サラ・ウォーターズのレビュー一覧

  • 黄昏の彼女たち 下

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    いやいやもう、これは堪能しました。心理描写の精緻なこと、時代背景の巧みな取り入れ方、人間性への深い洞察、どんどん引き込まれていく語り方、どれをとっても一級品。すばらしい。

    …なのに☆四つなのは、上巻がちょっと長いかなあと思うから。もちろん、この上巻があってこその下巻の展開なわけで、それはわかるのだけど…。せっかちな読者(わたし)はいつまでたっても「ミステリ」にならないので、これって高級な百合もので、紹介文の「傑作ミステリ」って看板に偽りありじゃないの?などと思ってしまった。

    「事件」が起きるのは下巻に入ってからで、そこからはもう怒濤の展開。息を詰めて一気読みすることになる。解説の大矢博子さ

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    2016年03月11日
  • 半身

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    これをミステリーと呼ぶべきか。
    むしろわたしは恋愛小説と呼びたいと思うくらいに、主人公の純真な恋心を見事に描いている。

    19世紀のイギリスに存在した牢獄を舞台にしたお話。
    牢獄を慰問のために訪れる役についた少女と、その牢獄にとらわれている霊媒少女との謎と恋の物語である。

    ストーリーというよりは、その雰囲気を読むべき小説。
    何故少女ふたりは恋に落ち、そしてその恋はふたりをどこへ向かわせるのか。重苦しい世界を描きながら、暗い空の下で浄化しそうな恋のため息が聞こえてきそうな物語です。

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    2015年07月25日
  • 荊の城 下

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    ネタバレ

    背徳感とミステリーは相性がよいのかな。

    良心の呵責にとらわれて騙したつまりが、嵌められていたスウ。いっぽう、紳士に泥棒ファミリーへと連れてこられたモードはとんでもない真実を知る。


    途中の経過がかなり退屈なので、飛ばし読みしたが、筋は拾えた。

    諸悪の根源たちは最後に成敗されるのだが、ひょっとすると、リチャードもサクスビー夫人ですらもさほど悪人ではないのでは、と思える部分もある。金欲にとられた人間はみずからを滅ぼす、というのが本作の教訓なのだろうか。二人の誤解が解けるラスト。

    しかし、個人的にこういう騙し愛みたいなのは好きじゃない。物語としては面白いのだけど。

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    2015年06月05日
  • 荊の城 上

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    ネタバレ

    再読だが、後味が悪かったというぼんやりした印象があった。

    ヴィクトリア朝時代を舞台にしたミステリー。
    結婚詐欺の片棒を担ぐために侍女になった女スリと、大富豪の娘。騙しているのに、ほのかに友情が芽生えて。

    泥棒家業ファミリーの前振りがあまりに長くていらいらするが、だんだん話が進んで目が離せなくなる。

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    2015年06月05日
  • エアーズ家の没落 下

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    ネタバレ

    結局、怪奇現象の原因は分からないまま。拍子抜けはしたけど、どうでもよくなるぐらい次々に起こる不幸に翻弄された。主人公が結婚しようと思ったのは館が好きやったからやんね、絶対!
    最後の一文で主人公が厄を招いたと思ったが、解説を読んで、原題に注目したら…そういうことか!

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    2014年09月05日
  • エアーズ家の没落 下

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    怖かった。登場人物たちの追い詰められていく心が迫ってきて、びくびくしながら読んだ。
    自らが意識しない妄執の、なんと恐ろしいことか。
    はっきりとした解答のないまま、すっと手を離されたような最後。

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    2013年06月27日
  • 夜愁 下

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     普通の小説では、禁じ手とされる手法を用いていると思う。
     いや、禁じ手ではないんだけど、小説を読みなれた人ならば「ああ」と言いたくなる類の手法。
     けれども、登場人物が魅力的だからか、あるいは、作者が物語を愛し、それを描写し続けるからか、最後まで惹きつけられながら読んだ。ラストの1行にときめく。くそう。やられた。

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    2013年06月24日
  • 夜愁 上

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     淡々と。
     静かに、(登場人物たちにとって)あたりまえのような日常。けれども読み手にとってはなぜか引き込まれてしまう。

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    2013年06月24日
  • 荊の城 下

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     あらすじから想像もできない展開に巻き込まれる。すごいロマンスだ。
     スーザンとモード、2人のヒロインが魅力的なのでぐいぐいと読ませる。

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    2013年06月09日
  • 荊の城 下

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    上巻の第一部終了から、怒涛の勢いで読み終えた。
    スウとモード、二人が翻弄される運命に、展開がどうなるのかハラハラしながら読み終えた。
    言うなれば女はどこまでいっても母親で、情をかけて育てた子どものことを最終的には見捨てられない宿命なんだろうな。そういうところは女性作者らしい、と思ったりした。
    下巻の表紙絵の指先が妙になまめかしくて、物語に似合っている。

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    2013年05月28日
  • 荊の城 上

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    第一部の終わりでの展開に目が出た。
    私はミステリはさほど読まないから、元々予想は出来ない読者とはいえ、全く思いもかけない方向から頭を殴られたような感じだった。とにかく続きを買ってきて読まないことには何とも先が気になる。
    全体の雰囲気として、薄暗くて湿度が高い。そして(良い意味での)生理的嫌悪感みたいなものを読みながらずっと感じていた。

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    2013年05月28日
  • 半身

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    ネタバレ

    霊が絡んでくるので、どんな結末になるのかと思っていたら、やられました。こんなどんでん返しがあるとは。看守は予想がついたが、小間使いはノーマークでした。シライナの日記にも度々登場していたにも拘らず。この人の作品は初めて読みましたが、他のも読んでみたくなりました。というわけで「荊の城」も注文中。

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    2013年02月19日
  • エアーズ家の没落 下

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    ネタバレ

    下巻では主人公ファラデーと領主館の一人娘キャロラインの恋愛模様が描かれる中、相変わらず館は陰鬱な空気に満たされている。そして起こる悲劇。
    真面目で、理性的で、思慮深い主人公。
    それなのに、悲劇をますますこじらせ、ややこしくしているのは間違いなく彼であり、彼もまた狂気に蝕まれているのだとわかってくる。

    ハンドレッズ領主館って一体なんだったのだろうね、というはっきりした答えがないまま物語は終えたが、そういう作品であることを前もって知っていたのでさほどショックはなかった。

    が、しかし。

    下巻の末尾にある、三橋曉氏の解説にて一つの疑惑が述べられた時には、ドキリとしてしまった。この作品に一つの解答

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    2013年01月29日
  • エアーズ家の没落 上

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    数多くの人生を外側から見つめてきた町医者である主人公ファラデーは、エアーズ家の人々と徐々に親密になってゆき、それと同時に彼ら凋落していく様を目の当たりにする。時にその原因の一端を担ってしまうことも。
    テンポは緩やかだが、だからこそ瞬間的な衝撃ではなくじわじわ蝕んでいく暗さが味わえる。ここまでどん底に落ちてしまったハンドレッズ領主館。下巻では一体どうなるのだろう……。

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    2013年01月10日
  • 荊の城 上

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    ネタバレ

    ペテン紳士と元掏摸の侍女とお嬢さま。
    この三人の間で陰謀が渦巻き、ふたりの揺れる感情が迷いを生む。

    一部と二部で視点が変わり、スウとモードのお互いの心境の変化が見れて良かった。
    愛ゆえに欺く決心って切ない。

    長いけどあっという間だったので下巻も期待。

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    2012年10月18日
  • 荊の城 下

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    後半は、どうなるのかすごくドキドキして、一気読み。

    今ちょうど英国メイドマーガレットの回想も読んでるところ。
    合わせて読むと、茨の城の異常さが半端なく。怖い。

    19世紀はまだ闇の時代ね…
    よくでてくるロマンス小説からは伝わらないロンドンの汚さや、闇が伝わってくる。

    精神病院のくだりは、すごく狂気が移りそうな気分に。

    気分が小説に引きずられてしまうので、ナィーブなときには読まないほうが吉。

    レベッカが、好きな人は好きなんじゃないだろうか、これ。

    空気の匂いまでが伝わる小説は久しぶり…ほかのサラ・ウォーターズの小説も読んでみようかな

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    2012年09月08日
  • エアーズ家の没落 上

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    ネタバレ

    ミステリじゃなくてホラー…なのか…??

    どんな種明かしが来るのかと、息せき切って最後まで読み通した。---が…。

    純然たる超常現象だったんだろうか?
    ポルターガイストの原因といったら、思春期の少女が定番だけど?
    医者が人を暗示にかけるのも簡単かも?

    と、ひとしきり思いめぐらしてしまった。

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    2011年09月11日
  • 半身

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     ラストが、え〜つて感じで、いい意味でも悪い意味でも、ありのような、なしのような… ラストをどうとるかで好き嫌いが分かれる作品です。
     自分も最初はなし派でしたが、先に読んでいた妻とあえこれ言いあっていたら、細部の仕掛けもわかってきて、あり派に転びました。

     



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    2017年08月15日
  • エアーズ家の没落 上

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    これがミステリといえるか否か解釈は微妙かもれない。
    多くの方はゴシックホラーとして読むのではないか。
    最後に全ての辻褄のあうようなミステリーがお好きな方の好みではないかも。

    原題はThe Little Stranger。
    邦題の『エアーズ家の没落』として"まるっと"読むならば、これは滅びの物語だ。
    ラストに向けて、館はその不気味さを増していき、物語は怪奇ホラーの色を強く帯びていく。
    これだけでも充分楽しめると思う。

    だが、原題に意図される物語として読んでいけば、どこか”ひっかかり”を感じるはずだ。
    そして、それはなぜかと問うていくと、この物語はもっと恐ろしい抑圧された執

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    2011年07月10日
  • エアーズ家の没落 下

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    解説にあるように、ジャンル付けが悩む内容。
    でも本当に怖くって、ミステリーじゃなくてホラー色の方が強いみたい。
    古いお屋敷って確かになにか憑いていそうな感じがあって、そういうイメージを上手く生かしている小説だと思う。

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    2011年04月18日