細谷雄一のレビュー一覧
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教科書は現代史をやる前に時間切れそこが一番知りたいのに何でそうなっちゃうの?
「ピースとハイライト」by桑田圭祐
日本史の中では世界は語られず、また世界史の中に日本の記述はほとんどない。世界史と言いながら東洋史と西洋史は有ってもイスラムや中央アジア、東南アジアなんかも中心にはいない。分断された歴史で現代史を見ても認識のみぞは埋まらない。それは日本の外交の経験や理解が、圧倒的に国際社会のそれからずれていることがしばしばあるからだ。戦前の日本外交の失敗や誰も始めるつもりも勝てる予測もなかったアジア・太平洋戦に突入したのも、国際政治に対する日本人の想定と現実の世界とのずれが原因にある。
戦後日本 -
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戦後史を20世紀の全体像の中に位置付け直し、再構築を試みた意欲作。「世界史」と「日本史」を統合し、国際的な平和、国際的な秩序を構築しようとする潮流の破壊者として戦前期日本の行動を捉える。
日露戦争までは国際的な秩序の中に自らの行動を位置付け、それなりの国際的な信義を得ていた日本が第1次大戦以後の国際秩序構築の動きをなぜ見誤り、孤立していったのか。
例えば、第1次大戦後の国際思潮の転換を牧野伸顕はしっかりと認識していたが政府の中では少数派であり、伊東巳代治のような旧来の「帝国主義」的な思想から脱却できなかった。ベルサイユ会議に同道した若き近衛文麿も「英米本位の平和主義を排す」としたことからも -
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何年か前の本とは思うが勉強になる。最近の米露の関係性とトランプ大統領のウクライナに対する決断の意図がなんとなく想像できた気がした。ロシアは歴史的にアメリカに対する劣等感や敵対感が国全体にわたって刷り込まれていて、ウクライナ侵攻とその結果も今後の米露の関係に多大な影響を与える。アメリカ側としてはロシアとの溝を深めることは不本意で、今ここでウクライナという”小国”を見捨ててでもアメリカ国内の今後の平和のため、ウクライナに降伏を進めているのではないか。自分の認識している道理だけだと、ウクライナは侵攻されている側なので、静止するのであればロシア側だろと思うので。またロシアのウクライナ侵攻を中国は今後の
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ロシアによるウクライナ侵攻、また今後起こりうるといわれる台湾有事の予測など、昨今の国際情勢について、著者が複数名の専門家と対談する。本書は主にアメリカとロシア、中国の関係を中心に語っており、それによると、ロシアと中国は日本を半植民地と見なす、つまりアメリカと同盟国を結んでいることは完全な主権を確立していないと考えている。また日本のロシアに対する性善説は江戸時代末期からあり、実際に日露戦争の直前、桂太郎が英国と同盟を結ぶことに対し、伊藤博文は日露協商を唱えるという事例があった。さらに2022年のウクライナ侵攻時に、ロシアに経済制裁を実行したが、これは短期的に見ると効果は現れないが、相手のコスト
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断片的に捉えていたウクライナ問題を体系的に理解するに有益な本だった。また、ロシア関係だけではなく、最も意識すべき中国に繋げて議論される。個人的には台湾有事とウクライナ戦争がストレートには繋がらない。その視点でも読んでみた。
2003年のイラク戦争はアメリカが全くロシアの言うことを聞かずに開戦した。それまではロシアもG8に参加し、西側との全面戦争は無いのだからと徴兵制を廃止しろと言う主張をしていた。それと前後して2003年にジョージアでバラ革命、2004年にはウクライナのオレンジ革命。そこでウクライナがNATOに加盟すると言い出した。2005年にはキルギスでチューリップ革命。この一連のカラー革 -
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「先の大戦」と曖昧に呼ばれることの多い「大東亜戦争」をグローバルな観点から「複合戦争」として捉え、戦争の全体像を把握しようとした本書は、もともと月刊『Voice』の2022年1月号、4〜6月号に掲載された諸論考を編集したものである(第1章と13章、14章は書き下ろし)。レビュアーは『Voice』未見のため、どの論考も初見である。
「複合戦争」という視点は、本書への寄稿はないが、内閣府アジア歴史資料センター長の波多野澄雄氏らが主張しているものであり、真珠湾攻撃に始まる日米戦争、主に東南アジアを舞台とした日英戦争、1937年に始まる日中戦争、そして終戦間際の日ソ戦争という4つの戦争の複合戦争とい -
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ネタバレ結果的にめちゃくちゃタイムリーなテーマとなったが、刊行年がやや古いため、現在進行中の出来事であるロシア-ウクライナの問題は当然ながら取り上げられていない。
おそらく本書は安倍内閣時のいわゆる「周辺事態法」に触発されて書かれたのだろうけど、そのカバーする範囲はかなり広く終戦から現在までをリアリズム的な視点でカバーしている。特に面白かったのは、内閣法制局の解釈が年月を経るごとに硬直化・保守化をしていったというあたりで、官僚的世界の極地をのぞいた気になる。
こういった内容がもう少し基礎知識として広がっていけば、もう少し安全保障の議論も冷静に出来るのだろうけど、今のSNSの反応見ていると、そういっ