大谷真弓のレビュー一覧
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・ミッキーのキャラクターが良い。今作で明確に認識できたが、一人称が俺で少しやさぐれていて、読者に語りかけるように皮肉っぽい冗談を言う主人公が好きだ。
・とにかく文章のリズムがよく、吹き替えの洋画を観ているような感覚。そもそもの文章の作りと日本語への翻訳、どちらも素敵だからこそのクオリティと思える。訳者に注目したことはこれまでなかったが、大谷真弓の他作品を読んでみたくなった。
・物語の展開もスピーディーでダレない。ミッキーが何をするか明確で、背景と目的も分かりやすい。章の区切りも「なんで!?」「どうなっちゃうの!?」と引き込まれるものが多く、本当にあっという間に読まされてしまう。
また参考として出てくる他惑星や過去の情報もテンポよく小出しにされるので飽きが来ない。過去と現在の情報が行ったり来たりするのはプロジェクトヘイルメアリーを想起させるが、本作では過去の情報が補助的な役割を果たしている向きが強い。
・キャラクターの数も丁度よく、個性も分かりやすい。混乱せずに読める感じ。
セブンとエイトが同じ人格にも関わらず、立場の違いであまり一致していないのが面白い。どちらもユーモラス(当然だが)なので2人の掛け合いはとても心地よく読める。
・あらすじでめちゃくちゃ引き込まれた。単なる不死身ではなく、同じ人格で生まれ直す点とそれによる同一性の考え方も面白い。
全編通して読んだあとにベルトの視点で読み直しても面白そう。
・ムカデ側の詳細や思惑が見えきらず、スッキリしない部分はあった。が、そこ含め情報過多にならないよう調整されているからこそリズムよく読めるし適度なボリュームの作品に収まっていると感じる。膨らませようと思えば他惑星のことや科学的な情報をいくらでも膨らませられるが、あえて良い加減に抑えている。
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『ミッキー7』の続編。前作の結末から2年経った植民惑星での話。深刻なエネルギー不足が発生し、この星の人類が全滅を免れるためには前作で爆弾に改造した反物質を取り戻し、エネルギー炉に再投入する必要がある、という話。先住生命体が沢山登場したねぇ。巨大なムカデみたいなのとか、クモとか、真菌みたいのとか……
ミッキーが「人の事を良く見ている」という設定の人物像なのが相まっての事かもしれないけど『ミッキー7』で読んだ作者の書く人間描写がとても好きで。前作で結構話が綺麗に終わるため、ストーリーが気になって続編読もう、というよりは文体が好みで続編に手が伸びたかなぁ。
例えば『クインの髪は前より伸びている。金色に染めた髪を真ん中分けにしていて、脂じみた頼りない()が細い顔をかこんでいるように見える。』とか、ミッキーにはナーシャという彼女がいるんだけど、彼女と話をするときにミッキーが彼女の肩や膝に寄りかかりながら話をしている様子とか。人間描写が自然な感じがぐっとくる。SFなのに。(隠しきれないSF小説へのド偏見)(主に「三体」のせい)
ミッキーとベルトの友情、ミッキーとマーシャルの関係に萌え萌え。2年の内に色々あったんだね…… -
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テラフォーミングの移民船で、記憶と人格を引き継ぎながら死んでは再生される「エクスペンタブル」のミッキー。7人目の彼が任務中の事故で命からがら生還するが、基地にはすでに8人目のミッキーがいて……というお話。
同一人間が存在することへ忌避の念を抱く者、「死ぬってどういう感じか?」という単純な興味を抱く者……主人公を取り囲む環境や、登場人物たちがそれぞれ異なる価値観や倫理観を持っていて、興味深かった。
地球から遠く離れた地では資源は何もかも貴重で、食料は1カロリーとも無駄にできず、「余分な複製なんてタンパク質がもったいない!」と言われたり。ミッキーの日常はとても過酷。
ミッキーは文字通り命を懸けて仕事をしている。何度も死んで宇宙船のみんなを救っている。「エクスペンタブル」はそれが仕事だから。それ故に彼をヒーロー扱いするものはいない。
ここからは少し脱線するけれど、ふとアンパンマンのことを思い出した。もしアンパンマンに番号が付いていたらどうなるのだろうか、と。バタ子さんが「アンパンマン!ナンバー1649の顔よ!」って。
誰かが「底辺労働者」となるのか「ヒーロー」となるのかってやっぱりその社会がどうなのかが大きいのかな。アンパンマンの世界は金の概念が無く「みんなが喜ぶことが対価」らしい。彼らはやっぱり妖精なんだな、と思う。
シニカルな口調が印象的で、軽妙さの中に重い問いが潜んでいる小説だった。 -
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ネタバレ
面白かった。前巻の内容、特にエイトがどう死んだかは忘れたけど、ミッキーセブン自体はミミズにも司令官達にも適当な嘘をついて切り抜けたのは覚えていた。
あと爆弾。
今巻は、ムカデとロードムービーする。
冒険に出るまでに、コロニーでの生活やミッキー自身の振り返りはあったものの、前巻よりは歴史の話が少なくてちょっと物足りない。今巻でやることが多いせいだと思う。前巻はベルトに置いてかれてどうにか帰還して、エイトと出くわして二人一役をこなす話だったが、今巻は、コロニーでの燃料の話、ムカデの話、南へ行く話と、アクションが多い。
その分、この星の生態がわかって面白いが。
前巻だとエクスペンダブルズという、使い捨ての人間、何度も死ぬ話が、アイデンティティとしての揺らぎとして面白かったが、今回はそんなに。最後に、ナインか、イレブンかはどうなる?というのを気にして終わるが。ミッキー、新しい自分に興味があるのが面白い。でもこれはまた出番があるかも、ワクワクじゃなくて、ビビってるほうか?
どっちかな。ワクワクのほうに読み取れた。
恋人のナーシャや友人のベルトが良い奴だった。ナーシャのキャラが面白い。タフすぎる。主人公だよ。ミッキーのどこを好きになったのか、もうちょっと教えて欲しかった。ミッキーってそこまでイケメン設定じゃなかったと思うけど。
ベルトも格好良かった。
マーシャル司令官もめちゃ良かった。ミッキーにキレまくってるのが面白いし、最後はさっさと死を選ぶのが英雄すぎる。
ミッキーというエクスペンダブルズの存在を嫌う=人道主義者なんだなというのが伝わってきた。前巻だと、そこまで良さがわからなかった。
死んでから良い奴認定するのも、あれだけど。死なないと良い人間だと受け止められないのか?死んだから評価甘くない?みたいな。
次はマギー・リンが司令官か。
3巻もあるなら読みたい。
ムカデ達
侮ってた相手が自分達よりもはるかに知性があることに気づくところは何度味わっても楽しい。神話はあるの?に即興で作って答えるの笑える。
機会的であり、幼くもあり、しかし、学習スピードは凄まじい。
今回、ミッキーから嘘や駆け引きを学んでしまったので、これからどう変化するのか怖いな。でもミッキーの仲間を守るや、信用するしかないところも学んでると思うので、良い方向に行くと良いなという希望的なラストでもある。
共存共生はうまくいくのか。
2巻の副題は反物質ブルースだけど、ブルースは黒人音楽のジャンルで、労働の辛さや仲間の死を歌ったものだから、まあまあミッキー達にもあてはまるか?
辛いこと多かったし。ルーカス死んだのやっぱ悲しい。
ムカデやクモとか、絶妙に人が嫌悪する形をとっているのが面白いな。訳だとそのままムカデじゃなくて、地を這うものから来てるらしいが。
砂の惑星デューンとか思い出すけど、西欧だと、ミミズがそこまで嫌われているのか?日本だとなんだろう。鬼とか?ライ病、被爆者。やっぱクモかな。土蜘蛛とかいるし。ヘビもあるな。ナメクジとか?カエル?
日本人は玉虫の羽根をありがたがって残して飾るくらいだならなあ。貝も食べるし。
2巻の今巻ではわかりやすいアクションとか駆け引きで、あんまアイデンティティの話が無かったけれど、それでもファーストコンタクトモノや冒険ロードムービーとして面白かった。
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改変歴史を描くSF「レディ・アストロノート」第三弾。月面で連続する危機的状況の中、過激派の犯人を探すが……。
ニコール・ウォーギンは50歳を超えた女性だが、魅力ある主人公だ。これは前作との類似点、つまり閉鎖空間での危機的状況、夫婦や仲間との絆、心理的な弱点との戦い、といった複合的な要素によって、ニコールの心理が緻密に描かれているからだろうか。
すべての人を疑わなければならない状況の中で、前作主人公エルマと最も仲の良かったメンバーたちが友愛を深め、次第に団結していく姿が美しい。月面で繰り広げられるサスペンス・ミステリーは、中盤やや冗長にも思える長さではあるものの、犯人がわからなければ全員が危ないので、緊張感が途切れることなく続いていく。
基本的には月におけるニコールの話、なのだが、火星探検隊と地球で起こっていることをつなげ、前作を補完する要素もある。それだけに、前作とセットでの完璧なラストが最高のカタルシスを生んで感動した! -
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『宇宙へ』『火星へ』に続く改変歴史SF第三弾。火星探検隊が道半ばに達するころ、ニコールが月へ行くことに。
前作のヨーク夫妻から今度はウォーギン夫妻へと主人公を変えて、地球と月での物語が展開。すでに月面での経験のある宇宙飛行士であり、カンザス州知事夫人でもあるニコール・ウォーギンが、地球で謎の事故が頻発するなか、月へ向かい、過激派の工作員を探すことに。
月面基地という閉ざされた世界の中で、宇宙船の事故、停電から感染症など、次々と発生する危機。犯人は仲間たちの中にいる?SFとしての緻密なディティールはそのままに、今作はミステリー調で進んでいく。早く犯人を見つけなければ月面では皆が生き残れないため、連続するトラブルと仲間への疑惑の中で緊張感とスリルが高まっていく。やたら多いページ数がネックにも思えるが、先が気になる展開が続くので一気に読めると思う。 -
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ネタバレ災厄な災禍とも言える状態の中で、この作品に出合うことが出来たのは幸運だったと思います。
インフルエンザに似た症状を起こし、わずか28時間という短い時間で男性を死に至らしめる疫病。
潜伏期間も短く、死亡に至ってはあっという間。
ワクチンの開発は厳しく、平凡で幸せな家族が夫を、男の子である我が子の死を見つめるしかない。
世界は一変し、男性の仕事を女性が行い、食料も減ったために配給制度に変わっていく。
そんな物語の中心にいるのは、人類学者のキャサリン・ローレンス。彼女は夫と息子を亡くすことになる。
そして、のちに0号感染者と呼ばれるユアン・フレイザーを診断し、看取った救急外来の担当医であるアマンダ・マクリーン。彼女は夫と二人の子供を失うことになる。
そして、英国情報局に勤務する黒人女性のドーン・ウィリアムズ。
こうした人物を中心に物語は変わっていく世界を冷徹な眼差しで映し出していく。
90%の致死率の疫病が世界を変えていく。人口も減り、人々の役割も変わっていくが、それでも変わらないものもあり……。
とくに主人公的なポジションにいるキャサリンがこの世界を記録した著作の中で『世界が無差別な残酷に満ちているときに様々な形で示しているときに、どうして楽観的に生きられるのだろう? 楽観主義は特権だ』という言葉が痛い。
現実の世界でも今、私たちは災禍の中にいる。
その現実と真摯に向かい合いたいと思わせてくれた一冊だった。 -
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世界にとって害悪でしかない人間を消し、ロボットだけとなった世界。毎日決められたことを完璧に繰り返していた12歳のロボットXR935は、ある日いるはずのない人間に出会う。12歳の少女エマとの出会いがXR935を、そして世界をも変えていく。
ロボット視点で語られる物語。ロボットならでは思考や行動原理が、すんなりと受け入れられ、人間とは違う存在であることがわかりやすい。
ロボットと人間が違う存在だと認識させておき、物語が展開するにつれ、本当に違う存在なのかと思わせることにも、ロボット視点ならではの見せ方が活きています。
背景に深いロボットに関する情報がありながら、ロボットの一人称で語ることでごく自然に読者に伝えています。削ぎ落とす部分は徹底的に削ぎ落とし、行動だけで見せる。だからわかりやすい。
読者にとって未知のものであるロボットに語らせることにより、人間が未知のものとなる。見せ方の変換、価値観の入れ替え。これこそSFの魅力でしょう。
初めてのSFとしてこの作品に出会える子らがうらやましいです。児童書のSFを作るいう自負とと矜持が感じられます。
あなたにロボットの友達はいますか? ロボットは何を考えているのだろう。わからない相手と友達になれない? ならばこの本を読めば、ロボットのことがわかるかも。ロボットと友達になれるかわかるかも。 -
Posted by ブクログ
「2019版SFが読みたい!」に紹介があり、面白そうだったので読んでみた。面白かった。遅老症の主人公は、16世紀生まれで、400歳を超える。見かけは、40歳ぐらいにしか見えない。400年前に愛したローズを忘れられず、ずっと孤独に過ごして来た。シェイクスピア、クック船長、フィッツジェラルドなど歴史上の人物とも接してきた。400年ぶりに帰ってきたロンドンで、歴史教師としてカミーユという女性に出会う。ここから止まっていた時間が動き出したのではないか。遅老症というあり得ないSF的な設定を描きながら、人間にとっての時、人生、そして愛について考えさせるのである。そう言えば、バンパイヤも同様に長命だったけ。彼らは、どう生きていくのだろう。さて、実際にこんな症状があったら、なってみたい?周りの人々が年老いていく中で、自分だけが若いままなんて、とんでもないことだ。