武田砂鉄のレビュー一覧
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ラジオのトーク番組を聴いている感覚になる本だと思って読み飛ばしていたら、著者は本当にラジオ番組を持っているらしい。良くぞまあ、これだけ言葉を重ねられるなと感心する一方、せっかちな俺にとっては冗長な文体。いくつか面白いと思った話というかネタあり。
なお著者は伊藤詩織さんと阿部岳さんにシンパシーを感じている方。
◆ジブリと嘘の親和性
適当なことを言うときに、「ナウシカでそういう展開があった」とか、「ラピュタのなんちゃらキャラが言ってた」のようにジブリを混ぜると人は信じやすいという話。ジブリの作品は、みんな何かしら見ていて、でも全ての作品を見ているわけではないからとのこと。
◆小説新人賞の応募作品の傾向
著者は出版社の小説新人賞の選考委員をしているらしく、二千通に及ぶ応募作品から優秀作品を選ぶためのスクリーニングにおける体験談。相当数の定年数年後のおっさんが、自分を投影した主人公が部下の女性とのラブロマンスを応募してくるらしい。島耕作を夢見る元サラリーマンたちがたくさんいるのだろう。
◆西野カナの作詞技法
うちの娘が小学生の時にやたらと聴いていた歌手。あざとい恋愛ソング的な歌詞に辟易したいたのだが、数々のヒット曲を生み出すその手法が語られていた。企画書を準備し、キーワードを選出し、推敲に重ねた原稿的は歌詞案をターゲット世代の女の子たちに読ませてアンケートを取り、最適化していくという。まさに、生成AIプロンプトのような作業をリアルに積み重ねている。 -
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イキリ…調子に乗って偉そうにする。格好つける。見栄を張る。ネガティブなニュアンスで使われる言葉。
だそう。
あの会見でのイノッチの”落ち着いてください”発言とその発言に拍手が起きたことをここまで分析(ある意味悪意をもって)していたことの驚き。
単純な私はさすがイノッチと思ったよ。
ヒートアップした空気をあの一言でちょっと抑えられたのも確かだったし。よくよく考えてみれば著者が言うように、一番ルールを破って(しかも法的に許されない)るのはイノッチ側でそこでルールを守りましょうって言うこと自体が上から目線だと。
そういう見方もできるのかとちょっと目から鱗だった。
あと「情熱大陸」は欠かさず見ているそうな。
ジャーナリストの目で社会を切り取る著者の本はやっぱり難しいけど面白い。 -
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作者本人を知っていて、話し方のクセを理解できてるかどうかで読みやすさが違うのかな?という印象。
いきりについて、あれこれと話題を取り上げて考察を進めていく内容で、予想するのとは違う視点に移っていく部分は面白かったです。
…のだけれども、ミイラ取りがミイラになる…?
といった印象が中盤以降離れなくなる。
いきりを語る作者自身が、いきり散らしているように感じてしまってならないのです。
個人的な好みにはなるのですが、
一つ一つの文章を長くするわりに、"が"を順接にも逆接にも混ぜてくるものだから、要点を掴みにくくダラダラとめんどくさげな印象を拭えませんでした。
加えて事象の参照と考察の粒度にばらつきが大きく、傍観者としての視点による論調でなくなる部分(主観)もあり、読みづらく、受け入れづらい本だなという印象でした。
自分自身が作者の文章の読み方を分からなかったのかもしれせん…
同時期に読んだ都築響一の書く文章は、皮肉に溢れながらも、自身の経験からの視点に富み、軽快で読む人のことを考えた文章だったので、とても楽しく読みやすかったです。 -
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自分もいきってる人に敏感だったのでつい手に取ってしまった。能町ミネ子的に、様々なイキる人たちを取り上げて考察する内容かと思ったが、思っていたよりも議論が幅広く深かった。なので本書を一言でまとめるのは難しいが、概ね著者の言いたいことには賛同した。いつも著者の本を読むと自分が社会に対して抱いていたモヤモヤを言語化してくれてありがとう、と思う。
著者が中学校の講演会で話したという「互いに合致しなくても、曇ったままであっても肯定し合うことが大切」という内容がとても良かった。著者のラジオを聴いていると色んな方が登場するが、皮肉っぽいスタンスは保ちつつも、どことなくゲストや共演者のありのままを否定しない人柄に好感を持っていた。
ただ本書での主題は講演会の内容ではなく、その内容を漂白して伝えた中学生の感想にあったのだが、、この感想に対しても著者は中学生自体を否定しないよう気を配っていたのが地味によかった。
本書が伝えたかったのは、近年の過度な効率化、表面的な繕いに対する批判だと思う。でもこうやって本書の内容をまとめることにも著者は問題を感じるのだろう。
本書は悪くいえば一見まとまりのない議論が繰り返されてるようにも見えるが、上記のような社会に対するアンチテーゼなのだと思う。
内容をまとめると簡単になってしまうが、ここに書ききれないくらいの沢山の細かいエピソードに共感しまくりだった。著者のように社会に対する細かい違和感を言語化してくれる方が今の時代にいてくれて良かったと改めて思った。 -
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19人各人のフェミニズムがどこから始まったのかを綴ったリレーエッセイ。
フェミニズムが様々な差別を社会構造の問題として認識しているということを初めて知って、目からウロコの気分。
女性と男性、マジョリティとマイノリティ、そんな対立構造や、個人としての問題と考えていたが、この本で見方が変わった。
これまで味わった対応に理不尽だと感じても言語化できていなかったものが、フェミニズムという言葉を理解したことによって言語化できた。
時代が変われば立場も変わる。
誰であれ、自分が他者の権利を不当に奪っていないか?を考え続ける必要があると思う。
もっとフェミニズムについて知りたいと思った。 -
Posted by ブクログ
「中身でなくテクニックの話ばかりする」という言葉を手に入れただけでもこの本を読んだ価値があったと思いました。
思考を手放すことは愚かであると思いながら、仕事に忙殺されていると、思考することなんかできなくて、いきりは、短期的に成果を求める自己責任論の上に立った成果主義や効率化至上主義が蔓延する現代社会の病理なのではないかと考えながら読みました。
そういう意味で「おわりに」で著者が、いきりを防衛なのだと結論付けていることには共感します。
私達は、イキってないと生きていかれない社会に生きているって、絶望的な気持ちになりますが、なるべくイキらず、また、イキる人を嘲笑うようにはしないように生きていきたいと思いました。
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様々な分野の19人のフェミニストによるエッセイ。自分がフェミニズムに目覚めたきっかけについて語っています。
はっきりとコレ!というきっかけがあるひともいれば、子どもの頃からなんとなく世界に違和感があった…という人まで、きっかけは様々だ。
自分には理解が及ばないような苦しみからフェミニズムに辿り着いた方もいれば、自分の感覚と近くて分かる分かる!と思いながら読んだ方もいるのですが、鴻巣麻里香さんのエッセイは特に自分の感覚を言語化してくれたような感覚になりました。
若いときは「女性として抑圧を受けているという文脈が内面化されていなかった」という鴻上さんが、子どもを産んで仕事をしているときに、子育てに専念したらどうかと諭されて、これって私が「女だから」言われたのだと、男性優位主義の現実に気づいたとき「それは生まれてはじめて眼鏡をかけたときの感覚に似ていた。こんなによく見える!という驚きに勝る「今までほとんど見えていなかった」ことに気づいた衝撃」と書いていますが、自分自身の経験とも重なりました。
バックラッシュもあるし、一部のフェミニストたちがトランス差別をしていたり、落ち込むことも多いですが、フェミニズムは社会を良くするものだと信じていますし、同じように思っている人たちがこんなに沢山いることが心強い。