細谷雄一のレビュー一覧
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ネタバレ今の、ロシアウクライナ戦争を考える意味でも、よい示唆を与えてくれる好著。
”「先の大戦」の起点を、その戦争の侵略性を強調することで「1931年」(=満州事変)に設定するのではなく、むしろ世界史的な意義から「1890年」に設定することで、われわれは新しい視野を手に入れることができるだろう。”
となると、2022年2月24日を起点とするのではなく、2014年のクリミア併合か、いや、もっと前からその因果は含まれていた?
おそらく2001年9月11日あたりが、その始点となるのだろう。
いずれ、中台戦争、米中戦争となれば、日本も巻き込まれることになる。
「先の大戦」から学べる教訓があるなら -
Posted by ブクログ
アルバート・ハーシュマンによる分析
一国と他国との間に交易が成立すると、厚生効果と影響力効果の2種類の効果が生じる。
「厚生効果」とは、貿易や金融取引のありかたが、関係国のGDPや雇用などで測定される経済的厚生に及ぼす効果をさす。
自由な市場における競争が、経済的厚生を向上する上で望ましい。
国際的な経済交流によって世界の富の増量が増えることが強調される。
「影響力効果」とは、経済的交流によって、ある国が他国に対して力を行使できるチャンスが生ずることを意味する。
一個が他国に対して貿易その他の経済的関係を持てばらそれが停止されることによって、相手国に損害が発生する。
ロシアのグランドス -
Posted by ブクログ
国土は引越しできないので、日本はずっと朝鮮半島の隣。中国のご近所さんで居続けなくてはならない。その地理的要因が政治にも影響する。
そういった地政学を現代の視点で考察したような本でした。
世界的規模で概観すると日本の特異性がよくわかる。
日本は人口減が問題だけど世界的には人口爆発が問題だし、貧困と紛争と言えばアフリカのイメージだけど、実際はアジアのほうが貧困も紛争も多い。視野を広げる意味では読んで良かったです。
ただ、現代の地政学上の国際紛争を概説する本のようでいて、最終章は丸々1章を使って中曽根康弘さんと自民党による憲法改正を特に批判もなく是としていたから、実は自民党の応援本だったのか?… -
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国際政治の専門家による、安全保障の話。安全保障についての意見には賛同できる。また、わが国の安保論争について、歴史的な説明はよく纏まっており、参考になった。
ただ、いろいろな人が言っている言葉や意見が多く掲載されているが、著者がそれを使って何を言おうとしているのか曖昧なところがある。やや、論理性、学術性に欠ける。
「(オーウェル)私ははじめて、嘘をつくことが職業である人物に出会ったが、なんとその人のことを人々はジャーナリストと呼んでいる」p18
「(トロッキー)あなたは戦争に関心がないかもしれないが、戦争はあなたに関心をもっている」p57 -
Posted by ブクログ
太平洋戦争前、リベラルな天皇と富国強兵の軍隊、特に維新を守りたい海軍の猛々しさ。
本書では日本の戦争の問題点を、平和に向かうグローバルな潮流を感じ取れなかったという点に見ている。今でいうところのガラパゴス。
象徴天皇になる前は天皇はとってもリベラルだった。天皇の権力が剥奪された理由は、ファッショの危険性があったからとか独裁がダメだからとかじゃなくて、天皇を冠にすることで正当性を維持しながら色々やらかすのが日本だから。国のトップとしての戦争責任はあるかもしれないけれど、戦犯からは除外されていた。
思想が偏っていたって政治を動かせるような影響力を持つ人はほとんどいないので、正しい歴史 -
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ネタバレ★★★☆☆
細谷雄一を知ったのは、モーリー・ロバートソンのニコニコ生放送に出演していたのがきっかけ。
安保法案可決直前だったこともあって、なかなか白熱した対談で面白かった。
本書は、著者が日本における安全保障関連の議論のちぐはぐさを整理し落ち着かせるために打ったトランキライザーだ。
安全保障は世界情勢とのバランスで語られるべきものであるにもかかわらず、日本では言語の壁もあってか、どうしても国内事情が優先され、世界の潮流を見ないままで議論が進んでしまう。
著者は、本書において、英米や欧州が近代史をどう見ているか、そのステレオタイプを提示してくれる。
国際連盟の無力さを白日のもとに晒し