辻田真佐憲のレビュー一覧
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国民統治における「物語」の、また、SNSを中心に見られる短絡的な考え方の危険性を感じた。「物語」は功罪どちらもあるものだが、本書においては「物語」の危険性、その「物語」に基礎づけられた戦前の日本が批判的に解説、分析される。
なんかよくわからないものに導かれ、自らとんでもない結末を迎えないためにも、過去を、歴史を学び、うまくバランスを取りながら、今後我々がどうあるべきかを考えていかなければならない。
そうした「冷静さの重要性」を思い起こさせてく、このところの、諸論点に対する右派の理屈付けに違和感を感じていたタイミングで、その違和感を解体して解説くれる本であった。左派を支持するとは言っていない -
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本書では明治維新から大東亜戦争まで、日本の神話がどのように利用されてきたかが解説され、それに関連するエピソードも紹介されている。そうすることで日本神話の入門書となり、また近現代史書にもなっている。さらに昨今の神話プームではびこる神武天皇実在論に対しても誤った考えであることを示唆する。
国体の精華と教育勅語
日本では、天照大神が「天壌無窮の神勅」および「宝鏡奉斎の神勅」により、忠孝の道を打ち立てた。歴代の天皇および臣民は、この忠孝の道徳をしっかり守り、忠孝の四角形は一度たりとも崩れなかった。そのため、易姓革命は起こらず、天皇家は万世一系を保っている。
教育勅語の背景にはこのような国体思想がある -
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「楽しさ」を通じて民衆をコントロールしようとするタイプのプロパガンダを「楽しいプロパガンダ」と定義し、戦前日本、欧米、東アジア、宗教組織(オウムとイスラム国)、現代日本における「楽しいプロパガンダ」を概観した本。
プロパガンダは楽しく、人を引きつけるものでなければならない。これはどの国でも共通の認識だったようで、旧帝国陸軍の清水盛明、ナチス・ドイツのゲッベルス、中国共産党の毛沢東も同様の見解を述べている。そして利益を上げるために民間のエンタメ産業も協力、便乗してさまざまなプロパガンダ作品を作り上げていった。プロパガンダの本質を知るためには、このような官民協働にこそ注目しなければならない。強制 -
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ネトウヨ
嫌韓・嫌中
慰安婦問題はデタラメ
ホロコーストは無かった
ヘイトスピーチ
などなど、日頃、「こういうのおかしいよなぁ」と思っている事について知ってみたくて読んでみました。
上記のような思想的傾向を「歴史修正主義」というそうです。
この歴史修正主義に対して向き合い、評価し批判するために有用な本だと思います。
「はじめに」に本書の目的-歴史認識問題の現状を正確に把握し、未来を考えるきっかけを作る、と書いてあり、その目的に沿った5つの章と最後の座談会が配されておりいずれの論考も面白い。
わたしには特に以下の章が読み応えがありました。
第二章 植民地主義忘却の世界史
第四章 「自虐史観」批 -
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津田大介さんのポリタスTVで何度かお見かけしている方の著書ということで、安倍晋三銃撃事件以来なにかと騒がしくなニカと関連付けがされたり感じたりする中、今読んでも良いかなと思い読んでみた。
たのしい とタイトルひらがなにあたり、著者はお若い世代(誰と比較して??)なので、かつての宝島系お笑い北朝鮮、、的な、まあ若気の至りというかそういうものを面白がっていたことを今、ある程度内省の批判をもって自己点検している、というような立場からは、やや軽くてその辺り微妙なラインをぎりぎりうまく書いておられる。著作本をみると、軍歌の研究者なんだ、、意外であった。表紙の装丁はロシアの有名なロトチエンコのレンギスのパ -
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米国の犯罪学者Donald R.Cresseyによれば、不正行為は機会、動機、正当化の3要素が揃った時に起こると言う。戦況報告で噓をつくのも、情報独占がもたらす「機会」、戦況をよく見せたい「動機」、下からの情報を無碍にできないという「正当化」、すべての要素が揃っている。本来報道機関がその矛盾をついて情報の正しさを吟味する責任があるはずだが、部数を売ることを優先し、自ら翼賛的な報道姿勢を選択した事で「大本営発表」を支えた。戦後一部の新聞は権力と対峙することが使命と勘違いし、未だに部数/視聴率第一のセンセーショナリズムを繰り返すだけで真実や本質を掘り下げようとしない。それに記者クラブは警察を含む権