川副智子のレビュー一覧
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掛け値なしの傑作というのは、こういう作品のことを言うのではないでしょうか。『身代りの女』というタイトルと簡単な作品紹介だけを見て、作品の良し悪しとは別に、自分の小説の興味のベクトルとは別の方を向いてそうだな、という気持ちがあったのですが、読んでびっくり、なんでいままで読まなかったのかと後悔してしまいました。ラストまでどう転ぶか分からない物語をぜひ楽しんで欲しいので、事前情報はあまり持たずに読んだほうがいいような気がします。でも、それでも簡単に内容に触れるとしたら……。
卒業を間近に控えた名門校に通う仲良しグループ六人。メーガン、フェリックス、アンバー、ザヴ、ダニエル、タリサ。輝かしい未来 -
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『アリとダンテ、宇宙の秘密を発見する』
よすぎて言葉にならない。
むりやりスリルやサスペンスを盛りこんでくる話ではないし、主人公ふたりもその両親たちも、いろいろあれど地に足のついたひとたちなのに、常に何かのきわを爪先立って歩いているような冴え冴えとした緊張感がある。
だれかを全力で愛するということは、常に先の見えない、剣が峰に立たされたような不安を強いるものなのかもしれないな。お互いの気持ちだけでなく、世間の目、親の反応、気になることはたくさんありすぎる。ましてや時は1987年。今ですら、同性を愛することに対してはありとあらゆる偏見があるのに。
だからこそ、だれもいない砂漠でのいくつもの -
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本書はホワイトフェミニズムの深刻な問題点を批判・解体するために、そのカウンターヒストリーであったインターセクショナルフェミニズムの歴史を追うものである。
邦題、表装、前書きの印象から、「煽動的でヒステリックな極左ラディカリズムの啓発本」を警戒する読者がいるかもしれないが、内容はとても上手く書かれた人権運動の歴史ヒストリーである。
原題のほうが分かりやすい⇒『迷惑な白人女:フェミニズム対抗史』。
ホワイトフェミニズムという批判は、平等や人権という概念が抱えた自己矛盾問題への強烈な反撃である。要約すると、「シスジェンダーの異性愛者の先進国のキリスト教徒の白人女性」が、自分自身の個人的地位や権力取得 -
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Posted by ブクログ
今まで私が読んできた海外の小説はどれもこれも白人が主人公だったんだな、と改めて思い知らされた。
この小説には様々な差別の眼差しがある。
例をひとつだけ挙げるとすれば、貧しくて家を買うのも一苦労なのに、そもそもここに住みたい!と思っても内見もさせてもらえないのだ。
それは彼らが「黒人だから」。
私が読んできた海外小説の主人公達はそういう状況に陥ったことはない。
誰もが皆んな学校に通えるくらい貧しくない家庭状況で、当たり前のように勉強をしていて、大学を入学したり卒業したり就職したり。
そして誰かから肌の色だけで決めつけられて、あからさまな差別を受けたりしない。
通りを歩いているだけでジロジロ見ら -
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Posted by ブクログ
ネタバレジェームズ・ボールドウィンが綴る世界はとても美しかった。
彼らにとってあまりにも過酷で、命の危険すらもたらすのに。ティッシュとファニー、二人は恋人同士だけど、彼らが与えられる愛も、与える愛もひとつではない。
ジェームズ・ボールドウィンは世の中が彼らに齎らす苦痛に喘ぎながらも、それでも世の中にある愛を見失うことはなかったんだろうなと。あるいは、より鮮明にそれが縁取られて見えたのか。
なんにせよ、彼の世界に引き込まれっぱなしでした。
映画も素晴らしかった。原作の美しさが描かれていて。
私はアメリカという国、歴史に対して無知だ。でも、ここ数年で出てきた作品に触れながら、以前よりは少しでも知ったと思