入江真佐子のレビュー一覧

  • わたしたちが孤児だったころ

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    10歳で孤児となった主人公が、大人になってから行方不明の父母を探す話。子供の頃の回想を挟んで、両親に関する真相が徐々に明るみになっていく。タイトルを見ると過去にフォーカスされた話かなと想像してしまうが、この作品はむしろ、過去と決別し新たな生き方を模索する主人公の姿が最終的に描かれている。長編でなかなか核心に迫らないもどかしさはあったが、イシグロの他の作品と比べると、リアリティー性が強く、話に入り込みやすかった。

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    2021年10月24日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    カズオイシグロ作品を読んだのは、「わたしを離さないで」に次いで二作目。
    ミステリーに分類されてもされなくても違和感無し。結末はえげつない。

    表題が少々謎めいて聞こえる。「わたしたち」とは誰と誰のことなのか? 「だった」と過去形なのは、いつ孤児でなくなったということなのか?
    素直に読めば、クリストファーとジェニファー?それぞれ実の親と育ての親を見つけたのだから孤児でなくなった、ってことか?

    終盤クリストファーはアキラらしき日本兵と遭遇したが、本当にアキラだったのか? そんな偶然はあるわけないし、描写的にも別人かと思う。
    クリストファーが、盲人の俳優宅っぽい家を見つけたと思い込もうとする辺りは

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    2021年09月29日
  • うそをつく子 助けを求められなかった少女の物語

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    衝撃のノンフィクション。最初からノンフィクションだと知っていなければおもしろい(と書くと語弊があるが)小説だと思ってしまったかもしれない。施設に収容された9歳の少女。日常的にあらゆることに嘘をつく彼女と、週1回ボランティアで訪ねる作者とのやりとりの記録だ。少女に下された病名は“反応性愛着障害”だった。何が真実なのかわからない状況で手探りのやりとりを続けるうちに、ついに明らかになる驚愕の事実とは……。

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    2021年09月26日
  • タイガーと呼ばれた子 愛に飢えたある少女の物語〔新版〕

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    前作「シーラと呼ばれた子」が心に残ったのでその後のシーラはどうなったのか気になって手に取った。
    前作ではトリイとシーラに引き込まれてフィクションかと間違うほど物事が良いように流れてきたのに対して、今作はやはり現実はそんなに簡単じゃない、これはノンフィクションなんだと改めて気付かされる内容。ただそれも含めてとても読み応えがあった。

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    2021年04月06日
  • シーラという子 虐待されたある少女の物語〔新版〕

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    ノンフィクションなのに物語のようにぐいぐい引き込まれてしまいいつの間にかシーラが愛しくて仕方がなくなってしまっている。
    児童虐待、貧困、教育問題など考えさせられる一冊。

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    2021年03月19日
  • シーラという子 虐待されたある少女の物語〔新版〕

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    当時、福祉の仕事に就くきっかけになった本。
    今は転職して人事系で障がい者雇用も担当している。
    この本に出会わなかったらこれらの仕事にも就いてなかったかな。
    感謝。
    手にしたきっかけは、妹の部屋にあったのを勝手に読んだのだが、このあと著者のシリーズは発売するたびすぐ買った(笑)

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    2021年02月17日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    ネタバレ

    幼少期を上海の外国人居留地・租界で過ごしたイギリス人のクリストファーは、今やロンドンの社交界でも噂の名探偵。彼が探偵になった理由は他でもなく、かつて上海で行方不明になってしまった両親を探しだすためだった。父、母、フィリップおじさん、そして隣の家に住んでいた日本人の友だち・アキラとの日々を回想しながら、遂にクリストファーは真相解明のため再び上海へ向かう。しかし、かつての〈故郷〉は戦火に飲み込まれつつあった。


    古川日出男の解説がめちゃくちゃ上手いのであれを読んだ後に付け足したいこともないくらいだけど、この小説を読んでいて、昔からずっと考えていることを思いだしたのでそれを書きたい。
    児童文学に孤

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    2020年12月07日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    ネタバレ

    わたしたちが孤児だったころ。カズオイシグロの本のタイトルは、いつもこれしかないと思わせるタイトルをつけてくれる。
    この本には、主人公は勿論、幾人の孤児が登場する。サラ、ジェニファーを含む3人が主に指している人物だと思うが、要素として日本人としてのアイデンティティが今一つ持てずにいたアキラも精神的には孤児だし、犬を助けて欲しがった少女は、戦争で散っていった民間人の遺子である。アキラと思われる日本兵の子供も孤児になってしまうかもしれない。

    そして、孤児達は、様々なバックヤードや性格違いがあるものの、根底の心根にあるものは非常に似通っているように思える。
    現実から目を逸らし、答えのみつからない幸せ

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    2020年10月17日
  • 霧のなかの子 行き場を失った子どもたちの物語

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    著者のノンフィクションはほとんど読んでいる。
    今回はトラウマによって無言を貫き通す子供たちの話。
    彼女の専門が児童虐待によって心を閉じた子供ばかりなので、核心に触れた時どうしても重い気持ちになるが、こういう症例となって表れるのだという勉強にはなる。
    とにかく子供たちとのかかわり方がすごい。
    瞬時に相手の気持ちを察し、あらゆる方法で固く閉ざされた心の扉を開き、隠されたものを引きずり出していく。
    応用力や発想力もさることながら、腫れ物に触るようなことは決してしない。ダメなものはダメだという勇気。
    操作しようとする子供に巻き込まれないようにする強さ。
    あまりにも難しい症例に果敢に挑んでいくのは、子供

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    2020年04月17日
  • 機械じかけの猫(上)

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    ワクワク・ドキドキで始まる
    やっとタイトルにたどり着く
    ただ、どこへ向かうのか
    どう進むのか
    益々楽しみな後半

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    2020年03月29日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    とても興味深く読んだ。
    第一大戦後から第二次大戦後までの時代を描く、主人公の私立探偵の第一人称視点の物語。
    列強に植民地化(租界)された上海で生きる主人公クリストファー・バンクスとその日本人の友人アキラ。
    両親が突然行方不明となった主人公はイギリスに戻り、私立探偵として名声を得るが、生涯の任務として自分の両親を探し続ける。最後には両親の失踪の真実を知る。
    主人公が過去を回想していく形で物語は進んで行くが、ロード-ムービーのようで先の展開が全く読めない。
    著者カズオ・イシグロの出自も影響しているのだろうが、日本人とイギリス人の交流というか、イギリス人がどのように日本人を見ているかを垣間見ることが

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    2019年02月12日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    カズオ・イシグロの「わたしたちが孤児だったころ」は、私立探偵が主人公だ。しかし、ミステリー小説ではない。幼いころに両親が行方不明になった主人公が、その謎を追いかけてゆく中で、わたしたちは決して孤児ではない、誰もが愛されているし誰かを愛さずにはいられない、という人生の真実を目の当たりにするという物語である。

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    2018年11月03日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    幼い日、アキラと遊んだ世界は永遠に閉じ込められる?

    1900年代初頭、上海の租界で父母と暮らすクリストファーは突然の父母の失踪によって一人イギリスの伯母の元に戻りケンブリッジ大を卒業し探偵業となる。

    1937年、父母の失踪の謎を解くべく再び上海に戻るが、物語は日中戦争、国共内乱に影響される租界と、幼い日々の隣人アキラやイギリスでの回想が交互に描写される。

    イギリス時代に出会った女性サラ、寄宿学校の同級生、そして日本の兵隊となったアキラ、と偶然の出会いが物語をグイグイ進展させ、次はどういう展開とイシグロ作品初めてのドキドキ感がした。

    幼い日々に失ったからそこまで父母に執着するのか? そし

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    2018年08月30日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    ハードボイルド探偵が、上海で失踪した自分の両親を探す。
    全く普通の探偵物語と思いきや…あれれ?という展開に。
    そう、孤児であることで得られた想像力が、私たちを冒険に誘うのだ。
    もちろん、カズオ・イシグロさんならではの残酷な展開ではありますが、
    私は息子がいるので、真相をめぐるお母さんの気持ちに、涙。

    ああー古川日出男さんのあとがきが全て。
    「あなたは孤児になるために、この本を読むんだよ」

    …なんと奥深い!

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    2018年07月13日
  • 霧のなかの子 行き場を失った子どもたちの物語

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    トリイヘイデンで読んでいないのはこれだけかも、と思いすごい久々に読んでみた。

    相変わらず重い…。
    他の作品と比べても特にヘビーだったような。
    3つのケースに同時に関わり、どれもが全く改善を見せない。

    でも、トリイが格段にレベルアップしてる。
    シーラとかケビンの頃のトリイのイメージが強かったけど、いつの間にか鉄の女になってる。
    昔のトリイなら泣き出してそうな恐ろしい事態でも無表情を貫いて冷静に観察するトリイはもう遥か遠い所に行ってしまったよう…。
    いや、昔からトリイは強かったけどね。
    感情移入できないレベルにいってる(笑)。
    何年もこんなケースにばっかり関わってたらそうなるかもね。。
    治療法

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    2018年02月26日
  • シーラという子

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    シーラという6歳の女の子の話。はじめは、とても特殊学級のクラスに入れないだろうと思っていた子だが、とんでもない。ものすごいIQのもちぬしであった。作者、トリイもはじめはてこずっていたが、心からシーラを思いやっている姿から、シーラも心を開いていく。
    しかし、悲劇がシーラをおそう。途中で涙が出そうになるのを、シーラがかわいそうで、しばらくページを進めるのをためらったぐらいだ。ひさしぶりに深夜まで読み続けて、眠くて仕事がはかどらなかったぐらいよい本だった。

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    2017年02月04日
  • ひまわりの森

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    高校生の主人公の母は精神を病んでいた。第二次世界大戦時、ナチスにひどい目にあっていたからだ。母は裕福な家庭で育ち、美人で優秀だった。何ヶ国語も話せる母は英語が得意ではなく、家ではドイツ語やハンガリー語などを話していたため、少女は語学に優れていた。そんな母の病だいが悪化し、事件を起こしてしまう…

    少女の妹がワガママで、癇癪持ちで…読んでいて少し気分が悪くなるほどだった。ただ、この家族は愛に溢れていたと言うのが読んでいて凄い伝わった。幼いながらに家族を支える主人公の姿、事件後に心に傷を負った後の発言、行動や思いに胸を打たれた。長編でかなり読み応えのある作品。最後の締めが少し納得いかなかったのが残

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    2016年02月07日
  • シーラという子

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    中学の時に買ったものを再読。子ども、人には、様々な生き様、体験があるのだと改めて思った。その体験から人にどのような影響を与えるのかも。
    一番読んで印象に残ったのは別れへのシーン。
    続編も読みたい。

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    2014年05月25日
  • ヴィーナスという子 存在を忘れられた少女の物語

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    ネタバレ

    問題を抱えた子達を、大きく成長させてくれる著者は本当にすごいと思うし、精神学、心理学、カウンセリング、教育、福祉は奥が深いのだと思う。
    どんなに難しくても人が人を救える可能性は信じるもの…なのかも。
    あとジェリーの考え方も正しいと思う、正しさは色々あって合わないこともあるんだな、と。

    ワンダとの再開で涙が止まらなくなった。
    彼女のヴィーナスを呼ぶ『ビューティフル・チャイルド』がとても美しくも切ないものに私は感じる。
    彼女が犯された実母だとしたら更に切ないが、姉だとしても深い無償の愛と求めあう心が確かにあるのに。
    再び一緒に暮らせることなく亡くなったの事実が悲しい。

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    2014年05月02日
  • 檻のなかの子   憎悪にとらわれた少年の物語

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    選択性無言症を専門とする著者が、ハイティーンの少年の治療に当たった記録。
    この方の作品は初読です。
    一言も話さず、周囲の全てに怯え、自分の周りに椅子やテーブルで檻を築いている少年ケヴィン。
    彼の治療に当たったトリイは、徐々に彼から言葉を引き出し、義父からひどい虐待を受けていたことや、義父への凄まじい憎悪を抱いていることに気付いていきます。
    よくある行政的なミス、同性愛への偏見など、様々な壁に当たりながらも、トリイはケヴィンの治療に当たります。
    進んだかと思えば後退している。それを繰り返しながらのようやくのラストは感慨深いものがありました。

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    2013年08月22日