小杉健治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
凝縮された人生を俯瞰するかのような社会派小説。事件の被害者と加害者、被害者の仕事関係の知人の人生までもが、この一冊に凝縮されているかのようだった。
家庭内暴力をふるう不登校の中学生の息子を何者かに殺害された父親。被害者であるはずの父親に息子殺しの嫌疑が及ぶ。しかし、犯人は息子の同級生だったのだ…少年法、マスコミ、警察、会社、家族からまで攻撃を受ける被害者の父親…
同じような系統の傑作を数々輩出している作家に薬丸岳が居る。薬丸岳の作品も非常に好きで、殆んどの作品を読んでいるが、薬丸岳が描くならば、ここまでの材料であるはずだ。しかし、小杉健治はさらなる展開を見せてくれる。
事件により転落して -
Posted by ブクログ
1945年3月10日、米軍による約2時間半の空襲で、東京下町一帯は壊滅状態、犠牲者は10万人以上となりました。
この小説は2人の男の人生を中心に、戦前から平成まで、何人かの人物を織り込み、それらを点と線でつないで描いていきます。
歴史にifを言ってもどうしようもありませんが、せめてサイパン陥落時に降伏していれば、東京大空襲も原爆投下(2度も!)もなかったろうと思うと、暗澹たる気持ちになります。
東京大空襲については、原爆ほどは注目されず、また近年は3.11東北大震災の陰に隠れてしまった感は否めません。
空襲の犠牲になった方の無念さ、生き残った人の苦しさに少しでも思いを馳せられるように生きていき