サラ・ウォーターズのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレどこをどう受け取るかで、物語の見え方が変わってくる奥深い作品だった。
上巻のレビューで「これはホラーなのか?それともサスペンスなのか?」と書いたけど、下巻を読んで、その答えは読む人によって違ってくると思った。
他の方のレビューを読んでみると、自分とはまったく違う視点から物語を捉えている人もいて面白い。
そうした受け取り方の幅こそが、この作品の魅力だと思う。
私は、幽霊よりも人間の内面に強く恐怖を感じるので、上巻からうっすらと違和感を感じていた“ある人物”が鍵を握るサスペンスだと感じた。
下巻に入ってからのあの人物の内面からじわじわ滲み出ていたものは、自分にとっては1番恐ろしかった。
読者の想像力や読み方によって、この物語はホラーにもサスペンスにもなるし、“誰が”という見方までもが変わってくる。
解説の「カレイドスコープをのぞくような物語」という言葉がまさにぴったりの作品。
謎を解く探偵のような人物は登場しないので、すっきりとした結末を求める人にはオススメできません。
少し長く感じるところもあったけど、不気味な館に没入し、じわじわと忍び寄る恐怖を味わう時間はとても楽しかった。 -
Posted by ブクログ
〈海外サスペンス〉で検索して見つけた一冊。
「〇〇家」と名のつく“館もの”が大好きなので、好きな要素が全部詰まってる気がして、手に取らずにはいられなかった。
その予感は大当たりで、期待通りの世界観にのめり込んでしまった。
かつては栄華を極めたエアーズ家。しかし、時代の波には抗えず、今では見る影もないほどに荒れてしまっている。
医師ファラデーは、診察のため久々に館を訪れるが、その変わり果てた姿に驚愕する。
その館では次々と不可解な出来事が起こり始める…
これは果たしてホラーなのか、それともサスペンスなのか?今のところはまだわからない。
私はホラーには興味がないので、できればサスペンスの方向へ進んでほしいと祈ってしまう。
情景も人物も丁寧に描かれていて、仄暗くて不穏な空気が漂ってくる。
その静かな緊張感に引き込まれて、自分も館の中にいるような没入感がたまらない。
とにかく下巻が気になって仕方がない。
「ちょっと──その、変なんです」
この奇妙な異変は一体何なのか?早く確かめたい。
どうかサスペンスでありますように…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昔、少しだけ読んで読むのを
やめていた本。
田舎の泥棒一家が金持ちを夢見て
その夢をスウに託して…
モードの夢見る脳内お花畑っぷりに
スウは可哀そうにと憐れみを浮かべる
そして私も笑
それは次第に同情に変わり
モードを見る目も変わってくる。
男女、女女、とにかく
人と人の絡みが、文章によって
こんなに濃密なエロスになるとは…
サラ・ウォーターズもだが
中村有希さんの翻訳力にも脱帽である。
上巻最後の天地がひっくりかえる
どんでん返しは見もので
下巻にすぐさま手が飛びます。
下巻も渦巻く陰謀に
早くその答えを知りたくて
ページを捲る手がとにかく止まらない。
最後に明かされた答えは
登場人物も読む私たちにも
絶望と衝撃をあたえます。 -
Posted by ブクログ
これはなかなか読み応えがあってね。
いや文字多いわーってことでへこたれそうになるかと思いきやなんか上手いこと読ませてきて。そんなドラマチックな展開があるわけでもないようにも思うんだけど。。アレだ、言葉の魔術師。てきな。
で、何が読ませるって老嬢と呼ばれてしまう30女の悲哀というかもう男も女もこの年までモニャモニャしてるとろくな事にならないというか厨二病的な情けなさを持って同じく厨二病を患う読者の心にグイグイくる。
最後もまぁ酷いというか切なくなるわけで、こういう暗いというかパーティーピーポーには分からないぜこの気持ちみたいなのは小説の醍醐味ではないか。 -
Posted by ブクログ
最初に明言しますがこの物語の真の主人公は人間ではなく「館」です。
「レベッカ」「ねじの回転」さらには「ずっとお城で暮らしてる」など館を舞台にしたゴシックホラーは枚挙にいとまがありませんが、本作もまたその系譜に連なる意欲作。
主人公は田舎の中年医師。
子供時代に訪れた領主館に憧れを抱き続ける彼が、ふとした事から一家と知り合いになり……
中年医師と不器量な令嬢の初々しくもじれったい恋愛模様などロマンス要素もあるのですが、最大の見所はやはりこれでもか!と詳細な館の描写。
時代がかった洋館の外観・内装・調度の様子が作者の美質である流麗な筆致で綴られ読者を陶酔に誘う。
洋館で連続する怪奇現象、徐徐に精神に変調をきたしていく住人たち。
ネタバレになるので詳細は省きますが、きちんとした解決を望む方にはお勧めしにくいかも。
ジャンルボーダーと言いますか、読み方によって全体の印象はおろか結論そのものがガラリと変わってしまう。最終的な解釈は読者に委ねられます。それがまたじわじわと恐怖を演出する。
英国・洋館・一族・騒がしい霊。
これらのキーワードに魅力を感じる方にお勧めです。 -
Posted by ブクログ
サラ・ウォーターズの新作ときては、読まないわけにいかない(感想書くのは遅くなりましたが)
翻訳されないわけではなく、寡作なんですね。
第一次大戦後の1922年。
戦争で父親と兄たちを喪い、老いた母と二人で暮らすフランシス。
屋敷を維持するのも難しく、下働きも雇えないので自ら労働する日々でした。
やむなく下宿人を置くことにして、若夫婦がやってきます。
レナードとリリーの夫妻。
ちょっと嫌味だけど明るいまあ普通の夫。
綺麗で繊細なところのあるリリー。
初めて家に他人を入れてギクシャクする描写も綿密で、これがいつしか思いがけない恋へと転化していきます。
フランシスの母親が生活のためにも娘の結婚を望むのは、ある意味では当然のこと。
しかし、フランシスにとっては重過ぎる難題。
時代もあり、周りにも理解は求められない閉塞状況。
それでも、惹かれあい‥
気恥ずかしいぐらい甘い恋愛の揺れ動きと盛り上がり。
ところが‥!
ミステリというより文学といったほうがいいかもしれないウォーターズ作品ですが、事件は起こります!
捜査も裁判も最近のものとは違う雰囲気で、ちょっと距離がある描写のなか、窮地に立つ主人公たちの不安、緊張、悲しみ、思いがけない面‥
救いはないでもないのですが~胸が締め付けられるようでした。
綿密な描写が巧みなだけにね☆