奥山真司のレビュー一覧
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数十年来、地政学を含む国家戦略を研究している著者による地政学の入門書。
本書では冒頭から「地政学は学問ではない」、「学問として整理される以前の、より実践的な知の積み重ね」であり「世界の指導者の思考パターンのひとつ」にすぎないと述べる。
ゆえに、本書では大きく6つの要素で地政学が述べられるが、それぞれの章で述べられている内容が互いに重なり合っていたりしていて、この6要素で地政学がすっきり整理されるというようなシロモノでは毛頭ない。
なので、読んでいて気持ち悪さは残るものの、では本書を読んで地政学の実像がつかめないかと言えばそんなことはない。
本書の特長は、古典地政学の知見を用いながらも、可能 -
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とても面白かったです!
webセミナーで「地政学」を学んだことはあったのですが、より具体的な話があり勉強になったし、本なので自分のペースで読み進められるので頭がぐるぐる(いい意味で)回転しました。
<サマリ>
・「地政学」とは、地理的に衝突が頻発する3大エリアをめぐる国の振る舞いの研究。
・3大エリアとは、①アジア、②中東、③ヨーロッパ。
・2025年現在、米中露の「新冷戦」が始まっている。
・国同士の争いはメチャクチャえげつない。性善説はあり得ないし、裏切りや策謀渦巻く世界。日本は島国であり他国から侵略された経験が少ないこともあり、そのあたりの感覚が希薄すぎる(いい人すぎる)。
・「自分 -
Posted by ブクログ
国連などが戦争に中途半端に介入して止めることはマイナスしかない。当事者同士が最後まで戦って完全な勝者と敗者ができるか、双方がもうこれ以上戦いたくないと思うまでやってやっと平和が生まれ、復興が始まる。
この主張は理解できる。中途半端な正義感や覚悟のない介入では負の連鎖は止まらないし、筆者の言うようにやらない方が良い。
ただ自然に任せるのがベストだと言うような主張はダーウィニズムや新自由主義のニオイが感じられ、人間の知恵を軽視する方向になる。
人類の歴史は戦争の歴史であり、今も続いている通り根絶は困難である。だからと言って止める努力を放棄してはいけない。その手段が哲学や宗教などの思想であり、政 -
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近代日本のグランドストラテジー(大戦略)について、明治時代に「富国強兵」という大方針が打ち出された。
ロシアの脅威に対抗するため、朝鮮半島を利益線(=緩衝地帯)として確保する。
朝鮮をめぐり日清•日露戦争に勝利し大陸進出を強める。
日本はシーパワーでありながら、大陸での植民地を拡大するというランドパワー的発想の大戦略を描いたことになる。
「富国強兵」の大戦略は、1945年の敗戦により破綻。
戦後の日本は吉田ドクトリンに基づき経済重視•軽武装の「富国弱兵」路線に転換することとなった。
ランドパワー的発想から自由になった日本は、シーパワー連合の一員として英米と協調。
冷戦期の米ソ対立においてはア -
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地政学、という言葉を目にすることが多くなったが、実際には地政学という学問分野は存在しない。あくまで地理条件を踏まえた政治学であり、グローバル化に伴って各国や地域の情勢はダイナミックに変化し、そこに対応するための情報集積こそが地政学と呼ばれる研究領域である。
現在進行形でロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス紛争といった現状変更に対する挑戦が行われている。これらに付随して、中国の台湾危機や中東・パレスチナのさらなる戦線拡大といった世界大戦に発展するリスクも指摘されている。この軍事行動に至る論理は、ランドパワー・シーパワーという大国を支配する世界観によって規定される。
世界には戦略的に重要 -
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台頭する中国との武力紛争の危険性もしくは中国が暴発する危険性は、既存の大国(米国)の地位に新興国(中国)が挑戦することによる「トゥキディデスの罠」ではなく、衰退し始めたことを自覚した新興国が最後の機会に賭け無謀な軍事的手段に訴える可能性によって高まる、という主張。
人口(特に労働力人口)が減少に転じ、失政により経済成長が鈍化している中国の現状はまさにその条件に当てはまる。
その中国に対抗するには、民主主義諸国の団結、理想的にはそれらによる新たな国際機関の設置、短期的に有効な防御手段の実施、長期的に中国の弱点を攻めつつ弱体化を図る等々の対応が必要だと、的確に指摘されている。
朝鮮戦争を経て -
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地政学者の奥山真司氏の初学者向けの戦略解説書。週末にさっと読み切れてしまう分量なれど、コンパクトに戦略論のエッセンスや台湾有事やアメリカの動向など最新の議論も含めて学ぶことができる。入門書だが、背景には氏の膨大な研究と読書量が詰まっており、今後、関心を持った読者が深掘りできるようにさまざまなテキストや記事が紹介されている(巻末に参考文献一覧があればさらに良かった)
個人的に印象を持った点は、次の通り。
①戦略には、常に相手の行動が存在することを忘れがち。相手のリアクションも考えるべき。
②この点、戦略シミュレーションは政策決定者が、自らの選択肢や相手の対応を考える上で有益
③アメリカの戦略三 -
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戦いにおいて戦略を誤るのは、相手の動きを想定していないから、、、
ロシアのウクライナ侵攻がうまくいかないのは、まさにそれ、、、
見誤った、ってやつ。
希望的観測で物事を決めるとろくなことはない。
第二次大戦の日本も、
「日露戦争であのロシアに勝ったのだから、総力戦でアメリカにも勝てる」
などと、まさに希望的観測で泥沼にはまり、多くの市民が爆撃で殺され、
軍人は餓死、病死で亡くなった。
・・・ということが書いてある本ではない。
なんだか当たり前のことを言っているような本、、、
現在のウクライナ、中国、台湾問題を分析する本、と思えばいいのかな。
いずれにしても日本は80年闘っていない国。
そん -
Posted by ブクログ
205ページと小さな本だが、簡潔にまとまっており、世界史の解像度を大いに高めてくれる。
高校時代に世界史を選択していたが、ほぼ何も学ぶこともなく終わってしまった。
この本を世界史を学ぶ前に読んだら、知識の理解や吸収が全く違ったものになるだろう。
世界史と地理は一緒に学んだ方がいいのではないかと思った。
そもそも世界史を学ぶ意義は、本書に書かれているようなものの見方・考え方を身につけるためではないだろうか。
シーパワーとランドパワー
ルートとチョークポイント
バランス・オブ・パワー
という3つの章で説明されるものの捉え方が特に参考になった。
グランド・ストラテジーの章も勉強に -
Posted by ブクログ
旧帝国海軍が先の大戦で真珠湾攻撃を成功させながら、戦争自体に敗れたのは言うまでもなく、戦術面で勝利しながら戦略面で負けていたからである。日本側は希望的観測で真珠湾で大打撃を与えれば、当面はアメリカは太平洋に進出できず、あわよくばアメリカ国民の感情を挫き、早期和平に持ち込めると読んだからに他ならない。歴史が示す通り、これは全く逆効果で、そもそも中国進出を狙っていたアメリカが日本側に最初の一手を打たせ、国民に復讐心による戦争参加を促す目的だった事が明らかになっている。これはアメリカが大局的には日本より遥かに先を読み、展開を予測できていたからに他ならない。アメリカの国力を知っていた山本五十六ですら、
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Posted by ブクログ
今読むべき本
昨今、地政学についての関心が高くなってきていると思う。
ロシアによるウクライナ侵攻、ハマスのテロに端を発するイスラエルのガザ地区攻撃。そして、益々武力による勢力拡大の意図をあらわにしてきている中国の一帯一路戦略。
これら世界の覇権争いについて分析し、国家、独裁者の考えを理解する考え方が地政学だと思う。
奥山氏の新著は、この地政学の歴史的な流れと、理論の進展、そして実際に歴史がどのように動いてきたかを平易に紹介してくれる。
世界の地理は変わることがない。
その地図の上に成り立つ国家の考え方を考察する助けになると思う。
面白かった。