辻田真佐憲のレビュー一覧
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明治維新〜戦前まで、日本がいかに神話国家になったのか?がよくわかる。(あと、靖国神社も理解できた)
太平洋戦争で、日本がなぜ「我々は神の国だ」なんて変なこと言ってたのかが、よーく理解できた。
「神話」は日本が近代国家を急造するための方便だった。欧米列強に植民地にされないように、強い日本になるために、国民を動かす装置だった。
それは見事に大成功し、日本は幾多の戦争に勝ち抜き、第一次世界大戦時には五大国として君臨した。
これらを成功させた土台には「神話」があった。
理屈はこうだ。神である天照(アマテラス)の子孫の神武天皇から2,600年もの間、万世一系の天皇をいただく日本は神の国である。つ -
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辻田真佐憲「「あの戦争」は何だったのか(講談社現代新書)
「あの戦争」とはむろん太平洋戦争、日本にとっての第二次世界大戦のこと。日中戦争(日華事変)と直結しているのはもちろんだが、日独伊三国同盟、満州事変、張作霖爆殺、ワシントン体制、第一次世界大戦と因果の連鎖はどこまででもさかのぼれる。じゃあどこでなら止められたのか。後知恵で言うのは簡単だが、当時の政治・軍事指導者の視点に立ち戻って考えると実は簡単じゃない。当時の指導者の思考を追体験して歴史を考えるのは興味深い。
本書の後半では、著者がアジアに残ろ日本の戦跡を訪問し、現地でどう記憶されているかを聞き取る。前半と後半を同じ著書に収める必要があ -
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どうしても現在の価値観というフィルターがかかるので、過去を評価することは難しい。そもそも、評価それ自体がおこがましいことのようにも思うが、当時は仕方がなかったとしてもそれを今に生かしていくため、歴史を学ぶ必要があると思った。
また、日本の近代化の出発点をペリーの黒船来航に求め、国際社会における帝国主義的な生存競争を日本が欧米列強から学ばざるを得なかった、というのは私にとって新しい視点だった。それでも侵略されたアジア諸国にはそれぞれにとっての歴史・物語であり、それに思いをいたしつつ、日本は日本としての歴史・物語があるべきという筆者の思いに非常に共感した。 -
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アジア・太平洋戦争(大東亜戦争)を巡る解釈の多様性とその独特な位置づけは、日本の歴史観を複雑にしている。
満州事変を起点とする15年戦争としての側面、
日中戦争を起点とした視点、
欧米列強の植民地支配に対する反撃戦争という大東亜百年戦争論、
そして真珠湾攻撃を出発点とする一般的な見解。
どれもが独自の物語を紡いでいる。
「あの」戦争の代名詞が即座に何を示すのかが分かる背景には、この戦争が日本にとって象徴的な意味を持つからだ。
それは日本の「黄金期」昭和の絶頂における象徴であり、特異性の源泉でもある。
こうした解釈の難解さがゆえに、他国では当たり前に存在する公的な機関での展示が日本にはほと -
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すごく良いです。
日本は時代の空気やなんとなくの雰囲気に流されやすく「物語」の影響が大。無責任の構造というか、独裁的な牽引力の核がないというか。強みでもあり弱みでもあり、政治も経済も民衆も無自覚にダメ物語スパイラルにハマりやすい。的な感覚があればオススメです。
戦前に詳しくなければ多くの発見が、大学受験で日本史選択程度の知識でも(私)、全然に発見が多数です。
我々が生きる我々の社会を、多くの人にとって少しでもより良いものにするために、健全に盛り上げていこーよと。そのために必要な、空気に流されないスキルの獲得に有用です。我々の物語を適切に上書きして、社会をアップデートしていきたいですね。 -
Posted by ブクログ
そもそも、戦前はいつから始まったのか、何故日本は太平洋戦争中、あのような軍国主義国家になったのか、非常に興味があった。
その答えがこの一冊にあった。
なかなか衝撃的な内容である。
有名な童謡の作曲家が国威高揚を目的とした歌をつくっていたり、我々が健在学んでいない事実かたくさんこの本には書かれている。
日の丸、君が代、靖国神社等の問題は、この本の知識なしではよくわからない。
明治維新も、我々が習ったことは随分過不足がある。
なぞだらけである。実は、江戸時代の日本は平和でみな幸福に暮らしていたのではないか。
明治維新から太平洋戦争終戦まで、何か重要なことが隠されているのではないか、という気 -
Posted by ブクログ
わたしの個人的な思想はリベラル寄りで、いわゆる「歴史修正主義」的な動きなど、右派論壇に対してはつねに批判的な視線を向けてきた。関聯する記事などもよく読むのだが、そこでしばしば用いられるのが「戦前」という言葉である。「戦前回帰」といった形で眼にすることも多いが、しかしその実、われわれは「戦前」という言葉をイメージでしか捉えておらず、正しく理解できているとは言いがたい。そこで今回は、正しい「戦前」像を理解するために、「新書大賞2024」で第7位になった本作を読んでみた。内容的には、「創られた『伝統』」という、よく知られた言いまわしがあるが、たとえば「八紘一宇」というキイワードがいかに「創られた」か
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匿名
購入済み明治維新から太平洋戦争での敗戦までの「戦前」と呼ばれる時代に、日本神話がどのように利用されたのかをたどる一冊。ネーションビルディングのための方便として参照された日本神話が時代を下るにつれて、神聖不可侵なものへと変わっていき国家の破滅という大惨事に突き進んでいく、まさに自家中毒を起こしていたというそういう側面を説明しています。昨今の日本の日本会議とかの右翼団体を思い出す人もいるかと思いますが、それよりも今のロシアや中国、イスラエルあたりの国を思い浮かべてしまった。国民の物語は国民国家形成のためにはやはり必要でしょうが、それが有害なものに変わりルサンチマンと選民意識に彩られたものになり、対外拡張の