辻田真佐憲のレビュー一覧
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本当に恐ろしい大衆扇動は、エンタメの顔をしてやってくるーー。
帯に書かれたこの言葉、本書で著者が述べていることは真理だと思う。
つまらない教義じみたものは大衆に受け入れられることはない。でもそれが楽しかったり、オシャレだったり、良質な作品であったりしたなら。
かつそれと気づかないように巧妙に政治思想を誘導する内容がちりばめられていたら。
私もたやすく誘導されてしまうと思う。そしてその可能性は誰にでもある。
本著ではそんな事例を、戦時中の日本から、北朝鮮、ナチス・ドイツ、ディズニー、オウム真理教、イスラム国、宮崎駿の風立ちぬ、ガルパンといったように幅広く紹介している。ニュースで見た内容や身近なサブカルコンテンツの内容に触れているので、歴史や作品批評の読み物としても面白い。
そしてエンタメや文化作品を評価しつつ観る目を持った著者なので、プロパガンダ要素を含む作品に対する評価が割とシビアで面白い(観るに耐えない、といった表現が割と出てきて笑った。笑)。
本書を読んで「プロパガンダに対する警戒の視点」を手に入れられたのは大きな収穫。
エンタメを楽しむ視点はそのままに、冷静にその背後にあるものを感じ取りながら作品を鑑賞したいと思った。 -
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明治、大正、昭和、平成の天皇が発した代表的な発言を取り上げて、その発言がなされた背景や、理由を探りながら、各々の天皇の人柄、目指したものを考える。
勿論、もっとも分量が割かれているのは、在位が最も長かった昭和天皇 裕仁 だ。裕仁については戦前と戦後に分けて章立てされている。
一方で、在位期間は短いものの、最もその人柄や思いが読み取れてきたのは平成の天皇 明仁。戦前戦後、日本の激動期を過ごし、戦争責任を問われた裕仁の崩御を受けて即位した明仁の目指した天皇像と、それが故に、自分の目指した天皇像を果たせなくなることを想定して発意した譲位、それに対する周囲の反発に対する対応など、成る程と思わせる。 -
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理想の日本人像なんて、時の権力者が自分が御しやすい国民を作るために定めるものなのだなと思った。しかし、それはあくまで過去のものであり、今は「理想の日本人像」ではなく、「理想の世界人像と、その中の日本人像」を考えないといけないのではないかな。
しかし、1890年台の西園寺公望の考えには恐れ入った。
①科学教育を重視すべきこと
②英語を普及すべきこと
③女子教育を振興すべきこと
④修身における「理想の日本人像」を転換すべきこと
→従順な忠臣タイプではなく、逆境に功を奏する両親タイプを理想とすべき
いやぁ、すごい。今も全然できてない。この考えが普及してたら、今とは全然違った日本になっていただろうね。 -
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ネタバレ最終章の〆が、何故か電力会社批判、安倍政権批判なので星一つ減とする。
政治と報道の癒着という意味では、マスコミ関係者を多数候補者として取り込んでいる民主党(民進党)の方がよほど危険だろと。2009年総選挙前後の報道の異様さについて読者が何も覚えていないとでも思っているのだろうか?あのような『一切の批判無しの報道』の恐ろしさが、『大本営発表』の危険さだと、この本を読んで思い至ったのだが。
あと、直近の事例だと、共産党の発表を垂れ流す豊洲新市場関連報道だね。
本題に戻ると、そもそも、『大本営発表』の起こりが、日中戦争時に過熱した報道の『暴走』に対処するために始まったとは知らなかった。そういえば、『百人切り競争報道』(捏造)とかあったしね<毎日
そして、現地の不確実な戦果がそのまま中央に報告され、報告をまとめただけの結果が、膨大な『架空の戦果』に繋がったとは、いくら情報を軽視していたと言われる日本軍にしても酷すぎる…よくもそんな体制で4年以上も対米戦できたもんだよなと。
むしろ、損害を大本営が意図的に削って発表していた方がまだましという酷さ。
しかし、大本営発表で軍部と癒着しきっていた報道陣が、癒着しきっていたが故に偽の大本営発表を見破ったという終戦直前のエピソードについては、もう顔が引きつったままどんな表情をしたら良いのかわからなくなる。(闇が闇を破った) -
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君が代のこと、なーんも知らなかった。
成立過程とか凄い面白い。
「君が代」って歌は、なんかか「君が代」自体のことを歌っている歌なのでは…と思いました。
これからも時々物議を醸しながら、苔のむすまで8000年なんだかんだと残るのかもしれません。
たぶん議論になることがめんどくさい故に国家を強制的に歌わせることになってしまい、それはどーかと思いますが、「君が代」自体がどんな歴史を彩ってきたのかは義務教育として教えたほうがいい気がします。
んで、国家という、わけがわからなくて複雑なものの象徴として、いろいろ考えるきっかけとして、ずーっと残っていけばいい。と思いました。 -
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日本の軍歌の誕生から終焉に到るまでの歴史を描いた本であるが、単にオタク本にとどまらず、日本の軍歌を軍歌たらしめる歴史的な背景、軍歌が戦争遂行に果たした役割にも言及。
フランスの「ラ・マルセイエーズ」ドイツの「ラインの護り」などを意識して作られた明治初期の軍歌は知識人、エリート層の創作であったが、やがて大衆化し、国民的エンターテイメントとなる。新聞社がコンペを催し、当然にレコード会社は売れ筋路線として軍歌を量産する。
戦時中、軍歌はニュース報道の役割も果たし、広瀬中佐に代表されるキャラクター軍歌を生み出す。
かくして軍歌は政治的エンタメとして戦争遂行の空気づくりの中核を担うことになる。軍部の強制ではなくマスコミ、メディア、文化人がメディアミックスで場を盛り上げていく。こうなると政府は引くに引けない。ひょっとして軍部だって引くに引かなかったのではなかろうか。
現代においても、たとえば北朝鮮は軍歌を政治的エンタメとしてうまく活用している。中国においても同様である。歌のもつ情緒が論理を打ち消すのである。
何故日本は、日本人は戦争に走ったのかという理由の一側面がこのあたりにありそうではないか。 -
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特に2点考えさせられた。
①中・露・朝鮮半島だけでなく、東南アジアも日本は占領していたと言う事実。現代を考えるとなんとなく東南アジアは親日というイメージごあるが「あの戦争」当時は日本が東南アジアを植民地化しようとしていた歴史があるということは忘れてはならない。「許そう、だが忘れない」という視点は忘れてはいけないと感じた。
②日本にちゃんとした戦争博物館がないという事実。これが日本が「あの戦争」についてはっきりとした終わりを示せていない証拠。世界を見ても時の政権によって博物館の展示内容は変わる。良し悪しに白黒つけることはできないが65点の答えを出すことが大事だということ。 -
Posted by ブクログ
日本の戦争の歴史を振り返りつつ、そもそも歴史とは何であるのかを考えさせられる本書。
歴史というのは、進歩の歴史になりがちであり、さらにはナショナリズム隆盛のための歴史になりがちな側面があります。
それをふまえると、一国の視点から見る歴史は何かに偏ったものになってしまうのが常であることが分かります。
とはいえ、偏ったものになることは避けられませんし、無理に避ける必要もないと思います。大事なことは、それを摂取する側の私たちが上手く受け入れる能力を持つことです。
歴史自体を知ることもとても大事ですが、歴史とはそもそも何なのかを知ることができると歴史はもっと楽しくなります。
色んな人に読んでもらいたい本です。