あらすじ
どうしてあんなに、自信満々なのか――。「迷惑」を忌避する社会で際立とうとして、「いきり」が幅を利かせ、暴走する。「わからないのはバカ」「別に迷惑かかってないし」「政治家になってから言えよ!」「切り取りだろ!」……。「従順」か「居丈高」か。世の中に蔓延(はびこ)る、この二択から逃れ、ちゃんと深く息を吸うために、この疲弊した社会の問題点を掴まえる。社会、"私"という個人、日本人論のトライアングルの中に「いきり」を浮かび上がらせることを試みた一冊。
【目次】
1 そういうことになってるから
2 オマエに権利があるのか?
3 批判なんてしません
4 やかましい街で
5 幸せの設定
6 落ち着いてください
7 不機嫌
8 善意
9 視覚化から資格化へ
10 不安なくせに
11 上から目線
12 気のせい
13 確信歩き
14 切り取りだ
15 すべてを見る
16 逆ギレw
17 ヤニる!
18 承認
19 届ける
20 NEW&SPEED
21 言語化
22 物を言う
23 自分で考える
【著者略歴】たけだ・さてつ
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。著書に『紋切型社会』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、19年に新潮社で文庫化)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋、2017年、21年に文庫化)、『わかりやすさの罪』(小社、2020年、24年に文庫化)、『偉い人ほどすぐ逃げる』(文藝春秋、2021年)、『マチズモを削り取れ』(集英社、2021年、24年に文庫化)、『べつに怒ってない』(筑摩書房、2022年)、『今日拾った言葉たち』(暮しの手帖社、2022年)、『父ではありませんが 第三者として考える』(集英社、2023年)、『なんかいやな感じ』(講談社、2023年)、『テレビ磁石』(光文社、2024年)など多数。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアで連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍している。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
もやっとしてばかりいた
それぞれの場面
石丸って人がやたら支持されていたり
上川さんのたとえが非難されたり
後めちゃ個人的な話し
小学生がひろゆき氏の言葉言い続けていたりした時
の全てにスッキリして
多分砂鉄さんてそばにいるといささか面倒くさい人かなぁとは思うけど
話しは聞きたいし
本も読みたいと思いました
Posted by ブクログ
仕事で毎日忙しく、また会社の中での不満や組織体制に対する疑念を抱く生活をしていると、広く政治や世論のおかしさを面倒がって完全にスルーしてきた1、2年だった。忙しさや周りへの不満は個人的な理由でしかなく、たぶん政治にも何ら期待は持てておらず、興味もやはりなく見向きもしていなかった自分の態度の悪さからくる成れの果てだと思っている。そこで本書を読むとわざと自分で靄をかけて見ないようにしていたことをバンバンと当てられる感覚に陥る。そしてよくぞそこまで咀嚼し文章にしてくれたことよと爽快感を感じ、スッキリする。全然世の中は良くなる気配がないけれど、作者のような思考の持ち主がちょうどずつ増殖すれば、いつか壁を壊せる時がくる…とまでは簡単にはいかないけど、まずは己の目の前の靄を付けぬよう、なるべく取り払う努力はしようと思った。
Posted by ブクログ
待ってましたの武田本。定期的に刊行されることに感謝。ちょっと各界のトップを眺めただけでも明らかなように、”いきり”ってあまりにあちこちにありふれている。いろんな形の暴力の代表的な表現型だと思うけど、やっぱり暴力が大嫌い。幸い自分の小さな生活環境ではそこまで感じないことを喜んでみるんだけど、ひょっとしてそれって、自分がいきる側になってしまっているせいで見えなくなってるんじゃ・・・とかちょっと不安になる。我が振り見直す機会ともしたい。
Posted by ブクログ
まさに本書で指摘されているとおりだ。
端的に教育の敗北を感じる。 “自分らしく” 育てられた結果、自我が肥大し自分の能力を相対化できなく全能感を抱えたまま実社会に出る。実社会に出ると下位層からスタートするため、それが自身で受け入れがたく、『いきって』しまう。努力不要で自身が含まれるカテゴリーである『日本人』にこだわり、日本人ファーストに与してしまうのも根は同じだと思う。次に『日本人』の中で層別されてしまうのに…。
Posted by ブクログ
個人が思考する隙をあたえない、情報爆発時代。
わかりやすさと力強さに極振りして言い切られる「いきった言説」には、疑いのまなざしをもって情報を吟味すべきなのだろうが、処理すべき情報が多すぎていちいち考えていられない。情報処理の欲望を満たそうとすれば、可処分時間も可処分精神も、人間のキャパはとうに超えている。
近い将来、アルコールやたばこと同様に、メディアには「過度な情報摂取は精神を病み正常な思考を妨げる可能性があります」とラベリングされることだろう。
ハラリの見解だったか、「ナチスは情報を遮断する事で真実を隠し市民を思考停止に至らしめたが、現代は圧倒的な情報量を浴びせることで、それを実現している」。
注意したい。
Posted by ブクログ
あっちでもこっちでもみんな揚げ足取ったりいきり立っている、言語化することが困難な時代。ジャニーズの会見時のあの拍手は私も気味悪いと思った一人なので、著者が言語化してくれて腑に落ちた。石丸さんの件も納得だし(書いていなかったけどひろゆきやホリエモンも同じ部類の「いきり」だと思う)海外のバンドが日本でライブした時に感じたファンの奇妙な行動も実に日本人的で面白かった。
Posted by ブクログ
スピード感やイノベーションという言葉は、タイパやコスパと同様訝しんでしまう私には、武田砂鉄の神妙でしつこい思考のあり方に納得する。ここに登場するのは新しさと速さ、そして発信する力。そこに情報というとても魅力ある危うさが潜んでいる。匙加減を誤ると命の尊厳を容易く毀損する。発信する側は言動の責任を背負う気など無く、逃げるか保身に終始するか、とにかく謝らない。自身を顧みない "いきり" は同じ手法を繰り返し反論されると罵倒するか論点をずらす。なぜ言葉によって相手の心を傷つけたり、自己正当化できるのか。おそらく自身の心が弱いのだ。攻撃は最大の防御なり。そのつもりだろうが、側から見りゃ隙だらけの論法を居丈高に披露する愚かさは失笑ものである。承認欲求のこじらせは処方できるのか、湧き上がる疑念から根気よく声をあげよう。なにしろ考えずに相手の言葉を受け入れるのが事態を深刻化させる要因なのだ。
Posted by ブクログ
・情報化社会において、効率よく情報や思想を取捨することがよしとされている。
・「いきる」人、すなわち分かりやすく断言することで場をコントロールしようとする人が社会で存在感を示す。問いより答えを示す人がもてはやされる。彼らは、人々が「何も考えない状態、何も言わない状態」を好む。
・同時に、「そう簡単に物申させてたまるか」という抑圧的な心理もまた「いきり」。
・結果的に「おかしいことにおかしいと言う」と言った議論に必要な工程、真実に近づくために必要な工程が抑圧されている。
Posted by ブクログ
全てにスピード感とそれっぽさを求められる忙しい仕事に就いてから、みんな質問を嫌がるし色んなことをきっぱり言い切るな〜と思っていたけどめちゃくちゃいきっているだけだと気づけてひじょ〜に納得した
いきりの方向にがんばらないようにしたいよと思う反面、いきるしかない場面ばかり思い浮かび末端社会人は涙を飲むしかないって感じでした
内容としては面白いけど、もう少し分析の部分で内容が濃くてもよかったな〜と思う 連載モノだからなのかもしれないがライトに読めるとも言える
Posted by ブクログ
昔も今も[いきり]の人が年齢に関係なく、存在していると感じるのでこの本を手に取りました。
読んでみて印象に残ったのは最後に書かれてあった自分で考えると言った文言でした。
このいきりを語るにあたって、自分自身の不安だったり、話を逸らすことなど様々な言葉を用いて説明されていたが、結論として他人の話を間に受けるのではなく、全ての物事に対しては知らない物がありつつも、自分自身が考えることが重要であり、心身につながることがわかりました。
また時間があれば読んでみたいと感じました。
Posted by ブクログ
自分もいきってる人に敏感だったのでつい手に取ってしまった。能町ミネ子的に、様々なイキる人たちを取り上げて考察する内容かと思ったが、思っていたよりも議論が幅広く深かった。なので本書を一言でまとめるのは難しいが、概ね著者の言いたいことには賛同した。いつも著者の本を読むと自分が社会に対して抱いていたモヤモヤを言語化してくれてありがとう、と思う。
著者が中学校の講演会で話したという「互いに合致しなくても、曇ったままであっても肯定し合うことが大切」という内容がとても良かった。著者のラジオを聴いていると色んな方が登場するが、皮肉っぽいスタンスは保ちつつも、どことなくゲストや共演者のありのままを否定しない人柄に好感を持っていた。
ただ本書での主題は講演会の内容ではなく、その内容を漂白して伝えた中学生の感想にあったのだが、、この感想に対しても著者は中学生自体を否定しないよう気を配っていたのが地味によかった。
本書が伝えたかったのは、近年の過度な効率化、表面的な繕いに対する批判だと思う。でもこうやって本書の内容をまとめることにも著者は問題を感じるのだろう。
本書は悪くいえば一見まとまりのない議論が繰り返されてるようにも見えるが、上記のような社会に対するアンチテーゼなのだと思う。
内容をまとめると簡単になってしまうが、ここに書ききれないくらいの沢山の細かいエピソードに共感しまくりだった。著者のように社会に対する細かい違和感を言語化してくれる方が今の時代にいてくれて良かったと改めて思った。
Posted by ブクログ
「いきり」って言葉、使うようで使わない。
けど、この中で語られるにはしっくりくる。
と思いつつも、最初はなるほど、うんうんってわかったつもりなんだけど、後半は難しくなって正直?の部分も多くあり。
ラジオの砂鉄さんはわかりやすいんですけど、文章はラフな姿勢で向き合うとわからない。じっくり読み直さないとね。
Posted by ブクログ
「中身でなくテクニックの話ばかりする」という言葉を手に入れただけでもこの本を読んだ価値があったと思いました。
思考を手放すことは愚かであると思いながら、仕事に忙殺されていると、思考することなんかできなくて、いきりは、短期的に成果を求める自己責任論の上に立った成果主義や効率化至上主義が蔓延する現代社会の病理なのではないかと考えながら読みました。
そういう意味で「おわりに」で著者が、いきりを防衛なのだと結論付けていることには共感します。
私達は、イキってないと生きていかれない社会に生きているって、絶望的な気持ちになりますが、なるべくイキらず、また、イキる人を嘲笑うようにはしないように生きていきたいと思いました。