武田砂鉄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いま、最も勢いのあるライターさんではないでしょうか。
3年前、「紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす」を読んで、結構打ちのめされました。
本作も楽しく読みました。
山本七平の「空気の研究」は有名ですが、空気以前の「気配」を読むというのですから尋常ではありません。
切れ味鋭い文章で、常人ならスルーする諸問題に突っ込みを入れていくのが痛快。
政治家や著名人、それにコミュニケーション至上主義に、独自の切り口で「それは違うぞ」と異議を唱えます。
たとえば、トランプの数々の女性蔑視を放置してきたイヴァンカの講演を聴いた後、安倍首相は「世界中の女性たちが立ち上がれば、世界のさまざまな課題はきっと解決で -
Posted by ブクログ
膝を打つ。
この著作を名刺代わりにできるのは素晴らしく羨ましいことだ。
というより、勝手に自分の名刺にしてしまいたいくらいだ。
本気でよかれと思っている目がキラキラしたあの人たちや、すでに得たものを手放すつもりなどさらさらないままにソフトな態度でこちらを包むそぶりをする人たちや、に対抗するには、この文体しかない。
まさに情緒纏綿とした皮肉。
はじめに
「乙武君」………障害は最適化して伝えられる
「育ててくれてありがとう」………親は子を育てないこともある
「ニッポンには夢の力が必要だ」………カタカナは何をほぐすのか
「禿同。良記事。」………検索予測なんて超えられる
「若い人は、本当の貧しさを -
Posted by ブクログ
痛快!
本当に、自分の頭で考えて言葉を選んでいる。
携帯の予測変換のような紋切型のフレーズは、楽だし、多少自分が思ってた事とは違ってもまぁそっちでいいかな?と妥協してしまうし、何も考えずに差し出されたものを受け取ってしまう。
でもそこで、立ち止まって、しっかり観察してみると、おやこれはわたしが考えてたものとは全然違うぞなんだこれって場合もある。
特に「戦争を知らない世代」に対しての辺りと、語尾はコスプレである、の下りが特に面白かった。
自分の言葉で表現すること、言葉を扱うことに対する覚悟がすごい。あと知識の幅と量!
解きほぐすっていうよりは砕かれるといったほうが近いかなとは思う。
変わっ -
Posted by ブクログ
紋切り型な言葉が、自由を奪っている。日本を「ニッポン」と表記する、そこに潜む狙いにもっと敏感になるべき、と思った。性犯罪者が、アニメ好きだとわかれば、その因果を問うのに、カントに傾倒していると言われても、そこに因果は問わない。英語には、語尾というものはない。月曜に増える自殺を減らすためには、「情熱大陸」の代わりに「ザ・ノンフィクション」を日曜夜にながすべきだ、という話。いろいろとうなずかされることも多いが、時々文章をこねくり回しすぎて、分かりにくかった。著者の主張からすべば、「文章は分かりやすいことが目的ではないはず」となりそうですが。
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Posted by ブクログ
☆☆☆☆現代社会の様々な事象に現れる『紋切り型のフレーズ』、その言葉を操る人々や社会そのものを、武田氏がエッジの効いた言葉で暴き出していく。そして、そのことをとおして言葉の力とそれを生み出す志のようなものを読者に伝えている。
今まで自分が読んできた数々の本とは言葉に対する感性が違う。言葉の運びが描かく論の展開が、予想を越えた軌道をとって素早く飛び回り、著者の主張を訴えてくる。
読み始めてしばらくは、このリズム感と主張の軌道に馴染めなず戸惑いも覚えた。
それでも、「言葉」というものが単なる、表現のツールではなく、伝達のためだけでない存在であることを感じさせられもした。そうやって武田氏の