千葉雅也のレビュー一覧
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本を読んでいると、作家と自分との相性というものが必ず出てくる。この人は日本語を書いているはずなのに、なぜか全く頭に入ってこないということがある。
けれど、この本の著者の言葉とはとても相性が良かったようで、私が拙い思考を巡らせていたことが見事に言語化されていて、今まで読んだ本の中で一番付箋を貼ったかもしれない。基本的に本は読み終わったら売ってしまうが、これは手元に置いて、いつでも見返せるようにしておきたいと思った。
センスとは何なのか。最近よく言われる「エモい」とは何なのか。そんなことを私なんかよりもっともっと頭の良い人たちが、遥か昔に概念として確立していたことに驚いた。
意味のないもの、 -
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青春時代にフランス現代思想に憧れた著者の、現代思想観を語り尽くした入門書。
大学の授業やシンポジウムでの講義内容が基になっており、現代思想のおおまかな掴み方がわかる。
新書として世に出されているためか、
「現代思想を学ぶメリットは、複雑なことを単純化しないで考えられるようになること!」
というように書かれているが、
「私達が普段使っている二項対立の思考方法に対して、
その思考の前提条件から取りこぼされている存在を探し出し、
その取りこぼされた存在を含めた前提を基に新たな思考を掲示する、
という現代思想的な方法を学べば、複雑なことを単純化しないで考えられる!」
…という風に私的に読み込めた -
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ジャック・デリダ、ジル・ドゥルーズ、ミシェル・フーコーなどの現代思想(ポスト構造主義の哲学)を、毎日の仕事や私生活などの日常生活に取り入れるとどういった態度や実践になるのか?をとても分かりやすく説明してくれてすごいと思った。
すべての決断は何の未練もなく完了だということではなく、つねに未練を伴っている。そうした未練こそが、まさに他者性への配慮である。我々は決断を繰り返しながら、未練の泡立ちに別の機会にどう応えるかということを考え続ける必要があるのです。まさにそうした意識を持つ人には優しさがあるということ。
外から半ば強制的に与えられるモデルに身を預けるのではなく、多様な関係のなかでいろんな -
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なんとなく手にとって読み始めた本。
自分が勉強の仕方がわからず、直面していた問題がこの本の中に書いてあった。
マクロ的にも、ミクロ的にも「勉強」というものが哲学(説明)されている。
私が個人的に腑に落ちたのは、そもそも言語は生きてきた環境などによって意味が変化しやすい。言語の不透明性に気づき、言語をわざと操作する意識をもつようになることこそがどんな勉強にも共通する一般に重要なこと、ということ。
そして「玩具的な言語使用」こそが勉強の根本だということ。その上で、「言語のアマ・モードとプロ・モード」を使いこなしながら勉強すると自他の区別ができてより勉強がおもしろくなる。
本の感想をここに書 -
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現代思想=20世紀フランスのポストモダン思想の入門書。デリダ。フーコー、ドゥルーズ+ガダリの思想を中心に精神分析との関連を含めて極めて平易に判り易く解説した入門書。
自分はデリダやドゥルーズを背伸びして読んでいた30年前にこういう本があればなぁという印象。
昔読んだ、デリダやドゥルーズの内容はもうすっかり忘れてしまっていたけど、今、改めてポストモダン思想に触れてみると、意外にも今の自分の考え方、物の見方、認識などその多くの部分が「ポストモダン思想」の影響を強く受けていることに今更ながら気づく。
ポストモダンもとうの昔に過ぎ去りそれなりの批判もある現在において、改めて意識したその影響が良いも -
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勉強とはこれまでの自分の自己破壊である。
私たちは常に環境に依存して、個性でさえも他者依存的なものである。
勉強とは依存していた環境のノリから、新たな環境のノリに入ることである。
環境のノリから自由になるためには、アイロニー(深掘り)とユーモア(目移り)が有効。アイロニーは、根拠を疑うこと。ユーモアは見方を変えること。アイロニーはやりすぎると機能停止に陥るので、適度なところで中断しユーモアへ折り返すことで自分の感覚を拡張する。これがまさに自己破壊。
…………
一見が難しそうだが、何か新しいことを学ぶと、そこで出会った言葉や考え方に最初違和感を持つが、それが馴染んでくるともとの感覚に戻れなくな -
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私的な存在論が、新しい展開をするインスピレーションになった。ありがたい。
あまりにも簡単に読めて、理解できる内容と文体なので、拍子抜けする。
高名な学者が、飲茶の哲学解説書と同レベルまで、難解な現代思想を噛み砕いてくれた、ということに価値があるというのが、新書大賞&14万部という高い世評を生んだのだろうか。
⚫︎はじめに
現代思想の特徴・キーワード
複雑なことを単純化せず考える
二項対立の脱構築
秩序からズレるもの、差異に注目
秩序を仮固定とみなし、たえず逸脱が起きながらも諸要素が共存する状態を考察している
ただの相対主義に陥らない
私的例え
ロシア・ウクライナ戦争において、 -
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中学の頃は小説なんて全然読めなかったんです。
でも勉強(受験用の)は結構やっていたと思います。
どっか私立の受験に落ちて受験勉強=勉強って思い込んでいた自分の価値観がめちゃくちゃに崩れたんですよ。
それ以来、自分を俯瞰するってことがクセになったような気がします。
この辺から小説を読めるようになってきて、何回も読んだ漫画をもう一回読み返しても違った楽しみ方ができるようになってきたんです。
何が言いたいかって?
こっからこの方が言う勉強ができるようになってきたと思うんです(できてはいない)。きっとこれがいったんの自己破壊だったと思うんです。
アイロニーとユーモアを繰り返すことを意識的にするようにな -
Posted by ブクログ
環境にどっぷり浸かってることで生じる、そのノリとの癒着やマゾヒズム、すごくわかる気がしました。硬直した自分を破壊して、バラバラにするところからはじまるのが勉強。周りの空気にのまれずノリの良くないキモい人になってみるのが第一歩かな。言語さえも他者と割り切れたなら、もっともっと軽やかに自分の内なるものを曝け出して、それを拾ってくれる他者と『勉強』を深めていくことができるのかもしれない。
社会人経験、子育て経験積んだ今の方がずっと、あぁ生きている限り一生勉強なんだ、と思う機会が多いので、読んで良かったと思いました。何度も読み返して理解を深めていきたいです。たくさん『勉強』をして、いろんなことを面白が -
Posted by ブクログ
ネタバレ最近考えてたことが深められて、めちゃ良かった。
勉強の哲学、というタイトルで想像していたこととはちょっと違った気もするけれど、そんなことも忘れて読んだ。
勉強は、どの学問分野でも、新しい言語の世界を知ること、という側面に着目。つまり自分のこれまでの意味の世界を破壊し、更新する、という性質を持っている。
だから、勉強は自分のノリを変化させる。勉強は、獲得ではなく喪失。
…
ことばの使い方。
この前読んだ孤独の本で、孤独という言葉をめちゃ解体して考え続けてて、
その時ふと気づくのが、普段使ってる言葉、本当に適当に使っているなーということで、
つまりノリで、その場の状況とかでだいたい