あらすじ
戦中につくられた戦意高揚のための勇ましい軍歌や映画は枚挙に暇ない。しかし、最も効果的なプロパガンダは、官製の押しつけではない、大衆がこぞって消費したくなる「娯楽」にこそあった。本書ではそれらを「楽しいプロパガンダ」と位置づけ、大日本帝国、ナチ・ドイツ、ソ連、中国、北朝鮮、イスラム国などの豊富な事例とともに検証する。さらに現代日本における「右傾エンタメ」「政策芸術」にも言及。画期的なプロパガンダ研究。
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Posted by ブクログ
大好きな本です。読むのは2回目!
歌、標語、映画などの幅広いジャンルに及ぶプロパガンダの数々は読んでいてとても面白く、同時に現代でも起こり得るという恐ろしさを感じられます。
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プロパガンダの悪用は、恐ろしい。自分が楽しんでいると思っていたら、実は、洗脳されていた、という自体になってしまう。プロパガンダの戦略を知っておくことは重要かと思う
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古今東西、芸術や娯楽が民衆の心に働きかけ、時には歴史を動かしてしまう。
堅苦しくなく、楽しく、押しつけられるわけでもない「プロパガンダ」は、受け取る方は無意識、与える方は戦略的にというところが恐ろしい。
今この瞬間にも、世界中で行われている。
せめて歴史上の事例を知って、垂れ流されるエンタメのなかに潜む危険な「何か」に敏感でありたいと思う。
Posted by ブクログ
アニメ漫画音楽映画等を楽しむ人、かつ自分の考えや感じ方を他者にコントロールされたく無い人なら、読むと良い本。
楽しくさり気なく思想誘導するから、「印象操作だ!」と言う人が出ても、「なに言ってんだ、人の楽しみにケチつけるな」と思わせる効果もあるのは、ネット上でもそんな事例を見るよね。
プロパガンダの視点を知っていれば、楽しむ際に冷静に見られる(かも)。
Posted by ブクログ
日常的に触れるメディアにはどんなプロパガンダが隠されているのか、すべてを感じ取ることはできなくとも、敏感に感じ取る習慣はつけていきたいと思う
後半、宮崎駿の件をさらっと流しているのは著者の趣味かな?とちょっと気になった
Posted by ブクログ
具体例が豊富でで国内・海外・ジャンル偏らず記載されていて面白かったしイメージがわきやすい良い本だった。エンターテインメント産業は危機に瀕するとこういう方向に引き寄せられる誘因ってあるよね、という意味でも今まさに読むタイミングだったのかも
Posted by ブクログ
笑った、笑った。すごく面白い。ただ、日本ではまだまだ「楽しいプロパガンダ」が権力に身についていないのに救われるというか、なんというか。自民党のニコニコ超会議参加もイマイチ板についてない感じですしね。
Posted by ブクログ
読んだ
自衛隊の勧誘ポスターがアニメ絵なのが楽しいプロパガンダの典型例、って話に納得
ちゃんと読書メモ取りながら読み返したい。
大塚英志著『大政翼賛会のメディアミックス』を読んでるところなんだけど、この『楽しいプロパガンダ』に通じるところがある気がする。
『楽しいプロパガンダ』では戦前日本の楽しいプロパガンダ、そんなに大成功というわけでもなく模索してた、みたいな描かれ方だったと思うんだよね。
ただ『大政翼賛会のメディアミックス』では、戦前の日本の市民向け楽しいプロパガンダが割と成功していたという視点で取り上げられてるので比較すると面白い。
戦後、世界に先立ち作られた、日本のエンタメの「メディアミックス」という方法論は、既に戦前、大政翼賛会によってその雛形が作られていた、って話とかが書かれている。
かえって、本書『楽しいプロパガンダ』で書かれてたように、過小評価している方が危険だと思う。
スベってる楽しいプロパガンダを指差して笑ってる間に、実はもう別の楽しいプロパガンダ取り込まれてた、って可能性は大いにあるよ。愚かな民衆でありたくないね…。
今の安倍政権も、芸能人とかインスタとか使った『楽しいプロパガンダ』大好きだしね。
星野源の「うちで踊ろう」と安倍晋三のコラボ、みたいにあからさまにスベってるのもあるけど、その影で成功してる楽しいプロパガンダもあるじゃん??
河野太郎のツイッター戦略とかね。麻生太郎もローゼン大臣てネタ化・キャラ化されて以降やたらとオタク層からの支持が高いし、小池百合子も「密です」がネタにされてることを上手く利用して市民からの好感度を上げてるし。
自衛隊と艦これコラボの例もあるし、そう考えるとオタク層って「楽しいプロパガンダ」への脆弱性が高いよな。「二次元と現実の区別はついてる」って自認してるくせに、表現が現実にもたらす影響について全然考えようとせず、指摘されたら逆ギレしてるような層だから、カモにするにはもってこい。権威に弱く、弱いものいじめは好きなので大変都合の良い自警団になってくれる。
オタクカルチャーに染まって思春期を生きてきたけど、一度気づいてしまったらもう批判的な目で見るのを止められないな
Posted by ブクログ
戦時下における様々な「たのしいプロパガンダ」、つまりエンタメの皮をかぶったプロパガンダを紹介している本。
音楽、映画、ラジオ、アニメなど、多種多様な媒体で熾烈なプロパガンダ合戦が行われたことが分かる。
この本からの重要な学びは2つある。
①
銃を突きつけて強制するようなプロパガンダは、反発を生むだけで恐ろしくない。
しかしエンタメを楽しんでいるうちに、知らず知らずのうちに誘導されてしまうようなプロパガンダは恐ろしい。
②
そして、そういったプロパガンダを見抜くことは非常に難しい。
だからこそ過去の歴史から学ぶことが大切だ。
どちらも今の時代に必要な心構えだ。
現代でプロパガンダを行うなら、アニメ、ソーシャルゲーム、動画投稿、ユーチューバーなどが使われるだろうか。
誰もがスマホを持っている現代なら、その効果は絶大だ。
いや、もう既に「たのしいプロパガンダ」まみれになっている可能性は全く否定できない。
だからこそ、この本を読んで「国家はここまでやる」ということを知っておくのは、きっと無駄にはならないだろう。
Posted by ブクログ
「楽しさ」を通じて民衆をコントロールしようとするタイプのプロパガンダを「楽しいプロパガンダ」と定義し、戦前日本、欧米、東アジア、宗教組織(オウムとイスラム国)、現代日本における「楽しいプロパガンダ」を概観した本。
プロパガンダは楽しく、人を引きつけるものでなければならない。これはどの国でも共通の認識だったようで、旧帝国陸軍の清水盛明、ナチス・ドイツのゲッベルス、中国共産党の毛沢東も同様の見解を述べている。そして利益を上げるために民間のエンタメ産業も協力、便乗してさまざまなプロパガンダ作品を作り上げていった。プロパガンダの本質を知るためには、このような官民協働にこそ注目しなければならない。強制的で退屈なプロパガンダではなく、「楽しいプロパガンダ」によってどのように民衆が扇動されたのかを構造的に見ることによって、未来の「楽しいプロパガンダ」を防ぐことができる、と著者は主張する。
「優れたプロパガンダは、政府や軍部の一方的な押しつけではなかった。むしろ、民衆の嗜好を知り尽くしたエンタメ産業が、政府や軍部の意向を忖度しながら、営利のために作り上げていった。こうすれば、政府や軍部は仕事を効率化できるし、企業は儲かるし、民衆も楽しむことができる。戦時下に山のようにプロパガンダが生まれた背景には、このような構造があった。」(p.58)
国策標語の募集について、「完成した標語よりも、標語について人々に考えさせることのほうが、社会的な影響力がある」(p.41)と、大正時代にすでに指摘されていたのが興味深く、恐ろしさも感じた。
Posted by ブクログ
プロパガンダを楽しむといった本ではなかった(汗)。第2次大戦まで、軍国主義国家だった日本は情報将校を中心にそれなりのプロパガンダ・スキルがあったようだ。現在の自衛隊は、かつてのスキルはないと著者は言う。国民に対する「遠慮」があるのかな? 人心を思い通りに誘導したい国(西側も東側も)、テロ組織などの、娯楽、エンタメの中に紛れ込んだプロパガンダに気をつけろ、ということなのだ。カバーのデザインは、ソ連の芸術家が製作したポスター
Posted by ブクログ
津田大介さんのポリタスTVで何度かお見かけしている方の著書ということで、安倍晋三銃撃事件以来なにかと騒がしくなニカと関連付けがされたり感じたりする中、今読んでも良いかなと思い読んでみた。
たのしい とタイトルひらがなにあたり、著者はお若い世代(誰と比較して??)なので、かつての宝島系お笑い北朝鮮、、的な、まあ若気の至りというかそういうものを面白がっていたことを今、ある程度内省の批判をもって自己点検している、というような立場からは、やや軽くてその辺り微妙なラインをぎりぎりうまく書いておられる。著作本をみると、軍歌の研究者なんだ、、意外であった。表紙の装丁はロシアの有名なロトチエンコのレンギスのパロディでこの辺りもクリア、まあまあ良い感じか。
日本のプロパガンダ戦前戦中のことは、国立映画アーカイブの日本映画の歴史展でかなりじっくり展示を見てきたので本書ではおさらい。日本に限らず戦時のプロパガンダ、加担は心痛くも在り厳しく見るべきでも在り、自分ならどう(加担しないほうに)できか出来なかったかと考える。
SNSの普及により戦争のあり方もやり方もプロパガンダも変わってしまい、本書が示す通り無自覚であってはならない、点検、思考を1人1人がすることが大事。
NHKや大手新聞社、テレビがくそにもならないような内容がないというか、権力側のほぼプロパガンダになりきっている今この時、本当に、中国や北朝鮮や韓国やオウムやイスラム国と同じくプロパガンダはあらゆる文化形態、メディア戦略としてネット、テレビなどに日本でも紛れ込むかもしれない、という指摘は本書2015年にも戦前から、かもしれない、ではなく続いており7年経た今はさらに、巧妙なやり方と、さらにあからさまなやり方で日本でも当然に紛れ込み済みである。現実に、アメリカの大統領選、ウクライナとロシアのメディア戦、と毎日プロパガンダ空中戦真っ只中。
思考実験という言葉を書いておられたと思うがほんとうに、「政策芸術」(日本の議員から出てくる言葉か?!という驚き)とか、「歴史戦」とか、歴史教科書や教育内容さえ平気で書き換えられる今、プロパガンダの歴史、手法を学ぶには良い本だと思った。たくさんの資料文献を当たられていてその一覧だけでも面白い。
Posted by ブクログ
近現代史研究者(なんか幅広いなぁ)による、戦前日本から諸外国、宗教、そして現代日本に至るプロパガンダ研究。
新書のコンパクトな分量の中に、全体のストーリー感も含めて綺麗に纏まっているところには、著者の力量を感じます。読みやすく、わかりやすい。現代社会を生きる身として、一度は読んでおいても良いのではないかと思いました。
戦前からしても、やっぱり日本人はプロパガンダはあまり得意じゃなかったんだなぁ、と思いつつ、一部の熱意ある人物によってそれなりの効果が生み出されてきていたことがわかります。やはりソ連、ドイツ、アメリカが凄い。
細かい中身に入っていくと、本著で触れられていた「戦艦ポチョムキン」や、「総統の顔」あたりはリベラルアーツ的に必要な知識だと思いますし、好み的におそらく今後読まなそうな「永遠の0」の筋書きと問題点をザクッと知ることができたのもまぁ良かったです。
1点敢えて言うと、現代日本のプロパガンダについて、右傾化を誘発するものだけを槍玉にあげるのはフェアではないような気も。
本著の中の、「風立ちぬ」は、宮崎駿がリベラルだし右傾エンタメじゃないね、以上!的な展開はちょっと乱暴に感じました。
とは言え、総体的にはとても勉強になったし、我々はプロパガンダに惑わされないよう「思考実験」をすべき、という最後のメッセージも胸に刺さりました。良著だと思います。
Posted by ブクログ
本当に恐ろしい大衆扇動は、エンタメの顔をしてやってくるーー。
帯に書かれたこの言葉、本書で著者が述べていることは真理だと思う。
つまらない教義じみたものは大衆に受け入れられることはない。でもそれが楽しかったり、オシャレだったり、良質な作品であったりしたなら。
かつそれと気づかないように巧妙に政治思想を誘導する内容がちりばめられていたら。
私もたやすく誘導されてしまうと思う。そしてその可能性は誰にでもある。
本著ではそんな事例を、戦時中の日本から、北朝鮮、ナチス・ドイツ、ディズニー、オウム真理教、イスラム国、宮崎駿の風立ちぬ、ガルパンといったように幅広く紹介している。ニュースで見た内容や身近なサブカルコンテンツの内容に触れているので、歴史や作品批評の読み物としても面白い。
そしてエンタメや文化作品を評価しつつ観る目を持った著者なので、プロパガンダ要素を含む作品に対する評価が割とシビアで面白い(観るに耐えない、といった表現が割と出てきて笑った。笑)。
本書を読んで「プロパガンダに対する警戒の視点」を手に入れられたのは大きな収穫。
エンタメを楽しむ視点はそのままに、冷静にその背後にあるものを感じ取りながら作品を鑑賞したいと思った。
Posted by ブクログ
戦前の日本から欧米、果ては、イスラム国やオウム真理教に至るまで、古今東西の宣伝・プロパガンダの様子を手際良くまとめて解説していくれている。オウム真理教がエヴァンゲリオン風のタイトルのラジオをエヴァ放映よりも先に実施していたのには驚いた。
Posted by ブクログ
「強制的で退屈なプロパガンダを恐れる必要はない。そんなものは反発を生むだけで、大した効果も期待できないからだ。そうではなく、娯楽を通じて知らず知らずのうちに浸透してくるプロパガンダこそ警戒すべき存在なのである」(p57)
映画、小説、音楽などの娯楽作品にさり気なくあるメッセージを潜ませ、特定の考えを広めようとする手法を、著者は「たのしいプロパガンダ」と呼び、戦時中の日本、欧米、東アジア、宗教、現在の日本からその実例を紹介します。
台湾ではマジンガーZなどのロボットアニメが設定を変えられ、見ていた子供が主人公は共産党と戦っていると思っていただとか、有川浩、「名探偵コナン」、「艦これ」など、興味深い話題がたくさん出てきて、いろいろ考えながら楽しく読むことができます。特に「永遠の0」についての考察は、自分がこの小説を読んだときに感じたもやもやした違和感を、的確に語ってくれるものでした。
ただ、個人的には、「ディズニーランド」についての考察がほしかったところです(デイズニーの映画作品は出てきます)。政治的なプロパガンダが中心なので取り上げなかったのでしょうが、アメリカの文化、価値観を巧妙に浸透させ、アメリカへの反感を封じ、進んでアメリカに従うよう仕向けることに、これほど成功しているプロパガンダは他にないと思います。
それはそれとして、「そう言えば、「日本人」をテーマにした番組が最近やたら目につくな」などと、「娯楽」作品を注意して見つめ、ときには懐疑的に接し、著者の言う「歴史を参照し、思考実験する」ことの大切さをあらためて認識させられました。
おすすめの本です。
Posted by ブクログ
古今東西様々なプロパガンダが紹介されており、事例を読むだけでも楽しい。
楽しみつつも、強制的で退屈なプロパガンダは恐れる必要はないが、『楽しい』プロパガンダ−アイドルやアニメ、ゲームなどの娯楽にこそ–に注意を払う必要がある。萌えミリなどはその典型例だし、本の中にもある、自民党若手国会議員の勉強会で議論されているらしい『政策芸術』とやらも悪用されないよう注意しなければならないのだけれど、本当に上手な人が娯楽に思想を忍ばせた時に自分は気付けるか自信がないのも事実。
歴史を参照し、思考実験をすること。警戒心を持ちつつも極端になり過ぎないこと。筆者がプロパガンダを客観的に記載しているように、俯瞰の意識を持ちつつもこれからも政治や文化、芸術、娯楽に積極的に付き合っていきたい。
Posted by ブクログ
戦前の日本、欧米、東アジア、宗教組織のプロパガンダが具体例を豊富に挙げて紹介されてある。
それらは自分には関係ないと思うことも可能だろう。
しかし、自民党若手国会議員たちの勉強会「文化芸術懇話会」で立案された「政策芸術」には危険な匂いがプンプンする。
未来の「楽しいプロパガンダ」を防ぐために、過去の「楽しいプロパガンダ」を学び、その構造を熟知しなければならない。
いかに民衆は扇動され、また扇動したのか。現代の社会に当てはめなければならない。
さらっと読めたが、この視点を持つことは非常に大切だと思った。
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歌や映画、一見プロパガンダと紐付きにくいが、政治宣伝は楽しく分かりやすくなければならない。
情報の売り手は、買ってもらうのが仕事なので、統制されないようにしなければならない。
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正確には☆3.5。
大学時代にとっていた講義で、桃太郎の鬼退治のアニメーションとドナルドダックの戦時アニメーションを見ことをきっかけに、プロパガンダ研究がかなり興味をもっていたのと、読みやすい筆致が相まって楽しく読めた。
以前読んだ『同志少女よ敵を撃て』でも出てきたカチューシャの唄についても触れられていて、より理解が進んだ。
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コテンラジオのゲッべルス回でムロさんが紹介していたので気になって購入。
プロパガンダとは、
「政治的な意図に基づき、相手の思考や行動に(しばしば相手の意向を尊重せずして)影響を与えようとする組織的な宣伝活動」のことである。(2p)
前述のコテンラジオ、ナチスの宣伝大臣であるゲッベルスの回をおかわりもして聞いていたのでこの程度にはどういうものか知っていた。
本書では大日本帝国のプロパガンダ、
欧米のプロパガンダ100年の歴史、
東アジアのプロパガンダ、
カルト宗教や中東宗教組織のプロパガンダ、
そして現代日本においてはどうなのか?という流れで、
プロパガンダについて述べている。
…てか、プロパガンダがゲシュタルト崩壊しそうだな笑
どの章も本当に興味深くて、プロパガンダと聞いてイメージする…説教くさくて退屈でちょっと滑稽で…と、いうものではなく、娯楽の顔にスルリと滑り込んだそれが、楽しく消費している間に気がつけば取り込まれているその怖さもよく理解ができた。
特に3章以降は自分の生きている時代、通り過ぎてきた記憶に諮れるため、より身近なものとして、その怖さ、面白さが想像できる。
振り返ってこの本を面白い、楽しいと感じている時点で、たとえばここに著者の思想を過剰に盛り込んだ文章があったとしても、特に考えずに消費するだろう。そう思うと、どんな娯楽も疑心暗鬼で手放しで楽しめなくなりそうだ。
まあプロパガンダにそんな区分けが可能かはわからないけど、前記した本書2p目の文章の()内の有無が、良し悪しの分岐点になるのだろうと思う。
そしてまた、娯楽を消費する側のリテラシーも大事で、楽しむだけではなく、そのコンテンツをメタ認知で捉える癖も必要になりそうだ。
2015年の刊行だったが、今後の娯楽への嗜み方をそれとなく教えてくれる、読み応えあって本当に面白い本だった。
Posted by ブクログ
戦時下の日本、ソ連、北朝鮮、中国、オウム真理教、イスラム国などが、いかにして自分たちの主義や思想をエンタメに織り交ぜ、民衆に伝えてきたのかということが書かれた本。
北朝鮮のプロパガンダ、中国の抗日コンテンツ、オウムのメディア戦略が特に面白かった。
でも、最後の章は必要?ただの政府批判になっていて、読んでいて不快だった。これはページ数が足りないから埋め合わせでつくった章なのか、またはここに著者の伝えたかったことを詰めたのか。
とりあえず著者は百田尚樹が大嫌いなんだということは分かった。
Posted by ブクログ
戦前の日本、ソ連とナチス、北朝鮮と台湾、オウムとイスラム国の4つのプロパガンダの事例を上げ、うまい大衆先導は、娯楽の形で行われると解く。
で、それに比べるかたちで、現代の右翼勢力も萌えミリ、永遠の0などの形でプロパガンダを行っているが、規模も威力もまだまだだ、と断じている。
著者の思想的な偏りが、包み隠さず現れているのが微笑ましい。
Posted by ブクログ
以前、旧ソ連のプロパガンダのポスターを展覧会で見たことがある。印象的だったことを思い出す。自衛隊についての章を読んでいて、「シン ゴジラ」についての言及がないなと思ったら、おととしの出版でした。
Posted by ブクログ
過去から現代に至るまでのプロパガンダについて、本作では主にエンターテイメント性の高い「楽しいプロパガンダ」を紹介している、ちなみに本作でのプロパガンダの定義は以下のとおり。
”政治的な意図に基づき、相手の思考や行動に(しばしば相手の意思を尊重せずして)影響を与えようとする組織的な宣伝活動”
戦前の日本軍やナチスドイツ、そして現代でも北朝鮮やイスラム国が、娯楽と絡めたプロパガンダを行っている。中でも印象的だったのは、ナチスが1936年のベルリンオリンピックを、国威発揚のために上手く利用した事だ。もし日本も1940年の東京オリンピックを返上していなければ、その後の戦況は違っていたのかも知れない。
今思えば過去のプロパガンダなんて少し滑稽に見えるが、現代の我が国においても、『永遠の0』『艦これ』『ガルパン』などなど、知らず知らずうちに右傾化に誘導されているのかも。