武田砂鉄のレビュー一覧
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日々起こる出来事について、実はこんな見方・考え方がありますよ、しっかり考えようね、と言われた気がした本でした。そしてこの本自体、わかりやすくは無いですが、新たな見方・視点が得られました。
わかりやすく伝えるメディア、わかりやすいを売りにする本、わかりやすく伝えられることが当たり前の現在。削ぎ落とされる部分のために、伝わらないこと、間違って伝わること、それが意図的に行われていることがあること。
わかりやすいものばかりに触れていると、考える余白がどんどん少なくなって、自分の頭で考えなくなっていきそう。しっかり自分で考えるために、意図的に騙そうとするものに負けないように、わかりづらいものから逃げないようにしたい。 -
Posted by ブクログ
フェミニズムとの付き合い方は、人によってさまざまだ。人によって千差万別のフェミニズムが存在すると言っても過言ではない。
能町さんの寄稿が読みたくて手に取った本だが、他の方の文章も読み応えがあった。
高嶋鈴さんの、男性の先輩とのエピソードは、よくあることだよねと思いつつ、その強烈な傷つきにもまた共感できて、世の中に蔓延る不条理を少しでもマシにするために、理論を学び、語る技術を身につけねばと、決意を新たにする彼女の姿に、自分もぼんやりしてちゃいけないなぁという気持ちにさせられた。
人それぞれのフェミニズムだが、出会いのきっかけとして、ベル・ブックスの『フェミニズムはみんなのもの』とジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』を挙げている人が多く、自分も読んでみなくてはと思った。
私にとって、つねにフェミニストでいることは結構しんどいことだ。少しの諦めと多くの怠惰から、楽なほうへと傾いていってしまうことも多々ある。正直なところ、高嶋さんを絶望させた先輩のように、「私はこのままでいいんだけどな…」と思うこともないわけではない。だが、そのときの自分が、権威を笠に着て弱者を抑圧する側に回っていないかということを、つねに点検しないといけない。
松本事件や中居事件を見ると、怒れる気持ちはまだまだ持ち合わせているし、世界はまだまだ「このままでいい」状態になってはいない。だからこそ、自分は「そっち側」にならないように、まだまだ踏ん張っていかないといけない。 -
Posted by ブクログ
とても面白かった。大袈裟に言えば今まで当たり前と思って見てた世界が違って見えるかも、な一冊。この本を読んだからと俺の行動が具体的に何か変わるかと言えばそうではないけど、俺たち男が心地いい状態に疑問を持つ事はしていこうと強く思った。娘もいる身なので女性がそれだけで不利益を被る社会が望ましいとはとても思えない。確かに自分も男性として扱われてではなくただ人間として生きていきたいと思う。我々が当たり前と疑問すら抱かなくなってる事にも問題提起していてフェアな目線で書かれてると思う。ただこの武田砂鉄氏はなんというか考え方もニュートラルだし無害だし、いわゆるPC的に優れた人なので、この人じゃないとこんな本書けないよなあとも思ったし、彼の意見全てに賛同するわけでもない。それを考慮しても大変学びのある本だった。しかしマチズモを語るのであれば女性が活躍することを殊更喜ぶのもそれはマチズモの裏返しではないか?うん当たり前だね、が平等なのではないか?当たり前になったことを喜ぶのはどうなのか?などと自分でも面倒な考えにおちいるな。
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私も嫌悪する男を笠に着た言動をあげつらい非難している。挙がっているのはどれも男の嫌な言動としてうなずける。それなのに何やら座りの悪さを感じながら最後まで読み進むことになったのはなぜだろう。
いろいろ考えた。武田さんが同性を非難しているからかなとかも考えてみたんだけど、あまりにも正論だからなのかなという一応の結論に行き着いた。自分も遵法精神旺盛に車の来ない信号で押しボタンを押したり、社会のマナー遵守の精神旺盛にゴミ捨て場に放置された物があれば貼り紙をしたりしているけど、そういうときにこじれている自分を思うのと似ている気がする。本当は正しいことしているのだから胸を張ってすればいいのに、座りの悪い気持ちを抱いてしまうのってまことによろしくない。それと、こうやって正しいことをしても、この本で取り上げているような言動に走る男どもには響かないであろう、反論を呼ぶばかりであろう徒労感もあるかも。
担当編集者のKさんが男どもの不快な言動を話題提供するスタイルは、受け身っぽくてちょっとずるい気もする。武田さん自身がテーマ設定していいのでは。 -
Posted by ブクログ
解決策があるわけじゃないけど毎回テーマがめちゃ面白かった。
いろんな人に読んでほしい。
そうそう!ってなりながら怒りが湧く本だった笑
しょうもないハラスメント研修やるくらいならこれ一冊読んだほうがいい。
「考えすぎないから、いまだにこんな感じなんだと思う。」
「慣例や便宜のなかにこそ、差別の根が埋まっているかもしれない」
「経団連幹部にも2割を目安に女性をいれると決めてはどうでしょう」と提言すると、「規定から入るのはおかしい。シンボリックに女性を登用すると、その人たちも相当苦労します」
女性をシンボリックに仕立てあげているのは男性だらけの社会なのに、相当な苦労は女性が背負うのである。 -
Posted by ブクログ
又吉さんとの往復書簡を読んで気になったので武田さんの本を。
久々に硬派な評論。皮肉たっぷりで真摯な本。私の感覚にちょうど合う。
コロナが始まる前の日本の状況を思い出させる本だった。
五輪をちらつかせながら、きれいなだけでなんの意味もなさない言葉でのらりくらりと、
あるいは有無を言わせず蹂躙するように、
自分の思うように水面下で舵を切ってきた当時の政権。
政治のことはよくわからないが、
武田さんの視点には、目くらましを回避して、根本の問題をごまかさずに見据えて
しつこくぶれずに突き詰めていく真面目さがある。
うっかり、相手の遠回しでぶよぶよと膨らんだ言葉に取り込まれないように気をつけながら、
自分が感じた違和感を手放さないように
丁寧に、じわじわと一歩づつ、大元の場所から離れずに掘り下げる。
2者択一で選ばされる前に、3つめ4つめの選択肢が無いことを問うこと
あるいは、なんでそれを今選ばなければならないのかという疑問。
こういう姿勢が本当に大事だと思う。
相手の土俵に乗らず、言葉の上の応酬に自らが酔うことなく、
一番大事と踏んだところから外れずに進む。
皮肉が芸になり芸をみがくほうに流れることなく、
皮肉を皮肉として成り立たせる硬派な立ち位置に留まることに痺れる。
もちろん、皮肉があるからこそ楽しめる。
「どうせなら」の貧乏性が、一番の危険な因子であるかもしれない。
時間を天びんにかけられると、迷いが出る。自分もそうだ。
でもそこで踏みとどまって、意地やプライドとかいうつまんないものの影響をも排除して
冷静に判断する、提言することを意識していかなければ、
なし崩し的に事態は流され、結局相手の思うつぼ、ということになるんだろう。
急速に無力化されていく言葉と状況に抗いながら、
空気よりもあわい気配にとりこまれないように、いま一度確認すべき、と襟を正す本。 -
Posted by ブクログ
各書簡、必ず見開き2ページ(36字✕28行)に収まっているので読んでいて心地よい。なぜかと思ったら元は新聞連載なんですね。この濃度のやり取りを2週間に1回続けていたのか、という事実にも驚く。
ぱっと無作為にページを開いて読むと、砂鉄さんが書いたのか又吉さんが書いたのかわからない。それくらい文体も思考の流れも似ているおふたり。でも面識はなかったそうだし、往復書簡を交わすことで《友達になるとか、そういうことにもならなさそうだ。:武田》らしい。そんなふたりだからこそ、ぬるま湯に浸かって交わす会話のような、そのお湯から出てなんとなく始めるピンポンのような馴れ合いではなくて、もっと火傷しそうなやり取りもしてほしかったな。砂鉄さんの『劇場』に性描写を一切入れなかったのはなぜかとの問いに、又吉さんが少しムキになって(と私には思えた)返答し、その返答を読んで砂鉄さんが反省する(と私には読めた)という流れには痺れました。こういうやり取りって、お友だち同士の往復書簡では発生しないと思うので。