奥山真司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
数十年来、地政学を含む国家戦略を研究している著者による地政学の入門書。
本書では冒頭から「地政学は学問ではない」、「学問として整理される以前の、より実践的な知の積み重ね」であり「世界の指導者の思考パターンのひとつ」にすぎないと述べる。
ゆえに、本書では大きく6つの要素で地政学が述べられるが、それぞれの章で述べられている内容が互いに重なり合っていたりしていて、この6要素で地政学がすっきり整理されるというようなシロモノでは毛頭ない。
なので、読んでいて気持ち悪さは残るものの、では本書を読んで地政学の実像がつかめないかと言えばそんなことはない。
本書の特長は、古典地政学の知見を用いながらも、可能なかぎり過去の事例だけでなく、現在進行中の各国の動向も地政学的観点から読み解いていっている点だろうか。
地政学は「ものの見方」と紹介されているが、まさに著者が、いまの各国の外交戦略をどう見ているか?が述べられている個所がちらほらある。
戦後アメリカの戦略の変遷を振り返りつつ、良かった点・失敗だった点を分析したり、中国の現在の外交姿勢の背景を読み解きつつその限界を予想してみたり、日本の今後取るべき指針を述べてみたり・・・。
そういう意味で、本書は地政学の基礎を踏まえつつ、目の前で応用を披露してもらっているようなものであり、具体的レベルでの思考の仕方は捉えやすい。
体型的理解の書ではないが(著者に言わせれば地政学にそのような書物は存在し得ないのだろうが)、物事の見方を得るという意味では良い一冊だと感じた。 -
Posted by ブクログ
とても面白かったです!
webセミナーで「地政学」を学んだことはあったのですが、より具体的な話があり勉強になったし、本なので自分のペースで読み進められるので頭がぐるぐる(いい意味で)回転しました。
<サマリ>
・「地政学」とは、地理的に衝突が頻発する3大エリアをめぐる国の振る舞いの研究。
・3大エリアとは、①アジア、②中東、③ヨーロッパ。
・2025年現在、米中露の「新冷戦」が始まっている。
・国同士の争いはメチャクチャえげつない。性善説はあり得ないし、裏切りや策謀渦巻く世界。日本は島国であり他国から侵略された経験が少ないこともあり、そのあたりの感覚が希薄すぎる(いい人すぎる)。
・「自分たちに都合の良い」平和論に流されずに、広い視野で今後の世界を、冷静に考え捉える能力を養う必要がある。
<ポイント>
国の性質としての考え方:地理的に置かれている環境から、それぞれの国は「ランドパワー」「シーパワー」に分類できる。
ランド(大陸国家):ロシア、中国、フランス、ドイツ、etc
シー(海洋国家):アメリカ、イギリス、日本、etc
・ランドパワーは、基本的に領土拡大の欲望がある。
・シーパワーは、押しとどめようとする。
領域の考え方:
ハートランド:広大なユーラシア大陸の中央部(=ロシア、中国)
リムランド:ユーラシア大陸の沿岸部
・ハートランドは、領土拡大し海を目指す。
・リムランド(沿岸部)でいざこざを起こす。これが3大衝突エリア。
<感じたこと>
・ロシアという国はハートランドに位置し、古来広大な領土を得てしまったがゆえに、常に周囲から攻め込まれる不安を抱え、それがゆえに周囲に戦争を仕掛けなくてはいけない悲劇の宿命を持った国。
・中国も似たようなもの?過去にユーラシアの広大な大地に、秦、元といった帝国を築いていたが故、過去の栄光を求めて拡大路線に突き進んでしまう。海に囲まれてたら「ここまででいいか!」と思えたのに境界がないから自分でも止められない、止まらない。
・アメリカは、最高の地理的環境を得た国。巨大な島国であり攻め込まれにくいため、自国防衛にかける費用が少なくて済む。その分、内需拡大に力を避ける。広大な土地があり人口を養えるため、自国だけでも生きていける。安全権からリムランドに介入、コントロールできる。
・日本はユーラシア大陸に近すぎることが難点。あと領土がもっと大きく資源が豊富にあればより強大なシーパワーの国になりえた可能性がある。
・オーストラリアもその可能性を秘めているように見えるが砂漠が多すぎ?
・中華思想:漢民族はそもそもこうしたヒエラルキーを「種族」として古来から持つ民族(他のランドパワー国家も似たものかもしれないが)。この考え方は、「争いがない平和な世の中がいいよね。」と考えている人達とは一生分かりあえないと思った。
・ランドパワー国家の苦悩:ロシアや中国に対し「土地がたくさんあって、資源も豊富にあって羨ましい!」とばかり思っていたけれど、それはそれで大変なこと、悩み事が多くあることが分かった。
・「共産主義」の思想は、それはそれとしてアリだとは思います。日本人が大好きな「みんな一緒、同じがいいよね。」を突き詰めれば「共産主義」っぽくなる気がします。人の歩み/進化は遅くなると思いますが、宇宙から外敵が現れて侵略してくるようなことがなければそれもありかもしれない。地球の環境汚染も軽減する。
・サイクス・ピコ協定とか第1次世界大戦時の大国のふるまいは本当にひどい。ただそれが人間の本質(悲しいけど)。
・ソ連崩壊、オスマントルコ帝国が分割された時のように、アメリカ合衆国も分離独立する州が現れるかもしれませんね。昨今カリフォルニア州単独のGDPが「日本を抜いて4位になった」との記事もありましたしトランプさん以降「アメリカの分断」の話をよく聞くようになったし、とても心配。
まとまりませんが。。。 -
Posted by ブクログ
国連などが戦争に中途半端に介入して止めることはマイナスしかない。当事者同士が最後まで戦って完全な勝者と敗者ができるか、双方がもうこれ以上戦いたくないと思うまでやってやっと平和が生まれ、復興が始まる。
この主張は理解できる。中途半端な正義感や覚悟のない介入では負の連鎖は止まらないし、筆者の言うようにやらない方が良い。
ただ自然に任せるのがベストだと言うような主張はダーウィニズムや新自由主義のニオイが感じられ、人間の知恵を軽視する方向になる。
人類の歴史は戦争の歴史であり、今も続いている通り根絶は困難である。だからと言って止める努力を放棄してはいけない。その手段が哲学や宗教などの思想であり、政治である。
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Posted by ブクログ
近代日本のグランドストラテジー(大戦略)について、明治時代に「富国強兵」という大方針が打ち出された。
ロシアの脅威に対抗するため、朝鮮半島を利益線(=緩衝地帯)として確保する。
朝鮮をめぐり日清•日露戦争に勝利し大陸進出を強める。
日本はシーパワーでありながら、大陸での植民地を拡大するというランドパワー的発想の大戦略を描いたことになる。
「富国強兵」の大戦略は、1945年の敗戦により破綻。
戦後の日本は吉田ドクトリンに基づき経済重視•軽武装の「富国弱兵」路線に転換することとなった。
ランドパワー的発想から自由になった日本は、シーパワー連合の一員として英米と協調。
冷戦期の米ソ対立においてはアメリカの軍事同盟国として重要な役割を果たした。
ソ連崩壊後は海洋進出の動きを見せる中国に対抗すべく、依然として日米同盟を基軸とする外交を進めている。
思えば近代日本の大戦略は、わが国みずから選ぶ攻めの戦略であったことはなく、明治期ならば欧米列強のアジア進出に、戦後は冷戦や米中対立といった国際環境に対応する形で決定されてきた。
今後の大戦略としては、あえてみずから大戦略を描くことなく、国際関係の推移を予測しながらそれに対応する方針を選択していくべきなのだろうか? -
Posted by ブクログ
地政学、という言葉を目にすることが多くなったが、実際には地政学という学問分野は存在しない。あくまで地理条件を踏まえた政治学であり、グローバル化に伴って各国や地域の情勢はダイナミックに変化し、そこに対応するための情報集積こそが地政学と呼ばれる研究領域である。
現在進行形でロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス紛争といった現状変更に対する挑戦が行われている。これらに付随して、中国の台湾危機や中東・パレスチナのさらなる戦線拡大といった世界大戦に発展するリスクも指摘されている。この軍事行動に至る論理は、ランドパワー・シーパワーという大国を支配する世界観によって規定される。
世界には戦略的に重要な拠点がいくつか存在しており、平時は交易路・有事には平坦路となるルートと、その全体を支配するチョークポイントには現状ではアメリカ軍の基地が置かれている。そして馬から車、船舶、飛行機と戦術兵器が変遷していくにしたがって、これら地理的優位を保つ戦略は遷り変わっていくが、基本的な考え方は古来から変わらない。
そして地政学の観点からは、敵を殲滅したり圧倒的な勝利を目指すことは最適ではなく、むしろ戦後秩序をコントロールできる状況にいかに持ち込むかがもっとも費用対効果の高い戦略と考えられる。その意味でロシア・ウクライナ戦争でもイスラエル・ハマス紛争でもそのビジョンは不明確であり、泥沼化ともいえる状況となってしまっている。 -
Posted by ブクログ
台頭する中国との武力紛争の危険性もしくは中国が暴発する危険性は、既存の大国(米国)の地位に新興国(中国)が挑戦することによる「トゥキディデスの罠」ではなく、衰退し始めたことを自覚した新興国が最後の機会に賭け無謀な軍事的手段に訴える可能性によって高まる、という主張。
人口(特に労働力人口)が減少に転じ、失政により経済成長が鈍化している中国の現状はまさにその条件に当てはまる。
その中国に対抗するには、民主主義諸国の団結、理想的にはそれらによる新たな国際機関の設置、短期的に有効な防御手段の実施、長期的に中国の弱点を攻めつつ弱体化を図る等々の対応が必要だと、的確に指摘されている。
朝鮮戦争を経て極度に高まった共産圏に対する危機感と比べれば現状のものはまだ緩いが、状況の厳しさは当時に劣らないという認識を持って当たることが日本を含む各国に求められている。
現状分析、将来のリスク評価、短期・長期の対抗原則・手段など、バランスよく、的確にまとめられた良書。 -
Posted by ブクログ
地政学者の奥山真司氏の初学者向けの戦略解説書。週末にさっと読み切れてしまう分量なれど、コンパクトに戦略論のエッセンスや台湾有事やアメリカの動向など最新の議論も含めて学ぶことができる。入門書だが、背景には氏の膨大な研究と読書量が詰まっており、今後、関心を持った読者が深掘りできるようにさまざまなテキストや記事が紹介されている(巻末に参考文献一覧があればさらに良かった)
個人的に印象を持った点は、次の通り。
①戦略には、常に相手の行動が存在することを忘れがち。相手のリアクションも考えるべき。
②この点、戦略シミュレーションは政策決定者が、自らの選択肢や相手の対応を考える上で有益
③アメリカの戦略三正面は、西欧、中東、アジア。この中での資源のやりくり。
④台湾有事はいわば冷戦時代のフルダギャップ。大きくフォーカスされた本件よりも、サラエボ事件的な偶発的なものから事態が進展する可能性もあり、ソフト・ハードの備えを持った上で柔軟に考えるべき
⑤日本の安保言論空間は、相手の存在が無く、日本だけが何もしなければ平和になるという戦略的視点が欠けている。むしろ、敵を愛し、敵のことを徹底的に知って掘り下げることが必要。