士院を諷刺▼バルニバービ。奇妙な実験▼グラブダブドリッブ。妖術使いの国。歴史の偉人の裏話▼ラグナグ。不死の国。死のうとしても許されない。老醜をさらす人々▼日本。首都エドで、皇帝に謁見。踏絵を免除してもらう。ナンガサクからオランダ人の船でアムステルダム経由で英にいったん帰る▼フウイヌム(馬)の国。理性と徳をもつ馬の国。凶悪で不快な下等生物ヤフー(人間)。ヤフー(人間)は家畜として飼われている。ヤフー(人間)は、狡く(ずるく)、意地が悪く、陰険で、復讐心に富んだ連中。臆病であるため傲慢で、卑屈で残酷。嘘をつき、ごまかし、騙し、二枚舌を使う悪癖。ヤフー(人間)は残酷で忌まわしい性質をもっているが、自らは理性の所有者だと称している。その理性は完全に腐敗堕落しきっていて、単なる獣性よりもさらに恐ろしい。p.348. 理性と徳をもつフウイヌム(馬)がすべての仲間を愛するのは自然に教わったからであり、理性の命令に従っているからp.432▼帰国したガリヴァーは、家族や友人が忌まわしき「ヤフー」にしか見えず、人間を嫌悪するようになり、馬と一緒に暮らす。ジョナサン・スウィフトSwift『ガリヴァー旅行記』1726
※レミュエル・ガリヴァー。40代。船医(外科)。東インドへ向かう航海の途中、船が難破。
*スウィフトの先祖はイングランド人で、アイルランドに支配者側として移り住んだ。スウィフトはイングランドの残酷なアイルランド支配を見て、イングランドに憤る。イングランドの植民地主義を当たり前のものとして語るデフォーのロビンソンクルーソーを暗に否定する作品(ガリヴァー旅行記)を書く。

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2025年08月01日

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小人、巨人の国しか知らなかった。
風刺の物語の意味がわかった。
Yahooの語源も。
みずから体に悪いものをたくさん摂取して、健康を害してるか…
著者は本当に日本に来たことがあるのかな?
想像ですべてを書いたのだとしたら、天才か狂人。
300年前の物語とは思えない。映画化してほしいな。

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2023年03月24日

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ネタバレ

巨人の国の女の胸を見れるのいいじゃん。第三篇の言語学者の暴論が衝撃的。不老不死の人間の話も印象的なのと、別の国の人々に自分たちの国について話せば、我々が普段気づかぬ正論が聞けると言う構造が良い。

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2022年02月24日

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ネタバレ

小人→巨人→ラピュタ(浮島)と荒れた大陸(学士院)→幽霊▶︎埃を舐める国▶︎不死身の人間(不死は決していいものではない)→江戸の日本→馬の国

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2022年01月26日

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自分の中の読んでない名作を読もうキャンペーン。きちんと読んだことがなかったので。馬の国の話が皮肉が利いてて良い。得てして海外の翻訳を読むときはきちんと時代背景を勉強しているともっと楽しく読めるのにといつも思う。

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2021年08月09日

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ネタバレ

PSYCHO-PASSで槇島が引き合いに出していたから気になって読んでみた。絵本で楽しく読んだ子どもが、大人になってから全部を読んだらあまりの違いに驚くのではないだろうか…。

あとがきでスウィフトがデフォーのロビンソン・クルーソーに触発されてこの本を書き上げたというのが興味深い情報だった。

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2016年09月28日

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上司に勧められて軽い気持ちで読んでみたが、子供の時に読んだガリバー旅行記とのギャップにびっくり。童話というよりは哲学を語っている本。これを読むと人間が如何に愚かで傲慢であるかを感じてしまう。。。

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2015年11月29日

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ネタバレ

 ガリバーが最初に到達した「小人国」は誰でも知っているだろうし、その後迷い込んだ「巨人国」までなら知っている人もいるかもしれない。
しかしその後「日本」や「ラピュタ」、そして「馬人国」まで行っている事を知っている人は少なかろう。
そして岩波文庫版では巻末にドッと注釈が載っているのだが、これほどまで風刺に満ちていると知っている人はほとんどいないのではないか。

 その風刺は「小人国」あたりではまだ当時英国に実在したウォルポール内閣を皮肉る程度(この事により書かれた年代が実際の世界史と符合する)なのだが、「巨人国」ではとにかく女性の体臭や風貌を批判するような論調になる。
要約すると「どんな美人も巨大化すれば粗が目立ってとても直視できない」ということになる。

 第三章に登場する「ラピュタ」は宮崎アニメのファンなら最も興味を引かれる所だろうが、その描写は案外淡白でがっかりさせられるかもしれない。
技術立国の人間は頭でっかちで日常の事が何もできないという風刺になっているのだろうが、本作で誰が見ても強烈な風刺を見て取れるのは最終章の「馬人国」だろう。
見た目は馬そのものなのだが理性的な思考と穏やかな性質で全てが賢者と言ってもよい馬人=フウイヌム族。
対して彼らが家畜として飼っているヤプーは派生作品に登場するおかげで有名かもしれないが、人類のパロディである。
「結局人類が一番野蛮であると言いたい」という解釈もあるが馬人を白人、ヤプーを有色人種として人種差別的考えを忍ばせている可能性もある。(逆かもしれんけど)
大人になってから読んでみると色々気付く事があるかもしれない。

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2014年11月08日

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一般的に知られているような「小人の国」の話すらおぼろげにしか覚えていなかったので、新鮮な気持ちで読めました。風刺小説だと言われると、なるほどなー、と思います。

それにしても、ラストがこうなるとは思わなかったよ。

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2014年10月25日

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リリパットの王宮が火事になった時に、小便で消火して出禁になったところで爆笑した。

童話では巨人国で終わっていたが、むしろそれ以後の方が大人はおもしろい。

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2013年05月30日

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受験勉強の際に題名と作者だけ覚えた本を読もうという試み。

子供向けに省略されたものしか読んでいなかったので再読。
ただの娯楽小説と勘違いしていたんだぜ…

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2012年11月02日

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ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』は、一見すると奇想天外な冒険譚に過ぎない。しかし本書の真価は、啓蒙主義が称揚する「理性」の限界を、その内側から暴き出した点にある。本書は旅行記の形式を借りた哲学的寓話であり、同時に、近代的主体の解体の書でもある。
著者は「異世界」との邂逅を通じて、人間理性の相対性を暴露していく。これは単なる風刺ではない。むしろ、フーコーが『狂気の歴史』で描き出した「理性による狂気の排除」の過程を、逆説的に照射する試みとして読むことができる。
本書の批判的構造は、以下の三層において展開される:

1.スケールの相対化による理性批判
・小人国における「巨人の理性」の無力
・巨人国における「人間的尺度」の虚妄
・相対的視点の導入による絶対的理性の解体

2.理性の極限と狂気の臨界点
・ラピュタにおける純粋理性の狂躁
・馬の国における理性と獣性の転倒
・「理性的存在」としての人間の虚構性

3.啓蒙的主体の解体過程
・文明社会への幻滅
・理性的人間観の破綻
・帰還後の「狂気」の意味

特筆すべきは、著者による理性批判の方法論だ。それは理性の外部から行われるのではなく、理性それ自体の論理を極限まで推し進めることで、その自己崩壊を導き出す。この手法は、アドルノとホルクハイマーが『啓蒙の弁証法』で展開した批判的方法の先駆といえる。

さらに注目に値するのは、「旅」という形式の採用である。ガリバーの移動は地理的であると同時に存在論的でもある。各訪問地は「理性」の異なる様態を体現しており、その遍歴は啓蒙的主体の解体過程と重なり合う。

本書の現代的意義は、合理主義的世界観の限界を、その内側から描き出した点にある。特に最終章における「理性的な馬」と「獣的なヤフー」の対比は、人間中心主義的な理性概念への根源的な問いかけとして読むことができる。

ただし、著者の企図には一定の両義性も存在する。特に、理性批判と保守主義的な文明批判との関係については、より詳細な検討が必要だろう。また、「狂気」の復権が必ずしも解放には結びつかない可能性も考慮されねばならない。

それでもなお、本書は啓蒙思想研究に決定的な視座を提供する。特に、近代的主体の成立と崩壊を考察する上で、基礎的な範例となるだろう。理性の自己批判がいかなる地点に到達しうるか―その極限の一端を本書は示している。

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2024年11月19日

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特に、第三節のラピュタの話が面白いため再読。この章の後半には日本の江戸が出てくるのであるが丁度、江戸時代。踏み絵の話などがちょこっと出てくる。作者は無事にオランダ経由イギリスに帰るまでの冒険のお話。

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2021年07月25日

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幼い頃から知っていたけど、きちんと読んだことがなかったので読んでみました。

最初はファンタジーで読みやすいなと思っていましたが、読み進めるうちに政治や法律の話が出てきて…これはただのファンタジーではないぞと感じました。

こんなにも軽やかに、でも辛辣に人間の世界を風刺できるものなのかと感心しました。終始読みやすかったので、なおさら印象的でした。

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2020年11月01日

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アニメPSYCHO-PASSで、槙島聖護の台詞に引用されていたので、興味を持ち、読んでみた。また、絵本のガリヴァー旅行記とどのように違うのかも気になり、この本を手に取ってみた。
最初、とても分厚かったので、萎えたが、折角だから読んでみようと思い、挑戦した。文体がダラダラといちいち長い印象を受けたが、言いたいこと(皮肉など)ははっきりと述べるところが面白かった。また、ガリヴァー旅行記といえば、小人の国という印象だったが、それは第1篇だけで、その後に、小人の国とは反対の、巨人の国や、「『天空の城ラピュタ』は、ここから来ているのか」という発見があったラピュータや、PSYCHO-PASSで出てきたバルニバービ、最後にはなんと馬の国であったのには驚いた。
全体的に、皮肉がとてもきいていて面白かった。風刺しているところがかなりあり、注釈もその度に読んだが、イギリス議会政治や、王、貴族のことは、あまり知らなかったので、「もう少し知っていれば・・・」と思った。ただ、ガリヴァー旅行記の凄いところは、最初はイギリスの批判であったが、そこから、人間存在そのものに対する呪詛へと、フウイヌム国渡航記で行き着き、確かに納得してしまった。人間の愚かさをここまで見事に書いているのはすごいと思った。ガリヴァーのユートピアであるフウイヌム国は素晴らしいと思ったが、イギリスに戻ったガリヴァーが、妻子の汚臭に耐えられず、飼っている馬の匂いに安らぎを求めていることや、妻子と再会したときに、憎悪と嫌悪と軽悔の念だけがこみ上げてきたと言っているのには、病気のようなものを感じた。
解説を読み、スウィフトに関する色々な情報を知ることができた。スウィフトがメニエール症候群であったのには驚いた。だが、一番驚いたのが、スウィフトは、いくら人間を憎み、人間に怒り、エホバからの自由を求めていたにしても、結局は、それは人間を愛したい、エホバのもとに帰りたいという感情の裏返しの表れではないかと解説で述べられていたことである。これには、なるほど、と深くうなづいた。

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2020年02月26日

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スウィフトらしい皮肉たっぷりの作品。

色んな冒険をしながら人の愚かさを伝えてくる。

皮肉が好きな人におすすめ。

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2019年09月16日

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小さい頃に読んだ絵本だが、覚えているのは小人に縛られて解放された後に、嵐の中で難破しそうな船を助けて感謝されるというもの。大きくなったらガリバーみたいになりたいと思っていたが、原作を読むと結末は全く異なる。ガリバーは小人の国だけでなく、巨人の国、科学者(宇宙人?)の国、馬の国にも流れ着いていて、その国の王や神官、政治家のような人たちと交わす会話には、人間の国に対する鋭い批判や自己嫌悪に満ちている。別の国の彼らから見て、人間はなぜ戦争を起こし、飽食と飢餓、嫉妬、差別、詐欺、殺人、浮気、子殺しなどを行うのかという指摘に答えに窮するところは、単なる絵本の原作にとどまらない書と感じた。

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2018年05月06日

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ガリヴァー旅行記といえば、小人の国・巨人の国がまず思い浮かぶところだけれど、それは前半の約1/2に過ぎない。 ガリヴァーはさらに空飛ぶ島ラピュータや、馬が知性をもつフウイヌム国をも訪れる。
人間というものは素晴らしい生き物である反面、愚かな部分も大いに持ち合わせていることが、フウイヌム国に行けば誰もが痛感させられるに違いない。スウィフトの人間世界への嫌悪感が、存分に描かれている。
フウイヌム国渡航記は、この作品の神髄であるといってもいいと思う。

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2016年10月20日

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単なるおとぎ話ではなく、当時の自国(イギリス)や、人間一般への風刺が込められている。特に、一番最後の章。

江戸時代の日本もちらっと出てきて、やはり踏絵は問題のようだ。

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2015年05月03日

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17世紀英国、ジョナサン・スウィフトによる風刺小説。小人の国と巨人の国の話のみ、童話として知られている話だが、読んでみるとなかなか、時代を下っていても人間という現象の中に普遍的に潜む業のようなものが、子気味よく描かれていて、考えさせられもし、なかなか楽しかった。
 ガリバーのバイタリティーに驚かされるが、英国紳士という背景から、道徳的に筋の通った現実主義者で、力のある立場でも、弱い立場でも信条は変わらない。風刺小説でありながらも、これだけ読まれ続けるのは、そのいやらしさがナマナマしくもあるけれど、想像力豊かに彩のある表現の衣をまとっているから、物語然としながらもちくりと刺さる、空想だと断じきれない記憶があるからであろうか。楽しさとペーソスのバランス。年を経るごとに学びがあるものが、真の文学たりえよう。
 しかし最後のフウイヌム国の話は、ヤーフに沼昭三のあれをそのまま彷彿させるものがあり、気持ちが悪かった。

14.7.12

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2014年07月12日

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ネタバレ

かの有名なガリヴァー旅行記、ただし、子供の頃読んでいた巨人のほのぼのとした話ではない。

人間に対して非常に皮肉が効いた作品であった。
著者がどんどん狂っていくのがわかるのが怖い・・・

また、ガリヴァー旅行記というと、小人の国に漂流して自分が巨人化したという話しか読む前までは思っていなかったが、逆のパターンもあり、巨人の国に漂流し、自分が小人化したという話。

さらに、なんとあの「天空の城ラピュタ」のモデルも収録されている!
1700年代に原作があったとは知らなかった・・・

最後は馬の国で、著者が完全に狂う。

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2013年02月13日

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スウィフト。風刺小説。巨人の国と小人の国の物語は児童向きであり、残りの章、特に最終章においては人間社会に対する痛烈な批判が展開されており、作者がかなりの変人で人間嫌いであることが強烈にうかがわれる。旅が人間の視野を広げ、物の考え方を根底から覆すというのは古今東西これすなわち真であろう。

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2012年03月11日

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