奥山真司のレビュー一覧
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中国1・0
2000年頃の中国は改革開放を継承した江沢民が経済を優先し、実質的な資本主義経済へと舵を切った。反日教育のイメージが強いが、WTOに加盟し、国際法も順守する。中国は台湾を含めた周辺国に対し平和裡に台頭するという戦略を実行した。
中国2・0
リーマンショックにより中国は経済力で世界一になるのに後10年でできると思い込んだ。第一の錯誤は「金は力なり」つまり経済力が国力そのものだと思い込んだのだ。中国国内では今でもこういうところがあるので無理はないのかもしれないが経済力に国力が追いつくには50年以上かかるのかもしれない。例えば空母だけをとっても中国がアメリカに追いつくには20年以上かかる。
第二の錯誤は「リニアな予測」China up,US downを信じ、ゴールドマンサックスのBRICsという投資のアイデアに世界中が踊らされたがこれを信じたウブな中国は「これからはわれわれが物事を決定する立場に移るべきだ」と考えた。その例が元は蒋介石の国民党が絵を描いた荒唐無稽な九段線だ。
そして第三の錯誤が「二国間関係」で物事を決められると考えたことだ。領土問題では中国はいつも二国間での解決を主張する。しかし小国が中国と揉めれば周りの国は次は我が身と小国に味方する。
胡錦濤は国内の「あまりに抑制的で中国の力を十分に発揮していない」という批判を受け対外的に強硬な姿勢を示すようになった。ルトワック曰く「ロシアは戦略を除いてすべてダメだが、中国は戦略以外はすべてうまい」日本に対しても巨大市場の中国を重視する企業が政府に圧力をかけ、腐敗した政治家はビジネスマンの言うことを聞くと言う幻想を抱いた。
中国3・0
2014年秋、反中同盟に気づいた中国は方針を変更した。それが「選択的攻撃」で抵抗のない相手は攻撃し、抵抗されれば止める。尖閣問題でも領海内への侵入は抑制されている。ロシアが国際社会の反対を無視してクリミア半島を実効支配したのに比べれば、中国が尖閣を自国領にするための実力行使はない。主張していれば国内では問題にならないからだ。アメリカの航行の自由作戦を中国は邪魔しない。航空識別圈を定めたが実際には守ろうとしない。
権力を集中させる習近平は反腐敗運動で10万人の党幹部を捜査し、人民解放軍トップ二人を逮捕した。徐才厚についてはガンで死期が近い入院中に逮捕しており極めて強硬な姿勢だ。天津爆発事故では習近平暗殺説が流れたが、これは一般市民も習近平がリスクを背負っていることを知っているということだ。結局中国は米国との「新型大国関係」G2を目指したが果たせなかった。中国3・0は今も続いている。
中国の第一の敵はアメリカ、アメリカが中国を敵視していると言うことではない。中国からすればアメリカは民主的にドナルド・トランプを大統領に選ぶ不思議の国だ。これは中国では起こりえない。薄熙来がいかに人気取りを実行しようとも大統領にはなれないのだが、アメリカはそれを許す国でそのこと自体が中国に影響を与える。
第二の敵は習近平その人だ。共産党を腐敗から救おうとする習だが反腐敗運動は共産党のパワーの元であるカネの流れを止め、求心力を失わせる。ゴルバチョフ同様に共産党を改革しようとした結果が共産党の解体に繋がりかねない。毛沢東時代の求心力はイデオロギーだったがもうそこには戻れない。カネという求心力を失えばこの本を読む限りでは大国意識しか残らないのだろう。
中国4・0
戦略がうまくない中国にルトワックが勧めるのは2つ、九段線を引っ込めること、空母の建造を止めることだがこれは受け入れられないだろうとルトワックも中国国内では政治的に受け入れられないだろうと考えている。だが、荒唐無稽な九段線も寄港地を持てない無駄遣いに終わる空母も、小国を反中国で団結させアメリカに近づけるだけなのだ。パキスタンやスリランカに寄港地を持ったところで南シナ海からインド洋をすべて敵に回しては実際には使えない。
では日本はどうすべきか、「封じ込め」と書いてるが要はリアクションだ。そのためには尖閣を守れるようにハードとソフト(法整備)を備え、外交的にも連携する。トランプの対中関税障壁のように中国がアクションを起こしたら、欧米やアジア各国が一致してグローバルな貿易取引禁止状態を作るように準備しておく。最大限の確実性と最小限の暴力を多元的に発揮できるように準備しておくべきだと言う。
結局中国の問題は過去100年の恥辱を乗り越えるためには大国として特にアメリカに認めさせないといけないという感情と、一旦言ったことは取り下げられないという面子、そして自国を基準にする限り外国を理解できないということになるのか。難儀なことだ。 -
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難民問題、戦争にチャンスを、という話ではかなり共感した点があった。
イスラエル・パレスチナ問題を考える際には
「なんで戦争の結果なのに、こんなに残り火があるんだろう」と思う事がある。
例えば、日本はアメリカに原爆を落とされ、町は無くなり、後遺症に苦しむ人もいる。
しかし、日本人の中でアメリカに憎しみを抱いている人はその割に少なく、もはや憧れの対象である。
それは、本書で述べているように、残り火さえなくなるくらいはっきりとした勝敗がつき、人々が敗戦を認め、復興に尽力したから今の日本があるのだと思う。
だが、中東問題においては、他国々が口を出し(問題の根本が他国から始まっているというのもあると思うが)パレスチ人を難民キャンプに匿い、その中でイスラエルへの憎しみを育ててしまった事は問題を永久に保存する手助けをしたのではないかと思う。
エドワード・ルトワックの述べていることはかなり現実離れしているのではないかと感じる事も多いが、それも見方としては面白いと思う。 -
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ワシントンの大手シンクタンク・戦略国際問題研究所のエドワード・ルトワックによる作。中国の国際戦略が、フェーズを4つに分けることによって明快に解説されている。フェーズは以下の通り。
毛沢東らによる恐怖政治(チャイナ0)
江沢民による平和的な軍事・経済成長(チャイナ1.0)
1970年代後半から進む。中国をロシアに対抗する存在としたい米国の思惑もあって、大国が台頭すると発動する「バランシング」が働くことなく極めて平和裏に成し遂げられた。
胡錦濤の周辺による体外強硬路線(チャイナ2.0)
2009年頃から進む。「2国間関係」についての錯誤(米国と2国間関係を構築しようとするも、大国同士の2国間関係はあり得ない。2国間には付随するさまざまな同盟や問題があるから)、線的(リニア)な予測の錯誤(経済成長が永遠に右肩上がりだと思い込んだ)といった誤りから、周辺国に圧力をかけるも、「逆説的論理(パラドキシカル・ロジック)」よって、逆に包囲網が形成される。つまり、大国は小国に勝てない。
習近平による選択的攻撃(チャイナ3.0)
ベトナムやインドへの軟化など、周辺国によって対外戦略を硬軟織り交ぜ、同時に「G2構想」を進めようとする方針。しかし、前述の理屈からこの構想は破綻。
ルトワックは、チャイナ4.0においては、これまで広げた無根拠な領海の風呂敷(九段線)を撤回することを勧めるが、習近平は思いつくことすらないだろうと予想。国内の腐敗や民主化を望む声、軍の反発など問題山積と見る。日本は多元的な能力を備えて、4.0に臨まなければならない、というのがまとめ。
フェーズごとに解説されているので、とても分かりやすかった。特に印象に残ったのは「逆説的論理(パラドキシカル・ロジック)」。ルトワックの研究はこちらの戦略が状況に及ぼす影響をも考慮に入れた戦略論らしい(訳者・奥山真司談)。
中国はまだまだリスクを孕んだ大国だと感じた。良著! -
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本書はルトワックの書下ろしではなく、訳者である奥山真司氏との東京での対談を10章に分けて収録したものである。一部は、文藝春秋誌に掲載されている。
対談は2016年10月で米大統領選の直前の時期である。彼の自説であるパラドックスの論理をもとに、対中国や対北朝鮮の戦略や、日本の戦国武将論、ヨーロッパ論、ビザンティン帝国、国連常任理事国、など日本の取るべき戦略論を展開している。織田信長や武田信玄など、よく勉強している。
ただ、このルトワック戦略を日本がそのまま採用することはないであろう。実行にはやや無理がある。ただ、ひとつの考え方として興味深く、頭の体操としてはいいと思う。
現代の戦略論大家として、今後も注目していきたい。 -
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些か煽情的なタイトルの本書。
内容としては、1999年にforeign affairsに掲載された同タイトルの論文を中心として、2016年に東京でインタビューされた記事によって構成されている。
要点としては①「戦争は平和へとつながる。中途半端に止めなければ」②「戦術の成否は戦略の成否とはつながっていない」③「イギリス凄い」④「強い国との同盟は大切」あたりだろうか。
①が本書の大きな柱の一つを成している。中途半端に止めることは、戦争から平和へとつながる「決定的な勝利」と「戦争による疲弊」の流れを滞らせ、戦闘状態を凍結するだけである。実例としては、アメリカのアフガン紛争、イラク戦争介入、ルワンダ大虐殺の際のNGO支援、パレスチナ・イスラエル紛争への国連の紛争介入など。戦闘状態が中途半端にとどめ置かれたことにより、戦後復興が行われず、難民は難民のままテロの温床となってしまう。著者が提唱する、戦時には平時とは異なる論理が通じるとする「paradoxical logic」として、「戦争が平和につながり、平和が戦争を呼び起こす」
他には、日本の周辺国である中国、北朝鮮、ロシアなどの分析に頁が割かれている。近頃ミサイルの発射実験のほか、水爆の実験にも成功したと推測され、脅威の水準が近頃急激に上昇している北朝鮮に対し、降伏、先制攻撃、抑止、防衛、何もしないという選択肢があり、現状は何もしないという選択しかしていないと筆者は指摘する。これまでの経済制裁は効果を上げておらず、ミサイル防衛、核装備など明確な力で抑止につなげないと戦争を招きかねないと。
ほかにはイスラムに飲み込まれるヨーロッパなど、この点は他論者にも指摘され始めてきた事柄のため、ここではあえて深い言及は避ける。
全体としてさっくりしているものの、ここ数年の東アジア情勢を俯瞰するうえでは有効な書ではなかろうか。 -
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戦争を、平和の世界から見てはならない、と何かの本で読んだ記憶があって、そのことを証明する内容だった。
この国で、戦争にチャンスを与えよ、だなんて、刺激の強い題名をつけたものだと本屋で見かけ、つい購入。
ワイドショーやニュース、新聞、それにまつわる様々な人々のコメント、それらはただ、弾も何も飛んでこない場で行われていて、今目の前をどうにかする、数年の間にっていう考え方でしかなくて、実際それらは半世紀以上の覚悟がいるのだ。
でもそれは、戦争が、先の大戦でしかないこの国の人じゃ考えられないんじゃないかと考えされられた。
学校で、世界は広いなどと言われるけれど、言ってる人たちの頭の中の世界は、さほど広くはなかったのだ。 -
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ネタバレアメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問。戦略家。歴史家。経済学者。
ルーマニアのトランシルバニア地方のアラド生まれ。イタリア、イギリス軍にて教育を受ける。一時イスラエルに居住。第3次中東戦争と第4次中東戦争を戦っている(陸戦でそれなりの戦果をあげている様子)。ロンドン大学で経済学の学位を取ったのちアメリカのジョンホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。国防省の官僚や軍のアドバイザー。ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーも歴任。著書に「中国4.0」「自滅する中国〜なぜ世界帝国になれないのか」「クーデター入門ーその攻防の技術」他多数
全体のトーンとしては非常にエキセントリックで、実際の兵士や民間人の立場としてより、純粋な軍師、戦略家として、戦争という状態を人類のエコシステムの一部と捉え、それをあえて紛争から中途半端に抑えたり、人道支援として介入する国連、NGO等の戦争、紛争状態からの回避、支援が、かえって不安定状況の悪化、より非道い紛争を招く、という、読者に知的挑戦を与えている。これはシステム思考論におけるレバレッジポイントの考え方に似ており、(システム思考の求めているところとは異なるが)あえて平和という状態を無理に維持して、腐敗や不満の鬱屈をため込んだ不安定な状況を解放するためにあえて手放す(システム思考の中にも手放すことでレバレッジを得るというポイントがある)ことで戦争状態に放置する(争いが起こったら不介入で鎮まるのを待つことでそのエネルギーの解放により、平和という状態が確保できるという視点を持ち込んでいる。(著者は戦争を好んでいるわけではないし、避けるべきだとするが、避けざるを得ない状況になると、回避すべきではない、その代わり選択肢として戦略的思考による同盟の構築や電撃戦、欺瞞や包囲殲滅戦、戦略的な撤退等、総力戦は絶対避けるべきとの考え方をしている。また、敵との対応もインテリジェンスを駆使し、可能であれば買収する等、あらゆる手段を取るべきだ(戦争になってもドアは開け続け、交渉を継続すべきというインテリジェンス論(彼の独自の考え方で戦略は政治より強いという考え方がある)をベースに知的戦略論を読者に提示することで新たな視点を紹介している。
個人的にはあえてABC兵器等の非人道的及び人類の存亡に関わる兵器の使用について、忌避して書かれているようにも見えることから、1960年代のMAD(Mutual Assured Destructive:相互確証破壊)戦略等の戦略自体が狂っている状態からは距離を置いているところが気になるところである。 -
Posted by ブクログ
ルトワックの現代中国に対する見方をまとめたもので、彼の逆説的論理や中国は戦略下手説を知っている読者にとっては、本書の論旨に驚くところはない。 ただ、説得力に重厚さがないのは新書と薄い本のせいかと思っていたが、そうではなかった。
本書は、ルトワック著、奥山訳ではないのだ。奥山がルトワックにインタビューしてまとめた本だという。あとがきでそれを知り、少し興ざめである。
それでも、ルトワックの考えが、韓国の対日感情の解釈や、seapowerとmaritime powerなどで示され、さすが現代戦略家として説得力のある意見が開陳されている。一方で、周近平の後継が見えなくて不安定との意見には同意できない。
本書でルトワックがもっと知られて、本物の戦略に触れる人が少しでも増えてほしいと思う。 -
Posted by ブクログ
戦略論を人生論に適用した自己啓発本です。この本の「武器」というのは、持っている目の前のスキル、技術ということ。もっと上の階層の戦略、世界観、要は自分がどのように生きてどのように死にたいのか、ということを明確にすれば、目の前のスキルに縛られずに済むということのようです。というより、そのようなスキルに拘っていたら負けるよ、自分のもっと大きな目標のためにはスキルを持っていなくても、他の人を使えばもいいんだよ、という事のようです。まぁ上から目線というか、社長レベルの人を使う立場の発想で、どうだかなぁ、と思っていると、後半では、日々の蓄積(累積戦略)も大事でもあり、それを基盤にしつつ世界観を持ち目標を明確にして進んでいこうということが述べられています。まぁ、目標を明確にしたところでそれを実践できる力がなくちゃ意味ないわけで当然のことですが、目標がなければどんな力を付ければ良いのか分からないし、自分が達成したい目標の実現のためには人に協力してもらったり色んなやり方があるということでしょう。後半の巷の自己啓発本とか戦略本を著者なりに分析しているところが分かりやすくて面白かった。