辻田真佐憲のレビュー一覧
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「楽しさ」を通じて民衆をコントロールしようとするタイプのプロパガンダを「楽しいプロパガンダ」と定義し、戦前日本、欧米、東アジア、宗教組織(オウムとイスラム国)、現代日本における「楽しいプロパガンダ」を概観した本。
プロパガンダは楽しく、人を引きつけるものでなければならない。これはどの国でも共通の認識だったようで、旧帝国陸軍の清水盛明、ナチス・ドイツのゲッベルス、中国共産党の毛沢東も同様の見解を述べている。そして利益を上げるために民間のエンタメ産業も協力、便乗してさまざまなプロパガンダ作品を作り上げていった。プロパガンダの本質を知るためには、このような官民協働にこそ注目しなければならない。強制的で退屈なプロパガンダではなく、「楽しいプロパガンダ」によってどのように民衆が扇動されたのかを構造的に見ることによって、未来の「楽しいプロパガンダ」を防ぐことができる、と著者は主張する。
「優れたプロパガンダは、政府や軍部の一方的な押しつけではなかった。むしろ、民衆の嗜好を知り尽くしたエンタメ産業が、政府や軍部の意向を忖度しながら、営利のために作り上げていった。こうすれば、政府や軍部は仕事を効率化できるし、企業は儲かるし、民衆も楽しむことができる。戦時下に山のようにプロパガンダが生まれた背景には、このような構造があった。」(p.58)
国策標語の募集について、「完成した標語よりも、標語について人々に考えさせることのほうが、社会的な影響力がある」(p.41)と、大正時代にすでに指摘されていたのが興味深く、恐ろしさも感じた。 -
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ネトウヨ
嫌韓・嫌中
慰安婦問題はデタラメ
ホロコーストは無かった
ヘイトスピーチ
などなど、日頃、「こういうのおかしいよなぁ」と思っている事について知ってみたくて読んでみました。
上記のような思想的傾向を「歴史修正主義」というそうです。
この歴史修正主義に対して向き合い、評価し批判するために有用な本だと思います。
「はじめに」に本書の目的-歴史認識問題の現状を正確に把握し、未来を考えるきっかけを作る、と書いてあり、その目的に沿った5つの章と最後の座談会が配されておりいずれの論考も面白い。
わたしには特に以下の章が読み応えがありました。
第二章 植民地主義忘却の世界史
第四章 「自虐史観」批判と対峙する
第五章 歴史に「物語」はなぜ必要か
巻末の参考文献リストで、この本を起点としてさらに問題を深掘りしていけるようになっている作りも親切です。 -
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津田大介さんのポリタスTVで何度かお見かけしている方の著書ということで、安倍晋三銃撃事件以来なにかと騒がしくなニカと関連付けがされたり感じたりする中、今読んでも良いかなと思い読んでみた。
たのしい とタイトルひらがなにあたり、著者はお若い世代(誰と比較して??)なので、かつての宝島系お笑い北朝鮮、、的な、まあ若気の至りというかそういうものを面白がっていたことを今、ある程度内省の批判をもって自己点検している、というような立場からは、やや軽くてその辺り微妙なラインをぎりぎりうまく書いておられる。著作本をみると、軍歌の研究者なんだ、、意外であった。表紙の装丁はロシアの有名なロトチエンコのレンギスのパロディでこの辺りもクリア、まあまあ良い感じか。
日本のプロパガンダ戦前戦中のことは、国立映画アーカイブの日本映画の歴史展でかなりじっくり展示を見てきたので本書ではおさらい。日本に限らず戦時のプロパガンダ、加担は心痛くも在り厳しく見るべきでも在り、自分ならどう(加担しないほうに)できか出来なかったかと考える。
SNSの普及により戦争のあり方もやり方もプロパガンダも変わってしまい、本書が示す通り無自覚であってはならない、点検、思考を1人1人がすることが大事。
NHKや大手新聞社、テレビがくそにもならないような内容がないというか、権力側のほぼプロパガンダになりきっている今この時、本当に、中国や北朝鮮や韓国やオウムやイスラム国と同じくプロパガンダはあらゆる文化形態、メディア戦略としてネット、テレビなどに日本でも紛れ込むかもしれない、という指摘は本書2015年にも戦前から、かもしれない、ではなく続いており7年経た今はさらに、巧妙なやり方と、さらにあからさまなやり方で日本でも当然に紛れ込み済みである。現実に、アメリカの大統領選、ウクライナとロシアのメディア戦、と毎日プロパガンダ空中戦真っ只中。
思考実験という言葉を書いておられたと思うがほんとうに、「政策芸術」(日本の議員から出てくる言葉か?!という驚き)とか、「歴史戦」とか、歴史教科書や教育内容さえ平気で書き換えられる今、プロパガンダの歴史、手法を学ぶには良い本だと思った。たくさんの資料文献を当たられていてその一覧だけでも面白い。
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米国の犯罪学者Donald R.Cresseyによれば、不正行為は機会、動機、正当化の3要素が揃った時に起こると言う。戦況報告で噓をつくのも、情報独占がもたらす「機会」、戦況をよく見せたい「動機」、下からの情報を無碍にできないという「正当化」、すべての要素が揃っている。本来報道機関がその矛盾をついて情報の正しさを吟味する責任があるはずだが、部数を売ることを優先し、自ら翼賛的な報道姿勢を選択した事で「大本営発表」を支えた。戦後一部の新聞は権力と対峙することが使命と勘違いし、未だに部数/視聴率第一のセンセーショナリズムを繰り返すだけで真実や本質を掘り下げようとしない。それに記者クラブは警察を含む権力とズブズブで、戦中の軍との関係と何ら変わる所はない。疑惑の追及も結構だが、本来彼らが果たすべき第一の使命は正しい情報の発信である。誰もが情報の発信者になれる現代、そんな「発表ジャーナリズム」では先は暗いだろう。今ほど正確性を担保するメディアが望まれている時代もないのだが。
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朝ドラ「エール」がおもしろくて古関裕而?知らないなあと思いちょっと検索してみると、早稲田の応援歌「紺碧の空」「東京オリンピックマーチ」高校野球甲子園の「栄冠は君に輝く」はては「モスラの歌」おうおうみんな知ってるなあ、はてさて「イヨマンテの夜」メロディは思い出せないけど昭和40年代あたりNHKのど自慢でよく出場者が歌っていたなあ、さらに調べるとNHKのスポーツ番組の導入歌、「ひるのいこい」の開始の歌ときた。さらに「露営の歌」「若鷲の歌」示された歌詞をみると、”勝ってくるぞと勇ましく”、”若き血潮の予科練の” 戦争映画などでよく歌われている。俄然興味がわきこの本を読んでみた。
「イヨマンテの夜」をyoutubeで聴いてみると、なるほど歌自慢の人が歌いたがる歌かもと思った。伊藤久男という歌手はかなりな声量がある。伴奏はそのまま「モスラ」を歌ってもいけるか、とも感じた。
著者の辻田真佐憲氏、1984年生まれながら軍歌の研究者らしい。軍歌にかたよった内容なのかと危惧したが、題名のとおり、古関裕而の一生と曲が、昭和史の流れと共に分かるようになっていた。分かる、というより、平易な文章で小説的な手法で古関氏の曲と一生が流れ込んできた。そして巻末の参考文献をみると新聞、会報、など細かい多くの資料を参考にし、もちろん遺族やコロムビアなどへのインタビューもしたようで、真実性もあると見た。4時間で一気に読み終えた。
1909年(明治42年)生まれ。1929(昭和4年)~1939(昭和14年)が20代、1945年が36歳である。軍歌をたくさん作曲しているが、その時代を生きた者としては、「その時代にいたから」というしかないのではないか。ほとんどすべてが新聞社やNHKなどからの依頼だ。
曲は身近にあったのに、名前を知らななかったのはどうしてなのかなあ。服部良一などは歌とともに名前もよく知っていいたが。
ドラマでは弟がちょっと父にないがしろにされているようで、このあとどうなるのかなあ。本では5歳下の弟がいたとあり、戦争中は弟は福島市で所帯を持っていたとあったが。
2020.3.20発行
2020.4.25購入 -
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令和2年上半期のNHK連続テレビ小説「エール」のモデル、作曲家の古関裕而の評伝。事実と活き活きとした描写が楽しめる。
さすがNHK、古関裕而に関する書籍が多く出版されている。その中から選んで見たのが本書。軍歌であったり日本軍全般と昭和史に関して多くの著作がある作家。古関裕而を語るには若いがその分冷静で学術的な記述。
古関裕而の4千曲に渡る幅広いジャンル。「六甲おろし」「闘魂こめて」や「紺碧の空」など。どうなるか分からないが東京2020大会関連でオリンピックマーチの関係が、古関ブームにつながっているのだろう。
本書を読むとドラマが史実にかなり忠実であることが分かる。
史実に即している割には堅苦しくなく小説的に気楽に読める作品でした。 -
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独学で作曲を学び、昭和を代表する作曲家になった古関裕而の生涯。
第1章 好きになったら一直線(1909~1930年)
第2章 ヒットを求めて四苦八苦(1930~1936年)
第3章 急転直下、軍歌の覇王に(1937~1941年)
第4章 戦時下最大のヒットメーカー(1941~1945年)
第5章 花咲く大衆音楽のよろず屋(1945~1973年)
第6章 経済大国の大門を叩く(1952~1989年)
主要参考文献有り。本書で引用した歌詞一覧有り。
NHK朝ドラ「エール」のモデルとなった作曲家、古関裕而。
激動の昭和という時代を音楽で生き抜き、
人々の想いに添ったメロディーを生み出したその生涯を、
様々な資料を駆使して紹介しています。
生活のためもあったり、依頼されたら断れなかったり、
1年も悩んで作曲する作品もあれば、即興で名曲を生み出したり・・・
いろいろあるけど、作曲が好きだったことに尽きる生涯です。
なんとその作品数は5000曲!
応援歌、軍歌、昭和歌謡、ドラマや映画の音楽、社歌と、
ジャンルも多様多彩・・・「モスラの歌」も彼の作品とは!
妻金子や戦時中の軍歌、菊田一夫、オリンピックとの関わり等の
エピソードも豊富で、読み易い内容でした。 -
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軍歌は明治~昭和初期の国民のエンターテインメントだった。最初の軍歌は、タイトルそのままの「軍歌」。その後、歴史や故事に因むものや兵隊の応援、戦況を伝えるもの等様々なタイプの多くの軍歌が作られた。
メディアが発達していなかった当時、戦況を伝える軍歌は、国民に情報を届ける手段でもあったらしい。曲は短く、歌詞は簡潔で覚えやすい。娯楽が制限されていた時代に、軍歌は国民の楽しみだったようだ。著者は軍歌マニアで、多くの軍歌を収集して分類し、軍歌の持つ意味を考察している。戦史や兵器の軍事マニアは沢山いるが、軍歌収集は歴史的な価値も含めて、大変面白いテーマだと思う。内容も真面目でとても良い本だ。
自分の経験だが、奄美大島に住んでいた小学生の頃、近所の年上の友達から軍歌を教えてもらった。
奄美はテレビの民放が無く、アニメや子供向けの番組が放送されていなかったので、テーマソング等は全く知らなかった。歌と言えば童謡か、大人が歌っていた軍歌。
1曲15-30秒、同じメロディの繰り返し、誰でも簡単に覚えられる軍歌を友達と歌うのが楽しかった。
好きな歌は、永井建子の元寇、広瀬中佐、日本海海戦、轟沈、海行かば。海軍の軍歌が好きで、高校の遠足バスの中で、何か歌えと言われて軍歌を歌ったら大顰蹙だった。喜んでいたのは、戦中生まれの先生だけ。
軍歌は、親たちの世代が歌う暗い曲というイメージだったので、当時の若者に受けるはずもなく、その後、中年になるまで封印した。でも何事にも寛容な今の若者に、シンプルな軍歌は意外に受けるかもしれない。 -
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近現代史研究者(なんか幅広いなぁ)による、戦前日本から諸外国、宗教、そして現代日本に至るプロパガンダ研究。
新書のコンパクトな分量の中に、全体のストーリー感も含めて綺麗に纏まっているところには、著者の力量を感じます。読みやすく、わかりやすい。現代社会を生きる身として、一度は読んでおいても良いのではないかと思いました。
戦前からしても、やっぱり日本人はプロパガンダはあまり得意じゃなかったんだなぁ、と思いつつ、一部の熱意ある人物によってそれなりの効果が生み出されてきていたことがわかります。やはりソ連、ドイツ、アメリカが凄い。
細かい中身に入っていくと、本著で触れられていた「戦艦ポチョムキン」や、「総統の顔」あたりはリベラルアーツ的に必要な知識だと思いますし、好み的におそらく今後読まなそうな「永遠の0」の筋書きと問題点をザクッと知ることができたのもまぁ良かったです。
1点敢えて言うと、現代日本のプロパガンダについて、右傾化を誘発するものだけを槍玉にあげるのはフェアではないような気も。
本著の中の、「風立ちぬ」は、宮崎駿がリベラルだし右傾エンタメじゃないね、以上!的な展開はちょっと乱暴に感じました。
とは言え、総体的にはとても勉強になったし、我々はプロパガンダに惑わされないよう「思考実験」をすべき、という最後のメッセージも胸に刺さりました。良著だと思います。