辻田真佐憲のレビュー一覧
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「強制的で退屈なプロパガンダを恐れる必要はない。そんなものは反発を生むだけで、大した効果も期待できないからだ。そうではなく、娯楽を通じて知らず知らずのうちに浸透してくるプロパガンダこそ警戒すべき存在なのである」(p57)
映画、小説、音楽などの娯楽作品にさり気なくあるメッセージを潜ませ、特定の考えを広めようとする手法を、著者は「たのしいプロパガンダ」と呼び、戦時中の日本、欧米、東アジア、宗教、現在の日本からその実例を紹介します。
台湾ではマジンガーZなどのロボットアニメが設定を変えられ、見ていた子供が主人公は共産党と戦っていると思っていただとか、有川浩、「名探偵コナン」、「艦これ」など、 -
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古今東西様々なプロパガンダが紹介されており、事例を読むだけでも楽しい。
楽しみつつも、強制的で退屈なプロパガンダは恐れる必要はないが、『楽しい』プロパガンダ−アイドルやアニメ、ゲームなどの娯楽にこそ–に注意を払う必要がある。萌えミリなどはその典型例だし、本の中にもある、自民党若手国会議員の勉強会で議論されているらしい『政策芸術』とやらも悪用されないよう注意しなければならないのだけれど、本当に上手な人が娯楽に思想を忍ばせた時に自分は気付けるか自信がないのも事実。
歴史を参照し、思考実験をすること。警戒心を持ちつつも極端になり過ぎないこと。筆者がプロパガンダを客観的に記載しているように、俯瞰の意識 -
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君が代のこと、なーんも知らなかった。
成立過程とか凄い面白い。
「君が代」って歌は、なんかか「君が代」自体のことを歌っている歌なのでは…と思いました。
これからも時々物議を醸しながら、苔のむすまで8000年なんだかんだと残るのかもしれません。
たぶん議論になることがめんどくさい故に国家を強制的に歌わせることになってしまい、それはどーかと思いますが、「君が代」自体がどんな歴史を彩ってきたのかは義務教育として教えたほうがいい気がします。
んで、国家という、わけがわからなくて複雑なものの象徴として、いろいろ考えるきっかけとして、ずーっと残っていけばいい。と思いました。 -
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日本の軍歌の誕生から終焉に到るまでの歴史を描いた本であるが、単にオタク本にとどまらず、日本の軍歌を軍歌たらしめる歴史的な背景、軍歌が戦争遂行に果たした役割にも言及。
フランスの「ラ・マルセイエーズ」ドイツの「ラインの護り」などを意識して作られた明治初期の軍歌は知識人、エリート層の創作であったが、やがて大衆化し、国民的エンターテイメントとなる。新聞社がコンペを催し、当然にレコード会社は売れ筋路線として軍歌を量産する。
戦時中、軍歌はニュース報道の役割も果たし、広瀬中佐に代表されるキャラクター軍歌を生み出す。
かくして軍歌は政治的エンタメとして戦争遂行の空気づくりの中核を担うことになる。軍部 -
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太平洋戦争(戦争の名称をどう呼ぶかの議論は本書の冒頭に十分行われている。私観では太平洋戦争が長年使われていて中立的な気がしている)についての最近のベストセラー。近年の太平洋戦争の書きぶりがどんな感じか知りたかったので読んでみた。
この中でも実証的な書き方が主流となっていることが述べられていたが、この本も中立的で実証的な書き方である。
当時の日本の状況や考えを辿りつつ、諸外国の立場も踏まえようとしている。
歴史が現在の思考を反映していることも留意している書きぶりは慎重で非を指摘しにくい。
うまくまとまっていて、現時点では太平洋戦争の振り返りとして上出来だと思った。
ただし、すでに太平洋戦争につ -
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「歴史とは現代からの解釈であり、そこには解釈者の意や価値観が加わるため、歴史は表情が変わる。」ことを前提にしている。
戦争の始まり(太平洋戦争、日中戦争、満州事変、、、、遡るとペリー黒船まで?)を、偉人たちの解釈をふまえて、多様な角度で示されている(もちろんご自身の解釈も)。
主に太平洋戦争に突入するまでの日本の状況(憲法や組織の脆弱性など)を多くのポイントをまとめられている。
→どことなく現代の強くなれない企業と似た点があるように思え、当時の組織体をもうすこし深く学びたいと好奇心が湧いた。
後半には、当時の日本の政治・軍事活動(大東亜新秩序、八紘一宇、人種差別撤廃)や、それらを他国から -
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日本も参政党の躍進や高市政権の発足で、いよいよナショナリズムが前面に出てきた感がする。
近年のナショナリズムはSNS等での発揚が強いが、筆者はあえてリアルな場を求めて世界を巡る。
トランプあり安倍晋三があり、もちろん日本の戦前戦中の「八紘一宇」「神武天皇」を顕彰する場がある。と思いきや、難波大介(昭和天皇暗殺未遂事件)の生家も訪れている。
筆者の政治的スタンスは中立のような気がするが、現場で感じている感覚は自分にも近いので好感が持てる。かと言って、紹介されて場を訪れてみたいとは思わないが笑。
最後の総論で述べている「国威発揚の四象限」の解説は分かりやすく納得できる。 -
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微妙な仕上がりだと思った。
歴史とは現在の視点から解釈するものにならざるを得ず、価値観の介入は否めない。
先の大戦についても、被害者視点でなく、加害者視点でなく、0−100ではなく65点くらいでいいんじゃないか。
どっちから見て?
前半の軽い史実の確認は良かったのだけど、大東亜共栄圏、東条元首相が巡った国々の「国の物語」を辿るあたりからなんかわからなくなった。
長いねん、その部分。
で、じゃあ日本がその物語を持つ必要があるのか。
その辺がようわからん。どう考えてるのか。
考え方の提案ではあるが、考えの提案ではないのか。
なんとはなしにええように誤魔化された感じで、結局何を読んだの