あらすじ
虚弱体質の療養のため、小学校卒業までを過ごした亡き祖母宅を訪れた嘉月は『思い出帖』という不思議な帖面を持つ三尾の狐のあやかし・仙狐と出会った。
仙狐は記憶を喰うあやかしで、喰われた記憶は忘れられ『思い出帖』に描かれるという。
親友を思い出せないことに気づいた嘉月は記憶を取り返そうとするが、仙狐が喰うのは「どうしても忘れたい」と願われた“辛い記憶”だけ。
嘉月が失った記憶には親友の秘密と仙狐の犠牲が隠されていて……。
懐かしさと切なさが胸を締めつける、あやかし郷愁譚。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
主人公が儚げ病弱キャラに見えて意思の強気こと動かざる山のごとしだったり、ツンデレ狐が愉快犯的に街の人達の記憶を食べてしまっていていいやつなんだか悪いやつなんだか掴みづらかったりとか、どのキャラもわかりやすいキャラ立ての裏に別の面を併せ持っている。そこがいい。
わかりやすい敵や、わかりやすい味方の出てこない、複雑に絡まった糸を解していくような物語。全体的に透明な寂しさが漂っているけれど、痛すぎたり苦しすぎたりはしないので安心して読めるお話。こういうさらっとしたお話は最近増えている気がする。
主人公と狐の関係が意外と複雑で、これからどうなっていくのか見守りたい。続編求む。
おばあちゃんと狐の関係はもっと興味があるのでそこも描いて欲しい。
街の人たちの中では岳中さんがすごくいいキャラだった。お酒飲めないけどこんな人と飲みたいなあと思う。そんな感じ。
Posted by ブクログ
『式神仙狐の思い出帖』 (平成30年初版発行)
著者 栗原ちひろ
積読していた本の中から。表紙のイラストとタイトルの雰囲気、帯には「記憶を探す青年・嘉月と、思い出を喰う式神。」とありました。今頃思い出したように読んでみたくなりました。(富士見L文庫、ラノベかな?)あとがきを入れて250ページ程、軽めの文章でサラリと読めます。
主人公は生来体の弱い大学生の沖世嘉月(おきせかづき)。大学の夏休みも終わる頃、転地療養のため、母と二人で小学生時代を過ごした祖母の家を訪れるところから始まります。祖母の喜代は嘉月が生まれた同じ日に亡くなっています。
のっけから、不穏な気配が付き纏っています。この世のものではない、『それ』や『あれ』が見えてしまう嘉月。町には、ひとの記憶が消えてしまうという『物忘れ』が続いていたり暗い雰囲気が漂っています。
『あれ』や魑魅魍魎から命を狙われる嘉月ですが、普段は青年の姿をした式神の冬青(そよご)“三尾の仙狐“が守ってくれます。祖母の喜代は筆で妖を封じ込める力を持っていて、嘉月もその血を受け継いでいました。そして式神もまた、嘉代から嘉月へとー。
詳しい説明のないままぼんやりとした輪郭で物語が進んでいき、中盤の描写は殆どホラーです、、(ちょっと気分が悪くなりました、、)しかし!嘉月と冬青の軽やかなやりとりが和ませてくれますから、大丈夫です。笑
終盤で一気に物語の骨格が語られていますので、嘉代と嘉月とそよご(冬青、戦)の関係がほっこりと落ち着きますね。(*´ω`*)
人の辛い記憶を喰う冬青。「人の記憶を喰うのをやめて、今まで喰った記憶を全部戻せば、冬青は仙狐に戻って、いずれ神様になれるー」
最後のシーン。
嘉月「頑張って筆の修行をしてー思い出を返したら契約はおしまい。君は神さまになって、俺はただの病弱になる」
冬青「勝手にしろ。だが、少なくとも今はー貴様は、俺の主人だ」
この終わり方、続きを読みたくなりますね。
出ないのかなぁ〜(*´ー`*)