栗原ちひろのレビュー一覧
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレ怪異を倒すでもなく祓うでもなく、やり過ごす。
もしくは、共存する。
倒そうと祓おうと試みた結果失敗してそうなったのではなく、最初からやり過ごすスタンスなのは珍しい設定だと思う。
何しろ主人公は怪異を見るという能力だけで、それ以上の特殊能力はないと自負している。
……実際は、ちょっとしたものは怒鳴って蹴散らしたり、意外に行動的でこうと決めたら貫き通す部分もあり、決してただの「弱キャラ」ではなかった気がするが。
そう、意外に怒鳴れるし、いざとなったら口も立つんだ、彼。
普段は惚れた先輩へなかなか踏み込めない、なし崩しに世話係になっちゃったみたいな弱い?キャラっぽくはあるのだが。
怪異を見るだけの -
Posted by ブクログ
THORES柴本先生の絵が目的で購入。
本当にそれだけでしたが、ボイスチャットにて、表紙イラストについてお話しを伺うことができました。
『中身』に興味が湧いて読み始めました。
表紙がかっこいい青年だから、クールだろうなぁと期待していましたが、そうでもなく(個人的にはそこが残念)、優しい男性でございました。
キャラクターの掛け合いは楽しかったし、登場する悪魔も、『契約』とか以前に、単に好きだから・面白いから、人間の側にいるような印象です。
そして人間よりも人間の幸せを願っているようにも見えました。優しい気持ちになります。
読み終えた後に、THORES柴本先生のイラスト表紙をじっくり見ると、
あ、 -
購入済み
愉快なオカルトもの
作者が話をすごく作り込んでいて、それを読む側も気合い入れて読まないと置いていかれる作品でした。のっけから飛ばしてくるので、冒頭は内容を掴み切れませんでした。
キャラクターが全員個性的で、とくに音井は善なのか悪なのか両方あるのか、それすら良くわからず…。馴染みのないタイプばかりでしたが、新鮮で、楽しく読めました。 -
Posted by ブクログ
19世紀イギリス、エリオット男爵の事件簿続編。
「見える」か「見えない」か、「ある」か「ない」かではなくて、生者にも死者にも慈しみがある、それがエリオットの魅力だと思う。そりゃ、あったらいいな。あってほしい。亡くした大切な人に会いたいし、話したいし。そんなことがあるなら、そう信じたい。目に映るものだけが真実ではなくて、そう、見えない何かがあると感じると、不思議なことに優しい気持ちになれる。生と死をわかつ境界線があやふやなら、そのどちらにいても、きっと心は伝えあえると思わせてくれる。たとえそれが幻想だとしても、少しの暖かさを得られるし、めぐる朝の苦しさが和らぐきもする。。たとえ、幻想だとしても。 -
購入済み
虚実の境
どこまでが現実なのか、それともそんな全てが現実ということか。英国の時代の香りも漂って何とも美しくもまがまがしい。幽霊が普通に間近で話したり事件解決に関わってきて、周囲には見えているのかいないのか、読み返したらヒントがあるのかも。エリオットとコニーが現実世界で幸せに生きていくことってできないものなのかともどかしい気持ちにもなりました。
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレエリオットが幽霊を生きている人間と同じように見えている(要は区別が付かない)という点が様々な事件でより面白みを持たせてくれたなという印象。
お陰で驚かされること多数。
え、死者だったんかい! という。
でも怖いのは生きている人間の方。
事件を起こすのも、狂気に陥るのもいつだって生きている人間の方。
と単純にいかないのは流石栗原先生。
単純に幽霊が怖い話もある。
特に修道院の話は純粋にホラーとして怖かった。
真相も無論怖いし、確かに生きている人間の怖い話でもあったけど、犯人の執念が怖いというか。
絵面も断トツで怖かった。
基本的に偽オカルトを暴く系の謎解きだから「怖いと思った話は実は全然オカル -
Posted by ブクログ
主人公が儚げ病弱キャラに見えて意思の強気こと動かざる山のごとしだったり、ツンデレ狐が愉快犯的に街の人達の記憶を食べてしまっていていいやつなんだか悪いやつなんだか掴みづらかったりとか、どのキャラもわかりやすいキャラ立ての裏に別の面を併せ持っている。そこがいい。
わかりやすい敵や、わかりやすい味方の出てこない、複雑に絡まった糸を解していくような物語。全体的に透明な寂しさが漂っているけれど、痛すぎたり苦しすぎたりはしないので安心して読めるお話。こういうさらっとしたお話は最近増えている気がする。
主人公と狐の関係が意外と複雑で、これからどうなっていくのか見守りたい。続編求む。
おばあちゃんと狐 -
-
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルに出てくる「一冊」は作中に登場したどの一冊のことなのか。読み終えてから少し考えて、この作品そのもののことなんだろうなという結論にすんなり落ち着いた。
たまたまこの本を読み始めたタイミングで私は熱を出していて、身体感覚が鈍って空間認識が危うくなると、物語への没入感もいつもより深くなる。
作中に登場する物語に引き込まれる田中さんの物語に更に没入する読書感。自分の現実までふわふわとした虚構の一部が紛れ込んできたようで、田中さんと同じく久々にこの感覚を味わったななどと思いながらぐいぐい読んでしまった。
うまく言葉に表せないけれど、あとがきに書かれていた影の主人公の話、そしてこのタイトル。私の中 -
Posted by ブクログ
書くことに慣れてるなーと読み進めながらも、冷静でいられました。
力技や、キャラやストーリーへの執着にも似た愛情で読者を引きずり込むんじゃなくて、どこかでキャラも読者をもゆったり抱き込んで、俯瞰的に世界を見つめている作者の視線を常に感じる本でした。何度も同じことをし続けてきたからこそ、情熱を持って書く自分と、冷静に世界を構築する、王様と軍師のようなふたつの人格が、この人には確立されていて、そのふたりは、共同経営の関係にあるんだなと。
なんというか、無駄の無いお話でした。
すっきりとしていて、全てのキャラに同等に優しく厳しく、プロだなーと。
悪魔の二面性もよく描かれているし、主人公の強くて感受性が -
Posted by ブクログ
世界観が素晴らしい!!「もし絵の中の人が実際に生きて、動いたり考えたりしていたら…?」という子どもの頃の空想が実現した話。
「あなたは絵に描かれただけのもので、私達のいる次元にはこの街しかありません。街の外のことはすべて設定です」なんて言われたら、そりゃ絶望するわ~。読み始めは、主人公以外イカレた奴ばっかで驚いたが。
そんな絵に描かれた範囲=箱庭が、「描かれたそのまま」から脱して設定が現実に存在するようになり、まがりなりにも一つの世界になるのが壮大でいい。「世界の成り立ちを問う」タイプのファンタジー。
現実の世界だって、宇宙は「閉じてる」から、世界はその外に無限にある(『百億の昼と~』)って考