ヘレンハルメ美穂のレビュー一覧
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ネタバレエーベルト・グレーンス警部シリーズ第二作。
もはや苦行だ。
相変わらず苛烈な暴力の描写に、
正義の無力さ、人生の虚しさの熱帯雨林をかき分けて前進するような苦行。
その行程の果てにあるものは、
心洗われる大瀑布でもなければ、
失われた古代遺跡でもない。
前作で登場した囚人が刑務所から出所して話ははじまるが、
そこに外国から騙されて連れてこられた売春婦たちがからんでくる。
酷い暴力の被害者の彼女が、銃と爆弾を持って立てこもった目的はなにか。
グレーンス警部と囚人の因縁が明らかになり、
自分の恋人に重傷を負わせ人生を破壊したその犯罪者を、
傷害からくる事故死を殺人の罪で追い込むのはまだ良いとして、
亡くなった刑事仲間の犯罪を隠蔽するのは納得できない。
著者という現地の案内人に連れられ、
蚊やヒルに襲われ夜に怯えながら進んだ
密林の奥にあったのは、
馬をも飲み込む底無し沼だった。
人の心の闇という名の。
いや、ここが終着点ではないのかもしれない。
救いは次の作品にあるのかも。 -
Posted by ブクログ
作者がかわって2巻目、前巻はやや遠慮もあったそうですが、今回は現作者の特徴が色濃くなったようです
前作者はスピード感のある展開で、勢いで読ませる感じがありましたが、現作者は練り込まれた展開をじっくり読ませるタイプのように感じます
どちらが面白いかというと、好みもありむずかしいところです
同じ要素を使って書かれていて、表現は寄せてあっても違うものですね
上巻では複数の出来事が描かれ、何がどのように関連していくのか期待させられます
書体の違うパートが何を意味するのか予想しながら下巻へ
登場人物が多く、イニシャルなどもあってややてこずりました
現在の経済の話や、宗教問題、人が形作られる要因の話など、意欲的なテーマを複数盛り込んだ割に、どこか消化しきれていない印象を受けてしまいます
最後に次巻を予期させるところは、もうおなじみの感じです
次巻の方が面白そうな予感はしますが、どうなのかな? -
Posted by ブクログ
ネタバレ「悪童」の解説でみかけて。
ミステリーとは謎とその解だ。
謎は殺人だったり、盗みだったり、客の不審な態度だったり、
解は犯人だったり、動機だったり、過去だったりする。
主人公の恋愛に夢中になったり、
美味しそうな食事に心を奪われたりすることもあるが、
それだけではミステリーではない。
謎解きの過程を楽しみたいという希望はあるが、
残念ながらすっとばされることもある。
全ての謎に解が与えられる訳でもない。
しかし、謎と解がなければミステリーではない。
それゆえ、この作品はミステリーではない。
少女が残虐な殺され方をしていても、
被害者の家族が悲しんでいても、
刑事や検察官が犯人に同情しようがしまいが、
ミステリーではない。
どこにも謎がない。
謎がなければ解はない。
犯人は最初からわかっているし、
復讐も予想通りだし、
警察は何もしていない。
ああ、もしかしたら謎がなくても「どんでん返し」、
意外な展開、結末があれば良いのかも。
もちろん、それもない。
残虐な事件や登場人物の悲惨な過去を読まされただけ、
ミステリーではなく、
現代社会の矛盾を描く社会派小説といえば良いのか。
それともこれが北欧ミステリーなのか。 -
Posted by ブクログ
可もなく不可もない、そんなミステリーになってしまった感がある。
解説にもあったが、見事にリスベットという難しいキャラクターを前作の作者から引き継いでいるという点は、お見事。ただ、扱うテーマが、少し安易で、結末が予想されてしまった。特に下巻は、上巻に比べ種明かしをしていくはずなのに、読むスピードが上がらなかった。それはきっとストーリーの絡みが薄かったからであろう。冒頭のイスラムのファリアの悲哀の話と、ダンとレイの話の絡みが、順序を絡ませ描いている割には、最後まで平行。その点がスピードが進まない理由でもあり、それぞれの話の落としどころもなんとなくわかってしまう、そんなちょっとしたところでスピード感がなくなるって感じる。
ただ、最後のリスベットの弔辞はジンときた。何かのドラマでも同じこと言っていたが、人間おせっかいなくらいなほうがちょうど良い。そうしていると、相手は必ず振り向いて理解し合える、そんなメッセージをリスベットが弔辞でいうなんて意外ではあり、リスベットらしいと思った。
※解説の女性のヘイト小説の分析は面白かった。日本ってここまでつよい女性って、ゼロゼロくノ一や、梶芽衣子みたいな漫画で描かれているが、少しお色気気味でハードボイルドにはなりきれない。これはきっと日本のかわいい文化があるからだと思った。 -
Posted by ブクログ
第三部と第四部の転換が強烈だった。登場人物の見え方ががらりと変わる。彼自身の嫌悪の対象と同化している姿がはっきりと示される。おぞましく哀れな教育の成果としての過剰な暴力は、決してコントロールできず、彼を飲み込んでいる。
暴力のある家庭の悲惨さは言うまでもない。言うまでもないから言語化できていなかったが、この作品を読んで暴力の悪影響の手触りを感じた。
してはならないことは何を捨てても失っても、してはならないのだと、理解できるのは大人だからだ。子供は愛を求めることが正解で、実際にはそこに選択肢はない。
だから、服従させてはならない。
上巻は結構疲れたが、下巻は一気に読めた。