サラ・ウォーターズのレビュー一覧
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いやいやもう、これは堪能しました。心理描写の精緻なこと、時代背景の巧みな取り入れ方、人間性への深い洞察、どんどん引き込まれていく語り方、どれをとっても一級品。すばらしい。
…なのに☆四つなのは、上巻がちょっと長いかなあと思うから。もちろん、この上巻があってこその下巻の展開なわけで、それはわかるのだけど…。せっかちな読者(わたし)はいつまでたっても「ミステリ」にならないので、これって高級な百合もので、紹介文の「傑作ミステリ」って看板に偽りありじゃないの?などと思ってしまった。
「事件」が起きるのは下巻に入ってからで、そこからはもう怒濤の展開。息を詰めて一気読みすることになる。解説の大矢博子さ -
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ネタバレ背徳感とミステリーは相性がよいのかな。
良心の呵責にとらわれて騙したつまりが、嵌められていたスウ。いっぽう、紳士に泥棒ファミリーへと連れてこられたモードはとんでもない真実を知る。
途中の経過がかなり退屈なので、飛ばし読みしたが、筋は拾えた。
諸悪の根源たちは最後に成敗されるのだが、ひょっとすると、リチャードもサクスビー夫人ですらもさほど悪人ではないのでは、と思える部分もある。金欲にとられた人間はみずからを滅ぼす、というのが本作の教訓なのだろうか。二人の誤解が解けるラスト。
しかし、個人的にこういう騙し愛みたいなのは好きじゃない。物語としては面白いのだけど。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ下巻では主人公ファラデーと領主館の一人娘キャロラインの恋愛模様が描かれる中、相変わらず館は陰鬱な空気に満たされている。そして起こる悲劇。
真面目で、理性的で、思慮深い主人公。
それなのに、悲劇をますますこじらせ、ややこしくしているのは間違いなく彼であり、彼もまた狂気に蝕まれているのだとわかってくる。
ハンドレッズ領主館って一体なんだったのだろうね、というはっきりした答えがないまま物語は終えたが、そういう作品であることを前もって知っていたのでさほどショックはなかった。
が、しかし。
下巻の末尾にある、三橋曉氏の解説にて一つの疑惑が述べられた時には、ドキリとしてしまった。この作品に一つの解答 -
Posted by ブクログ
これがミステリといえるか否か解釈は微妙かもれない。
多くの方はゴシックホラーとして読むのではないか。
最後に全ての辻褄のあうようなミステリーがお好きな方の好みではないかも。
原題はThe Little Stranger。
邦題の『エアーズ家の没落』として"まるっと"読むならば、これは滅びの物語だ。
ラストに向けて、館はその不気味さを増していき、物語は怪奇ホラーの色を強く帯びていく。
これだけでも充分楽しめると思う。
だが、原題に意図される物語として読んでいけば、どこか”ひっかかり”を感じるはずだ。
そして、それはなぜかと問うていくと、この物語はもっと恐ろしい抑圧された執