サラ・ウォーターズのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
主人公のスウはロンドンの下町で育った掏りの娘。育ての母親、サクスビー夫人に大切に育てられる。
スウが十七になったある日。顔馴染みの詐欺師がスウのところに一つの儲け話を持ってくる。詐欺師が金持ちの令嬢を騙して結婚する手伝いをスウにして欲しい、というのだ。
スウの役目は令嬢の侍女。令嬢の傍で詐欺師のサポートをする役どころだ。躊躇いながら、不安に苛まれながら、スウは田舎の城館、ブライア(荊)城へと向かう。
原題の Fingersmith は スリ の意。なるほど。幾重にも意味があるような気がする。
ただし、邦題の「荊の城」も作品にぴったりの題名。メインの舞台であるブライア(荊)城。その暗い荒んだ雰囲気と、そこで繰り広げられる人物模様。ブライア城はスウの上にも令嬢モードの上にも大きな影を落としている。
スピード感がある語り口ながら、物語の前半はゆっくりと進行する。もどかしさや歯痒さを堪えて後半に進めば、二転三転する筋立てとともに、今まで読んできた前半にまったく違う意味が存在したことに驚かされる。
読み応え満点。驚愕度も大きく、さすがに評価の高い作品だなと思わせる。
あ、でも、スウとモードのあれこれでちょっとだけ「あれ?そういう話だったの…?」と思ったりも。(2005-02-24)
Fingersmith ( by Sarah Waters ) / 邦訳 : 中村有希 -
Posted by ブクログ
ネタバレ買ってしばらく積んでいたのを読み始めたら一気に進んで、さっそく下巻を買ったら続きが怖すぎてまたしばらく放置した。
怖いって、この先に何が起こるかということ。不幸とか裏切りとか絶望とか手の施しようがないとか、そういう事態に、もうかなり自分が入れ込んでしまっているこの登場人物たちが、間違いなく突き進んでいっているのが憂鬱で。
憂鬱で夢も希望もないなりに、きちんと人生を歩いている人が、ふと見つけた謎めく相手にめちゃくちゃに心奪われて、期待をかけて信じて柄にもなくものすごい努力を重ねて、っていう姿にどうもずるずると共感してししまう。
なので、それがどうあっても叶わないのを、認めたくなくて足掻いたあげく裏切られて思い知らされて、それでも人生を続けざるを得ない、というのは、「半身」以上に登場人物が好きだったぶん、けっこう堪えた。
上巻の犬の事件での、「この先後悔することになる瞬間の最初が」みたいなくだりが何度も跳ね返ってくる。
領主館へのエアーズ一族以上の執着とかキャロラインへのぼろぼろの思い入れとか(よく考えたらかなり年の差があると言うかファラデーがいい年だった)、もうファラデー=主人公が一番あぶなっかしい、怖い、しかも本人気付いてなくてどんどん状況が悪くなっている、という一人称の小説で稀にある暗欝な緊張感が味わえた。
ただ、その、語っているのはファラデーだという点がいろいろと疑わしくもさせたり。
わかっていないふりもできるわけだ、とか色々。
最後の事件については「お前だよ」と思う。
それはそれで非常に苦々しい話ではあるけれども、逆にそうであった方がまだファラデーにとってマシだとも思う。完全に部外者のまま、あの館にどんな役割も持てなかったよりは多分。
キャロラインと庭を歩くいくつかの場面や、キャロラインに求婚して頷かれるくだり、ロデリックとちょっと親しくなったり夫人に騎士道精神を見せたり、そういうところどころ素晴らしい情景があるぶん、そもそも回想だというのと合わせてひたすら怪しいし悲惨。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「茨の城」にいろんな意味でときめいたり沈みこんだりしながらニヤニヤ読み終わって、「半身」だと不安や憂鬱や、お前そっち行ったら危ないだろ!って心配やどんよりした共感を持ちつつ、一気に突き落とされてしばらくぼんやりした、
ということがあったので、サラ・ウォーターズは気軽に読めないし読んだ後楽しくはならない、という印象。
だから覚悟はしていたはずなのに、いろいろ予想以上だった。
「一人称・回想・伝聞まじり」の語り方は大好きで、巧いことやられると本当にすっかり騙されたりまんまと感情移入してつらくなったりするけれども、まさにそんな状態。
登場人物はだいたい厭らしい部分や小汚い部分の方が多くて、それでもだんだん好きになったり心配したりするようになる、というのが陰影のある描きかた、ということなのかと今回思った。
あと「信用できない語り手」を実感。 -
Posted by ブクログ
今回は今までと趣が違うゴシックホラー風の作風。まるでスーザン・ヒルみたいだ。荊の城のようにテンポいい作品ではなく、夜愁のようにじんわり話が進行する。今回は同性愛が出てこなかったのも、これまでとは違うが、キャロラインのキャラは同性愛の女性に近いものを感じる。見た目は悪く、いかつい、気難しい女性だがどこか魅力のあるキャラクター。弟は母に似て美男だが、戦争の傷で美貌は損なわれ障害もある。気難しいが、誇り高く魅力のあるキャラクター。語り手である医者、これがどうしようもない。魅力の無いキャラクターなのだ。しかしこの時代の普通の男性はこんなものなのだろう。モヤモヤしたものが残るが良い作品。再読が必要かな?
-
Posted by ブクログ
ネタバレお屋敷に怪奇現象とくれば、これはもう大好物。
どう読むかに関しては読者の手に委ねられているので、読後、「ねぇ、ねぇ、どう読んだ?」と聞いて回りたくなる。
私はといえば・・・・
おや、と気になる、突飛なというか異常ともいえるような行為があったので、上巻なかばからあたりをつけて読み進めていたため、ラストはああ、やっぱり・・・・・と納得。
超常現象をまじえたサイコ・スリラーとして読んだ感じ。
終盤で、登場人物のある決断に伴って件の人物の異常性が、これでもか、とあぶりだされてくるあたり、怖いのなんの。
そう見定めて読むと、原題の The Little Stranger の Little がとてつもない怖ろしさで迫ってくる。
とはいえ、もう一人のstrangerのほうも、手立てがあるしなぁ。
The Little Stranger by Sarah Walters -
Posted by ブクログ
サラ・ウォーターズの新作。
長篇4作目。
英国のウォーリックシャー地方で、200年以上の歴史を誇るハンドレッズ領主館。
近在で診療所を営む医師ファラデーは、友人デイヴィッドの代診で、館へ往診に出向く。
母親がメイドとして館に勤めていたことがあり、30年前に一度、園遊会の時にこっそり入ってみた思い出があった。
館がすっかり寂れている有様に、驚愕することに。
家族は、先代の奥方エアーズ夫人と娘キャロラインと息子ロデリック。
奥方は美しかった名残をとどめて品があるが、昔を懐かしむばかり。
館の当主となった息子は責任を感じて奮闘していたが、経済的な危機は土地を切り売りしても追いつかない。
見るからに具合が悪そうで、戦場で顔にも火傷を負い、足を引きずる状態。
娘のキャロラインはしっかりした様子だが、身分に似合わぬ家事もしていた。
美人とはいえず、あまりの貧しさに将来の道は閉ざされそうだった。
部屋は一部しか使っておらず、住み込みの女中はまだ少女のベティが一人いるだけ。
そして、次々に怪しい出来事が起こってくる‥?
文学的な雰囲気ですが、内容はゴシックロマンとミステリとホラーとの融合?
なめらかな文章で、複雑な話もわかりにくくはありません。
ダークで謎の多い展開、精緻な描写で、ぐいぐい引きこまれます。 -
Posted by ブクログ
ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。
かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
その姿を主治医の視点から描く。
とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。
ホラーであれば、怪異を体験するのは語り手なのだ。
が、ファラデーは決してそれを認めない。
彼の根底には、上流社会に属しているエアーズ家の嫉妬がある。
また、悪霊がいると、エアーズ家をでていきたがっていた使用人は、結局ずっとこの家に居続けた。
誰一人として信用がおける語り手が、傍観者がいないのが、この物語の恐怖の源なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。
かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
その姿を主治医の視点から描く。
とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。
ホラーであれば、怪異を体験するのは語り手なのだ。
が、ファラデーは決してそれを認めない。
彼の根底には、上流社会に属しているエアーズ家の嫉妬がある。
また、悪霊がいると、エアーズ家をでていきたがっていた使用人は、結局ずっとこの家に居続けた。
誰一人として信用がおける語り手が、傍観者がいないのが、この物語の恐怖の源なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
過去へと遡る物語っていうのは、そんなに珍しいスタイルではないと思うけど
この物語はこの語り方によって素晴らしい味わいになってる。
素晴らしく切なくほろ苦い味に。
だけど決して読後感は悪くない。
それは物語が遡ることで現在閉塞してる彼等彼女等の関係の始まりがラストになっているから。
いまでこそぐずぐずになっちゃってるけど、始まりはこんなにも輝いていたんだって。
それは一つの救いであると同時に、切なさを加速させるものでもあるのだけれど。
今まで高度な技術でもって「物語」を書いていた著者がついに「人間」を書いた!
とかあおってみる。
良質なセピア色の名画を観る感覚で読んでいけます。
日本語タイトルも秀逸。
あ、読んだことある方はご存じとは思いますが割と同性愛的表現が多いので
(というか今回結構直接的…)生理的にダメだという方はご遠慮ください。
でも食わず嫌いはもったいないとおもうな〜
…いや本の話ね。