あらすじ
関東某県酒河市一帯がいきなり異世界に転移(突然変移=突変)した。ここ裏地球は、危険な異源生物が蔓延(はびこ)る世界。妻の末期癌を宣告された町内会長、家事代行会社の女性スタッフ、独身男のスーパー店長、陰謀論を信じ込む女性市会議員、ニートの銃器オタク青年、夫と生き別れた子連れパート主婦……。それぞれの事情を抱えた彼らはいかにこの事態に対処していくのか。特異災害SF超大作! 【解説】大森望
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正統派エンターテイメントSF。
中盤~後半にかけて「え?」「は?」「どうなるの?」とわくわくどきどきさせられるが、エンディングで「こうきたか」とにやりとする。
人物の関係性が単純な足し算ではなく掛け算、割り算になっていて、Aさんに対するときは冷たいけど、Bさんに対するときは甘いとか、なんかこう・・・・・・単純ではなくて油断できない。
SF的仕掛けの楽しさ、物語の構造の見事さだけに囚われず、登場人物の魅力でも攻めてくる。
しかし「星界の紋章」の印象(もちろんおもしろいんだけれど、悪く言えば萌えラノベの印象)があったけれど、こんな骨太の現代SFが読めるとは!と驚き。星界の紋章シリーズもきちんと読み直そうと思いました。楽しみ。
Posted by ブクログ
世界観を作ってから、小説を書く、彼らしい作品で楽しめました。
さらっと書いてますが、突変したら、衣食住、インフラの再構築とか大変ですよね。
防除団が意味もなく、チェンジリングを殺戮するとか、地域同士での争いが起きるとか、とてもリアルでした。
ミカミ一家の悲劇とそれを悲しむことが出来るのは幸せなことなのかもしれない。
女性キャラは立ってますが、男性キャラでピンと来る人が少ない。シリーズ化するにはそこが弱いかな?
Posted by ブクログ
著者を知らずに買ったが、星界の戦旗(ブレイクは星界の紋章)の著者ということで有名人だった。
並行世界の地球(ウラ地球)と、コチラの地球(オモテ地球)上のある地域が入れ替わる「突然変移」がおきる世界を舞台に物語が進む。
序盤は世界観の説明も兼ね、登場人物達のコチラ側の地球での生活やそれぞれの心情が描かれる。
抵抗も予想もできない"突変"への恐怖を抱えながら生活する人々の描写(と、時間や突変が起きるごとに進んでいくアチラの世界の分析)だけでも物語になりそうな巧さだが、
物語の中盤からは小さな町が並行世界へと"変移"し、手元に残った組織、資源だけでのサバイバルが突然始まる。
街の一部だけが切り取られて隔絶し、救助や救援が絶望的であることと建物・施設(箱)は無事である点や時間経過で被害が収束しない点は通常の自然災害とは異なるが、まるで災害発生時のような様子で人々が対応をしようと動き始める。
中盤は未開の地でのサバイバルかと思っていたが、以外に早く先達(?)との連絡が付き、救援や世界の様子が分かってくる。と、同時に政治的な駆け引きがあることが匂わされ、ゾンビ映画でもおなじみの"結局、人間が一番怖い"疑惑が浮上してくる。
『まほり』や『文明崩壊』を読んでいるので、「人口の多い大阪では食糧不足で人肉食・・、阿鼻叫喚だな」と思ってしまったが、そこまでダークな展開ではなかった。意外とのほほんと生きていた。
世界観や異原生物(チェンジリング)の詳細・系統的な説明が無いのに違和感を抱かない作りはかなり上手いと思った。
この手の異世界ものや異形の生態系ものは、その世界についての"SF独特の書き方"の説明が序盤に入り、それが無駄に長く意味不明でそこで辟易してしまうことがある。しかし、逆にこれが足りないと疎外感を感じ、物語に入り込めない。説明の位置や長さのバランスは本当に難しいと思う。
本書では主要な登場人物の知識や会話の中から自然に異世界の生態系の情報が"適度"に語られ、読者にも異原生物が馴染んできた物語終盤になると硬く客観的な文章での生態の解説が入る。この手法が実に上手いと感心した。
オモテ地球にいる人は裏返った地域の情報で断片的にしかウラのことがわからないことや、ウラにいる人もマンパワーの不足や他地域との連絡の途絶で完全な理解に達していない、ということが上手く表現されており、
転移した登場人物達と共に無理のない速度で世界を理解出来る。分からないことや疑問を感じることも、「わからない」と言い切ってしまえるのも良い。
700ページを超える大著だが、神目線での内容はなく、常に登場人物のやりとりにフォーカスが当たっているので、停滞することも退屈することもなく読み切ることが出来た。
終盤のミカミ親子の断絶と悲劇は、転移がウラ地球の生物にとっても悲劇であることや、ウラの生き物にも平穏な生活があり、ただの醜い化け物ではないことに思い至らせられる。
と共に、それまで世界の様子を探り、生き延びることに必死だった転移した人達もそれぞれの人生や大切な人と突然隔絶したという悲劇を思い起こさせる効果もあった。
主要登場人物は皆前向きに進んでいくような描写もあり、優しいエンドだったが、ただ優しいだけでなく、主題ゆえの哀愁も漂う終わり方だった。
エピローグのオモテでの対応や、速やかに忘れ去られたという終わり方などはリアルだなぁと思ったし、長いストーリーであるのに矛盾や疑問がない内容はすごい(作者が賢い)と思ったが、登場人物が賢すぎるのだけは玉に瑕かなと思った。
実際は防除団なんかは役に立たないどころか害を及ぼしそうだし、町内会長は異常事態には無能で初動があんなに上手くはいかないだろう。
ただ、そこをリアルにしてしまうとたぶん全滅エンドしかなさそうで、優しい物語にはならないうえにストレスフルな話になるのでしょうがないかとも思う。
最後の解説が簡潔なのに適切で、書いた要約や感想とほぼ同じことが書かれていた。これまでにあんまりない経験だったので驚き。予想外のことが書かれていないので解説が大したことがないとも言えるが・・。
余談だが、解説にあるハヤカワ・SFコンテスト(1991)の第1席が不在なのでなぜかと思って調べたら賞の構造が複雑だった。由緒も正しいし、古い時代の選考委員が超有名人でかなりビックリした。
Posted by ブクログ
タイトルの「突変」は「突然変移」の略称。ある時期から、この地球上の地域が突然、異なる進化を遂げた生命体が生息する「もうひとつの地球」と入れ替わってしまう災害が発生するようになった。
この災害は予測できず、その時そこにいたものは突然異世界へ土地ごと飛ばされ、電気も通じず、食事もままならず、原住生物に怯える生活を余儀なくされる。(境界線上にいたものは切断されて死んでしまう。)
末期癌の妻を家に迎える準備をしていた町内会長、家事代行会社の女性スタッフ、過去の突変で夫と生き別れた主婦、銃器オタクのニートに陰謀論を信じこむ女性市会議員…その日酒河市一帯は、そこにいた人々もろとも変移した。
いやあ、長いこと積み続けてたからこの機会に片付けちゃおうと思って旅のお供に選んだけど………迂闊だった。新幹線の中で泣くとこだった。
生き別れは、つらいものだ…。
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盛り上がってきたけど残りページが少ないぞ 意外とあっさり終わってしまうのか!? などと余計な事を考えてしまうが 面白くなければこの厚さは読み切れません
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これは文句なく面白いパニック?SFでした。
古くは日本沈没もそうでしょうが、こういうスケールの物語はいろいろ調査・勉強は大変だろうなと思いますが、非常に違和感なく世界が構築されています。
登場人物が多めですが、キャラクター設定も丁寧でとても引き込まれますね。続刊を期待!
Posted by ブクログ
作者さんの名前で買いました。
最後まで読めれば面白いと思います。
最近はあまり重たい本を読んでいなかったので、あまり話の進まない1/3くらいまでは眠気と戦いながら読みました。
あとは分団長を有能にしたいのか無能にしたいのかが、ぶれているのが気になったので4です。
全体はもの凄く作り込んだ世界を1作のために使っている昔ながらの良いSFだと思います。(続編が出るかもしれませんが)
続編が出るなら博士が主役でお願いしたいところ。
Posted by ブクログ
SF小説である。
といっても華麗なスペースオペラでもハードSFなわけでもない。
舞台設定はSFであるものの、描かれる物語は日常生活に突如舞い込む『被災』に遭遇した市井の人々の物語である。
本書がSFであるワケに舞台設定にあるのだろうが。
タイトルにある『突変』。
突変とはある区域内が別次元、異世界の同一区域と入れ替わる現象のことである。
表地球と裏地球なのか、全く地球と異なる異星なのかははっきりしない。
表から裏に転移した表地球だった一部は寓地と呼ばれ、寓地からみた表地球は故地と呼ばれる世界を舞台に、ある日突然巻き込まれた住人たちの日常がリアルに描かれていく。
震災のような大災害に見舞われたとき、人というものはかくも日常の意識に固執するものなのか?というくらいに目の前に起きていることと日常の心配事が奇妙に重なり合う。
あまりにも理解不能な事象を目の当たりにするとパニックに陥らないような平衡感覚が働くのだろうか?
そんなことどうでもいいと思われることに執着する住民の行動が怖いほどリアルに感じた。
これは面白い!
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世界観・設定がしっかりしてますね。ただ書き過ぎと感じるシーンも多々有り。文章が読みやすいので本筋に関係ないと感じながらも読めてしまいますが、もうちょっと本の厚みを薄くできるのではと思いました。
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罹災して、じょうほうがなかなか入ってこないとこんな感じ。
イラっとする人が結構出てくるが、なかなかスッキリさせてくれない。
この内容が1/3程度に圧縮されていたら、スッキリと読めたかもしれない。
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700ページ超というボリュームの割にスケールは大きくない。舞台も狭く、わずか3日間の出来事。それでも飽きさせない語り口はさすが。ただ純粋なSFを期待すると肩透かしを食う。群像劇としても、うまくまとまっていない気がする。一番印象に残ったのは人より異源生物。
Posted by ブクログ
タイトルの音感だけで「あっ、納税小説」と思ってしまい、作者の名前で「あっ、萌えSFのヤツや」と思ってしまい、読んでみて「あっ、漂流教室」と思ってしまい・・・
世界観を作りこんでいる割には壮大なSF小説感が感じられず、パニックモノと思いきや思いっきり日常生活の延長で、読者として足の据えようが定まらない居心地の悪さを感じていたところに、クライマックスの○カミのくだり。なるほど、これでラストの再会シーンが映えるという、ここを読ませたかったんやな。
しかし、前評判が高すぎたのか(大森はじめ世のSF小説評論家、ちと持ち上げすぎじゃない?)、正直若干期待はずれ。世界観が良いし、今後のことも気になるので続編は追いかけるつもりだけど、この1冊だけなら良作ではあっても傑作とは言えないな。