エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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欧州の共同体としての信仰は、キリスト教という普遍性の高い宗教の登場とともに始まり、それが政治思想に変化し、民主主義を可能にし、政党を作り上げる力になっていった。
家族構造の進化の観点からは、明治の頃の日本は、中国の紀元前500年くらいの段階にあった。第二次大戦で日独は世界の長男になろうとして失敗し、戦後の日本はアメリカの弟で満足している。他国と同列の兄弟になることにおびえがある。
民主主義とは、普遍的な識字運動であり、高等教育を受けるのはごく少数だった。第二次大戦後、高等教育を受ける人が急速に増え、高等教育を受けていない人たちとのつながりなしに存在するようになり、民主主義の破壊要因となっている。
現在は、共同体的な信仰の喪失、高齢化、社会を分断する教育レベルの向上、女性の地位の向上が合わせられた革命的な時代にある。
ドイツは規律に厳しい、まじめなモデルとされてきたが、メルケル首相がシリアやイラク、アフガニスタンの移民を大量に受け入れようと呼びかけた時から、ドイツは混乱をもたらす国になった。移民をめぐる危機は、欧州解体の最終局面をもたらしつつある。
フランス革命やロシア革命などの近代化に伴う危機の時代には、信仰の危機や大量殺戮とともに出生率の低下がみられた。人々は新しい時代に備え、子どもをつくることを控えるようになる。現在のイスラム諸国では、出生率が急速に下がっている。出生率が下がっていないのは、サウジアラビア、パキスタン、アフガニスタンの3か国。
日本がアジアの兄になろうとして失敗し、アメリカの弟の地位に収まっているという表現は、絶妙な解釈だと思った。直系家族の伝統がある日本人は、上下関係を維持することに安心感を持ち、対等な関係を築くことが得意ではないのだ。そのメンタリティは、体罰やパワハラ、情報非公開といった権威主義的行動や、サービス残業や画一的教育といった服従的、依存的態度に表れているのではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
トランプの共和党候補指名受諾演説の内容を読んで、包み隠さずアメリカの現状を訴えていると思った。
人として受け入れられない部分は多く、実際に人となりがクローズアップされるような報道が多いが(当たり前といえばそうだが)この本を読むと、住んでる場所や学歴などによっては自分はトランプに投票していたかもしれないと思えた。
事実投票した人たちによってトランプは当選したわけで。
分断されたアメリカと盛んに言われているが今に始まったことではないと思う。
トランプの当選で急に分断されるはずがないかなと。むしろ当選によって明らかになったわけで。
どっちみち資本主義?グローバリゼーション?で生まれた負の部分というかしわ寄せは発生していて今後はそれが海外からアメリカ国内に見られるようになるのかなと。
トランプ以前が平和だったかというと国外で色々あったんでしょうからそれが今度は国内になるのかなと。
だからしばらくは米国内が荒れるようなニュースは多くなるかなと。 -
Posted by ブクログ
グローバリズムについての本を読みたかったのだけど、どちらかというとユーロやフランスに偏った話だったので、思っていた内容とは違った。
が、インターネットが普及し、経済的な境目がなくなったグローバリズム自由貿易。
世界が繋がっていくことの希望は、今や危惧でもあり、繋がっているという事実は変わらないながらも、米国が「ナショナル」より「インペリアル」の道を選択したという序文は面白い。
経済的には引き戻せない段階に来た上、個人が国という枠組みを超えてゆくことが容易になった反面、国が国として維持するためには、経済ではない力、つまり軍事力に頼らざるを得なくなっているのかもしれない。
個人的には世界規模で少子化が進んでいることには驚いた。
需要がなくなると、供給による利益は失われる。
また、ロシアの立ち位置も気になる。
トランプ就任によって、世界のパワーバランスはどのように変わるのだろう。
グローバリズム以降の世界の在り方を、もう少し詳しく学びたいなぁ。。。 -
Posted by ブクログ
グローバリズム以後
・アメリカが帝国となって以降、30年がたち、1世代変わった。帝国というものは、帝国の中枢こそは良いが、帝国の中にいながら辺境にいる人間にとっては良いことはないため、辺境の人々が帝国をやめようというエネルギーを発し始めた。アングロサクソンは根本的に不平等なシステムをとりやすいが、アメリカが自由平等の国としていることが出来たのは、内部に黒人差別をすることで辺境を確保し、不平等を発散していたからである。しかし、黒人解放以後、平等化が進み、白人も辺境に追いやられることで考え方が変化し、国民国家に向けて進み始めた。
・欧州は分断に向かっている。それは、一致させるべき明確なビジョンの欠落に起因する。国民国家の単なる集合体となったヨーロッパは失墜していく。
・家族構造のシステムとは、本来分散化するものである。世界はホモサピエンス以来分岐化を進み続ける。
・ISISは国家ではなく、ニヒリズムの集合体であり、国家とは逆行する流れをくむもの
・人類学的革命、人類の転換期がいま。その兆候は、①共同体的信仰の欠如②高齢化③社会を分断するほどの教育レベルの向上④女性の地位の向上。
・日本は元来長子と末っ子の序列を設けるなど、家族制度としては階層的なものは存在する。今の日本の不平等化、学歴による階層化、移民が受けるような非正規雇用の苦難を低学歴層に押し付けて、母国のない移民という最悪の状況を生み出している。しかし、それは許容されているという点で、横のつながりよりも階層化の引力の強さを目の当たりにしている。 -
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「グローバル資本主義によって経済は成長する」と信じられてきましたが、実際のデータを客観的に眺めてみれば、真実はまったく逆であって、「グローバリズムは成長を鈍化させる」
グローバル資本主義を推し進める人々は、ビジネスに自由さえ与えれば富も雇用も創出され、最大限の成長があると信じてきた
アメリカにしても日本にしても「国による産業保護」という規制が成長を生ん
アメリカが、実は世界で最も強力な産業政策を行っているのです。インターネットにせよ、半導体にせよ、航空機にせよ、研究開発を支援したのは国防総省や軍などの政府機関
グローバリズムは国境を前提にしないものであって、国境が存在することを前提とした上で、異なる国家同士の交流を図ろうとするインターナショナリズム(国際主義)とは真逆の概念です。両者は、一見似ているように思われることがありますが、まったく異なる概念
今日の先進国は、自国経済を発展させるにあたって、未成熟産業を育成する、さまざまな手段を使ってきました。関税、補助金、国営企業といった方法です。これによって若い産業の生産者を外部との激しい競争から守ったのです。ここ数十年、こういった政策を途上国は採用しにくくなっています。
今は一株当たり一票ですが、たとえば三年以上にわたって株式を保有している安定株主には、三倍の議決権
グローバル化は人類の歴史で何度も繰り返されてきた
一八七〇年代から、一九一四年の第一次世界大戦までの期間を「第一次グローバリゼーション
第一次グローバル化の時代は、人の移動については現在よりも盛んでした。特に、ヨーロッパ大陸から大西洋を越えて南北アメリカ大陸に向かう移民の波が大きかった。オーストラリアやニュージーランドも、この時期に人口を急速に増やしています。
一九五〇年代から七〇年代までのブレトンウッズ期には、どの国でも格差が縮小
自由貿易はよく賞賛されます。しかし、その「自由」とは誰にとっての自由なのでしょうか。端的にいえば、国境を越えて活動する投資家や企業にとっての自由
なぜグローバル化への批判が「一〇〇%貿易をしない国」の主張を意味するのでしょうか。要は程度の問題
だんだんと賃金を純粋なコストと見なすようになります。賃金は内需に貢献する要素であることをやめてしまいます。それは純粋なコストになり、すると企業は、賃金コストの削減の論理に入っていきます。
歴史において非常にはっきりとしていることがありまして、それは、住民が読み書きできるようになると経済が発展し始めるということです。
世界のすべての人が読み書きできるようになっていくという人類史上、極めて特別な時期に到達したのです。
労働者も消費者なのだから、という前提です。労働者も皆と同じように国民の一部分を成していたわけです。
「自由貿易」という強迫観念
しかし、(日本を含めて)私が最前列国と呼ぶ国々は、現代の姿を定め、新しい資本主義や経済組織の新しい形を発明していますが、成長率は一%、二%で、最大でも二・五%
米国とイギリスは共に、グローバリゼーションの主な担い手であり、規制緩和の担い手
自由貿易のイデオロギーは、普遍主義的であろうとするイデオロギーであり、地球全体に同じものを求めます。
保守と新自由主義では人間観が違う。主流派の経済学が想定するのは、原子論的な孤立した個人です。それに対し保守は、自分の生まれた国や共同体がもつ固有の生活様式や文化、国土や環境といったものに制約された社会的存在(Social Being)として人間を -
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米国でトランプが登場したり、英国がEUから離脱をするなどグローバリズムが崩壊に向かうとして、今後の世界を人類学の観点から予見する。
1998年~2016年のインタビューを取りまとめた本なので、まとまりに欠けるきらいがありますが、不平等を容認してきたアングロサクソンもこれ以上容認できなくなっている中間層の崩壊。アングロサクソンは、子供が大きくなると直ぐ独立させるので文化が世代を超えて伝承しない。識字率が上がって出生率が下がるのは近代化危機の兆候など、興味深い考察が満載です。
また、日本には移民はほとんどいないが派遣労働者が同じような扱いを受けているとあるのが印象的でした。 -
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自分の、世界情勢、とりわけヨーロッパ情勢への理解がたりないことを棚に上げて言う。
インタビュー集なので、読みやすいと言えば読みやすいけれど、納得できる感覚が得られにくい。
対談やインタビューの宿命かもしれないけれど。
例えば。
ハワイやインドネシアで育ったオバマ大統領が、ヨーロッパ情勢に疎かったという指摘は、そうなのかも、と思える。
アジア重視の外交政策をとっていたことも知っている。
ただ、再選後から、ウクライナ危機までのオバマ政権の外交策は、「見せかけだけでない革新的な知性によるものだった」と評価だけ書かれていて、どういう面を評価しているのかが、よくわからない。
この人のヴィジョンは、次のようなものだろうか。
ドイツは、アメリカに代わり、アメリカの自由主義とは違う原理によって、これからの世界の覇権を握る「帝国」になるだろうということ。
ヨーロッパの安定にはロシアがキャスティングボードを握っているけれど、ドイツの対ロ外交の態度が一定しておらず、不安定な状態が続くであろうこと。(そしてイギリスはEUを離脱するであろうこと。)
昨年、ドイツに仕事で行くことがあって、その豊かさに目を見張った。
あんなに寒い冬にも、ホテルのビュッフェはもちろん、スーパーにも生野菜のサラダがふんだんに、安価に並んでいる。
でも、電車で数時間の町では爆弾テロが起きている。
それ以来、一体ここで、何が起きているんだろう、と気になっている。
もう少しベーシックなところから、勉強しなくちゃ。