若松英輔のレビュー一覧

  • 弱さのちから
    東日本大震災のとき、何も出来なくてもどかしかったこと、今回のコロナでむしろ動けなくなって、自分がダメになりそうだった。今まで「自分に武器を持ちなさい」と諭され、生き抜く事ばかりに執着していた自分が、武器も使えない、増やせない状況で気がついたのは、筆者と同じ「弱い自分をうけいれる」ことだった。もう自分...続きを読む
  • 不滅の哲学 池田晶子
     池田の生誕60年に合わせ装いを新たに出版された本書。〝哲学の巫女〟を自任し強靭なる〝哲学エセー〟を開拓した池田の哲学の本質を天性の〝哲学的詩魂〟に見、若松もまた独自の〝批評的詩魂〟においてその定位を試みる。永遠の相の下、類例のない濃密な思索の交感があった。科学的認識のみによっては到達しえない豊饒な...続きを読む
  • NHK「100分de名著」ブックス 石牟礼道子 苦海浄土 悲しみのなかの真実
    『苦海浄土』はまだ読んだことがない。まだそこまで手が出ない。熊本という場所に生まれ育ち、小さいころからその病の名前を聞いていて、石牟礼さんの名前もどこそこで聞いてきたのに、ようやくそちらに意識が向くようになったのは最近のことだ。
    このあいだ、高群逸枝さんについて書かれた(というか厳密にはそのご主人と...続きを読む
  • 霧の彼方 須賀敦子
    霧の向こうに住みたい、だよね、と思って読んだら結構違った。そうか、私が読まなくなった時期がちょうど亡くなった時期だったから気がつかなかったんだ。久しぶりで評伝をちゃんと読んだ。
  • 詩集 愛について
    何気ない言葉の連なりなのに
    想う人への愛おしさ、引き裂かれた苦しみ、その人の得難さが切々と痛いほど伝わってきます。
    だからでしょうか、愛する事の豊かさを教えてくれた気がします。
    装丁も丁寧に美しく作られていて宝物のような本です。
  • 霧の彼方 須賀敦子
    大好きな須賀敦子さんのことを若松英輔さんがお書きになるって読まずにはいられない。
    大喜びで読み始めたが、いきなりガーンと来た。
    もちろん須賀さんが熱心なカトリックの方とわかって読んではいたのだが、そもそもカトリックに関する素養も知識も、もっと言えば関心もほぼない私。それを抜きにして読んで、それで読ん...続きを読む
  • 詩集 愛について
    初期の頃の言葉の純度は薄れてしまったような気がして
    それが、なんだか残念な気がして
    36なんて言わないで。
    30くらいで凝縮したら、もっともっと、純度が高くなって。眩しくなったのに。少し。残念。

    でも、それくらいの暗がりと眩さなら、私は深い場所で、見てきたよ。たとえ実際に、体験してはいなくとも。
    ...続きを読む
  • 考える教室 大人のための哲学入門
    書店屋で,たまたま目に止まって買ったまま積読でしたが,連休中に読みました.
    哲学は,前々から興味はあったものの,どうにも型苦しいと言うか,変に難しく考えている様な感じがあって,少々敬遠気味だったのが本音でしたが,この本を読んだ,私なりの感覚としては,考えるとは何かを考えるのが哲学と言うものかも知れな...続きを読む
  • 別冊NHK100分de名著 読書の学校 若松英輔 特別授業『自分の感受性くらい』
    自分の人生を支えていく言葉を、どこからか見つけるだけでなく、自分で手作りしてもよいのだなという発見があった。気恥ずかしいと思いつつも詩を書き始めたくなる。誰に見せるわけでもなく自分のために。
  • 考える教室 大人のための哲学入門
    「書き手」と「読み手」の対話としての「読む」を掘り下げるもので、感動的です。ここで取り上げられているソクラテスの弁明、方法序説、人間の条件、共同幻想論の4冊、最後の吉本隆明を除いて、いずれも私も折に触れて読み直す本ですが、また改めて読もうと思いました。
    吉本隆明はなぜか、正面から取り組んだことが...続きを読む
  • 生きていくうえで、かけがえのないこと
    日常的に使う、食べる、眠る、悲しむ、祈る等25の動詞を主題としたエッセイ集。一つの言葉に対するエッセイはとても短いものですが、でも、深いのです。心に静かに染みいる何かを感じます。

    私も著者もキリスト教の信仰をもっているせいかもしれませんが、彼の言葉を読む時によく想うのが聖書のヨハネによる福音書の1...続きを読む
  • 内村鑑三 悲しみの使徒
    帯に「その霊性はいまも響きつづける」とあるとおり。内村鑑三の言葉を読めば読むほど、その深さが静かに心に染みいる。

    第6章「宇宙」の章の最後に著者が
    「彼はやはり、遅れてきたイエスの直弟子である使徒のひとりだったのではないだろうか」と記している。その言葉に心が震えた。その通りだと私も思う。
  • 内村鑑三 悲しみの使徒
    著者が昔日経に連載していたコラムが魅力的で、手に取った一冊。本書を読んでも内村鑑三が何を成し遂げたかはわからない(勉強不足でごめんなさい)けれど、様々な切り口で内村鑑三や携わる人々の霊性(著者のキーワード?)には触れられた気がする。本書で書かれた時代と比較して、現代は宗教が力を失った(少なくとも日本...続きを読む
  • 生きていくうえで、かけがえのないこと
    人からすすめられて読み出した本だったけど、それも全てこの本に呼ばれていたからではないかと思えた。

    日々の営みについて、こんなに深く、広い懐をもって書かれたエッセイを、わたしは今までに読んだことがない。

    「辛い時こそ、どの一篇でもいいから読んでみてほしい」という吉村萬壱の言葉どおり、少しでも心の器...続きを読む
  • 悲しみの秘義
    とても文章がキレイで、話にも知性が感じられるのでとても好きな作者さんです。また、嫌味にならないのは筆者の人生経験か、それとも真に知性を持っているからかわかりませんが、文章も短いから余計にそういう雑味なく文章を楽しめる気がします。スキマ時間に色々考えるきっかけにするのにオススメです。
  • 本を読めなくなった人のための読書論
    人生のうちで、本が読めない時期があってもよいのだ、といわれてほっとした。
    本は全部読まなくてもいい、その時に読めるところを読めば、それがその人にとっての意味ある読書だ、とのこと。そう言われて、この本の後半はパラパラでめくって終わりにしました。
  • 悲しみとともにどう生きるか
    いろんな視点から「悲しみ」について書かれており、とても良い本でした。
    大小あれど悲しみのない人生なんて存在しないと思います。そんな悲しみに寄り添ってくれる本でした。
  • NHK「100分de名著」ブックス 石牟礼道子 苦海浄土 悲しみのなかの真実
    先日、石牟礼道子の「苦海浄土」を読み深く心を動かされた。多くのことに心を動かされたが、とりわけ、第三章と第四章の「聞き書き」の部分、特にその中でも、水俣病の被害者が、まだ海が汚染される前の水俣湾での漁の様子が、どれほど美しいものだったかを語った部分に感動した、ということを、「ブグログ」に感想として書...続きを読む
  • 「利他」とは何か
    うつわ的存在であることが大事

    今までは、「意思」という概念を使って帰責(その人に責任を押し付ける)ことが責任の概念のコアだと思っていたけど、國分功一郎さんは、中動態の概念を用いることにより、その「意思」を否定することで、神的因果性(人は運命に巻き込まれて行為させられる、あるいは、自らの行為かわ思っ...続きを読む
  • 光であることば
    僕もコトバは光であると思う。言葉が好きだ。特に自分が生まれ育った場所の言葉が。そんな言葉の何気ないやり取りに心がキューンとなったりする。そんな言葉を味わいたくて、仕方がない。そして自分も言葉を紡ぎたいと思う。そんなことだけで幸せを感じて胸がドキドキするのだ。