奥山真司のレビュー一覧
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ワシントンの大手シンクタンク・戦略国際問題研究所のエドワード・ルトワックによる作。中国の国際戦略が、フェーズを4つに分けることによって明快に解説されている。フェーズは以下の通り。
毛沢東らによる恐怖政治(チャイナ0)
江沢民による平和的な軍事・経済成長(チャイナ1.0)
1970年代後半から進む。中国をロシアに対抗する存在としたい米国の思惑もあって、大国が台頭すると発動する「バランシング」が働くことなく極めて平和裏に成し遂げられた。
胡錦濤の周辺による体外強硬路線(チャイナ2.0)
2009年頃から進む。「2国間関係」についての錯誤(米国と2国間関係を構築しようとするも、大国同士の2国間関係はあり得ない。2国間には付随するさまざまな同盟や問題があるから)、線的(リニア)な予測の錯誤(経済成長が永遠に右肩上がりだと思い込んだ)といった誤りから、周辺国に圧力をかけるも、「逆説的論理(パラドキシカル・ロジック)」よって、逆に包囲網が形成される。つまり、大国は小国に勝てない。
習近平による選択的攻撃(チャイナ3.0)
ベトナムやインドへの軟化など、周辺国によって対外戦略を硬軟織り交ぜ、同時に「G2構想」を進めようとする方針。しかし、前述の理屈からこの構想は破綻。
ルトワックは、チャイナ4.0においては、これまで広げた無根拠な領海の風呂敷(九段線)を撤回することを勧めるが、習近平は思いつくことすらないだろうと予想。国内の腐敗や民主化を望む声、軍の反発など問題山積と見る。日本は多元的な能力を備えて、4.0に臨まなければならない、というのがまとめ。
フェーズごとに解説されているので、とても分かりやすかった。特に印象に残ったのは「逆説的論理(パラドキシカル・ロジック)」。ルトワックの研究はこちらの戦略が状況に及ぼす影響をも考慮に入れた戦略論らしい(訳者・奥山真司談)。
中国はまだまだリスクを孕んだ大国だと感じた。良著! -
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本書はルトワックの書下ろしではなく、訳者である奥山真司氏との東京での対談を10章に分けて収録したものである。一部は、文藝春秋誌に掲載されている。
対談は2016年10月で米大統領選の直前の時期である。彼の自説であるパラドックスの論理をもとに、対中国や対北朝鮮の戦略や、日本の戦国武将論、ヨーロッパ論、ビザンティン帝国、国連常任理事国、など日本の取るべき戦略論を展開している。織田信長や武田信玄など、よく勉強している。
ただ、このルトワック戦略を日本がそのまま採用することはないであろう。実行にはやや無理がある。ただ、ひとつの考え方として興味深く、頭の体操としてはいいと思う。
現代の戦略論大家として、今後も注目していきたい。 -
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些か煽情的なタイトルの本書。
内容としては、1999年にforeign affairsに掲載された同タイトルの論文を中心として、2016年に東京でインタビューされた記事によって構成されている。
要点としては①「戦争は平和へとつながる。中途半端に止めなければ」②「戦術の成否は戦略の成否とはつながっていない」③「イギリス凄い」④「強い国との同盟は大切」あたりだろうか。
①が本書の大きな柱の一つを成している。中途半端に止めることは、戦争から平和へとつながる「決定的な勝利」と「戦争による疲弊」の流れを滞らせ、戦闘状態を凍結するだけである。実例としては、アメリカのアフガン紛争、イラク戦争介入、ルワンダ大虐殺の際のNGO支援、パレスチナ・イスラエル紛争への国連の紛争介入など。戦闘状態が中途半端にとどめ置かれたことにより、戦後復興が行われず、難民は難民のままテロの温床となってしまう。著者が提唱する、戦時には平時とは異なる論理が通じるとする「paradoxical logic」として、「戦争が平和につながり、平和が戦争を呼び起こす」
他には、日本の周辺国である中国、北朝鮮、ロシアなどの分析に頁が割かれている。近頃ミサイルの発射実験のほか、水爆の実験にも成功したと推測され、脅威の水準が近頃急激に上昇している北朝鮮に対し、降伏、先制攻撃、抑止、防衛、何もしないという選択肢があり、現状は何もしないという選択しかしていないと筆者は指摘する。これまでの経済制裁は効果を上げておらず、ミサイル防衛、核装備など明確な力で抑止につなげないと戦争を招きかねないと。
ほかにはイスラムに飲み込まれるヨーロッパなど、この点は他論者にも指摘され始めてきた事柄のため、ここではあえて深い言及は避ける。
全体としてさっくりしているものの、ここ数年の東アジア情勢を俯瞰するうえでは有効な書ではなかろうか。 -
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戦争を、平和の世界から見てはならない、と何かの本で読んだ記憶があって、そのことを証明する内容だった。
この国で、戦争にチャンスを与えよ、だなんて、刺激の強い題名をつけたものだと本屋で見かけ、つい購入。
ワイドショーやニュース、新聞、それにまつわる様々な人々のコメント、それらはただ、弾も何も飛んでこない場で行われていて、今目の前をどうにかする、数年の間にっていう考え方でしかなくて、実際それらは半世紀以上の覚悟がいるのだ。
でもそれは、戦争が、先の大戦でしかないこの国の人じゃ考えられないんじゃないかと考えされられた。
学校で、世界は広いなどと言われるけれど、言ってる人たちの頭の中の世界は、さほど広くはなかったのだ。 -
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ネタバレアメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問。戦略家。歴史家。経済学者。
ルーマニアのトランシルバニア地方のアラド生まれ。イタリア、イギリス軍にて教育を受ける。一時イスラエルに居住。第3次中東戦争と第4次中東戦争を戦っている(陸戦でそれなりの戦果をあげている様子)。ロンドン大学で経済学の学位を取ったのちアメリカのジョンホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。国防省の官僚や軍のアドバイザー。ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーも歴任。著書に「中国4.0」「自滅する中国〜なぜ世界帝国になれないのか」「クーデター入門ーその攻防の技術」他多数
全体のトーンとしては非常にエキセントリックで、実際の兵士や民間人の立場としてより、純粋な軍師、戦略家として、戦争という状態を人類のエコシステムの一部と捉え、それをあえて紛争から中途半端に抑えたり、人道支援として介入する国連、NGO等の戦争、紛争状態からの回避、支援が、かえって不安定状況の悪化、より非道い紛争を招く、という、読者に知的挑戦を与えている。これはシステム思考論におけるレバレッジポイントの考え方に似ており、(システム思考の求めているところとは異なるが)あえて平和という状態を無理に維持して、腐敗や不満の鬱屈をため込んだ不安定な状況を解放するためにあえて手放す(システム思考の中にも手放すことでレバレッジを得るというポイントがある)ことで戦争状態に放置する(争いが起こったら不介入で鎮まるのを待つことでそのエネルギーの解放により、平和という状態が確保できるという視点を持ち込んでいる。(著者は戦争を好んでいるわけではないし、避けるべきだとするが、避けざるを得ない状況になると、回避すべきではない、その代わり選択肢として戦略的思考による同盟の構築や電撃戦、欺瞞や包囲殲滅戦、戦略的な撤退等、総力戦は絶対避けるべきとの考え方をしている。また、敵との対応もインテリジェンスを駆使し、可能であれば買収する等、あらゆる手段を取るべきだ(戦争になってもドアは開け続け、交渉を継続すべきというインテリジェンス論(彼の独自の考え方で戦略は政治より強いという考え方がある)をベースに知的戦略論を読者に提示することで新たな視点を紹介している。
個人的にはあえてABC兵器等の非人道的及び人類の存亡に関わる兵器の使用について、忌避して書かれているようにも見えることから、1960年代のMAD(Mutual Assured Destructive:相互確証破壊)戦略等の戦略自体が狂っている状態からは距離を置いているところが気になるところである。 -
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ルトワックの現代中国に対する見方をまとめたもので、彼の逆説的論理や中国は戦略下手説を知っている読者にとっては、本書の論旨に驚くところはない。 ただ、説得力に重厚さがないのは新書と薄い本のせいかと思っていたが、そうではなかった。
本書は、ルトワック著、奥山訳ではないのだ。奥山がルトワックにインタビューしてまとめた本だという。あとがきでそれを知り、少し興ざめである。
それでも、ルトワックの考えが、韓国の対日感情の解釈や、seapowerとmaritime powerなどで示され、さすが現代戦略家として説得力のある意見が開陳されている。一方で、周近平の後継が見えなくて不安定との意見には同意できない。
本書でルトワックがもっと知られて、本物の戦略に触れる人が少しでも増えてほしいと思う。 -
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戦略論を人生論に適用した自己啓発本です。この本の「武器」というのは、持っている目の前のスキル、技術ということ。もっと上の階層の戦略、世界観、要は自分がどのように生きてどのように死にたいのか、ということを明確にすれば、目の前のスキルに縛られずに済むということのようです。というより、そのようなスキルに拘っていたら負けるよ、自分のもっと大きな目標のためにはスキルを持っていなくても、他の人を使えばもいいんだよ、という事のようです。まぁ上から目線というか、社長レベルの人を使う立場の発想で、どうだかなぁ、と思っていると、後半では、日々の蓄積(累積戦略)も大事でもあり、それを基盤にしつつ世界観を持ち目標を明確にして進んでいこうということが述べられています。まぁ、目標を明確にしたところでそれを実践できる力がなくちゃ意味ないわけで当然のことですが、目標がなければどんな力を付ければ良いのか分からないし、自分が達成したい目標の実現のためには人に協力してもらったり色んなやり方があるということでしょう。後半の巷の自己啓発本とか戦略本を著者なりに分析しているところが分かりやすくて面白かった。
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あなたは、この弱肉強食の世界で生き抜いていく自信があるだろうか?
世知辛い世の中。誰も助けてはくれない。自分自身で何とか世間の荒波を乗り切っていくしかないのだ。
もしあなたが、これまでのような、やられっぱなしの人生は嫌だと思うなら、もっと上の視点から目標を立て直さなければいけない。
そのために必要なものが「人生の戦略」。
サバイバル社会を生き抜くための思考だ。
著者は、地政学・戦略学者の奥山真司氏。
イギリスの戦略学の権威で、米レーガン政権のブレーンでもあったコリン・グレイ教授に師事した経歴をお持ちの、まさに戦略の専門家。
戦略の専門家が語る「人生の戦略」とは、どのようなものなのだろうか?
本書は、ビジョンやミッションを持って戦略的に人生を設計する方法を紹介している。
豊富な具体例を参考にしながら、戦略的な思考法が学べるのが特徴だ。
第1章 なぜ日本人は「戦略」が苦手なのか
第2章 戦略を考えるうえで大事な3つのイメージ
第3章 戦略の本質を知れば、世界を変える「人生の戦略」が生まれる
第4章 あなたの人生に「2つの戦略」を授けよう
国家戦略と人生の戦略は、本質的には同じものだと、著者は言う。
『なぜあなたに「人生目標の立て方」についてお話しするのかというと、私の研究分野である国際戦略やら対外戦略と、あなたの生き方を決める人生戦略(ライフストラテジー)には、かなり共通した考え方があるからです。』
私は本書を読んで、いかに自分が戦略的に下の階層で、物事を考えていたかを思い知った。戦略を立てる上で「技術」は大切な要素だが、技術だけではダメだ。本書の題名でもある「武器を捨てよう」という考え方だ。
また、よく言われる「◯◯戦略」というものも、実は「戦略」ではないということが理解できた。自分の「戦略」に対する理解が深まったと感じる。
そして、本書の最終章には、あなたの戦略を確実に実行していくための「アクションプラン」の作り方も紹介されている。本を読んで理解しただけではダメで、実際に手を動かしてみることを、おススメする。
この本を読んで、あなたの人生を、主体的に、戦略的に、そして、多元的に考え、あなた自身の世界を変えていくヒントにしてほしい。
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●SNSを通じて人々の思考や感情を巧妙に揺さぶる「認知戦」の陰湿な手口を暴いた一冊。
●SNSを駆使した工作の手口と対策を知る。→影響力工作の実態を理解できた。
●認知戦とは、単なるウソの拡散にとどまらず、人間の脳や感情といった「認知領域」に働きかけて意思決定や世論を意図する方向へと誘導する恐ろしい戦争の形態のこと。私たちが日々触れる情報や感情的なバズの裏に、国家や組織の緻密な影響力工作が潜んでいる現実を冷徹に突きつける。知らず知らずのうちに自分の考えが良からぬ方向に誘導されかねないというのは空恐ろしい話だ。日常的に接する言葉の真偽を自覚的に見極める重要性を、改めて認識した。 -
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「スター・ウォーズ」を観た方は分かると思いますが、圧倒的に軍備の質・量で有利だった銀河帝国が、最終的にはレジスタンス的な反乱軍に敗れてしまいます。銀河帝国の戦略の何がまずかったのかを検証し、対テロ戦争で苦戦する現代のアメリカ軍の戦略を再検証してみよう、という趣旨の本です。
30弱の細かい章立てになっていて、各章約10ページ程度で完結し、個別のテーマについて「スター・ウォーズ」登場人物の言動や、場面に落とし込んで議論されています。
銀河帝国の艦隊編成が大型艦に偏り過ぎて反乱鎮圧にそぐわない内容だ、とか帝国軍の規律がダースベイダーに対する恐怖で縛られているので、基本的に”指示待ち”の硬直化した組織運営に陥っている、など装備面、組織面の指摘から、軍隊のシビリアンコントロールに関する考察など、様々な角度からの考察が盛り込まれています。
映画として、”巨大な悪に立ち向かって打ち勝つ”という構図が無いと盛り上がらない以上、デス・スターやスター・デストロイヤーみたいに銀河帝国の装備は巨大ですし、組織運営もパワハラが横行するような非民主的な側面は否定できません。その欠点・弱点を一つ一つ指摘するのは、酷というものという気もしますが、その分析が地に足をつけたものだけに説得力はありました。
本書の試みとしては非常に興味深いし、「スター・ウォーズ」がこれだけの考証に耐え得る対象だという点も改めて凄いな、と感じます。ただ、ちょっと残念なのが訳が少々読みづらいことでした。