大谷真弓のレビュー一覧
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アフェイリア国では大雨が2か月つづき、洪水の危険が迫っているが、指導者たちは偽りの安全安心情報を出すばかりで、ただ手をこまねいている。そんななか、最高指導者の「スプリーマ」がこっそり逃げ出してしまい、彼女の犬と夫が残された。夫は、スプリーマのメイドで15歳のグローリアに代役をさせることを思いつく。グローリアは、街に出ていって人々を力づけ、人気を博すが、だんだんそれだけではやっていけない政治の闇があらわになる……。
むむむ……断章をつみかさね、すばやい切りかえを駆使しながらテンポよく語るというねらいなのかもしれないけど、その分、サイドストーリーも増え、話の流れが複雑になった印象。グローリアが政治的にけっこう詰んだ状況に置かれているのと、途中途中でけっこうな犠牲者や、動物の死がたくさん(でもさらりと)描かれるのも、リアルといえばリアルだけどちょっとつらい。
「最高のウソ The Supreme Lie」とタイトルにあるけど、どれかひとつでバッチリ解決が生まれるわけじゃなく、スプリーマの振りをするといううそを皮切りに、いっぱい小さなウソを組み合わせ、そこに偶然のラッキーなども重なって大団円へ向かうという形かな。 -
Posted by ブクログ
監督:ポン・ジュノ、主演:ロバート・パティンソンで映画化が進行している長編SF。あらすじを読んで面白そうだったので、当たってみることに。
人類が、居住出来る惑星を求めて地球外へ旅立つ近未来。命が保障されない危険なミッションにおいて、特別な役割を持つ者がいた。"エクスペンダブルズ(使い捨て人間)"―――それは、命を落とす可能性の高い任務を担当し、死ぬ度に過去の記憶を受け継いで、新しい肉体(クローン体)で生まれ変わる役割を持つ者。
氷で覆われた惑星ニヴルヘイムでのコロニー建設ミッションに"エクスペンダブルズ"として参加するミッキー・バーンズは7人目のミッキー、つまり"ミッキー7"であった。とある任務で6度目の死を覚悟したミッキー7だが、生き残ることに成功して基地へ帰還する。しかし、そこには次のミッキーである"ミッキー8"が既に生み出されており―――。
あらすじを読んですぐ頭に浮かんだのは、映画『月に囚われた男』だったので、サスペンス・ミステリ調の作品になるものと想像していたのだが、実際に読んでみた印象は、オーソドックスなSFアドベンチャー。「"再生産"出来るために使い捨てられる、記憶を引き継ぐクローン体」というのは、SF好きには堪らない設定で、さらに「本来1体しか存在してはいけないクローン体が、同時に2体存在してしまっている」となると、その設定を活かしたトリック等が期待されたのだが・・・だが・・・。
映画化のタイトルは、原題の『ミッキー7』から、使い捨てられた数がだいぶ増えたのか、『ミッキー17』に。ポン・ジュノ監督の力で、本作の魅力的な設定を活かした、原作を超える作品に是非仕上げていただきたい! -
Posted by ブクログ
・ケン・リュウ編「金色昔日 現代中国SFアンソロジー」(ハヤカワ文庫SF)は「折りたたみ北京」に続く中国SFの第2弾である。登場人物等、さすが中国である。カタカナでではなく、漢字の名前が多い。ま づこのことに感心してしまつた。それほど私が中国とは無縁の読書生活を送つてゐるといふことである。さういふ内容の作品もあればさうではない作品もある。実に様々である。「本アンソロジーには、全部で十四名の作家による十六篇の作品が収録されて」(「序文」12頁)をり、「作品渉猟の場を拡大する方向に目を向けて」(同前)編まれたといふ。ただし、「本プロジェクトは、中国現代SFの代表的な作品を集めるという意図は」(同13頁)持つてゐないといふ。私にはいかなる作品が「中国現代SFの代表的な作品」か分からない。「中国SFと呼びうる作品の多様さと中国SF作家界の雑多な構成」(同前)といふことは、中国SFといつたところで、決して一つにくくれるものではないといふことなのであらう。
・表題作宝樹「金色昔日」はおもしろい作品であつた。私は現代中国の歴史を知つてゐるわけではないが、 それでもこの作品が現代中国の歴史をさかのぼつてゐることは分かる。主人公の「いちばん古い記憶はオリンピックの開会式だ。」(222頁)といふのが北京五輪であれば、彼は私達の同時代人であると言へる。 「三年生のときに感染症のSARSが流行し」(226頁)た。次にサダム・フセインやビン・ラーディンが出てくる。例の9・11もある。かうして様々な出来事があり、ゴルバチョフがソ連邦を作り、「?小平の計画経済改革が失敗し、経済は悪化の一途をたど」(243頁)る。さうして共産党内部抗争から天安門事件が起きる。主人公は学生側の指導部に加はるも、最後は軍隊に掃討される。……ここまで書けば十分であらう。この作品は歴史を改編しつつさかのぼつてゐる。従つて、最後は日独伊の三国同盟対米ソ同盟であ り、この中国側の動きとして国共内戦と国共統一戦線による抗日闘争である。この間に幼なじみの恋人が登場する。この女性の運命は歴史に弄ばれてゐる。最後は日中戦中に主人公に会ふことかなはず死ぬ。「ある意味で本書の作品中最も中国的な物語であ」(ケン・リュウ解説218頁)り、「人民共和国の歴史を知れ ば知るほど、この物語の意味もはっきりと見えてくる。」(同前)といふ。私に見えたものが宝樹の見たものであるなら、これが中国国内で発表できるのかと思ふ。「最初の公式な出版が英語版と」(同前)なるさうである。原典には"No Chinese publication"とある。中国語版なし。訳者はケン・リュウである。「公式な出版が英語」であるなら、非公式な中国語もあるのであらうか。中国国内で出せないから英語版を出したのではないのか。中国の現状を見る限り、危険を顧みずに敢へて出版するとは思へない。宝樹はいかなる人かと思つても、フリーライターであるらしいとしか分からない。web上 にもこれ以上はなささうである。この人、中国で現役の作家としてやつてゐるのだらうか。天安門事件や文革を描き、?小平の経済改革を失敗といふ。かういふことが許されるのなら、中国は今少しまともな国にな つてゐさうでる。しかしさうではない。あくまで習某の中国である。かうして日本語版が出るからには、この人の現在を心配する必要はないのかもしれない。もちろんこれは例外的な作品である。本書は普通のSFばかりである、とは語弊があるか。しかし、ここに様々な傾向の作品があり、様々な内容の作品があると知れる。おもしろい作品集であつた。 -
Posted by ブクログ
近年スマッシュ・ヒットを飛ばし続けている現代中国SFのアンソロジー、2019年に発売された「折りたたみ北京」に続く第二弾が満を侍して発売。SF者の期待感を表すかのような分厚さ。「折りたたみ北京」の1.5倍ぐらいになっている・・・(^_^; 早川書房さん、紙の文庫本は上下巻に分かれても構いませんので一冊あたりの厚みを抑えていただけないものでしょうかね〜。紙の文庫本にとって、「携帯性」ってとても重要なポイントだと思うんですけどね〜〜。
閑話休題。
一通り読んでみて、「折りたたみ北京」を読んだ時ほどの衝撃は、正直感じませんでした。読むこちら側の期待値の違いかもしれません。「よーし、面白いSF読むぞー!」と鼻息荒く読み始めたら、肩透かしを食った感じ。SFというよりも、「幻想小説」または「実験小説」といった趣の作品が多い印象です。
ただ、面白くないわけではありませんので念のため。SF風味は薄めかもしれませんが、ひとつの小説のとしての完成度はどれも高く、読後感は良いです。これ、中国の商業作家たちが、クロスオーバーにレベルの高い作品を輩出し続けている、ということですよね。中国の文壇は今、とてもエキサイティングな状況にあるのだと思います。SFの枠に囚われることなく、もっと読まれても良い作品集だと思います。
鴨的お気に入りは、劉慈欣「月の光」、宝樹「金色昔日」、張冉「晋陽の雪」あたり。いずれもSFとしてレベルが高いです。そして、やたらとインパクトがあったのが馬伯庸「始皇帝の休日」。「どこの野崎まどだよ」とツッコミを入れたくなる斜め上のぶっ飛びぶりで、どのような心構えで読めば良いのか最後までよくわかりませんでしたヽ( ´ー`)ノ
いやー、相変わらず肩幅広いですねー。中国SF、当たり外れはありますが、この先も引き続きチェックしていきたいです。