若松英輔のレビュー一覧
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悲しみ、特に愛する人を喪った悲しみを知る人に、強くお勧めできる一冊。
悲しみを知ることで、初めて本当の生を知る。
悲しみを知ることで、本当の私に初めて出会う。
強い悲しみを経験することは、何か簡単には言葉にできない、ある種の究極的な真理に、気づく権利が与えられるということなのかもしれない。
この本では、悲しみについての様々な思索が、古今東西の哲学や文学、特に詩歌をよすがに、とても豊かな情感とともに、そしてとても優しい筆致で、したためられている。
「悲しい」と書いても、「愛しい」と書いても、「かなしい」とよめる。悲しみには、その深い深いところで、ただ悲痛なだけではない何かがあって、そしてそれは、 -
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ネタバレ一編一編に重みがあるエッセイ集だった。サラッと読んでしまうには勿体ない。就寝前に毎日一編ずつ読みたいと思える、そんな本だった。
良書誕生の条件が面白かった。条件のうちのひとつに「その本が読む者の変化に耐えうること」とある。その視点で考えたことがなかったので新鮮だった。読み手の変化に耐えられるとは、器が大きくないと達成できない。年月を経て何度読んでも新たな発見があるような本は、そう出会えるものではなく、だからこそ大事にしなければと思う。
私は読み通すことを自分に課しているので、著者の域にはまだ達せない。ここで紹介されている書籍は、なかには読んだことのあるものがあったけれど、私には深く読み解くこと -
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先月の中頃、平日の17時ごろに母の入院している病院より連絡があった。
癌で緩和ケアを受けていた母の容体が思わしくないと。
看護師さん曰く、明日を迎えるのは難しいだろうとの事だった。
急いで準備をして電車に乗ったが、思考が停止してしまっており、病院の最寄駅に向かう最中も不思議と気持ちは凪いでいたのを覚えている。
ただどうにもこうにも心細くて、少しでも気の紛れるものはないかと近くの本屋さんに立ち寄った際、最初に目に留まったのがこの本だった。
悲しみの秘義とはなんだろう。
なんと無く、底の見えない悲しみを閉じ込める秘密が書かれているような気がして、ぼーっとした頭で購入した。
病室に到着して目に -
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詩を読んで泣くという初めての経験をした。
言葉について書かれている。それは自分に贈る言葉であったり、相手に贈る言葉であったり、魂の叫びのような言葉であったり…
今まで飼ってきた魚たちのことを思い浮かべて何度も読んだ。私の声、私の祈りはあの子たちに届いていたのだろうか。そして、今いる大切な人や生きものたちに私は幸せの祈りは届いているのだろうか。
たくさん言葉にしたい。詩を書いて自分の心のことをたしかめたい。美しい言葉を求めた旅に出かけたい。
特に好きだった、印象的だった詩は
・たましいの世話Ⅱ
・彷徨う
・時にふれる
・誰の目にも見えないところで
・自分の考え
・素樸な言葉
・亡き人
・言葉 -
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若松英輔さんの文章には凛とした優しさがある。この本は一回でさらっと読み終えてしまってはいけない本。
若松さんの自己開示に、そんなところまで曝け出してしまって、いいんですか?大丈夫ですか?と心配してしまう。人に話せる、文章にする、言葉にするという作業は悲しみと共にあるために、必要な過程なのでしょう。その若松さんの悲しみは、誰かの心に響き、誰かの悲しみに寄り添ってくれるのでしょう。
最後、書くことの大切さを説いていた。拙い文でも、こうして言葉にすること、自分の内だけにとどめておかないことが、自分自身の糧になっていく。より物事を思考し、クリアにしていくことになるのでしょう。とても良い読書体験になった -
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29歳で亡くなったキリスト者である八木重吉の詩集。
第一詩集の「秋の瞳」は復刻版が手に入りやすいが、第二詩集の「貧しき信徒」は、全集や定本詩集などの古書を探さないと読めないので、岩波文庫で手に入りやすくなったのがすごく嬉しい。
何度も読んだ詩ではあるが、やっぱりすごいなぁと毎回思う。
ただのキリスト信仰でもなく、安易な自然讃歌の詩でもない、ほんとうに人が書いたのだろうかと思うほど純真で、哲学的で神秘的な、もっと深いところにある霊性を感じました。
八木重吉の生い立ちや、創作の背景をより知りたければ、奥さんの吉野登美子が書いた「琴はしずかに」が素晴らしいのでおすすめします。