森岡浩之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
樓主が取り上げるのはとっても珍しい、短編集。
星界の紋章でおなじみの森岡氏の、初期の作品。デビュー作も入ってる。
全部SF。
この人は言葉が好きなのね。
この人の本を読むと、自分の描くSFの拙さを見せ付けられるようで、痛かったりする。
一番、インパクトが強かったのは「スパイス」。
どんでん返しを樓主は期待したが、けっきょく路線はホラーっぽくなってしまった。
好きなのは「無限コイン」と「夢の樹が接げたなら」。
「スパイス」は人工的に作られた女の子が中心に置かれた話。彼女はとあるサディストに食われるために作られた。牛の細胞などを使って作られているから彼女には人権がない。
ニュースキャスターである主人公はその少女の姿を世間に伝えて、世論を動かし彼女を救おうとする。
「ズーク」という作品はなかなか興味深かった。一般名詞という存在がポイント。
短編だから読みやすい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者を知らずに買ったが、星界の戦旗(ブレイクは星界の紋章)の著者ということで有名人だった。
並行世界の地球(ウラ地球)と、コチラの地球(オモテ地球)上のある地域が入れ替わる「突然変移」がおきる世界を舞台に物語が進む。
序盤は世界観の説明も兼ね、登場人物達のコチラ側の地球での生活やそれぞれの心情が描かれる。
抵抗も予想もできない"突変"への恐怖を抱えながら生活する人々の描写(と、時間や突変が起きるごとに進んでいくアチラの世界の分析)だけでも物語になりそうな巧さだが、
物語の中盤からは小さな町が並行世界へと"変移"し、手元に残った組織、資源だけでのサバイバルが突然始まる。
街の一部だけが切り取られて隔絶し、救助や救援が絶望的であることと建物・施設(箱)は無事である点や時間経過で被害が収束しない点は通常の自然災害とは異なるが、まるで災害発生時のような様子で人々が対応をしようと動き始める。
中盤は未開の地でのサバイバルかと思っていたが、以外に早く先達(?)との連絡が付き、救援や世界の様子が分かってくる。と、同時に政治的な駆け引きがあることが匂わされ、ゾンビ映画でもおなじみの"結局、人間が一番怖い"疑惑が浮上してくる。
『まほり』や『文明崩壊』を読んでいるので、「人口の多い大阪では食糧不足で人肉食・・、阿鼻叫喚だな」と思ってしまったが、そこまでダークな展開ではなかった。意外とのほほんと生きていた。
世界観や異原生物(チェンジリング)の詳細・系統的な説明が無いのに違和感を抱かない作りはかなり上手いと思った。
この手の異世界ものや異形の生態系ものは、その世界についての"SF独特の書き方"の説明が序盤に入り、それが無駄に長く意味不明でそこで辟易してしまうことがある。しかし、逆にこれが足りないと疎外感を感じ、物語に入り込めない。説明の位置や長さのバランスは本当に難しいと思う。
本書では主要な登場人物の知識や会話の中から自然に異世界の生態系の情報が"適度"に語られ、読者にも異原生物が馴染んできた物語終盤になると硬く客観的な文章での生態の解説が入る。この手法が実に上手いと感心した。
オモテ地球にいる人は裏返った地域の情報で断片的にしかウラのことがわからないことや、ウラにいる人もマンパワーの不足や他地域との連絡の途絶で完全な理解に達していない、ということが上手く表現されており、
転移した登場人物達と共に無理のない速度で世界を理解出来る。分からないことや疑問を感じることも、「わからない」と言い切ってしまえるのも良い。
700ページを超える大著だが、神目線での内容はなく、常に登場人物のやりとりにフォーカスが当たっているので、停滞することも退屈することもなく読み切ることが出来た。
終盤のミカミ親子の断絶と悲劇は、転移がウラ地球の生物にとっても悲劇であることや、ウラの生き物にも平穏な生活があり、ただの醜い化け物ではないことに思い至らせられる。
と共に、それまで世界の様子を探り、生き延びることに必死だった転移した人達もそれぞれの人生や大切な人と突然隔絶したという悲劇を思い起こさせる効果もあった。
主要登場人物は皆前向きに進んでいくような描写もあり、優しいエンドだったが、ただ優しいだけでなく、主題ゆえの哀愁も漂う終わり方だった。
エピローグのオモテでの対応や、速やかに忘れ去られたという終わり方などはリアルだなぁと思ったし、長いストーリーであるのに矛盾や疑問がない内容はすごい(作者が賢い)と思ったが、登場人物が賢すぎるのだけは玉に瑕かなと思った。
実際は防除団なんかは役に立たないどころか害を及ぼしそうだし、町内会長は異常事態には無能で初動があんなに上手くはいかないだろう。
ただ、そこをリアルにしてしまうとたぶん全滅エンドしかなさそうで、優しい物語にはならないうえにストレスフルな話になるのでしょうがないかとも思う。
最後の解説が簡潔なのに適切で、書いた要約や感想とほぼ同じことが書かれていた。これまでにあんまりない経験だったので驚き。予想外のことが書かれていないので解説が大したことがないとも言えるが・・。
余談だが、解説にあるハヤカワ・SFコンテスト(1991)の第1席が不在なのでなぜかと思って調べたら賞の構造が複雑だった。由緒も正しいし、古い時代の選考委員が超有名人でかなりビックリした。 -
Posted by ブクログ
この本は、スペースオペラの名作「星界の紋章」シリーズの第三巻です。この巻では、人類統合体の追撃から逃れるために、惑星クラスビュールに不時着したジントとラフィールの冒険が描かれます。クラスビュールは、敵の支配下にあり、地上ではアーヴの王女であるラフィールは無防備です。ジントは、彼女を守るために、危険な環境や敵の追跡に立ち向かいます。一方、宇宙空間では、ジントとラフィールの救出を目指すアーヴの艦隊と、人類統合体の艦隊との壮絶な戦闘が展開されます。果たして、ジントとラフィールは、無事に帝国に帰還できるのでしょうか・・・。
この本のテーマは、私にとっては「成長」と「愛」でした。ジントとラフィールは、互いに惹かれ合いながらも、自分の立場や責任、信念に悩みます。しかし、困難な状況の中で、二人は一回りも二回りも人として成長していきます。特にジントは、自分の運命を受け入れ、自分の意志で行動するようになり、ラフィールも、自分の感情を素直に表現することをためらわなくなるのです。二人の関係に私は、単なる恋愛ではなく、深い愛と尊敬に満ちあふれたものを感じました。
この本のおすすめポイントは、二人の成長と愛の物語を、スペクタクルな宇宙戦争のドラマとともに楽しめるところです。作者の森岡浩之さんは、宇宙空間や地上の描写、アーヴの文化や言語、戦闘シーンなど、細部にわたって丁寧に描き込んでいます。また、登場人物たちの感情や思考も、細やかに表現されており、登場人物たちの喜びや悲しみ、怒りや恐れ、希望や絶望など、様々な感情に共感することがきっとできることでしょう。
総評として、この本は、宇宙の壮大なスケールと、人間の小さな感情とが、見事に調和したスペースオペラの傑作と言えると思います。登場人物たちの魅力や成長、戦闘や謀略の展開、文化や言語の設定など、どれも素晴らしかったです。