辻田真佐憲のレビュー一覧
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大本営発表の変遷とその背景を網羅的に辿る名著。太平洋戦争の変遷も同時に辿れる。史実と筆者の評価が絶妙なバランスで混ぜられており、学びと面白さが両立している。
空母にして73隻もの戦果報告の改竄は呆れるばかりだが、一度ついた嘘の辻褄が合わなくなって嘘をつき続けることしかできなくなった陸海軍の悲哀たるや。
国民を騙すこと自体が大きな罪だが、戦果の誤認や改竄が誤った戦略を生んだことも特筆すべき事態。
現代はメディアの質と、メディアの独立性で揺れ動いているところかなと思うが、少なくとも、くれぐれも報道機関と政府は適切な緊張感を保ってほしいと願うばかりである。 -
購入済み
人は歴史に学べない?
ここ最近の報道をみていて、政治家の明らか
な嘘などが、なぜ無批判にメディアで垂れ流
されるのか疑問に思いつつ再読。
結局気分は暗澹とするばかりだが、だからこそ
一つ一つの事例を現代に照らし合わせて読めた。
結局、人はたとえ「悪い見本(この場合は過去
の大本営発表)」から、何も学べないのかな? -
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読んだ
自衛隊の勧誘ポスターがアニメ絵なのが楽しいプロパガンダの典型例、って話に納得
ちゃんと読書メモ取りながら読み返したい。
大塚英志著『大政翼賛会のメディアミックス』を読んでるところなんだけど、この『楽しいプロパガンダ』に通じるところがある気がする。
『楽しいプロパガンダ』では戦前日本の楽しいプロパガンダ、そんなに大成功というわけでもなく模索してた、みたいな描かれ方だったと思うんだよね。
ただ『大政翼賛会のメディアミックス』では、戦前の日本の市民向け楽しいプロパガンダが割と成功していたという視点で取り上げられてるので比較すると面白い。
戦後、世界に先立ち作られた、日本のエンタメの「 -
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文部省(文部科学省)とそれが追い求めた「理想の日本人像」を通じて、明治維新以来約150年の日本の教育史を明らかにすることを試みている。
教育という(著者の)価値観が入り込みやすいテーマについて、非常にバランスよく叙述されていて、客観的に日本の教育史を振り返り、今後の教育について考えるのにちょうどよい本だと感じた。
日本の近現代の「理想の日本人像」をめぐる歴史においては、普遍主義と共同体主義の相克と調和が常に問題となってきたということがよく理解できた。凡庸な結論ではあるが、著者も指摘するように、「理想の日本人像」の(とりあえずの)正解は、普遍主義と共同体主義のいずれに偏ることもなくその中庸にある -
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小学校から高校まで、入学式や卒業式で歌って来た「君が代」。
実は1999年の「国旗国歌法」制定まで、正式には国歌でなかった
ことを知ったのは成人してからだった。
ただ、この「国旗国歌法」に関しては例の日本会議が動いている
ので若干、複雑な思いはあるんだが。
式典では必ず「国歌斉唱」と言われるのだから、そりゃ無条件で
国歌だと思うわ。
「君が代」に賛否両論があることは中学生頃に気がついた。しかし、
私自身は別に反発することもなく歌っていた。だって、誰も国歌と
決まっているのではないと教えてくれなかったのだもの。
「君が代」はいつ生まれ、歌詞にはどんな意味があり、歴史的 -
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・大本営発表とは、日中戦争〜太平洋戦争にかけて軍部から発表されていた戦果報告のこと。
・今やデタラメな発表の代名詞として使われる「大本営発表」。これが実際どれだけデタラメだったか、何故そうなったか、そして教訓について詳細に、かつ分かりやすく書いた本。右寄りでも左寄りでも無くフラットなのがいい。
・これを読んで何故日本が負けたかと、今日本の製造業がダメになってるのか、凄く近いのではと感じた。
・勝ってる時は、正しい報告をすりゃ良かった。しかし、戦局が変わってから、戦意高揚という大義名分の元、水増ししたりしていた。後で帳尻合わせすればいいやと思っていたところもある。
・ベテランの兵士が次々戦死した -
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ネタバレこの本は以下のようにして筆を擱いている。
「大本営発表はメディア史の反面教師として、今なお色あせていないのである。」
これは報道をするマスコミ側の問題だけでは無く、報道を受ける我々一般市民が注意しておかなければいけない内容である。必読。
「大本営発表」という響きには「大上段からの大嘘」というイメージが付いて回るのだが、そのイメージは誤っていないことが分かる。ただし当初(日中戦争時、及び太平洋戦争開戦後しばらく)はまだ正確な報道であったとのこと。
そして、なぜ「大本営発表」が捏造だらけの発表になったのか、なのだが、現在の日本国政府と同じく「情報の軽視」が大きいようだ。相手の損害状況は攻撃隊から -
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難しい題材についてバランスの取れた記述でコンパクトにまとめた良書。
「あの戦争」は名称すら大東亜戦争、太平洋戦争、十五年戦争、アジア・太平洋戦争、第二次世界大戦と様々な呼び方があり、使う名称によって見方が変わってしまう。
第一章では「いつ始まったのか」という問いから始まる。
一般的には1941年12月8日の真珠湾攻撃を起点とする見方が広く受け入れられているが、実態を捉えるには日中戦争との連続性を見る必要がある。1941年12月12日に政府が
この戦争の名称を「大東亜戦争」と発表した際には支那事変(1937年7月7日盧溝橋事件)も含めていた。さらに満州事変(1931年9月18日)を起点とする「十 -
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政治的になることを恐れて、歴史を忘れ去るのではいけない。批判されても65点の歴史を目指すという姿勢には共感した。
最後の第四、五章が博物館における歴史の取扱い方の話なのも面白い。アジアでは大東亜共栄圏も東條英機も扱いがないか、小さい。国家の歴史にとって必要がないからである。対して、日本の博物館は、自国の歴史を取扱うのに慎重になりすぎて、ほぼ近現代の戦争について展示していないという(靖国神社の就遊館ですら愛国的というよりは受動的と指摘されている。)。
各章、左右、実証主義を踏まえつつ、簡潔に自分の立場を説明している点もよいと思った。ほぼ同世代の著者だが、これくらいの距離感でもっと歴史を知りたくな -
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ずーっと気になっていた本。
よーやく読むことができました。
改めて、歴史は点ではない。その当時の世界情勢、日本の立場、様々な因果関係が交錯して積み重ねの結果である事を気づかせてくれた内容だった。
その始まりは黒船来航、日本の近代化からはじまっている述べられている。
他の国々が当時の日本をどうみるか、ではシンガポールなどが厳しい目で見ているのは新たな発見だった。個人的には中国、韓国は厳し目に見ているが東南アジアは比較的、良好なのかと勝手に奢った考えを持っていた。
日本は加害者か被害者かは100点か0点ではなく65点くらいというのは共感できる。
当時の日本が行なった事で全てが悪い事をした訳で