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Posted by ブクログ 2021年07月25日
ルトワックの日本への指南書(前半)とグローバルな情勢分析。
題名の日本4.0とは、日本の戦略文化について、内戦を一掃した徳川幕府を1.0、西欧の帝国主義に飲み込まれないための明治政府の近代化政策が2.0、戦後の軍事面での弱体を日米安保に依存して経済に全力集中した3.0と整理する。その上で、3.0の...続きを読む構造は抑止が効く中露にはともかく、抑止できない北朝鮮との間では、自らの身を自らで守る必要があり、4.0と言うべき戦略文化に移行すべきというもの。
方法論としては、少子化の傾向を変えて、イノベーションや経済成長の基盤を維持し、北との関係で持っても使えない核兵器は持たず、代わりに実戦的な先制攻撃力や特殊部隊を確保することを挙げている。パレードだけ上手い軍隊を戦えないと非難して、イスラエルやフィンランドのように脅威に晒されている国の軍隊のリアリティを称賛している。
また、リアリティについては、第二次大戦後に、ポストヒロイックウォーとして、犠牲を避ける傾向がアメリカ軍でも強まっていることを指摘。イスラエルの単純な作戦と異なり、完璧を見据えて作戦規模が拡大して本末転倒になっている状況を指摘している。また、マティスやペトレイアスについても、politically correctな軍人で軍事合理性を欠いていると批判。要するにリスクを恐れない戦士の文化が消えつつあるということ。
また、最後の章で地政学から地経学という視点で米中対立を分析。
リアリスティックに戦士の文化を効率的に追求し、新たな戦略文化に至ること、これが現在日本の課題である。
Posted by ブクログ 2022年11月15日
2018年トランプ政権下で出版された軍事専門家による国家戦略論
日本の高度な戦略文化論から入る
1.0 江戸システム 幕藩体制をもって敵を消失させる戦略論
2.0 明治システム 西洋近代から日本を防衛し、近代化を達成した戦略
3.0 戦後システム 防衛費をGNPの1%に抑えながら経済大国に...続きを読む押し上げた戦略
4.0 今求められているシステム 北朝鮮の核や、中国の尖閣から日本を守るために必要な戦略
4.0に必要なもの
①北朝鮮のすべての核関連施設とすべてのミサイルを排除するために、先制攻撃を行う能力
②国家の衰退を防ぐために少子化を解消する。
③アメリカの同盟軍としての期待を捨て、日本はみずからを防衛するために、自前の国家安全保障を行うべきであり、そのために必要になるが「作戦実行メンタリティ」である。
④これまで用意してこなかった、防衛のための攻撃能力を手に入れるために、早急に手にいれるべきは、現実的な戦闘能力である。ズルをしても相手にかつこと。である。
⑤実戦の混乱した状況化でのみ、本物の戦闘能力を培うことができる。パレードで素晴らしい動きをする軍は、そのための訓練しかしておらず、弱い。
自衛隊に必要なのは、 ①常にアクションを仕掛けること、②即興性を恐れないこと ③リスクをとること だ。
⑥特殊部隊の育成が必要。冷戦後に大規模な戦闘は起きにくくなっている。大量に兵士が死ぬことは大きなリスクであり、たとえ高額な費用が発生しても、空爆やドローンのような
攻撃を大国はとっている。だが、その対象は、少数の敵であり、数万という空爆はあまりにも、非効率なのである。
朝鮮半島の置かれている状況
・防空システムは前近代的、
・中国が援助をしているにもかかわらず、核実験などを行い、中国の国益を損ね、中国の面子をつぶしているにがにがしい同盟国
・アメリカは北朝鮮を中国に渡すことはできない。そうなれば、朝鮮半島に中国軍がなだれこんでくる
・アメリカにとって、韓国は守るに値しない国である。38度線に近いソウルから南に経済を移転するように進言したにもかかわらず、韓国は実行していない。
・脆弱な韓国軍を補完するために、西ドイツとイタリアから武器をただ同然で導入できなにもかかわらず、韓国は自国での開発を優先した。
・トランプの戦略は、核を放棄した北朝鮮がアメリカの保護下で経済的に成長するための援助をすることであったが、うまくいっていない。ちなみに、南アと、リビアではうまく行った。
現代は、地政学(フィオポリティックス)から地経学(ジオエコノミックス)を重視する時代にはいった
地経学とは、地政学+経済+貿易 米中の対決でトランプが採用している戦略は、地経学をベースに組み立てられていることを語る
中国は、過去の時代に受けていた優遇措置をつかって、アメリカに経済的な挑戦をおこなっていて、トランプはその特恵を取り去ろうとしている。
軍事と密接に組みあわさった、経済、貿易の交渉はある面妥当なのである。
イノベーションは、過去、小さな組織から起こっていて、中国、アメリカの規模からは、かならずしも継続的に起こるかどうかは定かデハナイ。シリコンバレイは、官僚的なインド人が増えてきていて、ITなど技術の中心がかわりつつあることを最後に示唆している。
目次
第1章 日本4.0とは何か
第2章 北朝鮮の非核化は可能か
第3章 自衛隊進化論
第4章 日本は核武装すべきではない
第5章 自衛隊のための特殊部隊論
第6章 冷戦後に戦争の文化が終わった
第7章 「リスク回避」が戦争を長期化させる
第8章 地政学から、地経学へ
第9章 米中が戦う地経学的紛争
訳者解説
気になったところを一部、紹介します。
・勝つためには、あらゆる手段でサプライズを狙う必要がある。戦争の目的は「勝つこと」であり、「ルールを守る」ことではないからだ。それ故、機動の仕方だけでなく、メンタル面での柔軟性を身に付けねばならない。
・本当に実力のある軍隊は、全てを完璧に観客に見せ...続きを読むるような演習(演劇)はできない。そのための練習を行うリソースがもったいないからだ。全ては本物の戦いのために使わなければならない。
・戦争で守る原則は「攻撃は最大の防御」「不測の事態を恐れるな」「リスクをとれ」である。
・地経学の目標は「国家の富の拡大、そして国民の就業率を最大化すること」
・正解のない状況(例えば戦場)にAIは対応できない。
Posted by ブクログ 2020年07月26日
日本を含むアジア情勢について、北朝鮮に関することを中心に戦略を述べています。
ほんとに、先制攻撃できる手段を持つことは重要です。戦争自体は反対だけど、戦争を遂行できる能力を持つことは大賛成。こういう話をしてもあまり周りには賛同してもらえませんが。
例えていうなら、お金持ちのスネ夫は、ジャイアンにむし...続きを読むり取られるだけ、ということ。のび太はドラえもんという戦略兵器を持って、ジャイアンからの直接的な攻撃に対抗するだけでなく、攻撃する気も起こさせないようにすべし。今の日本は、お金を持っているのび太です。
Posted by ブクログ 2020年01月31日
『勝利という目的は得たいのに、リスクという代償は払いたくない。実際には莫大なコストがかかり、犠牲が増える可能性すらある。軽減されているのは指導者の責任だけだ』とあります。これは今の低強度紛争に対する大国の作戦を批判した文脈ですが、日本のリスクナーバスな意思決定そのものにも向けられているようにも思えま...続きを読むした。多くの示唆お得られる一冊。
Posted by ブクログ 2019年08月27日
日本の国家戦略について書かれている
非常に参考になる本
戦後システムは日本3.0
同盟による抑止力であった。
今後は日本4.0に移る必要がある
北朝鮮(朝鮮半島)の脅威
米中対立を軸とした地経学
少子化社会
への対応
予測不能な武力に対しては抑止の理論が効かない
防衛としての先制攻撃が必要
...続きを読む日本自らが対処しなければならない問題
未来は子どもたちにかかっている
無償のチャイルドケアを施すべき
不妊治療の無償化
小学校に行くまでのチャイルドケアが必要
地政学から地経学へ
Posted by ブクログ 2019年01月07日
『中国4.0』の著者による日本4.0。
「内戦を完璧に封じ込めた江戸」が1.0。
「包括的な近代化を達成した明治」が2.0。
「弱点を強みに変えた戦後」が3.0。
そして「自ら戦える国へのアップグレード」が4.0です。
以下、本書より。
【安全保障と少子問題】
多くの読者は、北朝鮮や尖閣への危機対...続きを読む応という安全保障上の問題と、少子問題が並べて論じられる事に違和感を覚えるかも知れない。
しかし、これらの問題には二つの点で通底するものがある。
一つは、いずれもが日本がまさに直面している致命的な問題でありながら、実際的かつ有効な対処法に誰も取り組もうとしていない点。
そこに共通するのは、リアリズムの欠如。
日本は長年、少子化問題を議論しながら、人口減少という国家にとっての真の危機を間近にしても、思い切った施策を打ち出そうとしていない。そもそも将来の納税者が減少すれば、近代国家は衰退するしかない。
もう一つ、子供がいなければ安全保障の論議など何の意味もないという事。
人間の人生には限りがあり、未来は子供の中にしかない。
当然、国家の未来も子供の中にしかなく、それを守る為に安全保障が必要。
どんなに高度な防衛システムを完成させても、国内の子供が減り続けている国が戦争に勝てるのだろうか?
未来の繁栄が約束されるのだろうか?
今回、日本に来る際、私が乗った飛行機の席の近くに赤ちゃん連れの母親がいた。
この赤ちゃんが泣き始めたので、私は席を立って彼らの側にいった。
その母親は、不満を言いにきたと思ったのか緊張したようだったが、「私にも孫がいる。赤ちゃんは私に任せて、トイレにでも行ってリラックスなさい」と声をかけると、安堵の表情を浮かべた。ところが、私の隣に座っていた男は不満げに「俺はわざわざビジネスクラスのチケットを買ったのに、赤ん坊がうるさくてたまらん」と言うではないか。
私はその男に言ってやった。「お前は馬鹿だ。赤ん坊の側にいたくないという奴は、人生のセンスが全くない人間だけだ」と。
もし日本が本当に戦略的な施策を打ち出すのであれば、最も優先されるべきは無償のチャイルドケアだろう。スウェーデン、フランス、イスラエルは高い水準のチャイルドケアシステムを整備し、実際に子供が増えている。
「日本4.0」が最初に取り組むべきは、日本人が得意とする包括的なチャイルドケアシステムの構築だ。
まずは不妊治療の無料化。イスラエルはこれを100%実施している。
次は出産前の妊婦が必要とする諸費用、出産費用、更には小学校に行くまでのチャイルドケアの費用を国が負担する事。
イスラエルでは、大卒の女性が生む子供の数は平均で2.5人に達している。
もちろん彼女達は国からの援助を必要としていないが、いざとなったら無料のシステムに頼れるというセーフティネットが備わっている。
これは国内の心理的な空気も一変させる。
高齢化が行き着くと、国内の雰囲気は保守化し、悲観的になる。
未来の事を考えない近視眼的な思考がはびこるようになる。
私は日本の右派の人々に問いたい。
貴方が真の愛国者かどうかは、チャイルドケアを支持するかどうかでわかる。
民族主義者は国旗を大事にするが、愛国者は国にとって最も大事なのが子供達である事を知っている。
Posted by ブクログ 2018年12月03日
「冷戦後の世界は、軍事を中心とした地政学の世界から、経済をフィールドとする地経学の世界に軸を移しつつある。」1990年から言っていそうで、まさに現在ますますそうなっている。奥山さんの訳も素晴らしい。
大戦略の重要性。
地経学 ジオエコノミックス
Posted by ブクログ 2018年10月14日
表題の日本4.0(徳川幕藩体制を日本1.0、明治維新後を2.0戦後体制を3.0として)よりも、「ポスト・ヒロイックウォー」「特殊部隊論」「地経学」の方が興味深く読めた。
まあ、鵜呑みにするものではなく、思考の補助線としてなら有効かと。
「リスク回避を優先しすぎることのリスク」
米軍が例に出ているが...続きを読む、これをエネルギー問題でやっちゃってるのが今の日本なのでは?とも読めた。
「地経学」
米国が地政学から地経学にフェイズを移しつつあるとしても、
日本は90年代以降、地経学から地政学にフェイズを移してないか?とか。
だいたい、北京との間で冷戦以下で済む保証なんてなにも無い訳よ、実際。
Posted by ブクログ 2020年04月20日
「日本4.0」というタイトルだけれど、日本について論じている部分はごくわずかで、軍事分野を中心に国際的な戦略論の現在の潮流について解説(批判)した本。
もう少し日本について詳しく語ってほしかったが、そもそも知日派のような専門家ではないのだろう。
強く興味をそそられるようなテーマではなかったものの、...続きを読む「リスクを極端に恐れ、最小化しようとする現代の軍事文化」が却ってコストの増大や効率性の低下を招いている、という主張は、「一人も死なせてはならない」という前提を前に硬直してしまっている現在のコロナウイルス対策になにか当てはまるような気がして(国家レベルでも個人レベルでも)示唆的だった。
Posted by ブクログ 2019年12月16日
・日本では、いかなる目的であっても核兵器を使うことは不可能。絶対に使うことのできない兵器に、莫大な税金をつぎ込み、他のもっと有益な軍備を削るのは、政治的軍事的に合理性がない。
・日本が核武装の代わりにやるべきは、先制攻撃能力の構築だ。
Posted by ブクログ 2019年06月30日
国家戦略の新しいリアルという副題。タイトルは日本4.0となっているが、日本について言及しているのは前半の一部分だけで、内容は世界の軍事・経済戦略が中心。
内容は、現在持て囃されている地政学は地経学へ移行していること、世界がリスクを取らなくなっている、自衛隊への提言(核武装、特殊部隊)、米中関係の今後...続きを読むについて論考している。読んでみて、内容が論文を集めたものであり、結論がやや曖昧でスッキリしない感じがした。
Posted by ブクログ 2019年03月06日
サブタイトルが「国家戦略の新しいリアル」というようにこれから国防に関するルトワック氏の提言。中国、ロシアよりも北朝鮮にもっと神経を使うべきというもの。核の廃絶を行わない限り、常に危険が伴っていることを忘れてはならないだろう。
Posted by ブクログ 2019年03月03日
今から35年以上前だと思いますが、ノストラダムスの大予言シリーズを読んでいた時、21世紀には日米安保条約が無くなっている、というフレーズがあり、その部分が鮮明に頭に焼き付いています。
それから30年間、つい最近までは、日米安保条約が破棄されないなんてありえないことだと思ってきましたが、どんな条約に...続きを読むも期限があり、それが延長されているという原則に立てば、破棄されることもあるのですよね。日露中立条約が延長されなかったように。
この本では、戦後日本を安定的に成長させてきたシステム(日本3.0)が終わって、新たな国家戦略の構築をする(日本4.0)必要があることを述べています。地政学から、「地経学」の考え方が重要とのことです、地経学とは、初めて聞いた言葉でした。今後、興味を持ちたい内容でした。
以下は気になったポイントです。
・日本の問題は、1945年以降、有効に機能してきた「戦後システム(=軍事的敗北を経済的勝利に変える)」が、北朝鮮というむき出しの脅威には対応できなかったことにある(p10、16)
・日本の400年を見てみると、そのシステムが危機に直面するたびに、新たに包括的なシステムに更新してきたこと。これは世界でもあまり例を見ないこと(p11)
・日本の近代化は、軍事を自らのアイデンティティとしていた侍が、自分たちの特権を否定する近代的な軍隊への転換を主導したことは画期的である。これを理解できなかった、西郷隆盛のような脱落者を出しながらも成功した(p14)
・韓国は、北朝鮮問題に対する当事者意識、国防への責任意識をまるで持ち合わせておらず、ビジネスだけに関心を示している(p42)
・戦争で守る原則とは、1)常にアクションを仕掛ける、2)即興性を恐れない、3)リスクをとる(p67)
・核兵器の使い道は、相手の核兵器の使用を抑止すること、それを使うと相手も使い自国は破滅する、と考えてくれるのが前提(p73)
・現在の特殊部隊が優遇されるのは、戦争による犠牲者を受け入れられないことに起因する、これにより戦争は長引き、コストは浪費する(p84、138)
・ローマ帝国が得意としたのは包囲戦であった、包囲技術の優秀さと兵站面での優位に立つと、敵の食糧が尽きるまで待つことが可能であった。その現代版が、貿易禁止・武力封鎖となる(p116)
・新しい「地経学」の時代は、経済がその紛争の最大の原因だけでなく、その紛争に使われる唯一のツールとなる(p155)
・平和は敗者が負けを認めないと訪れない、なのでパレスチナ戦争は続く(p182)
2019年3月3日作成