細谷雄一のレビュー一覧
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平和は努力無くして我々の元には訪れない。我々が平和を愛し、戦争を望まなくても、戦争は彼方から我々に忍び寄ってくる。世界を見渡せば常に国家間の紛争だけでなく内戦やテロがいつも何処かで起こっている。今はまさにウクライナとロシアの戦争、そしてイスラエルによるガザへの侵攻など、日々ニュースで流れるものもあれば、国家による少数民族への暴力、自爆テロなどあげたらキリがない程、世界は平和とは遠くに置かれた市民がいる事を忘れてはならない。我々日本人は戦後80年、一切そうした場所とは無縁に生きてきたと言っても過言ではないだろう。勿論、記憶に新しいオウム真理教による地下鉄サリン事件や、秋葉原の殺傷事件、安倍元総理
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ネタバレおそらく21世紀では最高の外交・安全保障に関する政治力が高かった政治家・高村正彦による回想録。正直な話「外交の安倍」という評価の8割はこの人が後ろで支えていたお陰だと思っている。
冷戦が終結し、世界の枠組みが変わっていく中で旧来の「9条平和論」に拘泥していた政・官を根気強く変えていった著者の苦労が読み取れる。
当時はあまりそんな感じはしなかったけど小泉さんとはかなり険悪で安倍さんとはずっと仲良かったんだね。小泉時代に総裁選出てたとはいえそこは意外。
終盤は憲法9条論における芦田修正の根拠のなさと砂川事件の唯一の判例性に触れていたのが面白かった。判例を絶対視しすぎるのもどうかと思うけど、現状それ -
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非常に勉強になる良書。読み終わると、確実に知識が増え、少し世の中がクリアに見える。地政学の重要性は、ロシアによるウクライナ侵攻でまさに感じている所だが、我が国にしても、近隣諸国との関係性には常から課題を抱えたままだ。
ランドパワー、シーパワーという用語に加え、ハートランド、それを巡って衝突し易いリムランドの位置づけ。ハイブリッド戦争、クリミア併合からウクライナ危機。アフリカの角。国際保健協力の目的まで。物理的距離から、各国の思惑や多様な制度上の繋がり。複雑化する社会で、いかに自衛し、利害を調整していくのか。
戦争を避ける手段は、決して降伏ではない。知ることから、逃げない事が重要だ。 -
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【外交によってどのように平和の実現が可能なのか。また、外交によって可能なことと、外交によって不可能なことは何なのかを知ることが、不可欠となる。外交とは魔法と同じではない】(文中より引用)
2014年から2015年にかけ,右派・左派の双方から激しい言葉の応酬が見られた安保関連法の制定過程。噛み合わない議論と現実に基づかない認識に歯がゆさを覚えた著者が,現代の国際環境をにらみつつ,安全保障を語る上で必要不可欠な視点の提供を試みた作品です。著者は、慶應義塾大学法学部教授を務める細谷雄一。
当時の加熱する報道・意見合戦を思い起こしながら読み進めてみたのですが,本作での主張を踏まえた議論がなされてい -
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以下、本書より。
【成熟した政軍関係へ向けて】
日本が近代化をして、明治政府が陸軍と海軍を成立させてから間もなく150年が経過しようとしている。
その前半は、「軍による安全」に過剰に傾斜し、その後半は「軍からの安全」に過剰に傾斜してきた。
また、「日本型政軍関係」において、戦前も戦後も、国民は十分な役割を担うことはなかった。
周辺的な地位に、自らを追いやってきたのである。
日本の平和主義は、そのような軍事問題を忌避することによって成り立ってきた。
しかし、それは真の平和主義とは言えないであろう。
軍事問題を学ばず、語らないだけでは、平和は実現しないからである。
かつてイギリスの軍人であり、 -
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ネタバレ太平洋戦争の敗戦直後の歴史については、中高の学校の授業では時間切れで教えて貰うこともなく、また大学以降今日に至るまで、個人的にも知りたくないという感情もあり、これまでこの時代の本を手にすることは少なかった。
その心境に最近変化が現れ、たまたま本書を手にした。
結果として、読んで良かったと思っています。
本シリーズは3部作であるが、その最後となる本書に興味が魅かれたので、この本から読み始めた。
サブタイトルの通り、日本の憲法制定後以降から講和条約までの戦後史であるが、当時の日本の動きというより、世界の動き、つまり第2次世界大戦を勝利に導いた連合国間の協調、特に戦後初期の米ソ協調を基調とした時 -
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卒論へ向けて。
以下、本書より。
日本は幸運であった。日本は第一次世界大戦後のドイツのように、「恥辱的な和平」を強制されることはなかった。また、「戦争犯罪という嘘」に対する怒りが、多数の国民の間で爆発することもなかった。さらに、日本は第二次世界大戦後のドイツのように分割占領されることもなかった。あるいは、天文学的な数字の賠償金が科され、日本経済が破綻するようなこともなかった。
これらは何よりも、冷戦という環境下においてアメリカ政府が、勢力均衡の観点からも日本が大国としての国力を回復することを期待して、友好国としての同盟関係の形成と維持を求めていたからである。苛酷な国際政治の歴史を知る吉田(茂 -
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卒論作成へ向けて。
以下、本書より。
戦後日本社会が抱えた明るさは、あまりにも深い傷と、悲しみと、そして挫折を覆い隠すためのものでもあった。
戦争を経験した日本人は、多くを語らなかった。そして、彼らが「上を向いて歩こう」としたのは、必ずしも希望に溢れていたからではなかった。「涙がこぼれないように」するためだった。上を向かなければ涙がこぼれてしまうのだ。人には自分の涙を見せたくない。自分は強く、明るくいたい。だとすれば、上を向いて歩こうではないか。悲しみの海の中では、希望への強い意志を抱いていなければ、すぐに深い海の底に沈んでしまうであろう。(中略)
本書は、戦争が終わり、占領を経験し、豊かさ