瀬川貴次のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
怪異大好き中将・宣能と地味で臆病な右兵衛佐・宗孝コンビのシリーズ第八作。
前作で期せずして帝の前で舞を披露した宗孝は再び帝に請われ舞を披露。そのことで宮廷内の女房たちに注目され、たくさんの文が舞い込む。突然来たモテ期に戸惑う宗孝は宣能のアイデアで初草の君に文を見てもらい、送り主の気持ちが本気なのか冷やかしなのかを鑑定してもらうことにするが…。
宣能の妹思いには微笑ましく感じることが多いが、今回はちょっと宗孝が可哀想な気もする。生まれながらにして東宮妃になることが決められている可哀想な妹・初草の、初恋の相手が急にモテだしたのだから面白くないだろうが。
しかし恋の機微に疎い宗孝に初草の気持ちに気付けと言っても無理だろう。身分も違う、畏れ多くも未来の東宮妃、そしてまだ幼い彼女を恋の相手にというのは真面目で人の好い宗孝には酷な話。それでも宗孝に少し変化の兆しが現れたのは今後の伏線だろうか。
それにしても右大臣…怖い、鋭い。
これまで宣能の怪異巡りに付き合っても(幸いにも)ことごとく空振りだったが、ついに宗孝は老人の幽霊を見てしまう。その上、恋文の一つが死者の筆跡にそっくりで、宗孝はすっかり怯えきってしまう。逆に、本物の怪異に巡り会えたと喜ぶ宣能だがその顛末はさて。
ネタバレになるので詳しくは明かせないが、何とも良い結末だった。宗孝がこのことで怪異をただただ恐ろしいもの、近寄ってはいけないものとするのではなく、別の視点で見られるようになったのが良かった。
この怪異に対する新たな認識は宣能の認識とは少し違っていて、宣能が感心するように宗孝の人柄の好さを改めて印象付けることになった。
前作で九の姉君を通じて親しくなった老巫女軍団の専女衆だが、右大臣の汚れ仕事を引き受ける多情丸に何故か嫌がらせを受けているようだ。この理由とその展開も気になるところ。多情丸と彼の手下・狗王の複雑そうな関係と、狗王と十郎太こと十の姉君の関係も気になる。
宗孝は専女衆からモテモテ。老女たちにキャアキャア言われても嬉しくないだろうが、老人と子供に好かれるのも宗孝の人柄の好さか。
春若こと東宮がいまだ十二の姉・真白にご執心なのも、読んでいる側は楽しいが、宗孝は気が気ではないだろう。初草同様、今は幼い可愛らしい恋で済んでいるが、やがて成長しても思いが変わらなければどうなるのか。春若が何とも憎めない少年だけに恋も上手く行って欲しいような、それはそれで心配なような。
色々と気になるところを残したままだが、宗孝が怪異に対する意識が変わったことと、九の姉君が健全な生き甲斐を見つけたことが良かったことだろうか。
右大臣の不穏な予言のように、宗孝が様々な駆け引きにうっかり引き込まれないよう祈るのみ。 -
Posted by ブクログ
怪異大好き中将・宣能と彼に付き合わされ振り回される宗孝コンビのシリーズ第四作。
変なサブタイトルと思っていたら、内容は踊る以上に狂騒といった感じで楽しかった。
相変わらず怪異譚を仕入れては現場を訪ね歩くも怪異は現れてくれない。しかしまたまたその行き先で宗孝の姉と出会ってしまう。それも学者の妻で自身も発明好きな五の姉と、頭の中将・繁成との密会現場。
真面目で色事には無縁と思っていた五の姉が不倫とは…と衝撃を受ける宗孝だが、その真相は。
あいも変わらず弘徽殿の女御の、梨壺の更衣に対する意地悪のすごいこと。江戸の大奥もこんな感じだったのか、いや中には毒殺なんてこともあったくらいだから、これくらい可愛いものか。
しかしその弘徽殿の女御の意地悪が逆に梨壺の更衣に仕える十一の姉を助けるのだから分からない。
今回はばけものではなくて仏様による奇蹟。薪を割ると現れた『南無阿弥陀仏』の文字、寺の池から時折浮かんでくる青い蓮、勝手に鳴り出す境内の鐘などなど。
そこにはどんな秘密が隠されているのか。
以前少し出てきた十二の姉が意外な個性を発揮する。
奥ゆかしく浮世離れした如何にもな姫君かと思いきや、木登りはするわ出会ったばかりの高貴そうな若君を足蹴にするわ罵るわ、なかなかのお転婆娘ではないか。
しかもそんな十二の姉を謎の若君は気に入ったようだし。
正にボーイミーツガールの世界。
そして発明マニアの五の姉君。高枝切り鋏や美顔ローラー、ダイエットサンダルまで作ってしまう。
今で言えば発明主婦といったところだろうか。学者の夫もそんな妻に触発されてさらなる発明をするのだから、エジソン夫婦。
最終章は寺院を舞台に宣能、宗孝、五の姉君と様々な視点で様々な事件が起こる。いつも一番気の毒な目に遭っている宗孝だが、今回は宣能がそれにも増して大変な目に。しかしそれでもそこを格好良く乗り越える宣能、さすがだ。
あっちもこっちも大変なことばかりだが読んでいるこちらは楽しい。
これまで時折見られた宣能の父・右大臣に関わる黒い部分が更にクローズアップ。このまま行けば宣能は父のそんな闇の部分まで引き継ぐことになるのだが宣能と父とは確執がありそうだし。
そして宣能の妹・初草は未来の東宮妃と決まっているのに何故かそれを強烈に恐れている様子。それは東宮の母で初草の叔母でもある弘徽殿の女御がアレだからというだけではなさそう。
政治の世界の黒い部分と、無邪気な十二の姉との対比がこれからの展開を期待させる。
宣能の行く道は暗いのか明るいのか。清濁併せ呑むくらいの覚悟がないと突き進めない政治の道ではあるが、彼のそばに宗孝や宗孝の姉たちや初草がいて、せめて一緒に彼を支えるくらいのことがあって欲しいと思ってしまう。 -
Posted by ブクログ
前作に引き続き面白く読みました。前作よりもアクションに傾いたような気がして、陽羽さんの活躍が尋常ではなくなっているように感じます。なんだか、彼女の行く末が気がかりにさえなるほどの活躍ぶり、この時代には想像できないくらいなのだけれど、作品全体の雰囲気からは生き生きしてるというべきなのでしょうか。
平安末で気にかかっていた二人の女性が登場したことが嬉しかった。
式子内親王と御子左家の彼の関係もこうだったのかもしれないなあ、と思うと楽しくなります。能の定家葛とは違う雰囲気が嬉しくなりました。
せっかく式子内親王に登場願ったのだから、もっと彼女の和歌を読みたかったというのはわがままな願いかもしれません、
次作はどんな仕掛けをしてくれるのか、楽しみです。