辻田真佐憲のレビュー一覧

  • 「あの戦争」は何だったのか

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    “あの戦争を語る際に、あの戦争”だけ”に焦点を当てるべきではないということだ。真珠湾攻撃や特攻隊といった個々の現象について理解を深めることも重要だが、なにより大切なのは、それらにいたるまでの歴史の過程や構造を見つめることだろう。あの戦争は、日本の近代史、あるいは近現代史という長い時間の流れのなかに位置づけて、はじめてその全体像が立ち上がってくる。そうした視点に立つことで、ようやくあの戦争は、過剰な肯定にも否定にもならず、落ち着くべきところに落ち着くのではないか”

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    2025年12月02日
  • 大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争

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    ネタバレ

    いかに大本営発表が嘘だったのか。第3者の視点での検証がないからエスカレートしてしまう。日本海軍と連合国海軍の艦艇喪失数にも歴然とした差が。日本海軍は実際の数よりマイナス20隻、連合国軍はプラス112隻となっている。もう本当にめちゃくちゃである。陸軍と海軍のメンツのぶつかり合いで正しい戦果報告はできないし、嘘の大本営発表により作戦にまで影響がでてしまう。本書のおわにり「政治とメディアの一体化が日本に史上空前の災厄をもたらした現象」と書かれているがまったくその通りである。

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    2025年10月22日
  • 「あの戦争」は何だったのか

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    戦後80年ということもあって総括としての話題性は今なお健在のアジア・太平洋戦争に関して、いくらか焦点が絞られていた筆者のこれまでの著作と比べても概観的に論を繋いでいる。
    日本が突入した戦争の時期的な定義とそれに絡まるイデオロギー。歴史というifの存在しない事象へのそれでもという反実仮想。戦時下に直接・間接的に交わった国々における感覚と、そもそも現代日本において確立されずじまいの総合的な評価。一連の流れを追うと、今なおこの込み入った歴史哲学的な問題の解消は残された国家の課題であると見えてくる。

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    2025年10月11日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    日本神話が明治以降の天皇制国家構築に度のように利用されてきたのか、を全く知らずで、この本をとても興味深く読み進められた。日本神話の世界はヤマタノオロチや因幡の白兎の話、ヤマトタケルの草薙の剣で火を払うなど、絵本でワクワク読んだものだが、この本での解説を読んでいると、物語が人間社会を構築する、というハラリの論考にもつながって興味深い。

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    2025年10月05日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    明治維新〜戦前まで、日本がいかに神話国家になったのか?がよくわかる。(あと、靖国神社も理解できた)

    太平洋戦争で、日本がなぜ「我々は神の国だ」なんて変なこと言ってたのかが、よーく理解できた。

    「神話」は日本が近代国家を急造するための方便だった。欧米列強に植民地にされないように、強い日本になるために、国民を動かす装置だった。

    それは見事に大成功し、日本は幾多の戦争に勝ち抜き、第一次世界大戦時には五大国として君臨した。

    これらを成功させた土台には「神話」があった。
    理屈はこうだ。神である天照(アマテラス)の子孫の神武天皇から2,600年もの間、万世一系の天皇をいただく日本は神の国である。つ

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    2025年10月05日
  • 「あの戦争」は何だったのか

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    近代史・戦争に対する考え方の初歩としてとても参考になったし、歴史に興味が持てた良い内容だった。
    著者が中立的な立場を貫いていたこと、各国の価値観を現地の情報を加えて語ってくれたことでより興味を持てた。

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    2025年10月01日
  • 「あの戦争」は何だったのか

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    辻田真佐憲「「あの戦争」は何だったのか(講談社現代新書)
    「あの戦争」とはむろん太平洋戦争、日本にとっての第二次世界大戦のこと。日中戦争(日華事変)と直結しているのはもちろんだが、日独伊三国同盟、満州事変、張作霖爆殺、ワシントン体制、第一次世界大戦と因果の連鎖はどこまででもさかのぼれる。じゃあどこでなら止められたのか。後知恵で言うのは簡単だが、当時の政治・軍事指導者の視点に立ち戻って考えると実は簡単じゃない。当時の指導者の思考を追体験して歴史を考えるのは興味深い。

    本書の後半では、著者がアジアに残ろ日本の戦跡を訪問し、現地でどう記憶されているかを聞き取る。前半と後半を同じ著書に収める必要があ

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    2025年09月30日
  • 「あの戦争」は何だったのか

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    どうしても現在の価値観というフィルターがかかるので、過去を評価することは難しい。そもそも、評価それ自体がおこがましいことのようにも思うが、当時は仕方がなかったとしてもそれを今に生かしていくため、歴史を学ぶ必要があると思った。
    また、日本の近代化の出発点をペリーの黒船来航に求め、国際社会における帝国主義的な生存競争を日本が欧米列強から学ばざるを得なかった、というのは私にとって新しい視点だった。それでも侵略されたアジア諸国にはそれぞれにとっての歴史・物語であり、それに思いをいたしつつ、日本は日本としての歴史・物語があるべきという筆者の思いに非常に共感した。

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    2025年09月28日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    特に教育勅語の話が興味深い。いまだに教育勅語の一部分だけを取り上げて肯定する意見があるのには呆れる他ない。戦中の軍国主義への「下からの参加」はなぜ起こったのか。戦前からその下地が着実に形成されていったことを理解するのに大変役立つ一冊。

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    2025年09月15日
  • 「あの戦争」は何だったのか

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    アジア・太平洋戦争(大東亜戦争)を巡る解釈の多様性とその独特な位置づけは、日本の歴史観を複雑にしている。

    満州事変を起点とする15年戦争としての側面、
    日中戦争を起点とした視点、
    欧米列強の植民地支配に対する反撃戦争という大東亜百年戦争論、
    そして真珠湾攻撃を出発点とする一般的な見解。

    どれもが独自の物語を紡いでいる。

    「あの」戦争の代名詞が即座に何を示すのかが分かる背景には、この戦争が日本にとって象徴的な意味を持つからだ。
    それは日本の「黄金期」昭和の絶頂における象徴であり、特異性の源泉でもある。
    こうした解釈の難解さがゆえに、他国では当たり前に存在する公的な機関での展示が日本にはほと

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    2025年08月14日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    本読み仲間のおすすめ会で、積読のオススメとして紹介された多忙な先輩からお借りした。サイト記事で少し読んでましたが、大変論理的で納得感の高い内容でした。皇室や神話が、西洋化や国民皆兵等を進めるための方便として、その本質や伝統とは違う形で都合良く使われ、それをすべて否定しては、それこそ本質や伝統を見失うことが良く理解できました。
    本書では触れられていませんでしたが、笹川良一の「地球は一家、人類は兄弟」は、八紘一宇の言い換えであることに初めて気が付き驚きです。
    2025-034

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    2025年07月22日
  • ルポ 国威発揚 「再プロパガンダ化」する世界を歩く

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    国威発揚、プロパガンダの現場、国内はもちろん海外の現場も。中間的な立場からのルポ。安倍晋三の神格化などだったりイタリアのムッソリーニに対する視点など、目からウロコの視点が多い。

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    2025年05月31日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    久しぶりに新書で面白い本を見つけた。
    日本の神話と明治初期の国づくり、そこから離れていった昭和初期、そして戦前の見方が分かれてしまった現代へと時代の流れを中立的な視点で考察していて学びが多い。
    依拠している古典も具体的に紹介されており、読者自らも検証することができる。
    現代の右派、左派の対立がどこから生じているのか学び、考えさせられた。

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    2025年02月27日
  • ルポ 国威発揚 「再プロパガンダ化」する世界を歩く

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    月に一度出演するポリタスの時事対談で、初めて著者の事を知って以来、今まで漠然と見てきた史跡や神社仏閣が作られてきた理由に興味が湧いてきた。同じ時代を生きて、同じものを見ていても、視点が変わればまったく違う風景が見えてくる。それはきっと今も昔も同じこと。本書からは現地に行かなければわからない“気配”が、著者の目と耳を通じてじわじわ伝わって、それが現実社会のさまざまな問題と直結していることに驚いたり、納得したり‥。思わず(嘘でしょ‥⁈)と言いたくなるような写真やエピソードも満載。

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    2025年01月31日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    すごく良いです。
    日本は時代の空気やなんとなくの雰囲気に流されやすく「物語」の影響が大。無責任の構造というか、独裁的な牽引力の核がないというか。強みでもあり弱みでもあり、政治も経済も民衆も無自覚にダメ物語スパイラルにハマりやすい。的な感覚があればオススメです。
    戦前に詳しくなければ多くの発見が、大学受験で日本史選択程度の知識でも(私)、全然に発見が多数です。
    我々が生きる我々の社会を、多くの人にとって少しでもより良いものにするために、健全に盛り上げていこーよと。そのために必要な、空気に流されないスキルの獲得に有用です。我々の物語を適切に上書きして、社会をアップデートしていきたいですね。

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    2025年01月15日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    知らないことばかり書いてあった。
    著者曰く、神武天皇は、いないし、明治時代に、国を進めていくために、都合よく持ち出されたもの。
    しっかり、確認できるのは、平安時代から。

    戦前は国務法と皇室典範に分かれていた。つまり、帝国議会は、皇室典範に関することは一切干渉できなかった。

    三種の神器は、南北朝時代から。

    日本は特別な国だという物語がないと、
    西洋に追いつくことができないと考えた。

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    2025年01月13日
  • 文部省の研究 「理想の日本人像」を求めた百五十年

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    文部省の掲げる「理想の日本人像」の移り変わりを通じて、文部省の歴史を分析。 時代によって理想の日本人像に変遷はあるも、その軸には、グローバリズムとナショナリズムの二つがあったようである。グローバリズムの名の下に、競争を煽り、階層化が進めば、それはナショナリズムの同胞意識でフォローできるかもしれない。ナショナリズムの自国中心主義は、グローバリズムの経済的合理性で抑制できるかもしれない。 ナショナリズムとグローバリズムをどのように調和させていくかが、「理想の日本人像」を考える上での軸になっていくだろう。

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    2025年01月05日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    そもそも、戦前はいつから始まったのか、何故日本は太平洋戦争中、あのような軍国主義国家になったのか、非常に興味があった。

    その答えがこの一冊にあった。
    なかなか衝撃的な内容である。
    有名な童謡の作曲家が国威高揚を目的とした歌をつくっていたり、我々が健在学んでいない事実かたくさんこの本には書かれている。

    日の丸、君が代、靖国神社等の問題は、この本の知識なしではよくわからない。

    明治維新も、我々が習ったことは随分過不足がある。
    なぞだらけである。実は、江戸時代の日本は平和でみな幸福に暮らしていたのではないか。

    明治維新から太平洋戦争終戦まで、何か重要なことが隠されているのではないか、という気

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    2025年01月01日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

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    わたしの個人的な思想はリベラル寄りで、いわゆる「歴史修正主義」的な動きなど、右派論壇に対してはつねに批判的な視線を向けてきた。関聯する記事などもよく読むのだが、そこでしばしば用いられるのが「戦前」という言葉である。「戦前回帰」といった形で眼にすることも多いが、しかしその実、われわれは「戦前」という言葉をイメージでしか捉えておらず、正しく理解できているとは言いがたい。そこで今回は、正しい「戦前」像を理解するために、「新書大賞2024」で第7位になった本作を読んでみた。内容的には、「創られた『伝統』」という、よく知られた言いまわしがあるが、たとえば「八紘一宇」というキイワードがいかに「創られた」か

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    2024年08月19日
  • 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

    匿名

    購入済み

    明治維新から太平洋戦争での敗戦までの「戦前」と呼ばれる時代に、日本神話がどのように利用されたのかをたどる一冊。ネーションビルディングのための方便として参照された日本神話が時代を下るにつれて、神聖不可侵なものへと変わっていき国家の破滅という大惨事に突き進んでいく、まさに自家中毒を起こしていたというそういう側面を説明しています。昨今の日本の日本会議とかの右翼団体を思い出す人もいるかと思いますが、それよりも今のロシアや中国、イスラエルあたりの国を思い浮かべてしまった。国民の物語は国民国家形成のためにはやはり必要でしょうが、それが有害なものに変わりルサンチマンと選民意識に彩られたものになり、対外拡張の

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    2024年08月17日