あらすじ
米国発、LGBTQ+青春小説の金字塔!
1987年の夏、メキシコとの国境に近い町エルパソ。両親と暮らすメキシコ系の15歳の少年アリことアリストートルは、自分にも家族にもまわりの世界に対しても、正体のわからない違和感と苛立ちを覚えていた。そんなある日、苦手な水泳の練習のために訪れたプールで、同い年のメキシコ系の少年ダンテと出会い、泳ぎを教えてもらうことに。独特の感性も臆さず、屈託なく自分をストレートにぶつけてくるダンテと、お互いの愛情を素直に表現し合う彼の家族に驚きつつも、アリは彼らに惹かれ、友情を育んでいく。そしてさまざまな「事件」や「別れ」を通して、アリはダンテとともに「宇宙の秘密」ーーこの世の真実に気づいていく…。
ラムダ賞、ストーンウォール賞他数々の文学賞を受賞、タイム誌の選ぶオールタイムベスト100冊(YA部門)選出、2023年9月には全米映画公開。十代から親世代まで、すべての人に今だからこそ読んでほしい、限りなく美しく瑞々しいLGBTQ+青春小説の金字塔!
(底本 2023年8月発売作品)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『アリとダンテ、宇宙の秘密を発見する』
よすぎて言葉にならない。
むりやりスリルやサスペンスを盛りこんでくる話ではないし、主人公ふたりもその両親たちも、いろいろあれど地に足のついたひとたちなのに、常に何かのきわを爪先立って歩いているような冴え冴えとした緊張感がある。
だれかを全力で愛するということは、常に先の見えない、剣が峰に立たされたような不安を強いるものなのかもしれないな。お互いの気持ちだけでなく、世間の目、親の反応、気になることはたくさんありすぎる。ましてや時は1987年。今ですら、同性を愛することに対してはありとあらゆる偏見があるのに。
だからこそ、だれもいない砂漠でのいくつもの場面が、ことのほか甘美に感じられる。自分を守るものもさえぎるものも何もない砂漠で、無防備なまま、時には満天の星をあおぎ、時には雨に打たれ……。
自分という人間と対峙するのも、困難なことだ。アリはずっと自分から目をそむけてきたけど、それは彼だけじゃない。アリの両親にもそれぞれ封印し、目をそむけてきた過去がある。各人がそれらと対峙する覚悟を決めたとき、自分だけでなく家族みんなが変わっていく。
こまやかで清冽で、愛とユーモアに満ちた小説だった。
Posted by ブクログ
表現などが美しく、想像するのが楽しかった。
アリとダンテの家族が優しくて、自分もそうでありたいと思った。もしもゲイやレズビアンのカップルが周りにいたら、世界がもっと広かっただろうなと思う。先入観や固定観念に囚われていると思う。
Posted by ブクログ
言葉の端々までなんと美しい物語だろうか。
10代後半のアリの違和感や、やり場のない感情やダンテと交わす会話、両親とのアレコレ。
大人になりつつある揺れ動く感情の全てが瑞々しい。
アリは父の戦争へ行った過去と、刑務所にいる兄について隠してる両親に苛立ちを覚えていたが、
その両親の成長もあって、親世代にも刺さる。
とても良い読後感で余韻に浸ってる。
続編もあるらしいので翻訳されますように。
Posted by ブクログ
アリとダンテ、ふたりは最初から意気投合し、親友となった。やがて、ダンテはアリのことを好きになるが、アリはダンテを拒否する。
しかし、事故に遭いそうになったダンテを命懸けで救ったり、ダンテのために戦ったりするアリの姿に、アリの両親はアリの本当の気持ちに気づく。
何とも素晴らしい話だった。別に私は男同士が好き合う話が好きな訳ではない。(女同士の恋愛モノは何故か大好きだが。)ただ、自分の気持ちになかなか素直になれないもどかしさ、苦しさがこの時期の少年ならではの気持ちとしていきいきと書かれている本書は、とても好きだ。本書には性別云々と言うより、人として誰かを好きになることが書かれている気がする。
アリの両親、ダンテの両親(世代的には私と同年代くらいだな…)の子どもへの愛には驚かされた。最後まで自分の気持ちに気づけなかったアリの背中をひと押ししたのは、彼の両親なのだから。
ダンテの両親も息子の幸せを何より大切に願っている。親だって人間だから完璧ではない、だけどそういう完璧ではないところが好きだと言う少年たちを好ましく思う。
続編もあるようなので、楽しみに待つこととしよう。
Posted by ブクログ
書店でよく見かけていたのと友人からの勧めで読んでみた。舞台は1980年代後半のアメリカ、メキシコ国境の街エルパソ、著者もメキシコ系アメリカ人ということもあり、主要な登場人物はアメリカ生まれのメキシコ系2世の高校生たちで、思春期の人間関係(友人同士、親子関係)で子供たちが成長していく様子が描かれる青春小説である。移民ならではの家族の複雑な事情もあって、心理的な葛藤や人間関係での悩み、高校生特有の苦しみがあるのだが、周りにいる人間が優しさと愛に溢れていて、安心に包まれて読める作品だった。
芸術作品におけるLGBTQテーマが多く入ってくるような時期に出版されたせいか、日本においては「LGBTQ」を前面に出した紹介文を多く見かけた。もちろんLGBTQ的な要素も重要な背景ではあるのだが、実際に読んでみるとLGBTQというより、思春期における、複雑な人間関係を通して成長する子供たち、友人同士や家族間の愛情がメインに描かれており、「LGBTQ」の文学としてもて囃すのはどうも大人側の視点というか、想定している読者層(ヤングアダルト世代)とのズレがあるのではないかと感じた。。(勝手に本の宣伝や紹介に違和感を覚えてしまった)