あらすじ
ふたりのゴッホを支えた女性と知られざるファミリー・ヒストリー
フィンセント・ファン・ゴッホの義妹で、弟テオの妻ヨー。兄弟が相次いで亡くなった後、彼女は膨大なゴッホ作品を受け継ぎ、作品の普及に生涯を捧げた。世界各地での展覧会の開催、有力な画商や顧客に対する戦略的販売など男性優位の美術市場を切り拓いて成功を収め、さらにゴッホ書簡集の出版にも尽力した。ヨーの功績によって、ゴッホは死後に「同世代でもっとも優れた芸術家の一人」という評価を確立できたのだ。美術界を揺るがす意欲と先見性を持ち合わせ、さらにオランダ社会民主労働党員として政治活動にも関わったヨーの類いまれなる人生を描く。未公開の日記、家族の手紙、記念の絵画など貴重な資料と図版130点以上を収録。
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Posted by ブクログ
原書はオランダ語、2019年刊。邦訳書は636ページ+カラー口絵48ページ。圧巻のひとことに尽きる。
ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲル(1862-1925)。あのゴッホ(フィンセントorヴァンサン)の弟、テオの奥さん。彼女なくしては、現在私たちが知るようなゴッホは存在しえなかった。なぜなら彼女がゴッホのほぼ全作品を管理することがなければ、そしてゴッホとテオの間で交わされた途方もない量の手紙を保管し公刊しなければ、ゴッホの作品の真価、その制作過程、さらにはゴッホその人についても、なにも知りえなかっただろうから。(なんだか、宮澤賢治の草野心平や宮澤清六、カフカのマックス・ブロートみたいだ。)
ゴッホの死後、半年も経たずに、夫テオも病死した。1歳の息子(その名もVincent Willem van Gogh !)を抱え、彼女がどう生きたのか。ずっとそのことが気になっていた。本書では、まずヨーの生い立ちに始まり(100ページ)、テオとの結婚と彼の死(100ページ)、そして残りの400ページがその後のヨーに充てられている。
ゴッホの残した作品は尋常な数ではない(およそ2000!)。ヨーはそれらをどこにどのように保管したのか。いつどこでゴッホの展覧会を開催し、いつどこになにを貸し出したか。一部はいつどこにいくらで売却したか。そして「ゴッホの手紙」として知られるようになる書簡集をどのような形で世に送り出したか。守るだけでなく、攻めるに攻めた。周到なプロデューサーあるいはビジネスウーマンの顔も窺える。(そしてこの400ページは、亡くなった時にはほとんど無名だったゴッホが世界に知られてゆく、その受容の歴史としても読める。)
しかし驚くのは、ヨーがテオと一緒に生活したのはわずか1年半、ゴッホと会ったのはたった3回だったこと。その3回で彼女の運命は決まったのだ。
Posted by ブクログ
かなり厚い本。
再読しなければ‼️
最初の48ページにわたるカラーページだけでも、
価値がある。
ゴッホの作品は本人フィンセントと弟のテオ、テオドルスがいなければ完成しなかった。
しかし、フィンセントは自害、その半年後にはテオが病気で亡くなる。
残されたゴッホの作品を管理し、かつ世に出したのは
テオの奥さんのヨー、そしてその息子。
これは、今、2025年9月12日から12月21日迄、
開催中の
東京都美術館のゴッホ展で確認してね。
Posted by ブクログ
ゴッホの弟テオの妻ヨーが、短い結婚生活(同居したのは2年にも満たない)後に愛息を育てること、夫テオの願いであった兄の絵を正当に評価して貰うこと、その二つに全人生をかけた女性の生き様が緻密に描かれている。560ページを超えるためとにかく本が分厚く、重たい。初めて手に取った時、思わず「重っ!」と声に出すほどずっしりとしりとしていて、中身も濃い。今東京都美術館でヨーから見たゴッホ展が開催されているため、是非見に行きたいと思った。
追記 今日(2025-9-19)東京都美術館で開催中のゴッホ展を見てきました♪ 事前に本書を読んでいたため、家族がどのようにゴッホの作品を守り、広めてもきたのか事前知識があることで、家族関係など文字情報を読む時間が大幅に削除でき、その分作品や手紙、映像視聴に時間を割けてありがたかったです。ゴッホの自画像は、本人曰く、青白くて貧弱にみえると不評でしたが、私には優しい目にみえました。