【感想・ネタバレ】「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史のレビュー

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匿名

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明治維新から太平洋戦争での敗戦までの「戦前」と呼ばれる時代に、日本神話がどのように利用されたのかをたどる一冊。ネーションビルディングのための方便として参照された日本神話が時代を下るにつれて、神聖不可侵なものへと変わっていき国家の破滅という大惨事に突き進んでいく、まさに自家中毒を起こしていたというそういう側面を説明しています。昨今の日本の日本会議とかの右翼団体を思い出す人もいるかと思いますが、それよりも今のロシアや中国、イスラエルあたりの国を思い浮かべてしまった。国民の物語は国民国家形成のためにはやはり必要でしょうが、それが有害なものに変わりルサンチマンと選民意識に彩られたものになり、対外拡張の論理に使われ出すと世界を不幸にするものにしかなり得ないでしょう。物語は大切だけどそれが物語であることを忘れてもならない。

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2024年06月15日

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ネタバレ

スタンスの置き方が難しい時代を極めてバランスよく記述してありました。日本の神話って名前が難しくてなんか取っ付きにくかったのですが、ザックリわかり易く纏めてあり、有益。確かに神話を踏まえないと戦前は理解できませんね。架空であるが故に自由度の高い神話をネタとして急速な近代化を進め、その後、逆にこのネタにしばられるようになってしまった日本。物語がないと国民国家はできないが、物語の行き過ぎが自滅をもたらす。歴史は繰り返す。やはり冷静な勉強は大事ですね。良書。

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2024年05月16日

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日本書紀や古事記に出てくる日本神話が、戦前の拡大路線、対外戦争の中でいかにプロパガンダとして利用されてきたかを分かりやすく辿る一冊。神武天皇の八紘一宇に始まり、イザナギやアマテラスの時代まで遡り、神話の発祥地としての宮崎県と鹿児島県の争いや、軍人に人気を持った竹内巨麿の「竹内文献」など、知らなかった日本の歴史と神話の関係性を網羅できる。特に、神武景気や岩戸景気、いざなぎ景気といった言葉に表れるように、戦後の日本でも神話の教養が人口に膾炙していたことが印象的である。それが、日本という国が世界に晒された時の弱小コンプレックスなのか、日本という国の雰囲気をよく表していることなのか、考えてみたい。

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2023年10月27日

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明治維新から77年で敗戦。敗戦から77年が昨年2022年。我々はいまだ明治政府に縛られている。いやそれどころか、亡霊のようにつきまとい、肥大化してさえいる。
欧米列強と闘うためには西洋化が必須。
江戸幕府にとってかわった薩長明治政府は天皇を担ぐ。
しかし天皇は和服、では西洋化のシンボルにならない。
古事記日本書紀に遡れば神武天皇は闘う天皇。
神武天皇以来万世一系の天皇こそ闘う天皇。
天皇陛下の下で富国強兵だ!

みたいな絵を書いて、そのために、それまでは存在を忘れられていた神武天皇を担ぎ出し、
その肖像画は明治天皇に似せて作り、、
その明治天皇の肖像も元は東洋顔だったのが、それでは弱いと西洋風の顔にしたもの。
何から何まで虚構。
神武天皇のエピソードを膨らませる中で「八紘一宇」も生まれる。
天皇は平和裏に世界をひとつにしようとしていた、と。

今の政治で自由民主党に在籍する議員の多くは、
この明治政府が作った虚構をまるまる信じているのだろうか。
それともわかっていて、あえてそういう発言をして、
国民を扇動しようとしているのだろうか。
「八紘一宇」質問の三原じゅん子議員などは心から信じているように映るが。
もはや天皇を担ぐのでなく、アメリカを仰いでいるはずなのだが、、、

天皇家は男系で2600年続いている、なんてことを信じて、
男子が残っている旧宮家を復活させ天皇におむかえしろ、
なんて言っている青山繁晴議員は、学識ある方と思うんだけどなー。
私は今の天皇家の祖先は26代継体天皇と理解している。
15代応神天皇の五世の孫。
でもそれじゃぶちこわしだから、青山先生などは一切そういうことは言わない。
だいたい、楠木正成を忠義の武士というが、彼は南朝後醍醐天皇に仕えた。
今の天皇は北朝。そこからして変。
そういうことに全部目をつぶって、物語を作って、国民を動かそうとしている。
そして当初は物語とわかっていたものが、皆ホントの話と思い込む。
危ない。

だいたい誰が国を動かすのだろう。
明治政府では薩長、いまは官僚と自民公明となるのか?
なんだかなー。

戦前、近現代史を見つめ直したこの新書。名著だ。

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2023年08月31日

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明治〜昭和初期にかけての、日本書紀や古事記を元にした引用が、読み辛いなと流していた。
戦前〜戦中にかけて、分かりやすく勇ましく、読みやすくなって怖くなった。
良い本だった。

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2023年08月12日

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いままで古事記と皇室の関係が「そんなわけなくね?」と不思議だったので、なるほどだった。

「ネタがベタになるリスク」
無批判に物語を受け入れる人って多いし、世間の空気がそっちの方向に行ったら逆らえなくなってしまう。あるある。

私は100%否定になりがちなので、「あえて曖昧なままにしておく」は今後意識しておきたい。

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2023年07月28日

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題名に強く惹かれ、入手して紐解き始めると、なかなかに愉しかった。出逢えて善かったと思える一冊だ。
研究成果や論考を、幅広い読者に向けて判り易く説くという、「新書」らしい感じの一冊だ。題名から受ける、少し厳めしい感じでもない。6つの章が在るが、各章での話題は何れも面白い。
第2次大戦の前後で「戦前」、「戦後」という言い方を広くしていると思う。両者は、何となく「別」であるかのように感じさせられているかもしれないようにも思う。「戦前」の範疇に産れた人達の人生が「戦後」にも続いている例は多く、「戦前」に定着したようなモノが「戦後」に在り続けている例も多いであろう。更に「戦後」の中だけでも、様々な変遷が在って、「そう言えば以前はもっと様子が異なった?」も多々在るのだと思う。漫然とそういうような問題意識も在ったので、本書で取上げている話題は何れも非常に興味深かった。
明治期以降、「中世」を「キャンセル」して、神武天皇に起源を有する古い時代の「神話」を半ば創出し、それに依拠した考え方を推し進めたと言える面が在るのだと本書は説く。そしてその「神話」の扱いを巡って様々な展開が在る。色々と言われるように、国家が様々な事柄を主導しようとした一面は在るが、「下からの」とでも呼ぶべき、民間から起こった動きが国家の中に採り入れられたというような事柄も在る。「国家が打ち出した物語」とでも呼ぶべき「神話」が時代を牽引していたような様子を「戦前」とすべきなのかもしれない。そういう柱で、幾つかの話題が展開しているのが本書であると思う。
「戦前」というモノは、強い批判という目線で取り沙汰される場合も在れば、大いに賞賛、称揚するという目線で取り沙汰される場合も在る。が、両者の何れにしても、少し考えてみると「本当は?」というような、考える余地が大いに残るかもしれないというのが、本書で論じられている数々の内容だ。言わば「大いに誤解されているのかもしれない“戦前”なるもの」というようなことが、一口で言う本書の主題かもしれない。
或いは、本書のようなテーマを考えてみるということが、「歴史を学ぶ」という上で有益であり、求められることなのかもしれない。非常に興味深い一冊なので、広く御薦めしたい。

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2023年06月07日

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神話は実話かどうか実証できない分、良くも悪くも解釈の自由度があり、状況によって利用されがち。
それは日本だけではなく、キリスト教なども同様。

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2024年06月11日

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大日本帝国を宗教国家として見た時の、奇妙な天皇崇拝はどうやって形作られたのか?
明治からの政府が作った上からの宗教と、草の根的な下からの宗教が結びつく流れが面白かった。
木村鷹太郎、通称キムタカのオカルトとしか言いようのない日本書紀はそもそも世界の話をしていたという解釈は、抱腹絶倒するほどに面白いと同時に、これだけ賢い人がオカルトに傾倒してしまうというオウム真理教の様な怖さがあると感じた。

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2024年03月30日

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ネタバレ

タイトルから少し怪しいイメージをしていたが、読んでみたらしっかり分析してあり勉強になった。

初代神武天皇など昔は祀られていなかった人が国威高揚の為、祀られるようになったと言うのが驚きだった

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2024年03月28日

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日本神話をほとんど知らなかったので読むのに苦労しましたが、いかに神話が都合よく解釈され、利用されてきたかよく分かります。
東西問わず様々な宗教に共通することですね。

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2024年03月10日

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「戦前」を日本神話との関係で読み解く本。

なるほどのところが多かった。

もちろん、戦後の日本が、天皇を政治的に利用したとか、その際に日本神話を活用したというのを批判することは簡単ではないにしろ、可能である。

が、著者は、そうした後付けの批判だけでなく、物語の重要性を認識した上で、それとどう使い合うか、より良い方向にどう使っていくかという観点があることに共感した。

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2023年09月23日

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なんとなく知っていた内容ではあったが、それぞれの思想の成立過程など“戦前”が構築され現在に繋がる様子を知るには良書。

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2023年09月01日

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本書では明治維新から大東亜戦争まで、日本の神話がどのように利用されてきたかが解説され、それに関連するエピソードも紹介されている。そうすることで日本神話の入門書となり、また近現代史書にもなっている。さらに昨今の神話プームではびこる神武天皇実在論に対しても誤った考えであることを示唆する。

国体の精華と教育勅語
日本では、天照大神が「天壌無窮の神勅」および「宝鏡奉斎の神勅」により、忠孝の道を打ち立てた。歴代の天皇および臣民は、この忠孝の道徳をしっかり守り、忠孝の四角形は一度たりとも崩れなかった。そのため、易姓革命は起こらず、天皇家は万世一系を保っている。
教育勅語の背景にはこのような国体思想がある。

以前自民党右派の政治家が、教育勅語を肯定する発言をしたが、ただ前述の一部分を切り出してきて、「親孝行の部分は現代にも通じる」などと論じても意味がない。

敗戦受け入れを決めるかどうかにあたり、当時の昭和天皇が国民の命のことより、三種の神器の無事を優先させて決断しようとしていたのは意外だった。
またその三種の神器は、古事記、日本書紀には皇位の象徴とは書かれておらず、その言葉の初出も壇之浦の戦いで安徳天皇が入水したことを伝える「平家物語」であることも。

明治維新に、それまでの江戸時代の政治体制の在り方を、完全に否定して、早く人臣を統制させるために神話を取り込み、いわばマインドコントロールしてきたか、そしていつの間にか、コントロールしていた方が、目に見えないものにコントロールされるに至ったか と言う風に思えた。

未だに復古主義的な政治家やジャーナリストがいることには注意も必要かな。

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2023年08月16日

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筆者の掘り下げる専門分野はなかなかのニッチにあると思うが、それ故に戦前という一種の暗部を紐解くにあたって一縷の光として機能しているのだろう。

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2023年07月30日

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昭和40年代半ば(1970年代)に小学生だった私の感覚では、戦争とは「第二次世界大戦」のことであり、それ以前のことは歴史の教科書やドラマなどで印象的なものは知ってるつもりだったけれど‥先ずは「戦前」の「戦」がどれなのかを定めないと話が混乱するし先に進まないという大事なことに気付かされる。それにしてもいい大人になるまで天皇と神話の関係を深く考えた事もなく、近・現代史をいかに学んでこなかったかに気付いて愕然とするばかり。(本筋とは違うのだけど)本書を読んだら、ますます町田康さんの『古事記』読むのが楽しみになってきた。

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2023年07月27日

Posted by ブクログ

昨今、警告のように言われる戦前への回帰。
「教育勅語」や「八紘一宇」という言葉に秘められた理念を、敗戦によってその真の価値が歪められたものとして、復活を叫ぶ人たちもいる。
筆者はその意見に与するでもなく、また頭ごなしに批判するでもなく、その言葉がどのようにして生まれ、どのような目的のもとに発せられたのかを解き明かす。

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2023年06月18日

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筆者が得意とする「歌」を引用した部分が、民意への影響として大変分かりやすい。「国体」について、そうだったのか、と思わされるところが多く、非常に勉強になった。

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2023年05月30日

Posted by ブクログ

博識で広範囲の史料からよく拾ったと思うが、ただそれだけで、国家の無能や責任に対する言及は薄く、命を落とした人々に寄り添う内容とは言えない。

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2024年03月17日

Posted by ブクログ

古事記と日本書紀を中心とした日本の神話の解説本として、それらをうまく編集、組み換えして利用しようとした明治政府等や軍部の話がうまく解説されている。

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2023年12月14日

Posted by ブクログ

明治維新後、新しく国を統一するために神話が利用され、それが暴走していった経過がよくわかった。
非常に興味深い切り口だった。
中国やロシア、北朝鮮等の語る身勝手で誇大妄想的な物語が、つい数十年前の日本でも語られていたことを再認識した。
非常に中立的に書かれているように感じながら読んだが、日本によって戦場にされた国々への言及がほとんどないので、あくまでも日本視点で見た分析だと思う。

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2023年07月07日

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