細谷雄一のレビュー一覧
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日本の安全保障の問題の核心にあるものが政軍関係として問題提起している。戦前、戦後、そして他国の政軍関係を比較し、日本の政軍関係の問題点をあぶり出し、安全保障のおおもとに関して国民的な議論の端緒とすべしといった本。
日本の安全保障のアキレス腱は戦略ではなく統治(ステートクラフト)にある。軍からの安全に加え、軍による安全と政治からの安全を考えなければならないのがこれからの日本。戦前は政治指導者は軍の暴走を止めることができず、戦後は軍事から目を背けており、望ましい政軍関係の模索は「隠された論争」となっていた。
ワシントンからもロンドンからも140度離れていたために変革への危機感が厳選への遡行となって -
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◆日本の敗戦は、それまでの「大日本帝国」という巨大な領土を持つ国家が日本列島のみを領土とする小さな「日本国」へと一気に縮小する過程であり、東アジア地域に「力の真空」を作り出し紛争の火種となった。
◆日本の占領はアメリカが主導したが、その陰には日本と東欧を「交換」したモスクワ外相会議があった。
核開発の観点からルーマニアとブルガリアのウランを欲していたソ連は、これら地域の支配を黙認させる代わりに日本統治をアメリカに譲り渡したのである。
◆日本国憲法の起草において、松本や実際の起草者である宮沢俊義は国際情勢を把握しておらず、連合国内での天皇訴追や責任追及の動きや世界における日本の敗戦の意味を全 -
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これは良書であるが、「歴史認識」の在り方そのものを掘り下げているというよりは、基本的には第一次大戦以降の国際政治動向を最新の研究動向を踏まえて叙述した内容。
現代に通じる多くの教訓を「戦間期」と呼ばれる時代(二つの世界大戦の間、1920-30年代)は含んでいることを改めて実感。
過去に学ぶ、ということは、「戦争反対」の平和協調主義が力の空白を生む(戦争の原因になりうる)ことの危険から目を離さないということであり、同時にそれは、当時の日本がどうにも正当化できない過ちを犯したことを正視することでもある、ということ。
文献を詳細に検討して事実(と呼びうる何か)を掘り下げる努力に右翼も左翼もない。 -
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「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信じる」という一文が憲法前文にあるのだから、自国のみ戦争には参加しない!と言って道徳的に優れていることを誇るのはおかしい。
この理念を憲法が謳っている限り、日本は「積極的平和外交」を行っていくべきだろう。
というか、戦力=悪ではなく、戦力=防御力であ -
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著者の細谷雄一氏は、国際政治史、イギリス外交史を専門とする国際政治学者で、2014年より国家安全保障局顧問も務める。
著者によれば、2015年夏に繰り広げられた安保関連法に関する論争において、安保関連法に反対する人々は、この法律を成立させれば、アメリカが将来行う戦争に日本が巻き込まれて国民の安全が脅かされると懸念し、安保関連法を成立させた安倍政権は、現状の安保法制では十分に国民の生命を守ることができず、状況が悪化している東アジアの安全保障環境下で平和と安定のために日本が責任ある役割を担うことができないと考えている、即ち、両者とも平和を求めて戦争に反対しているのである。そして、著者は、この奇妙な -
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日露戦争から太平洋戦争までの通史が書かれている。太平洋戦争の開戦過程を日露戦争から記述するのは希少であると思う。
また、この本が優れているのは、国際関係と国内のアクターいずれも分析対象に入っていること。日本政治外交史の立場だけではないのは、太平洋戦争の開戦過程を探る上で良い点である。
逆に不満な点は、歴史認識という言葉をタイトルで使っている割には、歴史認識の問題に言及していない。タイトルをもう少し考えるべきであったと思う。
この本で得た教訓は、選択する政策の結末がどうなるか、楽観的にではなく、国内要因と国際関係いずれも冷静に分析する必要があるということである。決して組織内部の事情や責任回避だけ -
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細谷雄一氏は1971年生まれ。40代前半だ。世代的に近いことは、どこか親近感が湧く。通ってきた時代背景、時事問題への認識には、共通点を見いだしうるからだ。
日露戦争からアジア太平洋戦争まで、と題され、日本史、世界史という枠組みを超えて、通史で見ていく。
氏は訴える。戦前は時代錯誤から、軍国主義という独善的な孤立主義へと走った日本人。現在は、国際情勢の理解認識の欠如から、平和主義、という偏った孤立主義へと走り、同様に世界に取り残されつつある日本人と。安保法関連法案が成立した、今だからこそ、このような氏の視点に触れ、今一度、単純な戦争反対、では無い、真の議論を進めるべきではないか。
歴史認識 -
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なんかいまいち。
長く外交、安全保障に関わってこられた高村正彦氏のオーラルヒストリーらしいのだが。
なんか、名前くらいは知ってるおじさんの自慢話。
実は俺が裏で動いてたんだ、俺は王道、自分の考えで進んできて、一本筋が通っている。
俺の一言で色々決まったんだ。
そうかもしれない。
そうじゃないのかもしれない。
取り巻きが集まって持ち上げながら持論を展開している。
ご本人も、なんだかちょっと面倒臭そうな感じが伺えて、特段裏話的なもんもないし。
まあなんと言うか、結果今、石破政権で日本はとんでもない方向へ落ちかけてるんですが、その辺どうすか。それ踏まえての、雑談?
でも、「内政の失敗は内 -
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「先の大戦」としか言いようがない。
太平洋を跨いだ日米戦争、東南アジアでは日英戦争、面倒くさい支那事変、最後のととどめ日ソ戦争。確かに、「太平洋戦争」と言ってしまうのは事実を表していない。
だからこその大東亜戦争。
まさに全世界を敵に回したんや。負けたんは、対米だけやけどな。
世界史の中で見れば、いろんな国の色んな思惑に振り回されていた、日本。その日本に確固たる方針がなく、縦割り完了社会で、しかも下手に現場が優秀だったから、完膚なきまでに霧散した。
結局、明治の元勲が残っている間だけがまともな国だったわけだ。
上が無能でも現場が優秀でなんとかしてしまって、出来るじゃんてもっと無茶を押 -
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現在のウクライナ戦争、最近の米中対立と中国の台湾侵攻のリスクを中心に、国際政治的、軍事的、地政学的な観点で分析されている本
中長期的な課題として、プーチンロシアとウクライナ戦争の影響は大きいものの、日本•世界にとっての最大の脅威は中国だと指摘する。
中国は情報公開が不十分で得られるものは限られているとは言え、近年の軍拡は明らかで、台湾侵攻に関して説得力のある蓋然性が高いリスク分析がされている。
(なお、個人的にはウクライナ戦争はそのリスクを増大させるのではないかと思っていたが、ほとんどの中国政府や軍関係者は「ウクライナと台湾は別問題」と考えているとのことであった。)
また中国や欧米の強かさに