千葉雅也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読めばただちにセンスがよくなる!という単純な話ではないのだけれど、「哲学」の視点で物事を捉えるとこうなるのか、というところがとても新鮮だった。
千葉さん曰く「センスとはリズムだ。餃子が美味しいと感じることも、口の中でリズムとハーモニーが生まれるから」だと、思いもよらない例を出して説明する、
一旦表面上の意味というフレームを取り外し、「リズム」に注目すればその響きにこそセンスが宿っているのだと気づける。
フランス映画の意味深で芸術的なカットが続くさまも「リズム」?
純文学の一見して意味の捉えようのない不可解で抽象的な描写もリズム?
お笑いの「リズムネタ」は意味のない動きや言葉を独自のテンポと演技と声色でエンターテイメントに昇華させる、あれはまさしく「センス」ありきのもの?
言葉の意味だけを捉えれば何のことなのか理解し難い抽象的な歌詞がメロディとオケにのせられて歌われた時、感情の波に揺さぶられるのはそこに用意されたリズムが見事に働いているから?
哲学者とは常人には追いつくことのできない視点で物事を捉え、それを決して難解ではない言葉で見事に「リズム」にのせてスルスルと読ませるように翻訳できる技術の持ち主なのだろうか、ということに唸らされた。
自分が心を動かされたもののどこに「リズム」が潜んでいるのか、どうすれば心地よいと感じさせるリズムを整えた表現を生み出せるのか考えてみたくなった。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ勉強するということについて、割と巷の勉強本とは違った切り口で語ってくれているように感じた。
勉強することでアイロニーやユーモア的な今と異なる視点を身につけることになり、それは元いた環境からするとズレた、時には「キモい」状態になりかねない。これは、例えば田舎を出て都市部の大学や会社で働いて適応して行った時に、元のコミュニティの価値観に疑問を抱いて違和感を持つ、みたいなこととも近しいのだと思う。
一方で、ズレたままでいるのか、ズレを意識しつつその上で元のコミュニティの意味を理解して戻るのか、みたいなことが本書で言う「来るべきバカ」だと、自分としては理解した。
大学進学時に東京に行き、子どもができてからUターンしてくることになった自分の色々なものに重ね合わせる視点もあったりして、面白い「勉強論」だった。 -
Posted by ブクログ
デリダ、ドゥルーズ、フーコーなどの現代思想やフロイト、ラカンなどの心理学などの思想を日常生活で例え、分かりやすく解説した良著。
-2026/07/07再読-
いくつかの哲学書を経た今、この本の凄さがより分かるようになった。専門用語を多用せず読み手のハードルを可能な限り落として現代思想の考え方を解説した本である。
人間という生き物が他の動物と比べいかに逸脱、倒錯した状態を「正常」として扱っているかを問い直し、そもそも人間にはみな差異があり二項対立(善と悪など)で物事を区切る危険性を読者に考え直してもらえるよう可能な限り読みやすく作られている。
「アイデンティティがない」ことがある種の罪深さと結びつけられがちな昨今を打破する一冊にもなり得るのではないか。 -
Posted by ブクログ
美的判断に関するあれこれを「センス」という言葉をあらためて定義するところから始めて、展開していく感じ。そこに最後、そのセンスを構造的に支える概念としてのアンチセンスなるものが提出される。
これはもう千葉先生の真骨頂(!)とも言えるような。イデアルな命題に対するプラティカルなどうしようもなさ、ジレンマ(、当てはまる言葉なら如何様にでも)を、あいまいでグラデーションな緩衝地帯の中で一旦受け止めて仮固定する、<想像力>=やさしさで包み込むような千葉先生の言葉に僕は救われてばかりだ。
この本で言われていた「センスが良い」状態は自分がよく言ってる「ヒキがイイ」(即ち、技術としての偶然性)ってのに近い気もした。う〜〜ん。
論理的な文章を組み立てるはずなのに、あんなにも詩的で、やさしくて、何より溢れるセンスをヒシヒシと感じるような文章。僕もいつかあんな文章が書けるようになりたいなあ、と思いながらページをめくっていた。
ーーー
以下、喰らったパンチライン。
『何か風景を見るとする。形や色などのリズムがある。そこでは、ごくニュートラルに、非人間的に、安定と刺激の行き来が展開している。と同時に、そこに人間は、誰かわからない誰かの不在/存在をかすかに重ねてしまう。
人間の気持ちに応えたりせず、ただ展開していくだけの物質世界の「無情」がある一方で、そこに、誰かがいないという寂しさを透かし見る。この「無情と寂しさ」の行き来が「エモさ」なのないか、とも考えられるかもしれません。』 -
Posted by ブクログ
【初見の印象】
かの千葉雅也さんの著作。『現代思想入門』を読んで、敢えて白黒ハッキリさせないような姿勢に好感がある。
「勉強」というテーマは人生で永遠に問われるものだと思う。哲学にしろ、技術にしろ、処世術にしろ、学びたいという思いはある。私にとっての課題は、己の惰性であり、如何に自分のペースで継続をし得るか、この本から学べることを期待している。
【ちょっと読んだ印象】
(※「はじめに」「あとがき」を読んで)
「勉強」とは、端的に「ノリが悪くなること」という。今までの自分(たち)の感覚や価値観とは違うものが到達点としてある。逆に言えば、従来の振る舞いを停止して、立ち止まって考える営みなのである。
ところで、現代で勉強の手段自体は豊富にある。書籍やインターネットを通じて知に触れる体験はより身近になった。問題は、そのような情報と接する機会が無数にある分、1つひとつに向き合って勉強することが難しいということだ。
そんな情報の氾濫に飲み込まれ得る環境にあって、本書では勉強の「有限化」というのを掲げる。勉強によって「できないこと」「失うもの」を明確にすることを主眼に置くのだ。そうすることで、勉強によって今までの「ノリ」を離れ、その後新たな「ノリ」を獲得していく。それが本書における勉強の位置づけである。
勉強を原理的に考えるに当たって、「言語と欲望の問題」というややこしそうなものも扱うらしい。「はじめに」の中で「自己目的的」なノリを目指すというような表現があった。その具体的な内容を本編の中で読み取れればと思う。
【流し読みした感想】
(作成中) -
Posted by ブクログ
深く勉強するとは、その場のノリに悪くなることである。
アイロニー(ツッコミ)によって常識を疑い、ユーモア(ボケ)によってものの見方を変える。
その無限に続く探究を終わらせるのは、自らの京楽的なこだわりである。
自分で書いているこの文章も誰にも伝わらない浮いた表現だと思いますが、本書で言われている言語に敏感になることの大事さがわかった。
出来事から距離をとって自己目的的に振る舞うことが文学やダンス、音楽、絵画などの芸術だけでなく、ビジネスにも通用する考え方だという視点は目から鱗。
めっちゃ賢い人の本は、読むのに骨が折れますがめっちゃ面白いです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ難しい哲学の歴史が、私にもザックリですが理解できました!哲学ってこんなに面白かったのですね。
印象的だったお話を下記にまとめます。
↓ ↓ ↓
1.倫理の教科書の太字を覚えて、それを安易に現実にあてはめるような思考はよくない。
例えば…生活のなかで起こった出来事について、「それは弁証法的だ」とか「それは脱構築だ」とか、そういうことを言ってる自分ってカッコいいみたいに思ってしまうこと。それは概念をあてはめてさえいなくて、ただ言葉を貼り付けているだけである。
2. 哲学マウンティングにならないためには、哲学的にものを考え、自分の日常で起きたことやそこで感じたこと、考えたことと哲学をつなげることが大事。
3.アウレリウス・アウグスティヌスは、著作「告白」により、自分のどうしようもないことを延々と語ることによって、神の栄光を表現するという方法を発明した。山内先生曰く、涙無しでは読むことができない名著であるとのこと。 -
Posted by ブクログ
難解な文章を平易にしつつも誤解の無いように読者へと伝える筆者の凄みが際立った文章であると感じた。そこに、第六章「現代思想のつくり方」で説明されたような、今まで排除されていた他者性=「現代思想を平易な言葉で一回書いてしまう」ことを超越論化した姿勢を感じ、本書は「現代思想の入門書」としてだけでなく一種の「現代思想書」的な要素も含んでいるのではないかと感じた。
また筆者は第7章で、メイヤスー(ポスト・ポスト構造主義)の近代的有限性の後で見られる新たな無限性と、フーコー(ポスト構造主義)の「古代人」に見られる有限性を掛け合わせ、現代での新たな有限性(問題をダマで見ずに、一つ一つ対処する)を提示している。この主張内容は、「何でも繋がっているから結局全部やらなきゃ」となりがちな現代人、特に私に、「それでいいんだ」と思わせてくれるような新鮮な主張で、感銘を受けた。