奥山真司のレビュー一覧
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「地政学」とは、学問ではなく、地理をベースとした国際政治、外交政策についてのものの見方、考え方で、より実践的な知の積み重ねであり、国家を率いる指導者や安全保障の担当者たちが自国の安全や優位の確保を考える上での思考パターンのひとつを示したものである。本書は新書という形式を取っていることもあり、地政学における基本的な考えが簡潔にまとめられおりながら、海外の大学で地政学を専門的に学んでこられた著者が、地政学がこれまでどのように考えてこられたかの歴史的経緯、ランドパワーとシーパワー、ルートとチョークポイント(点と線)、グランド・ストラテジー(大戦略)、バランス・オブ・パワー(勢力均衡)などの基本的な用語が学べ、地政学について興味がある。地政学について知りたいけどどの本を読むべきかと迷っている方には是非とも手に取っていただきたい本です。
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■キケロは「演出されたものほど、人の心に深く入り込み、聴衆の心の状態を作り上げ、それを動かす力を持ったものはない」と語った。
■「汚染水」。名前はメッセージを持っている。日本にダメージを与える影響力工作という観点から言えば、中国は非常に効果的な名称を選んだ。
■中国やロシアが展開している影響力工作の中には、子供だましのようなレベルのものが多くある。しかし、そんな程度であっても悲しいことに効果がある。
■中国の狙い。
①中国国民を日本との戦争に備えさせること。
②日本を弱体化させること(日本が中台間の戦争へ参戦することを阻止するため)
③国際的に日本を孤立させること(友軍、主にアメリカ軍を沖縄から追い出すこと。また、日本をアジアから孤立させること)
■目指すべきゴールは「十分によい」レベルに到達して、急速に変化する環境の中でそのレベルを維持すること。
■日本は「マインドセット」の入れ替えを
①日本に対して外国勢力による影響力工作が行われているという事実を知ること。政府だけでなく国民がこの攻撃の脅威を理解しなければ、そもそも話が進まない。
②そのような認識が日本国民の間に広まったところで、政治家がその対抗策のための法律を制定すること。
③政府はその法律に則って専門の部署や機関を立ち上げ、データを収集して対抗策を打ち出すこと。 -
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「古典地政学は「すべてを説明する理論」などではありません。国際社会を動かす要素は宗教、文化、その国の歴史、経済、人口構造、科学技術など、実に様々で、それらが複雑に交錯しています。地政学は、それを、「地理」を出発点とするひとつの切り口で考察する営みにすぎませんが、その知的実践の蓄積は、いまの世界を理解するうえでも、大いに役立つと考えているのです。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「では、なぜ地政学は「地理」に注目するのか? それは国家にとって地理が最も不変的な条件だからです。 教科書に書かれている「国家」の条件は3つあります。「一定の領土」「国民」「政府」です。 このうち、国民は移動できますし、政府は選挙やクーデターなどで、極端に言えば一夜のうちに変えることができます。しかし領土 =地理的条件はなかなか変わりません。日本が海に囲まれた島国であることは、万葉集、記紀の昔から、日本人に与えられた基本的条件なのです。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「そこで、国家が置かれている環境の中でも、変化の少ない「地理」が、戦略を考えるうえでの出発点とされてきたのです。 世界史の中でも卓越した戦術家だったナポレオン・ボナパルトは次のような言葉を残したと言われています。「地図を見せてみろ。あなたの国の対外戦略を当ててみせる」 軍事面においても、軍隊をどこに配置するか、兵站の拠点やルートをいかに確保するかなどを計画するうえで、地理的条件の把握は不可欠です。さらにいえば、気候や地質なども戦略を決定する要件のひとつとなります。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「また、人間の「ものの見方」に大きな影響を与える要素のひとつが「感情」です。地政学においては「恐怖」「支配欲」「自立心」「依存心(従属関係を受け入れる心性)」といった国民感情、指導者たちのメンタリティも重要な分析対象となります。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「ロシアを衝き動かす「恐怖」 これものちに詳しく論じますが、ランドパワーの代表ともいえるロシアを分析するうえで、重要なのは「恐怖」です。ロシアは広大な領土を持つ大国ですが、その戦略的態度を歴史的に分析していくと、そこに浮かび上がるのは、自国を侵略されることへの「恐怖」です。よく知られるように、ロシアは 13世紀から 250年近くにもわたって、モンゴル帝国に侵攻され、その支配を受けました。これを「タタールのくびき」と呼びます。 16世紀には近隣のスウェーデン、ポーランドにも攻められ、モスクワ陥落も経験しました。そして、ナポレオン率いるフランス、アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツにも攻め込まれ、いずれもロシア本土での戦闘で甚大な被害を受けています。 これも陸続きの大国ゆえの悲劇といえるでしょう。そのために、ロシアは伝統的に、自国の周囲にバッファーゾーン(緩衝地帯)を設定しようとします。周囲に絶対にロシアに敵対しない、従属関係にある衛星国を配置し、敵国がいきなりロシア本体に攻め込めないようにする。旧ソ連時代の東欧諸国などはその典型といえるでしょう。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「 後でも触れますが、ロシア・ウクライナ戦争の原因のひとつに、こうしたロシアの「恐怖」に基づく世界観があることは間違いありません。独立を果たしたウクライナですが、ロシアは依然として、ウクライナを衛星国(バッファーゾーン)としておきたかった。ウクライナが NATOに入ってしまうと、ロシアは緩衝地域なしにいきなり敵国側と国境を接することになってしまうわけです。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「このように、地政学の考察の対象は、客観的な地理的条件 +「指導者たちの頭の中にある地図」だといってもいいでしょう。ここで難しいのは、「指導者たちの頭の中」が一種のブラックボックスだということです。プーチン大統領が何を考えているのかを客観的に明らかにすることは、誰にもできません。私が、「地政学は『学問』ではない」と考える所以のひとつです。しかし、本当には知ることのできない「指導者たちの頭の中」「国民感情」に、できうる限り近づき、モデル化することは、国際政治を考えるうえで、非常に重要な作業だと考えます。なぜなら、各国の政策担当者たちは、そうした作業を日々行っており、それに基づいてリアルな国際政治が動いているからです。それらの実践的な営みのひとつが「地政学」なのです。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「ここで、地政学のもうひとつの大前提について考えてみたいと思います。 それは「人は必ず争う」です。これをトマス・ホッブズは「万人の万人に対する闘争」と呼びました。 この大前提については、様々な批判がなされてきました。人間は集団行動をする動物であり、闘争ではなく、協調、協力関係を重視すべきではないか、というものです。これを現代風にいえば、リアリズムとリベラリズムの対立ということができるでしょう。 ごく簡単にいえば、リアリズムは衝突モデルです。人間は自分の利益の最大化をはかるが、それは集団になると抑制されるどころか、いっそう顕著になる、と考えます。国際社会における激しいナショナリズムの高揚、隣国との衝突、国内政治における分断、格差問題などは、こうした見方を裏付けます。地政学は、このリアリズムのモデルと親和性があります。リアリズムの考え方では、軍事力、経済力などの「力」を持つものが世界を動かす、ということになります。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「カウティリヤはその外交政策を「六計」としてまとめています。 すなわち「和平」「戦争」「静止」「進軍」「依投」「二重政策」の6つです。「静止」とは静観、つまり自分からは動かず、様子を見ること。「進軍」とは、敵と衝突することなく、兵を進めること。「依投」とは、他の国に支援を求めることで、これも立派な戦略のひとつに数えています。「二重政策」とは、和平と戦いを、情勢に応じて使い分けることで、まさにマキャベリズムの先駆といえます。 もうひとつ重要なのは、カウティリヤが「永遠の友はいない」と述べていることです。先に示した「外交マンダラ」は地理的な条件に基づく基本認識ですが、不変のものではなく、状況に応じて、敵との和平もあれば、同盟の組み換えもありうるという、リアルな認識がそこにはあります。 19世紀のイギリスで外相・首相などを歴任し、「パックス・ブリタニカ」(大英帝国による平和)を築き上げたヘンリー・ジョン・テンプル・パーマストン( 1784- 1865)に、「英国にとって永遠の同盟も、永遠の敵もいない。あるのは永遠の国益のみだ」という言葉がありますが、これもカウティリヤの「世界観」に重なり合います。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「またベルリン大学は世界で最初に地理学の講座を開いた大学で、フンボルトと並んで、「近代地理学の父」と称されるカール・リッター( 1779- 1859)が初代の教授を務めました。 このように地理学において世界をリードしたプロイセンですが、 1864年に第二次シュレースヴィヒ =ホルシュタイン戦争でデンマークを、 1866年に普墺戦争でオーストリアを、そして 1871年に普仏戦争でフランスを破ると、一躍ヨーロッパ大陸の最強国となります。その勝利に貢献したのが、地理学の知見を活かした作戦の立案や鉄道輸送による兵站でした。 1891年、アルフレート・フォン・シュリーフェン( 1833- 1913)は参謀総長に就任すると、地理学を科学的学問として参謀本部に導入することを決定します。これを機に、ヨーロッパ中で、地理の知識が安全保障や国家戦略のベースのひとつとして位置づけられるようになり、「近代地政学」誕生の気運が高まります。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「次に中国をみてみましょう。中国も典型的なランドパワー国家です。これまで中国が本格的に海の外へ乗り出す姿勢をみせたのは、モンゴル帝国による元寇と、明の時代に行った鄭和の大航海など、数えるほどしかありません。最近の研究では、いわゆる元寇も、中国伝統のスタイルである朝貢外交を日本に打診したところ、鎌倉幕府が使者を殺すなどの強硬姿勢を示したために起きた、という説が唱えられています。それほど、海への進出には慎重なのが中国です。 そんな中国が近年、南シナ海、東シナ海で侵略的行為をくり返し、一帯一路構想では「帯 =陸路」とともに「路 =海路」への進出も掲げています。さらには台湾進攻の懸念も高まっています。中国に何が起きているのでしょうか。 中華人民共和国が建国されて 70年あまりが経ちますが、いま中国は長い歴史を振り返っても稀有な状態にあります。それは、陸での主な国境紛争が解決していることです。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「この予測はスパイクマンが唱えた「内海の法則」に基づくものでした。それは「国が対外進出する際には、自国の周辺の内海を支配しようとする」というものです。たとえばアメリカは世界の海に進出する前に、メキシコ湾、カリブ海から、イギリス、フランス、スペインなどを排除し、自国の「内海」としました。同様に、古代ローマは通商国家カルタゴを潰して地中海を握り、イギリスはイギリス海峡から北海、そしてマルタ島を支配下に置くことで地中海を押さえます。そしてこれらの「内海」を拠点として、世界帝国になっていったのです。太平洋戦争において、この「アジアの地中海」に進出したのは日本でした。戦後は入れ替わるようにして、アメリカがこの地域に強い影響を及ぼしています。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「さらにいえば、一帯一路での中国の戦略も、あまり賢明とは思えません。たとえばスリランカでは、中国の融資を受けてハンバントタ港を建設したものの、高金利で返済のめどが立たなくなると、中国国営企業に 99年間、運営権を引き渡さざるを得なくなりました。同様にモンゴル、ラオス、キルギス、タジキスタン、パキスタン、モルディブ、モンテネグロ、ジブチといった国々が、中国に対する債務リスクに見舞われています。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「ここで、「世界観」のところで紹介した『孫子』「地形篇」を思い出してください。孫武は、四方に開けて、進むのが容易な地形を「通」と名付けました。まさに京都は「通」です。敵味方どちらにも移動が容易なのですが、それだけに守るのは難しい。日本史を振り返っても、京都に立てこもって勝利を収めたケースはほとんどありません。源頼朝や徳川家康が幕府を置く場所として京都を選ばなかったのも、南北朝の争いや応仁の乱のような京都を巡る争いにいつまでも決着がつかなかったのも、ひとつには攻めやすく守りにくい京都という町の地政学的特質が大きかった、と考えられます。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「20世紀に入ると、イギリスにとって最大の強敵、ドイツが台頭します。 1871年、プロイセンが盟主となり、連邦諸国を統一したドイツ帝国は、急速に重工業化が進み、なかでも鉄鋼、化学、鉄道などの重化学工業の分野に強みを発揮します。特にイギリスが危機感を抱いたのは、ドイツの科学力でした。 19世紀も後半になると、イギリスの大学で行われている多くの授業で、ドイツ語のテキストが使われるようになってきます。さらにいえば、イギリスを支えてきた工作機械などの工業インフラがどんどんドイツ製になっていく。これはまずい、なんとしてもドイツを潰さなくては、というのが、イギリスの至上命題となるわけです。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「そのなかにあって、 1946年2月 22日、モスクワから米国務省に、約 8000語にも及ぶ長文の電報が届きます。その主旨は、「ソ連の共産主義は、歴史的に見ても拡張に向かう傾向がある。その動きはすでに始まっていて、とても止められるものではない」というように、ソ連の侵略性を指摘する衝撃的なものだったのです。この電文の筆者こそ、のちに「封じ込め」の理論家として著名になる外交官のジョージ・ケナン( 1904- 2005)でした。これによって、ケナンは、アメリカがリードする戦後体制において、ソ連との対決は不可避だと指摘したのです。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「今の時点では、アメリカにあって中国にないものは、科学技術や金融力をはじめ、いろいろ挙げられますが、その最大のもののひとつが同盟力でしょう。たとえば、いざ戦争となったとき、実際に中国の側に立って戦ってくれそうな国といえば、カンボジアか北朝鮮くらいしか思い浮かびません。 そこで欧州では NATO、アジアではクアッド(日米豪印)などの連携が重要になってくるのですが、トランプ政権の場合に問題だったのは、大統領本人が同盟の論理をよく理解できていないので、たとえばドイツや日本などの協力が必要だ、というと、じゃあ脅し付けて言うことを聞かせればいい、となってしまうことでした。つまり、せっかくの同盟力を、ユニラテラリズム的な古いやり方で動かそうとしてしまったわけです。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「ランドパワーの大国である中国にとって、最大の関心事は「陸続きの対抗勢力から攻められないこと」です。これは過去も現在も変わりはありません。 過去の歴史を振り返っても、中国の王朝が滅びる、もしくは衰退するときは、周辺の異民族からの侵攻などが見られるように、ランドパワーの最大の敵は隣接するランドパワーなのです。周辺地域からの防衛に力を注いでいるうちに、内政が荒廃し、国内でも大規模な反乱が生じるというのが、中国史上、繰り返し見られるパターンでした。 しかし、第 2章でも述べたように、中国共産党政権は建国後 70年かけて、陸上での国境紛争のほとんどを解決しました。そのために、中国は史上例がないほど「陸の脅威」から解放された状態にあるといえます。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
「しかし、中国の海洋進出が必ず軍事的手法を取るとは限りません。一帯一路にみられるように、投資や援助などを通じて、経済的・外交的に関係を強化していくという、英米に代表されるシーパワー的な戦略も採用しています。台湾に対しても同様に、軍事的圧力の強化と同時に、経済的・政治的な関係深化を狙う政策がこれからも取られるでしょう。」
—『世界最強の地政学 (文春新書)』奥山 真司著
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Posted by ブクログ
ほとんど知らないことでした。衝撃ポイント(!)も多かったです。
歴史的な背景を踏まえて解説されていて、初心者にも分かりやすかったです。
ニュースは、個々のイベントをバラバラに捉えるより、大元の背景や地政学を理解した上で見ると理解が早そうです。
アメリカがイスラエルを支持する理由の一つ(最終戦争をユダヤ人に起こしてもらうため)は斜め上すぎて衝撃でした。
日本の場合、国際政治に宗教的思想はそんなに関与しないと思うので。いろんな価値観があるなと思いました。
⭐️学んだこと
•ランドパワー、シーパワー、大規模紛争の多くが勃発したリムランド
•ランドパワーとシーパワーの両立は不可(1国で)
•拠点を足掛かりに影響力を高めていく(中国は例外で面)
•北方領土がなかなか変換されない理由の一つに日露での重要度の違い(!)
•アメリカ海軍は世界に基地を持っている
•内戦リスクが高いのは専制政治と民主主義の両極端ではなく、どっちつかずの状態(アメリカ、ブラジル、インド)
•ロシアにはソ連崩壊後の独立国は失った国土という意識があり、周囲の国の併合はただ取り戻すだけの行為と考えており、心理的な抵抗が少ない(!)
•台湾の国民党は中国が支援、民進党はリベラル、民衆党は中間
•一帯一路では、債務浄化に陥った鉄道や港を中国が独占する債務の罠(!)
•中東の混乱のきっかけの1つは、英仏露でオスマン帝国の分割方法を決めた。サイクスピコ協定
→宗教や民族的に統一感がなく、国への帰属意識や国を立て直す意識が低い(!)
→長く他国が統治する傀儡国家だったため、自ら統治しづらく、独裁的な指導者でないと国を治めにくい
•イラン ペルシャ人 シーア派 反米
•サウジ スンニ派 親米
•トルコ トルコ人 スンニ派 ???
•シリア アラブ人 シーア派(多数はスンニ派) 反米
•イスラエル ユダヤ人 ユダヤ教、イスラム教、キリスト教 親米
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Posted by ブクログ
アメリカの若き戦略家であるハル・ブランズ氏とマイケル・ベックリー氏の共著を奥山真司氏が訳したもの。
論旨としては、情勢分析と処方箋の二つに大別されると思う。
冒頭の4章までで、いわゆるトゥキディデスの罠的な台頭する国と老成した大国の対峙が危険なのではなく、台頭する国がピークアウトした後こそ危険であり、機械の窓が閉じないうちに行動に移すことこそ危険としており、過去の例として1914年のドイツ第二帝国、1941年の大日本帝国を挙げている。この中で、2027年頃が危険だという説について、中国側の事情だけではなく、米海軍・空軍のアセットが2020年代後半にかけて大量退役して復活までに時間を要すること、台湾側の体制が整わないことも併せて挙げているのは興味深い。
その上で、5章で中国政策を分析し、対中政策を論じる前提として6章で冷戦時代の対ソ戦略を解説している。その前提に立って対中政策を論じているが、まず、2020年代後半をデンジャーゾーンとして、そこに対しては今ある手段で対抗するような短距離走的な処方箋が必要となり、それにより紛争を抑止して次のフェーズに繋げることを提唱し、そこを乗り切ることがまず大事であり、次のフェーズ自体も冷戦のような長期戦を見据えて同盟国・同志国の枠組み、技術の囲い込み、軍事費の強化などの手を長期的に打っていくことを慫慂している。
いずれにしても日本がこれに無関係な訳はない。本書でも、短期的には、琉球諸島への長距離ミサイルの配備などのプレゼンス強化、長期的にも軍事物資の補給拠点としての役割など現行の安全保障政策を超えるアイデアが盛り込まれている。実際にそこまで踏み込むかどうかは別として、日米間での相当な政策調整が必要となってくる。
短期〜長期の対中政策を考える土台として非常に参考になる文献と思う。 -
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戦争を始めたら中途半端に休戦したりしてはならない。難民キャンプなどを作ってしまうと越境攻撃したりする拠点になってしまい難民以外の生き方をしらない世代も生まれてしまう。そのため徹底的にやらせるべきだし二度と歯向かう気が起きないようにすべきであると。つまり戦争当事者の両国の戦争欲を失くすために、心を折るまで戦わせるということ。
「うまくいくだろう」という考えはなにもしていない以上にひどい最悪の状態。降伏したほうがましなくらい。やるかやられるかしかない。備えよ常にや平和のために備えよが正しい。
男は戦士であるべきで、女は戦士を好む、としてそれが少子化や衰退の原因であるとしている。イーリアスの戦士の文化と呼んでいる。イスラエルのような危機にさらされている国では女性の社会進出もあるものの3人以上子供が産まれ少子化にはなっていないそう。韓国では似たような状況ではあるが少子化は起きている。その点への言及がほしかった。しかし男は強くあれ、戦士であれというマッチョな思想には同意する。女性に対して強くあれというのではなく外敵に対してであるのでいわゆる男尊女卑とは重ならないのがよい。みんなもイーリアス読もう。
そして進歩的社会の象徴とするヨーロッパの移民受け入れにもこの点から反対しておりヨーロッパの消滅は確実と言っているが、その点賛成である。移民は受け入れるべきではない。
最後のまとめで、戦争をしたいわけではなくて調略とか外交をつかってなるべく回避するものとしている。そしてその外交の時の圧力の一つとして軍事力を保持しておくというのが主張であり、やはり外交の一手段という王道の考え方であるので受け入れやすい。軍事力が強くても同盟関係を構築すれば戦闘に負けても戦争には勝てるのである。 -
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『世界最強の地政学』 奥山 真司 著
「世界最強」かどうかは別にして、地政学の歴史や考え方、現在進行中のロシア、中東、中国、果ては宇宙の話まで、これ一冊で十分という感じです。地図が多用されていることから、眼で見てわかる工夫もされており、新書版としては「最強」かと思います。
日本は海洋国家であるはずなのに陸軍というランドパワーが強い理由、隣国とはどこも敵国、戦争に勝つ定義は何か(この定義ではロシアは敗戦状態)など、改めて考えさせられるところがありました。新聞やニュースなどで断片的に入ってくる情報を俯瞰することができ、これで1,000円チョットとはお得な一冊です。 -
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ネタバレ「フルコースのディナーをワインとともにガッツリいただきました」という読後感です。辞書並みに分厚い本で、読むのを躊躇しましたが、この「新装完全版」には「中国は平和的に台頭できるか?」が追記されているとのことで、思い切って挑戦。発行年は、2019年ですが、歴史を振り返りつつ(日本についても詳述)、いまにも通じる内容です。
「オフェンシィブ・リアリズム」を主張される著者の要点は、おおよそ以下の3点。①国家を超えて全世界の安全を守る中心的な権威がなく、②どの国もある程度の攻撃的な軍事力を持ち、③国家同士は夫々が何を考え何をしようとしているかを完全に把握できない、なかでは、大国は生き残りのために覇権を求めるというもの。そのため、大国の防御的な対応は、もう一方の大国からは攻撃的と映り、偶発的に紛争に至りかねないと説いています。
最終章の中国の部分では、この25年間で、過去の中華思想から「列強に支配された『恥辱の世紀』を経験した」と認識を変え、その恥辱を晴らすことが重要目標の一つとなり、「もし中国が劇的な経済成長を今後の数十年間続けられれば、アメリカや周辺国との激しい安全保障競争を展開するようになる」と推論しています。中国も少子高齢化・人口減少などで、今後「劇的な経済成長」を図れるかは怪しくなりつつありますが、(著者も書いているように)この推論が外れることを期待したいところです。 -
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2018年トランプ政権下で出版された軍事専門家による国家戦略論
日本の高度な戦略文化論から入る
1.0 江戸システム 幕藩体制をもって敵を消失させる戦略論
2.0 明治システム 西洋近代から日本を防衛し、近代化を達成した戦略
3.0 戦後システム 防衛費をGNPの1%に抑えながら経済大国に押し上げた戦略
4.0 今求められているシステム 北朝鮮の核や、中国の尖閣から日本を守るために必要な戦略
4.0に必要なもの
①北朝鮮のすべての核関連施設とすべてのミサイルを排除するために、先制攻撃を行う能力
②国家の衰退を防ぐために少子化を解消する。
③アメリカの同盟軍としての期待を捨て、日本はみずからを防衛するために、自前の国家安全保障を行うべきであり、そのために必要になるが「作戦実行メンタリティ」である。
④これまで用意してこなかった、防衛のための攻撃能力を手に入れるために、早急に手にいれるべきは、現実的な戦闘能力である。ズルをしても相手にかつこと。である。
⑤実戦の混乱した状況化でのみ、本物の戦闘能力を培うことができる。パレードで素晴らしい動きをする軍は、そのための訓練しかしておらず、弱い。
自衛隊に必要なのは、 ①常にアクションを仕掛けること、②即興性を恐れないこと ③リスクをとること だ。
⑥特殊部隊の育成が必要。冷戦後に大規模な戦闘は起きにくくなっている。大量に兵士が死ぬことは大きなリスクであり、たとえ高額な費用が発生しても、空爆やドローンのような
攻撃を大国はとっている。だが、その対象は、少数の敵であり、数万という空爆はあまりにも、非効率なのである。
朝鮮半島の置かれている状況
・防空システムは前近代的、
・中国が援助をしているにもかかわらず、核実験などを行い、中国の国益を損ね、中国の面子をつぶしているにがにがしい同盟国
・アメリカは北朝鮮を中国に渡すことはできない。そうなれば、朝鮮半島に中国軍がなだれこんでくる
・アメリカにとって、韓国は守るに値しない国である。38度線に近いソウルから南に経済を移転するように進言したにもかかわらず、韓国は実行していない。
・脆弱な韓国軍を補完するために、西ドイツとイタリアから武器をただ同然で導入できなにもかかわらず、韓国は自国での開発を優先した。
・トランプの戦略は、核を放棄した北朝鮮がアメリカの保護下で経済的に成長するための援助をすることであったが、うまくいっていない。ちなみに、南アと、リビアではうまく行った。
現代は、地政学(フィオポリティックス)から地経学(ジオエコノミックス)を重視する時代にはいった
地経学とは、地政学+経済+貿易 米中の対決でトランプが採用している戦略は、地経学をベースに組み立てられていることを語る
中国は、過去の時代に受けていた優遇措置をつかって、アメリカに経済的な挑戦をおこなっていて、トランプはその特恵を取り去ろうとしている。
軍事と密接に組みあわさった、経済、貿易の交渉はある面妥当なのである。
イノベーションは、過去、小さな組織から起こっていて、中国、アメリカの規模からは、かならずしも継続的に起こるかどうかは定かデハナイ。シリコンバレイは、官僚的なインド人が増えてきていて、ITなど技術の中心がかわりつつあることを最後に示唆している。
目次
第1章 日本4.0とは何か
第2章 北朝鮮の非核化は可能か
第3章 自衛隊進化論
第4章 日本は核武装すべきではない
第5章 自衛隊のための特殊部隊論
第6章 冷戦後に戦争の文化が終わった
第7章 「リスク回避」が戦争を長期化させる
第8章 地政学から、地経学へ
第9章 米中が戦う地経学的紛争
訳者解説 -
Posted by ブクログ
字数は少ないが内容は豊富な本。
2021年現在の国際環境は、日本にとってかなり有利になっている。チャイナ4.0の戦狼外交はチャイナ2.0の悪化版。世界的に反中ムードが高まっている。シーパワー=海軍力、マリタイムパワー=海洋力で、これは中国の理解していない同盟の戦略。
人材が常に入れ替わるため、ジェットエンジンのようなチームワークが必要な技術は開発できない。
日本が中国に対する戦略としては、冷戦期にスウェーデンがソ連とフィンランド国境に精鋭を配置したように、中立のまま台湾を支援できるような体勢をとることで抑止する。そして習近平をつまづかせる、すなわち中国からの様々な要請に全てノーと答えて習近平は失敗していると中国国内に印象付けること。
軍事テクノロジーの逆説として戦車と機関銃の話を挙げている。機関銃は陸軍のどの職種も採用せず、旅順ではロシアの水兵が使っていたことは面白い。戦車も英海軍の航空部隊から始まりチャーチルが承認、本来の任務を隠すために水槽(タンク)を開発していると欺瞞していた。
中東の木の枝と蛇の寓話。木の枝に意思はないが蛇にはある。相手は木の枝ではなく蛇であることを認識する重要性。
なんで中国はあんなことするんだろう、言うんだろうという疑問については「国内のことばかりで他者が見えていないから。文明論的にも対等は他国はおらず強者か弱者という見方しかできない」と簡潔な解答を与えてくれた。 -
Posted by ブクログ
稀代の戦略家エドワード・ルトワックの論文や講演録に関するインタビュー集 「戦争にチャンスを与えよ」は、エドワード・ルトワックにより1999年に発表された論文。この本はこの論文の他にこれまで発表した論文や講演録に関するインタビューを奥山真司氏が行い翻訳したものである。
日本人にとってはなかなか飲み込み難いタイトルの論文かもしれないし、内容に対する感想も十人十色だろう。
「戦争には目的がある。その目的は平和をもたらすことだ。人間は人間であるがゆえに、平和をもたらすことには、戦争による喪失や疲弊が必要になる。」ということだ。外部の介入によって、この自然なプロセスを途中で止めてしまえば、平和は決して訪れなくなってしまうのである。
現在では、じつに多くの国際組織が他人の戦争に介入することを己のビジネスにしている。これらの組織の際立った特徴は、戦闘を行うことは拒否しながら戦場に入り込むことである。
NGOも、自らの組織の永続を目指している。したがって、彼らの最優先事項は、目立つような状況下での活躍を誇示することで、善意の寄付を募ることにある。
ほーほー。時々、ニュースを見て胡散臭さを感じていたのはこういうことだったのかと腑に落ちた。しかし日本人として、西方の大国から侵略された時に、「今後の平和をもたらすために、アメリカや国連の介入はしないでください。」などとは決して言うことはできまい。難しいところだ。
第6章の「パラドキシカル・ロジックとは何か 戦略論」、第7章の「戦争から見たヨーロッパ 『戦士の文化」の喪失と人口減少」も必読である。多くの人に読んでほしい。 -
Posted by ブクログ
予想以上におもしろい本でした。現代中国については、とにかく猛烈な経済成長をしているので、経済力で世界第一位となるのは時間の問題なので、習近平の支配が成功していると考えたくなります。彼は政敵になる可能性のある共産党員幹部たちなんと153万7000人を虐殺や投獄によって一掃し、憲法改正までして終身国家主席という地位を確保して独裁者となりました。
任期が決まっていて、後継者は選挙で選ばれるなら、クーデターによる暗殺の影に怯える必要はあまりないのですが、終身独裁者は常に暗殺に怯えて政敵を抹殺し続けなければならないところに彼の最大の弱みがある。そして彼がその地位を守るためには、経済成長と国力拡張を臣民に見せ続けなければならない。そして彼の強気な一帯一路や香港や台湾併合をめざす膨張路線はあらゆるところでトラブルを引き起こしている。
この本は、戦略の逆説的論理(パラドキシカル・ロジック)についてさまざまな実例を紹介しながら説明してくれます。戦争が平和をもたらし、平和が戦争の原因となるということいついて我々は危機感を持らなければならない。
台湾は徴兵制を廃止して国防をアメリカ任せにすることで、経済的な発展と平和を享受していますが、その姿は日本とまるで一緒である。こういう視点から現代情勢を見つめ直すことが、平和ボケした日本人には必要だと思いました。