あらすじ
天皇の発言ほど重く受け止められる言葉はない。近代国家となった明治以降、その影響力は激増した。とはいえ、天皇の権威も権力も常に絶対的ではなかった。時代に反する「お言葉」は容赦なく無視され、皇位の存続を危うくする可能性もあった。そのため時代の空気に寄り添い、時に調整を加え、公式に発表されてきた。一方で、天皇もまた人間である。感情が忍び込むこともあれば、非公式にふと漏らす本音もある。普遍的な理想と時代の要請の狭間で露わになる天皇の苦悩と、その言葉の奥深さと魅力。気鋭の研究者が抉り出す知られざる日本の百五十年。
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Posted by ブクログ
いつものシニカルな辻田節がさくれつ。ここ数年は、辻田さんの関心領域に実際の政治が近接して、結果的に辻田さんの本がどれも時事的に読めるのがふしぎだ。
Posted by ブクログ
明治、大正、昭和、平成の天皇が発した代表的な発言を取り上げて、その発言がなされた背景や、理由を探りながら、各々の天皇の人柄、目指したものを考える。
勿論、もっとも分量が割かれているのは、在位が最も長かった昭和天皇 裕仁 だ。裕仁については戦前と戦後に分けて章立てされている。
一方で、在位期間は短いものの、最もその人柄や思いが読み取れてきたのは平成の天皇 明仁。戦前戦後、日本の激動期を過ごし、戦争責任を問われた裕仁の崩御を受けて即位した明仁の目指した天皇像と、それが故に、自分の目指した天皇像を果たせなくなることを想定して発意した譲位、それに対する周囲の反発に対する対応など、成る程と思わせる。